「開かれた市政をつくる市民の会(鳥取市)」編集者ブログ

当ブログの内容は編集者個人の見解であり、「市民の会」の公式見解ではありません。当ブログへのリンク、記事内容の引用等はご自由に!

鳥取市の現在の水害ハザードマップ

 先日の10/27の日曜日、鳥取市内の天気予報は「曇りのち晴れ」のはずだったのに、10h頃には猛烈なにわか雨が降った。おかげで午前中の予定が狂ってしまった。いよいよ時雨のシーズンに入ったようだ。ふと思い立ってその日の日本海の海水温を調べてみた。

「日本海の海面水温・海流(気象庁サイト)」

 太平洋側の沿岸の水温は平年よりも高いが、日本海南部の水温は今のところは平年並みとのこと。日本海の水温が高いところに大陸からの寒気が吹き付けると、山陰以北では豪雪となる。このままであれば、今年の冬の雪は平年並みなのかもしれない。

 先々週末にも関東・東北の太平洋側で猛烈な雨が降った。九月以来、何度目かの度重なる豪雨被害である。被災して亡くなられた方には謹んでお悔み申し上げたい。10/12に関東を通過した台風19号の時、筆者の親戚の家の近くの川も広範囲に氾濫した。そのニュースを見てあわてて電話したが、「氾濫したのは数km下流、家の周りはぎりぎりセーフ」とのことだった。

 この一連の台風と豪雨も、元をただせば地球温暖化による海水温の上昇が原因である。工業化の進展で排出される二酸化炭素の急増に伴って温暖化が進むとの警告は、筆者が小学生であった1960年代には既に指摘されていたのだが、米国大統領をはじめとして未だにその説を否定し続ける輩がいることは、実に愚かと評するほかはない。石油・石炭業界の代弁者に過ぎない彼らには目先の利益しか目に見えず、より大きな危機に対しては「自分が見たくないものは、見ないことにした」と言っているだけなのである。彼らには到底、指導者としての資格はない。

 さて、関東・東北・長野の水害報道を見ていて、鳥取市の想定浸水域(いわゆるハザードマップ)が現在どうなっているかが気になった。今回の千曲川の氾濫区域は、ハザードマップで事前に予想されていた想定浸水域とぴったり一致していたそうである。久しぶりに鳥取市の防災サイト(下記)を開いてみた。

「総合防災マップ(2017年版)」

 基本的な情報は二年前から変わっていないようだ。以下、このページの中の情報についてその内容の一部を見ていこう。

(1)中心市街地に指定避難場所がないのは、なんでか?

「指定緊急避難場所」とは、とりあえず危険から逃れるための避難場所、「指定避難場所」とは自宅に帰れない避難者が一定期間生活するための避難所とのこと。以下、東部とは千代川よりも東側、西部とは千代川よりも西側を意味しているようだ。

 「指定緊急避難場所・指定避難場所」の「東部その1」、「東部その2」のPDFファイルを見ると、市の中心部にあたるいわゆる旧市街地には「指定避難場所」が一カ所もないことが気になる。一方で、津ノ井や湖山などのいわゆる郊外では「指定避難場所」がちゃんと指定されている。これでは、自宅が被災して寝泊りする場所もなくなってしまった旧市街地の住民は一体どうすればよいのだろうか?今日のうちにも大地震が発生するかもしれないのである。自宅が倒壊してしまった人は、一体どこで夜を過ごせばいいのか?深沢市長は、まさか、「旧市街地の住民が寝泊りする場所がなくなるという事態は、完全に想定外でした」などとは言わないでしょうね?

 下の記事に見るように、東日本大震災では、震災関連死者の約五割の死因が、避難所での疲労と困難を伴う不十分な生活に起因していたとのこと。中心市街地に明確な避難所すらも設けていない鳥取市では、いざ大災害が起こった場合には、さらに悲惨な結果を招きかねない。この避難所確保の遅れ問題ひとつを取り上げて見ても、「市民の命を守ることよりも、巨大ハコモノ建設にカネをかけることを優先」する現在の鳥取市政の方向性が透けて見えるのである。

「東日本大震災の震災関連死、5割は避難生活に原因が。それでも雑魚寝はなぜ続く?」

 

(2)鳥取市東部全図 P19~P20について

 地図の含む情報量は膨大なので、すべてのハザードマップをここに載せることは到底できない。市の「総合防災マップ」の中の、おすまいの地域が含まれている地図を選んで見ていただきたい。筆者は旧市街地が含まれる東部のP19~P20をダウンロードしてみた。この地域の地図だけでも、PDFファイルにして11.8MBの容量があった。

 この中心市街地の傾向だが、当然のことながら千代川に近い西側に行くほど想定浸水深さが深くなる。県庁から鳥取駅に向かう若桜街道(国道53号)より東側では大半が想定浸水深さが50cm以下であるのに比べて、西側では浸水深さ1m以上の青色で塗られている地域が多い。

 浸水深さの一例として、この国道53号線沿いにある新旧市庁舎の周辺の比較を下の図に示した。左側が新市庁舎周辺、右側が旧市庁舎周辺であり、赤線で囲った領域がそれぞれの庁舎の敷地を示している。(図をクリックすると拡大。以下の図も同様。)

 

f:id:tottoriponta:20191101113534j:plain

 新市庁舎は建設の際に水害対策と称し庁舎部分の敷地を1.2mかさ上げしているが、かさ上げしても図に示すように敷地全体での浸水は免れない。仮に庁舎の建っている部分の浸水は免れるとしても、周辺道路はかさ上げしていないので浸水時には新市庁舎が「陸の孤島」になる可能性が高い。特に、新市庁舎の北側と西側は深さ1m以上の浸水が予想されているので、この方面への交通は極めて困難になるだろう。

 一方、旧庁舎の周辺では、浸水深さが50cm以下または浸水なしとする白色の領域が多くなっている。旧庁舎に比べて新庁舎周辺が水害に弱いことは、誰が見ても明らかである。今後、新庁舎周辺で水害が発生した場合には、「新庁舎は防災の拠点にする」と主張して新庁舎建設を強行した竹内前市長と深沢現市長、さらにその巨額の費用を要した新築案に賛成した与党議員(会派新生、公明党、その他)の責任が厳しく問われることとなるだろう。

 なお、左側の図中の113、115、18は、それぞれが「指定緊急避難場所」とされている幸町棒鼻公園、明徳小グラウンド、明徳小学校を示している。いずれも予想浸水深さが50cm以上となっており、大水害発生時に避難場所としての利用は危険であり、使用不能となる可能性が高いことは明らかである。市はこのことをこの地域の住民にちゃんと伝えているのだろうか?

 さて、約四年前の2015年9月、当会は「市民の会」公式サイトに当時のハザードマップから抜粋した新旧両庁舎の浸水予想の比較図を載せている。改めてその図を下に示しておこう。

f:id:tottoriponta:20191101114117j:plain

 これを見ると、新庁舎の方が旧庁舎よりもより水害の危険性が高いことについては変わりはないが、現在のハザードマップの方が、四年前のものよりも全体的に浸水予想深さが50cm程度浅くなっていることがわかる。ポンプの増設等によって排水能力が向上したのだろうか?市による丁寧な説明を求めたいものである。

 

(3)水害は同じ場所で繰り返し起こる

 鳥取市では、昨年、一昨年と続けて千代川が氾濫しかねないような豪雨に見舞われ、市内各所で浸水被害が発生した。今年は幸いにもこれといった被害は起こらなかったようだが、これは、たまたまそうであったというだけのこと。今年の台風が関東地方ではなくてもっと西寄りのコースに進んでいれば、山陰地方も相当の水害に見舞われたはずである。

 台風のコースと県東部の水害の関係については、詳しくは当会の過去の記事を見ていただきたい。台風が九州南部や四国南岸をかすめて近畿地方に上陸した場合、当地も相当量の豪雨に見舞われる可能性が高い。以下に例として挙げている一昨年九月に市内各地に浸水被害をもたらした台風18号も、まさにこのコースをたどって明石市に再上陸している。

 さて、地震と違って、水害は同じ場所で繰り返し起こる傾向がある。以下、昨年または一昨年に浸水被害に見舞われた地区を例に、ハザードマップとの関係を見ておこう。


(a)吉成南町
 昨年の西日本七月豪雨の際、2018/7/7に県から委託されて市が管理していた排水ポンプの故障が発生、町内は広範囲な浸水被害を受けた。一昨年の秋にもこの排水ポンプが詰まって同様の浸水被害を受けている。現在のハザードマップを以下に示す。町名が見ずらいが、千代川沿いの右側の千代川と大路川に囲まれた地区が吉成南町であり、地区の大半が浸水想定深さ2~5mとなっている。

 当時の状況の詳細については、当会公式サイトの2018/7/26付の記事を見ていただきたい。

f:id:tottoriponta:20191101114423j:plain

 

(b)河原町渡一木
一昨年2017/9/17の台風18号通過の際、内水氾濫、および大井出川の三か所にある水門操作の不備により、河原町総合庁舎周辺で床上浸水が発生。一時的には人の胸まで水位が上がったとのこと。この地区では昨年の七月西日本豪雨の際にも排水ポンプの故障による浸水が発生している。現在のハザードマップによれば、同地区の大半が浸水想定深さ2~5mとなっている。この浸水被害の詳細についても、当会公式サイトの記事を参照していただきたい。

 

f:id:tottoriponta:20191101114536j:plain

 

(c)面影地区
 上と同じく2017/9/17の夜、面影地区も豪雨に見舞われ、道路や農地が30cm程度冠水したとのこと。詳しくは「H29 面影地区地域づくり懇談会議事録」を参照されたい。これは地区内に降った雨が川の水位上昇によって水門から排出できず、地区内に滞留することによって発生した典型的な「内水氾濫」である。下のハザードマップに示すように、同地区の大半は浸水深さが50cm以下であり千代川水系の氾濫に対しては安全とされているが、そのような地区でも浸水被害が発生する典型例である。

 なお、この2017/9/17の降水量であるが、「気象庁 過去の気象データ検索サイト」によると、当日の総雨量は鳥取で149.5mm、智頭では191.5mmであった。一時間ごとの降水量の最大値は、鳥取で20~21hに49mm、智頭では19~20hに40.5mmを記録している。 この短時間に降った大量の雨が面影地区と河原町での内水氾濫の原因となり、さらに県・市・その他の管理委託団体による水門操作の混乱が浸水に拍車をかけたのであろう。

f:id:tottoriponta:20191101114826j:plain

 一時間に50mmを越すような豪雨に遭遇すれば、どのような地区でも「内水氾濫」は発生しうる。「ハザードマップに載っていないからうちの地区は安心」と思ってはいけない。

 このほかにも、市内の水害常襲地区としては青谷町駅前地区や、福部町総合支所周辺などがあげられる。自宅周辺の水害が心配な方には、今一度、ハザードマップを確認されることをお勧めしたい。

 今年、鳥取市は運よく水害には会わなかったまま年を越すことになりそうだが、既に日本中のいたるところで豪雨に見舞われてもおかしくない時代となってしまった。来年水害に遭うか遭わないかは、もはや、その時の運しだいなのである。

/P太拝