「開かれた市政をつくる市民の会(鳥取市)」編集者ブログ

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ラグビー、再発見!(4)

 11/3(日)のラグビーW杯決勝からもう二週間も経ったが、未だにラグビーロスから脱し切れていない。週末にラグビーの試合を見なければ、その週が終わらない感じがしてしょうがない。

 それにしても、決勝での南アフリカの快勝は全く意外でした。準決勝でのニュージーランドに対するイングランドの完勝を見れば、決勝でもイングランドの優位は間違いないと誰しも予想したことでしょう。結局は、フォワードの力をいかにして維持し続けるかがカギだったらしい。

 準決勝に全力を使い果たしたイングランドと、ローテーションを組んで強力フォワードの威力を維持し続けた南アは実に対照的でした。決勝でのイングランドフォワードは、準々決勝での日本よりもさらに南アに押し込まれていて、苦し紛れの反則→ペナルティキック→三点献上の悪循環に陥っていました。今回の南アの優勝が、南ア国内の人種間の対立と格差の解消のきっかけになればよいと願っています。

 今回の健闘で15人制ラグビーの国内試合のテレビ中継もこれから増えてくるのでしょうが、さらにお勧めしたいのは以前にも触れた7人制ラグビーです。15人制と違ってバックスが走り回る試合展開であり、逆転に次ぐ逆転で、いったん見始めたら試合が終わるまで目が離せない。日本は来年の東京五輪に開催国枠で男女ともにすでに出場が決まっていますが、男子では今回の15人制で活躍した福岡、レメキ両選手に加えて、松島選手とリーチ主将も参戦する可能性があるとか。メダル獲得の可能性もあり、是非観戦していただきたいと思います。最近読んだ七人制ラグビーの記事を以下に紹介しておきます。

東京五輪で選ばれる選手は? ラグビー日本代表は再び旋風を起こせるか

  話はまったく変わりますが、ラグビーW杯が終了して四日後の11/7、WBSSバンタム級王者決定戦、井上尚弥 対 ドネア戦をテレビで観戦しました。筆者はサッカーの日本代表戦とボクシングの日本選手の世界タイトルマッチについては、可能な限り見るようにしています。以前よく見ていた野球は、投手と打者間の対戦の間の長さ、緊張感が続かないことなどが嫌になって、最近はほとんど見なくなってしまいました。

 さて、井上対ドネア戦、史上まれに見るほどの素晴らしい試合内容であり、終了後に両者が抱き合って健闘を称えあう姿にも感動しました。しかしこの対戦中、両者が血を流しながら殴り合う姿に「なんでここまで殴り合わなければならないのか」と自分でも意外にも感じてしまいました。さらに、席から立ち上がって「もっと殴れ、ぶちかませ!」と怒号していた観衆に対しては、はっきりと嫌悪感を感じてしまいました。これらの感覚は、筆者自身、数か月前まではボクシングの試合を見ていて感じることのなかった種類のものでした。以前には筆者自身も、テレビの前で「そこだ、もっとやれ!」などと叫んでいたはずなのです。

 後で「なんでこんな感じがしたんだろう」と考えてみました。どうやら、一か月半にわたってラグビーW杯を観戦しているうちに、自分の感性がラグビーを基準として、そこから他のスポーツを眺めるようになってしまったらしいのです。

 考えてみれば、一口に「暴力的スポーツ」と言っても、ラグビーとボクシングではその質が違います。過去に筆者が書いたラグビー関連記事で使った「暴力的」という言葉は、「ボール争奪に伴う過度な肉体的接触」とでも言い換えられるべきであったようです。過去の「暴力的」という表現を訂正します。ラグビーでは、相手の肉体に対する直接攻撃は直ちに反則となります。

 対してボクシングは、選手には失礼な言い方になりますが、真に「暴力的」なスポーツ、「自分のこぶしを使って相手の肉体を直接攻撃することにより、深刻なダメージを与えて行動不能にする」ことを目的とするスポーツです。レフェリーが立ち会い一定のルールを課すことでスポーツとしてかろうじて成立はしているものの、レフェリーがいなくなれば、夜の盛り場で見かける殴り合いのケンカと何ら変わりがなくなってしまいます。

 おそらく筆者は、ボクシングの激しい殴り合いを見ているうちに、「これはやり過ぎだ、何らかの歯止めが必要だ」と感じてしまったのでしょう。無意識のうちにボクシングとラグビーを比較してしまっていたようです。見ているだけの人間の意識にもこれだけの影響を与えるのだから、厳しいルールのもとでプレーしている選手自身は、より一層、自分自身の攻撃性をコントロールすることが上手になるのではないでしょうか。

 「ラグビーをやることで協調性が養われる」、「企業経営者にはラグビー経験者が多い」等々、ラグビーの持つポジティブな効果についての記事は、最近では紹介しきれないほどに世間にあふれています。ラグビーほどではないにしても、集団で行うスポーツの教育的効果は著しいものがあります。即ち、「協調性が高まる」、「相手の立場を尊重する」、「お互いで決めたルールを厳守する」、「目立たない地道な仕事でも、仲間のために進んで取り組む」等々。国と国との関係も、スポーツの試合と同様にルールに従ってやっていけば、くだらない戦争などはなくなってしまうでしょう。「ノーサイド」の精神が地球全体に広まれば、本当に戦争がなくせるのかもしれません。

 こんなことを考えているうちに、ちょっとしたアイデアを思いつきました。日本は過去には「政府開発援助(ODA)」で、開発途上国の道路や橋などインフラ面の整備に巨額の資金を提供してきました。日本の最大の援助先は中国でしたが、今や中国自らアフリカ諸国どころか、中東や東欧諸国に対してもインフラ整備を積極的に進める時代となっています。これからの日本は、ハード面よりもむしろソフト面の援助、発展途上国の人材育成への援助に軸足を移した方が良い。その人材育成の中心となるのが各種スポーツの指導者育成です。

・現在、発展途上国のへのソフト面の支援は主に青年海外協力隊(JICA)が 担っているが、隊員の赴任期間はわずか二年間、金銭的待遇も決して恵まれてはいない(物価の安い発展途上国への派遣ということで、大半が年収100万円台のようだ)。結果的に素人に近いレベルのスポーツ経験者しか派遣されていないのが実態らしい。

・新しいスポーツ指導者育成事業では、発展途上国に派遣される日本人の資格としては、派遣先のそのスポーツ界全体の指導も可能な技術レベルにあること、日本にそのスポーツのプロ業界があればその出身者であることが望ましい。もちろん、人格的にも尊敬に値する人物でなければならない。待遇は最低でも年収一千万円以上とする。 

 国が関与してはいないが、昨年のサッカーW杯の西野監督が現在はタイ代表の監督を引き受けていることに見るように、日本のサッカー界はこの面では先進的であるといってよい。

・日本人指導者の派遣のみでなく、発展途上国から将来のスポーツ指導者となるべき候補者も積極的に受け入れる。スポーツの習得と共に日本の大学への留学を兼ねていてもよい。対象者が日本に滞在している間は、「奨スポーツ金」とでもいうか、十分な額の金銭的援助を対象者に対して行う。

・自国のスポーツの発展、特にサッカーのような人気スポーツの発展を積極的に手助けしてくれる外国を、その国の国民が嫌いになるはずはない。先進国では中間層の没落が進行しつつあるが、発展途上国の中間層は今後も急速に増え続けることは間違いない。衣食住に余裕ができた中間層が次に求めるのは、健康とスポーツなどの娯楽である。日本の対外的信頼度をさらに高めるためにも、スポーツ面での海外援助は必要不可欠。

・世界の平和と環境保全に積極的に貢献して多くの国から信頼を得ている国を、特定国がたいした理由もなしに一方的に攻撃に踏み切ることは困難だろう。スイスや北欧諸国のような国に対して、どの国があえて侵略しようとするかを考えてみてほしい。他国のスポーツへの援助によって日本の国際的な信頼度が高まるのであれば、そのための費用は「間接的な防衛費」に相当すると言ってもよいだろう。

 トランプ大統領が日本に執拗に売り込もうとしているF-35戦闘機は一機あたりの価格が100億円程度らしい。国がプロスポーツからの引退者を指導者として海外派遣するとして、一人あたりの人件費と経費の合計を約2000万円と仮定する。F-35購入を一機減らすことで、熟達したスポーツ指導者100人を五年間にわたって世界各国に派遣することができるのである。

 権力者の見栄の張り合いの象徴にすぎない戦闘機と、「世界の多くの人々の楽しみと健康増進につながるスポーツ振興」兼「引退したプロ選手の職場確保」と、税金の使い方としてどちらの方が重要かを、よく考えてみていただきたい。

/P太拝