「開かれた市政をつくる市民の会(鳥取市)」編集者ブログ

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旧本庁舎の駐車場は有料ではなく無料にすべき

 今回は久しぶりに鳥取市政の話題について書きます。

 今年の初めから、当「市民の会」の定例ミーティングを土曜日の午前中に変更している。ミーティングの前後で改めて感じるのは、会の事務所が面している若桜街道のさびれ方のすさまじさである。
 旧第二庁舎前から若桜橋までの間の歩道を歩いている人を数えると、たいていは片手で間に合う。人っ子一人歩いていないこともよくある。ある土曜日の午前中の風景を下に示す。まさに無人のメインストリートである。

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若桜橋方面から県庁方向を見る(2020/02/01)

  先週の平日の午後に、車で若桜街道を通り、さらに智頭街道を通ることがあったが、人通りはむしろ智頭街道の方が多かった。智頭街道は既に住宅街と化しており、住民による生活道路としての利用がもっぱらのようである。若桜街道は市庁舎の駅南地区移転に伴う人通りの激減によって商店街としては既に壊滅的な状況にあり、住宅街としての利用もまだ進んでおらず、実に中途半端な状態にあるように見える。
さて、旧本庁舎周辺の若桜街道の現状を見ていて、思い浮かぶ点は以下の二点である。

(1)周辺地域の地価の下落は確実だが、それに伴って固定資産税も安くなるのだろうか?
聞くところによると、旧本庁舎の周囲には市民所有の市職員目当ての駐車場がたくさんあったのだが、現在、それらが一斉に売りに出ているそうだ。数百人分の駐車場の需要が一挙に消えたのだから、所有者の収入減は大変な金額だろう。

 今年の路線価格の下落は確実だが、土地所有者に対する固定資産税の税額もそれに伴って減額されるのだろうか。固定資産税の税率は各自治体が任意に決めることができるのだが、鳥取市が路線価の下落に伴って素直に固定資産税を下げるのかどうか、監視が必要である。
 ちなみに、鳥取市の歳入区分を見ると固定資産税は市民税よりも多く市税全体の五割弱を占めており、市の自主財源中の一番の柱となっている。

 

(2)旧本庁舎敷地内の既存の駐車場の有料化は撤回し、無料で市民に提供するべき

 旧本庁舎の跡地の駐車場は、昨年11月1の閉庁に伴い有料化された。一時間で200円の駐車料金は周辺の駐車場に比べると高い。ここに停まっている車の台数も、たいていは片手か、もしくは両手で間に合うくらいの数である。最近の写真を下に示す。

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 周辺の駐車場は、最初の30分又は40分で、100円又は110円との設定が多い。市議会での市側の答弁によると、「周辺の駐車場の民業圧迫に配慮した結果」だそうである。そもそも、市職員を対象に周辺住民が運営していた契約駐車場を自分たちで根こそぎつぶしておいてから、いまさら「民業に配慮」を言うなどチャンチャラおかしい。筆者が思うに、この有料化の目的と結果は以下のようになる。

① 一見、行政が民業にも配慮しているようにみせかけるという、「行政による偽善的政策の典型」にほかならない。散々に人を殴り倒しておいてから、後で相手の傷口にバンドエイドを二、三枚貼って「僕って親切でしょう」と言っているようなものである。議員もこんな説明に納得しているようでは、「偽善オミコシの片棒の担ぎ役」と言われても仕方がないだろう。

② 有料化後の旧庁舎跡地駐車場の運営は、すでに県外資本の業者に外注済みである。気づいてみれば、中心市街地の駐車場の大半は県外の大手資本が運営している。他にも、市が今まで直接関わってきた事業を市外・県外業者への外注化に切り替える事例が増えている。新庁舎の窓口業務の大半を東京のニチイ学館に外注化したことにもみられるように、鳥取市が最近やっている仕事とは、市民から集めた税金を市外・県外業者にせっせとみつぐことであるらしい。その結果、市内で循環するカネの総量が減り、鳥取市民はさらに貧しくなるのである。

 

(3)無料駐車場設置の意義

 以下、この旧庁舎周辺地域に無料駐車場を設けることの意義について述べたい。

① この地域では駐車場の絶対数が不足
 県庁・県立図書館・とりぎん文化会館の周辺では、駐車場の絶対数が不足している。筆者は図書館に行くことが多いが、文化会館で何かのイベントがある日には、文化会館・図書館共用の駐車場はすぐに満車になってしまう。その場合には県庁内の地下駐車場まで行くものの、大規模なイベントの場合にはここもすぐに満車となる。さらに遠くの無料駐車場を探すか、有料でも近くの駐車場に止めるしかない。

 文化会館・図書館の駐車場は341台分、これに対し旧庁舎の駐車場は現状のままでも151台とされており、これを無料化すればかなりの改善になる。

② 鳥取では駐車料金は無料が常識
 本来は公共交通網を充実すべきだが、従来の交通網を維持する財源すら不足している現状では、鳥取県民の足としては自家用車に頼るしかない。中心市街地の商店街が軒並み不振を極めているのは、何と言っても駐車場の絶対数が不足しているからだ。だから、皆が、大きな無料駐車場が付属している郊外のイオンやカインズなどの大型店に行ってしまうのである。
 鳥取では駐車場は無料が常識であり、仮に無料を有料にした場合にはとたんに人は来なくなる。実際、151台が停まれるはずの旧庁舎跡地に市が設けた有料駐車場に停まっているのは、いつ見ても一けた台にすぎない(先週、なぜか十数台も止まっていてびっくりした・・)。

③ 無料駐車場があれば周辺の商業が活性化
 中心市街地の各商店に見られるように自分の店専用に数台分の駐車場を設けたところで、仮にその店が人気店であり多くの客を集めたとしても、それが周りの店に客が流れることはありえ無い。地域が共有できる広い無料駐車場を設ければ、活性化が点から線、さらに面へと広がる可能性が出てくる。

④ 旧城跡周辺の観光活性化にも貢献
 どういう理由かは判らないが、お堀端に沿って設置されていた駐車場が最近撤去されたと聞く。鳥取道が無料化されていることもあり、少なくとも関西方面から鳥取市内にやってくる観光客の大半はマイカー利用だろう。市がいくら観光スポットを宣伝しても、車を止める場所がなければこの地域を訪れる観光客はわずかにとどまる。城跡からはいささか遠いものの、城跡から山の手地区沿いに樗渓神社や観音院あたりまでも含めた街歩き周遊コース(このコースは鳥取地震鳥取大火の被害を免れた希少な地域の中を通る)を設けた場合、この跡地は格好の駐車地点となる。

⑤ 「二核二軸」構想の実現に向けた第一歩
 鳥取市は既に「第3期鳥取市中心市街地活性化基本計画」を2022年までの五カ年計画で国に提出して承認を受けている。その中では「鳥取駅周辺地区と鳥取城跡周辺地区を核とし、その2つの核をつなぐ若桜街道と智頭街道を軸とする、二核二軸を中心とした約210ha」を計画区域とし、「活気のあふれる中心市街地の形成を目指す」としているが、一向にその具体策が見えない。特に旧市庁舎跡地を含む「鳥取城跡周辺地区」についてはさびれるばかりである。この地域に公営の無料駐車場を設けることは、国との約束を果たすための第一歩に他ならない。

 

 さて、上に挙げた効果を実現するためには、少なくとも今後十年間程度の長期間にわたって駐車料無料を保証する必要がある。仮に当面無料化するとしても、将来は有料になる恐れがある限りは、近くで新たに店を出そうとする人は出てこない。仮に現本庁舎を今後解体するとしても、その際に駐車場を全面使用禁止とするのではなく、この無料駐車場を当て込んで周辺で事業を始めた人に対しては、引き続き無料での駐車場提供を続けるべきである。

 なお、市執行部と市議会は、現在「旧本庁舎と第二庁舎」については解体の方針で動いているが、いずれも耐震改修を施せば、引き続き長期間使用できる可能性が大である。そもそも、この「解体方針」は市民の意見を全く聞くことなくして決められたものである。与党の新生の重鎮である某議員は、「跡地活用に関する調査特別委」の中で「我々議員は選挙で選ばれたのだから、跡地の活用方法については我々が決めればいい」と言い放った。なお、この議員の2018年11月の市議選における公約は「市民の意見等を踏まえた、本庁舎跡地の活用策の早期決定」であった。この議員には、「まず、自分の公約を約束通りに守れ!」と言いたい。

 繰り返すが、跡地の活用方法については、市民の意見を十分に確認してから、あらためて解体か継続使用かを決めるべきである。市議会では、既に旧本庁舎と第二庁舎の解体に関する実施設計予算1770万円を昨年の十二月議会で既に可決済であるが、この跡地に今後新たに大きな公共施設を建てようとすれば、十数億~数十億円を要することは明らかである。

 市民団体の活動拠点が不足している現在、市民が集まりやすい市中心部に位置し、手入れさえすればまだ十分使える公共施設を、約4.25億円もの税金をかけて壊してしまうというのは実にもったいない話である。今からでも遅くはない。深澤市長は、改めて市民を交えて旧庁舎の活用方法について議論すべきである。

 さて、当「市民の会」では去る1/25に実施した「跡地利用に関する懇談会」で参加者から出た意見を踏まえて、現在、会としてどのような提案をしていくのかを検討中である。近いうちに提案内容を公開する予定なので、もう少しお待ちいただきたい。

 以上に述べた駐車場に関する意見はあくまで筆者個人の意見であるが、この無料駐車場設置の提案についてはおおむね会の主要メンバーからの支持が得られているので、会としての提案の中に盛り込まれる見込みである。

/P太拝