「開かれた市政をつくる市民の会(鳥取市)」編集者ブログ

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鳥取はすでに岡山の商圏? 頑張れ!鳥取商人!

 二年前の秋、それまで畑仕事に使っていた軽トラの調子がおかしくなってしまった。エンジンをかけて走り始めると、今までは感じなかった異音が気になる。走っているうちにエンジン音が高くなってくる。少し長時間走っていると、キンキンと耳障りな音がしてうるさい。既に十数年モノでもあり、そろそろ寿命かと思い売却することにした。


 最近はネット経由での中古車業者が主流になっていると聞いていたので、朝八時過ぎにネットで中古車買取業者を検索、トップで出てきた買取サイトに当方の条件を入力して送信した。すると、送信して数分後にはこちらの携帯に電話がかかってきた。「何と早い!」とびっくりしてしまった。二日後の土曜日に査定にきてもらうことにした。業者名を控えておいてネットで検索してみると、どうやら岡山市周辺の業者のようだ。この業者を仮にA社としよう。

 その日の夕方までに、さらに三社から連絡があった。順にB、C、D社としておこう。B社は岡山市、C社は鳥取市内、D社は米子市内の業者であった。BとCにも二日後にきてもらうことにしたが、Dは六日後でないと鳥取には行けないと言う。この時点でD社は既に脱落決定。

 ここまでの経過を見ると、とにかく早く電話をかけて来た業者が優位に立てるようだ。売り手としては、この後にどれだけの数の業者が買いたいと言ってくるかわからないので、最初に接触してきた業者をどうしても優先してしまう。査定の予定日は、最初の業者の都合と当方の日程をすり合わせて決めることになる。二番目以降の業者は、自社の予定にかかわらずその面会日に合わせることを求められることになるので不利である。売り手としても、何日もかけて業者を選定するのは時間がかかって面倒なので、筆者のようになるべく一日で決めてしまいたいと思うのではないだろうか。

 さて、三社が査定に来る土曜日。午前中、真っ先に来たのは岡山市のB社。年齢が二十台後半くらいのまだ「お兄さん」といった感じの青年営業マン。エンジンをかけて異音を実際に聞いてもらう。異音の原因はあまり把握できていないように見えたが、最初から金額を提示、「有利な見積もりだから早く決めてください」と熱心に説得される。「あと二社が来るので、見積もりが全部出てから決めます」と一応断る。

 午後になってから鳥取市内のC社が来訪。営業マンは三十代くらいの中堅社員という感じ。「異音がするのだが」と話すと、実際の音の確認もそこそこに、会社に電話をかけて誰かと相談をはじめた。結局、「会社に帰って相談してから後で連絡します」と言って、金額の提示もしないで帰ってしまった。

 最後、夕方になってやってきたのがA社。後で考えてみると、他社が見積もりを出した後でやってくるというのも一つの戦略である。何といっても「後出しジャンケン」の立場に立った方が有利だ。このA社の人は五十代前後か、「社員」というよりも「大将」と呼ぶほうが似つかわしいような、いかにも個人営業業者という感じ。既に車を二台積んだ中型の専用輸送車でやってきた。早速、異音を聞いてもらう。すぐに判定が出た。「ベアリングからの音で、エンジン自体は悪くない。修理にはあまり費用は掛からない」とのこと。金額もその場ですぐに出る。B社よりも若干高い。若干交渉してもう少し高い金額で妥結。お互いにいい取引だったようだ。

 四日後にA社に軽トラを正式に引き渡すことにして、少し話をする。岡山を拠点に、東は但馬から西は出雲市あたりまでを営業範囲としているとのこと。鳥取にも契約している修理拠点があるらしい。修理してから全国的な市場(ネット上か?)に情報を上げて売りさばくとのことだった。

 A社が帰ったあとでB社が電話をかけて来た。「もう決めました」と伝えると悔しそうな口調だったが、いくらで決まったかと聞いてきたので、素直に値段を答えておいた。営業としてはなかなか立派な態度である。今回がだめでも、最低限、市場の相場情報を手に入れたことになる。次回、同じようなケースに出会えば成約する可能性は高い。C社の営業マンもあとで電話をかけてきたが、「決めた」と聞くと、成約した値段も聞かずにあっさりと電話を切ってしまった。粘りが全く足りない。

 米子のD社に至っては、査定日の夕方に「決まったから、もう来なくていいです」と断りの電話をかけておいたのに、その四日後になってから「いま鳥取に来ました、これから伺います」と電話をかけて来る有様。論外というほかはない。商売をする以前に、まず社内の連絡体制をしっかりと立て直した方がよい。

 以上の経験から見えて来るのは、全て当たり前のことでしかないのだが、以下の点である。

・専門的かつ具体的な知識を持っているものが商売に勝つ。A社の知識力は圧倒的であった。

・知識が不十分でも、営業の粘りがあれば勝てる可能性もある。B社の熱意と市場情報を得ようとする姿勢は中々のものであった。

・岡山の二社に比べて、鳥取市のC社は、知識力、営業としての粘り、ともに圧倒的に劣っていた。このC社は他の分野では鳥取市内ではそこそこ名前が知られている中堅企業であり、中古車買い取りビジネスは新規参入のようだった。しかし、新規事業であればこそ、経験を積んだベテランを配置すべきだろう。社内に適任者がいなければ、自動車修理業界から人をスカウトするくらいでなければだめだ。本業の顧客つながりの範囲内で商売をすればよいと考えているのかもしれないが、中古車買い取り業界も相当厳しい業界のようであり、人と知識に対してある程度の初期投資をしなければ到底勝ち目はないだろう。
 
 振り返ってみると、過去数年間、日用品は大規模なDIYセンターでしか買ったことがない。筆者が日頃買いに行くのは、全国展開しているチェーン店二つと、津山市に拠点があり岡山、鳥取、兵庫に展開しているチェーン店一つだ。街の金物屋さんという業態はとっくの昔に絶滅してしまった。食品スーパーにしても、純粋な地元資本で鳥取市内に拠点がある系列は、JA系以外にはもはや一社しか残っていない。

 特に排外的な思想を持っているわけではないのだが、地元資本の店をなるべく選んで買い物をするように日頃から気をつけてはいる。自分が払ったカネが地域内に再投資されることなく外に流出するようでは、この地域がさらに貧しくなることは確実だからである。その意味では、筆者は「鳥取ナショナリスト」ならぬ、「鳥取リージョナリスト」とでも言うところか。

 ただ、上に紹介した中古車引き取り事例に関しては、あまりにも岡山の業者と地元業者との能力差が甚だしかった。こんなに対応が違っていては、県外業者を選択するのもやむを得ない。

 「頑張れ!鳥取商人!」

 ぼやぼやしていると、市内の商売は全て外部資本に乗っ取られてしまいますよ。

 二年前の小さな取引の話でしかないのだが、鳥取と岡山のビジネススキルの格差の大きさにあらためて驚かされた事例だったので、ここに紹介してみた次第。

/P太拝