「開かれた市政をつくる市民の会(鳥取市)」編集者ブログ

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香港区議選で民主派が圧勝!

 昨日の夜から今朝にかけて一番気になっていたニュースは、香港の区議選の結果についてであった。その結果は、既にご存知のように「民主派の圧勝!」であった。「よくやった! おめでとう!」と、もろ手を挙げて祝福したい心境である。

 参考までに圧勝の様子を伝える動画付きのニュースを紹介しておこう(数日中に消されてしまうとは思うけれど・・)。

「香港区議選 投票率は過去最高の71.2%」 日テレNEWS24

 この民主派完勝がもたらす今後の影響について間違いなく言えることは、このことで中国政府による香港への軍事的侵攻がますますやりにくくなったということだ。元々、香港は海外からの対中国投資の独占的窓口であった。現在でも中国への海外からの投資の約四割は香港経由とのことである。香港を軍事力で制圧した場合には欧米諸国からの中国への投資が止まることは明白であり、米国との貿易戦争で頭が痛い中国政府にとっては自分で自分の首をさらに絞めるようなものだ。

 これこそが、北京政府が国内のウイグル族チベット族等に対して行ってきた近年の暴力的制圧を未だに香港に対して実施できずにいる最大の理由なのである。もしも香港に経済的価値がなかったならば、とっくの昔に人民解放軍なり中国武装警察(国内治安を担当する人民解放軍の下部組織)が香港に進駐し、反抗する学生を容赦なく撃ち殺していただろう。

 公平かつ民主的に実施されたであろう今回の選挙結果を北京が国家暴力を用いて強圧的に否定した場合、欧米諸国が一斉に香港と中国への投資を中止することは確実である。常に人権問題よりも経済的利益を優先する傾向が明白な我が日本政府でさえも、その場合には、(天安門事件の直後とは異なって)さすがに欧米に同調しないわけにはいかないだろう。ちなみに、最近の中国が日本へのアプローチを強めている背景については、欧米に比べれば日本が「人権問題に対して極めて鈍感な国」とみなされていることがその理由の一端にあるのではないかと筆者は考えている。

 もう一点言えることは、これは別に中国と香港の関係に限ったことではないのだろうが、「一度、公正かつ自由な選挙制度を部分的にせよ手に入れた人々は、それを手放して再び独裁政権下に戻ることを強く拒否する」ということである。今回の香港の区議選の結果がそのことを明瞭に示している。

 現在の香港の選挙制度の元では、今回の区議選だけが自由かつ公平な選挙であると言える。中国による独裁政治に飲み込まれることを恐れた香港市民は、この区議選が自分の意思を表示して中国に飲み込まれることを阻止するための最後のチャンスと捉え、今までは政治に無関心であった市民までもが一斉に投票に向かったのだろう。今回の投票率が71.2%に達し前回の47%を大幅に上回ったという事実が、この見方を裏付けている。

 さて、この結果を北京政府がいつどのように報道するかに注目していたが、本日夕方になってから、ようやく中国のニュースサイト(百度新聞)が国営の新華社電を伝えた。(習近平政権になって以来、各メディアが独自に取材し独自の見解を発表することは完全に禁止されてしまった。どこのサイトを見ても、国内・国際政治に関しては、政府系メディアから供給された同一内容のニュースしか読むことができない。)

 その内容は以下のようにごく簡単なものであり、民主派が圧勝した選挙結果については一言も触れてはいない。(本日17h頃に上記ニュースサイトでこのニュースを確認したが、23hに再確認したら早くも消されていた。)

① 昨日、香港で区議選が実施され、18選挙区の452議席が全て決まった。

② 過去五か月間、香港の暴力分子と外国勢力が協力して香港の政治的分裂をあおり、経済と民生の発展、さらに選挙の実施を妨害した。

③ 選挙当日も暴力分子が愛国派(中国派)に対して騒動を仕掛けた。暴力を制止し秩序を回復することが、未だに香港の最も差し迫った課題である。

 政治的混乱は外国勢力の不当な干渉に原因があるとするのは、中国に限らずどこの国の政権でも使うおなじみの常套手段である。外から見れば、香港の経済と市民生活を混乱させた根本原因は、香港返還時に約束したはずの一国二制度を無視し民主主義を破壊しようとした習近平政権にあるのは明白なのだが・・。第一、自国民にまともな選挙に参加する権利すら保証していない国には、ちゃんと公正な選挙を行って自らの政治を決めようとしている地域を批判する資格などないはずだ。北京政府が香港の民主主義を圧迫することによって、逆に北京政府自身の大陸統治の正当性が疑われる事態になりつつあると言ってよいだろう。

 いずれにしても、香港の民主主義が習近平に押しつぶされることのないように、むしろこれをきっかけとして大陸中国独裁制が多少なりとも変化することを願いながら、引き続き香港情勢に関心を持ち続けたいと思っている。

 さて、筆者が香港問題に強い関心を持つのは、2012年までの約八年間、仕事で日本と中国を頻繁に行き来していたことが背景にある。一度過去のパスポートを調べたことがあるが、この間に三十数回も出張べースで日中間を往復していた。当初は日本と中国の違いばかりに目がいっていたが、「外観はよく似た民族同士なのに、なんでこんなに考え方が違うのか」という点に興味がわいて、過去の歴史も含めて色々と中国のことを調べるようになった。

 今や、好むと好まざるにかかわらず、中国の動向が我々日本人の生活にも大きく影響を及ぼす時代となった。少し前のことにはなるが、一介の技術屋が見た当時の中国社会の実状について、今後、時々は当ブログに書いていくようにしたい。経験したことを思い出しながら、今後中国がどの方向に向かうのかについて改めて考えてみたいと思っている。とかく日本人には敬遠されがちな現代中国ではあるが、その実情を知ってお互いの違いの背景をあらかじめ理解しておくことは、将来、何かの役には立つのではないだろうか。

/P太拝