「開かれた市政をつくる市民の会(鳥取市)」編集者ブログ

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コロナ、GoTo、菅総理(1)- 近隣各国との比較、GoToの影響 -

 既にコロナ感染の第三波に突入してしまったこともあり、久しぶりにコロナに関する話題を取り上げてみたい。

(1)コロナ感染状況 -近隣各国との比較-

 世界の感染者数は6600万人を既に超え、死者も150万人を超えた。2020年現在の世界人口は推定78億人とのことだから、既に世界中の人類の1%弱で感染が確認されたことになる。

 人口あたりの感染者の発生率は地域によって著しく異なり、我々が位置している東アジアは他の地域よりも感染率が大幅に低い。この原因については、東アジアに特有の遺伝子による体質の差によるとの説、或いは、この地域で既に流行したコロナウィルス類似の感染症によってできた抗体が感染を軽度に抑えているためとの説などがあるが、現段階ではまだその理由が明確になってはいない。

 欧米その他の地域よりも大幅に感染率が低いのは日本だけだとカン違いしてはいけない。

 以下、東アジアと東南アジアの九カ国に限定して国ごとの感染状況を比較してみたい。下の図-1は、人口百万人あたりの累積感染者数の推移を示している。この図の出典は、英国オックスフォード大学を拠点に世界各地の研究者が参加して運営されている民間団体の「Our World in Data」。この組織の財源は主として民間からの寄付金によっているとのこと。

 なお、以下の図の中の文字が小さくて読みにくい場合には、図をクリックしてください。もう少し大きめの図が別途表示されます。

(図-1)

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 12/4時点での人口百万人当りの累積感染者数は、フィリピン 3982、マレーシア 2170、インドネシア 2061、日本 1252、韓国 720、中国 65、タイ 58、台湾 29、ベトナム 14。感染者数が多い5カ国と、少ない4カ国とにはっきり分かれている。最大と最小の差は300倍近くにもなる。この差は、いったい 何に由来するのだろうか。


 日本と、日本よりも感染者数の少ない四カ国について、コロナ対策の内容を比較した表を試しに作ってみた。表-1として下に示す。

(表-1 下の図をクリックすると拡大された図が別途表示されます。)

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 中国については、政府発表情報以外の第三者による客観的な情報が得られないために除外した。この表の中の「入境規制開始時期」については、国によって公表されている情報量にかなり差があり、あまり正確ではないかもしれない。参考程度とされたい。なお、この表の作成には、主に以下のサイトからの情報を引用した。

 新型コロナウイルス関連情報 | 在タイ日本国大使館ウェブサイト (emb-japan.go.jp)

【タイのコロナ事情】緊急事態宣言から現在までのタイの現状|ライフデザインズ (life-designs.jp)

【緊急レポート】新型コロナ対策優等生といわれるベトナム。在住日本人から見たベトナム政府の対応はどうだったか? | 橘玲×ZAi ONLINE海外投資の歩き方 | ザイオンライン (diamond.jp)

韓国における新型コロナウイルスの感染状況・グラフ* (reuters.com)

 

  現在まで感染を抑え込めている国には、以下の共通した特徴がある。

 初期対応の早さ。ベトナムと台湾は早い段階で中国からの入境制限を実施。特に台湾については、初感染者が現れる三週間も前から準備を開始しており、その手際の良さには感嘆するしかない。


 スマホアプリを駆使しての感染経路確認、及び個々の個人への政府情報の確実な伝達。感染初期の段階では、韓国もその徹底した感染経路の把握が世界から称賛されていた。なお、表中には特に記載はしなかったが、タイのスマホ普及率は既にほぼ100%と言われており、その普及率は日本よりも高い。当然、同国でもスマホを利用しての対策が取られているようだ。

 この中で特に注目される国がタイである。特筆されるほどの政府対策も取らず、観光業がGDPの二割を占める観光大国だけあって入境規制を始めたのが三月下旬と遅かったにもかかわらず、いまだに台湾に匹敵するほどの低感染率にとどまっている。

 高温多湿であるほど飛沫が飛びにくくなり感染リスクは減るとはされているが、同じように熱帯に位置するフィリピンやマレーシアに比べて感染率が二けたも低いというのが何とも不思議だ。タイの状況をよく調べることで、感染回避のヒントが見えてくるのかもしれない。

 ベトナムは中国と同じく共産党一党独裁の国ではあるが、たまたま、約二年前にハノイを訪れた筆者自身の経験によれば、中国とはずいぶん違う雰囲気であった。一言でいえば、中国に比べて社会の雰囲気がずいぶんと「ゆるい」と感じた。

 ベトナムの、特に北部は父系社会的とは言われているが母系的要素もあり、権威的かつ厳密な父系社会である中国(孔子の数十代後の子孫が現代でも存在しているような国)とは雰囲気が全く違う。この「ゆるい一党独裁制」をもって、いかにしてコロナ感染を食い止めているのかという点については、実に興味深いものがある。

 いずれにしても、感染を抑え込めた国は経済的打撃も当然軽微である。東南アジアでは、唯一ベトナムだけが2020年のGDPがプラス成長になるものと予想されている。台湾と中国も、今年もプラス成長を維持する見込み。ただし、タイについては、外国人観光客の大幅減少の影響でマイナス6%程度になるとの予測である。

 さて、日本では、中国からの入境を全面禁止したのは4月になってからであった。明白な感染源であった湖北省からの入国を禁止したのも、春節(2000年は1/24~1/30)が終わった1/31になってからという情けなさであった。

 韓国のような感染経路の精密な追跡ができない日本では、国内に感染者がどんどん入ってしまった後で入境を禁止しても何の意味もない。さらに、検査数を大幅に増やすことも全く無いままで、感染者がどこにいるのかもほとんど把握できていなかった。

 現在では状況はさらに深刻化し、鳥取県のように今まで感染者が少なかった地域を除けば、感染経路の確認などはほぼ不可能な状態となってしまった。

 「国民の健康・安全よりも、五輪や観光業の方が大事」という安倍政権、さらに菅政権の姿勢にその根本原因があることは明白だろう。後で繰り返し指摘することになるが、この「観光重視に起因するコロナ感染の蔓延・悪化」こそが、日本のコロナ対策 (対策ですらないと思うが・・) における最大の特徴といってよいだろう。


 なお、今年十月時点での国際通貨基金(WEO)の予測では、2020年の日本のGDP成長率はマイナス5.3%になるだろうとのこと。日本貿易機構(JETRO)によれば、韓国はマイナス1%程度になるとの予想。


(2)「GO TO トラベル」の影響

 今年の夏の感染第二波の主な原因が、7/22の「GoToトラベル」の開始にあることは全くもって明白である。次に示す図-2は、日本と他の四カ国の累積感染者数の推移のグラフにGoToの開始時期を書き加えたものである。

 「GoTo トラベル」を開始したあたりからグラフの傾きが急峻になっている。8月に韓国の感染率を一気に追い越してからは、秋になっていったん傾きはゆるやかになったが、GoToに東京を追加してしばらくたってから、第二波よりもさらに傾きが急な第三波を迎えている。

(図-2)

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 最近の第三波による急増は、冬になったことで人が室内に集まるようになったこと、暖房によって乾燥した室内の空気では飛沫が遠くまで届くようになったこと等が主な理由だろう。世界各国の感染者数の推移を見ても、カナダ、アメリカ、ロシア、北欧など、北に位置する国ほど最近の増加が顕著である。一方、夏を迎えた南アフリカや南米では感染者数が減少してきている。

 累計死亡者の推移を図-3に示す。死亡者数の急増が、感染者数の急増よりも一、二週間遅れて始まっていることが判る。

(図-3)

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 現在の日本の死亡者数2436名(12/8時点)は、既にGoTo開始時の二倍を超えている。GoToのような「政府がわざわざ税金を使って感染者を国内にまき散らす」という愚か極まりない政策を取らなかった韓国と比べれば、本来は感染せずに済んだはずの人々がGoToによって余計に亡くなってしまったことは明らかだろう。この「死ななくてもよかったはずの数百人もの人々の、無念の死」の責任は、いったい誰にあるのか?

 

 次に国内各地の状況も見ておこう。まず、下の図-4に示した沖縄県の新規患者発生数の推移を見ていただきたい。その下には、沖縄県がまとめた今年の観光客の月別入りこみ数を図-5として棒グラフで示した。全都道府県について調べてはいないが、観光客数を月単位で集計して即公表しているのは、数県を調べた範囲では沖縄県だけであった。

(図-4)

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(図-5)

 

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 離島で観光業が主産業である沖縄県では、観光客の増減とコロナ感染者数の間には強い相関があるものと予想される。結果はまさにその通りで、GoToを開始して約二週間後には新規感染者のピークを迎えている。なお、図-5の「東京方面」というのは、必ずしも東京都民だけを意味しているわけではないことに注意されたい。

 WHOによれば、コロナに感染してから発症するまでの潜伏期間は人によって差があるが平均で5~6日とされており、発症してから保健所でコロナと確定されるまでにはさらに数日はかかる。GoTo開始の翌日の7/23からの四連休を利用して多くの観光客が夏の沖縄に殺到しただろうから、二週間後に感染のピークを迎えたというのは納得できる。

 他の県についても見ておこう。下の図-6は北海道の推移である。北海道は第一波の段階で既に医療機関がひっ迫した状況にあったが、現在はさらに緊急を要する事態となっている。北海道では夏の第二波の影響はあまり受けていないが、ここでも、7/22の1~2週間後に若干の感染増加が認められる。

(図-6)

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 我が鳥取県は、今のところは全国で一番感染者が少ない(12/8現在で66名)ので、その感染者発生の推移を見ても、あまり明確な傾向は読み取れない。代わりに感染者が677名と約10倍多い隣の岡山県の推移を調べてみたので、その結果を図-7に示す。

(図-7)

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 ここでも沖縄県と同様、GoTo開始後約1~2週間でピークを迎えている。注目されるのは、7/22以前からかなり感染者が増える傾向を見せていることだ。

 この点については当時もかなり問題視されていたようで、wikipedia の「GoTo キャンペーン」には次の記載がある。感染が再び増加傾向となり、各地の知事が不安を訴えていたにも関わらず、安倍総理と菅官房長官は当初の予定通り、7/22にGoToトラベルを開始したのである。

『 7月に入って以降、再び感染者が増加する傾向にあり、地方自治体の首長からは「Go To トラベルキャンペーン」は時期尚早ではないかとする意見が上がった。青森県むつ市の宮下宗一郎市長は、「旅行客により地元に感染者が増えれば人災だ」と発言。村井嘉浩宮城県知事は「宮城も東京が由来の感染者が多くなっている」とし、内堀雅雄福島県知事は「不安や懸念がある」と発言。
 また、移動や観光を控えるように知事らが呼びかける動きも発生した。例えば、7月2日から3日連続で1日あたりの東京都内の感染者数が100人を超えたことをうけ、7月4日に小池百合子東京都知事が都民に対し不要不急の都外への移動を自粛するよう要請した。大村秀章愛知県知事は首都圏への不要不急の移動を自粛するよう要請した。また、埼玉県知事は7月17日に「埼玉県民には観光の目的地として東京を選ぶことは避け、県内や近場にとどめてほしい。」と発言した。・・・』

 

 上に紹介した三つの道県に共通するのは、第一波と第二波の間は、ほとんど感染者が発生していなかったことだ。この状態がそのまま維持されていれば、決して今日のような状況にはならなかっただろう。

 一方、東京、大阪、愛知などの大都市圏では、この期間中も第一波よりも数が減ったとはいえ連続して感染が続いていた。要するに、各大都市がいったんコロナの培養池となり、GoTo開始によって、ここから日本列島全域に感染がバラまかれてしまったという構図である。各地の知事の不安が的中してしまったのである。

 なお、上に紹介した各県ごとの感染者数推移は、NHKのコロナ特設サイトに掲載されているグラフを加工して作成したもの。
 近い将来、菅総理の筆頭子分の山田真貴子内閣広報官が、NHKに「あのサイトを消去しろ」とまたしても電話をかけてくるのかもしれない。心配だ。

 さて、菅総理はあくまで「GoTo トラベル」を継続するつもりでいるらしい。先日は「来年六月までの延長」を公表、追加予算にさらに3000億円を使うとか。「愚の骨頂」とは、こんな時につかう言葉なのだろう。


 菅内閣が現在やっていることは、典型的な「マッチポンプ」政策だ。自分で「GoToマッチ」を擦っては国のあちこちにコロナ感染という火をつけておいて、次には巨額を投じたポンプを使ってその火を消すことで「どうだ、俺はすごいだろう」と自慢したがっているだけのように見える。昨日発表した「自衛隊看護士の応援要請」は小さなポンプ、追加経済対策の73兆円は巨大なポンプだ。「自分は全力投球で頑張っています」と見せたいのだろう。

 結局は、国中を焼け野原にしてしまうか、仮に消火できたとしても、後に残るのは破産寸前の国家財政だけなのではないか。「第二の敗戦」を経て日本が先進国の椅子から転げ落ちる日は、どうやら今までの予想よりもずいぶんと近くにありそうである。

/P太拝 

(次回は、菅総理が、これほど異常なまでにGoToに固執し続ける背景について書いてみたい。)

「追記」12/09

 本文中で紹介するつもりだったが、 一昨日に報道された次の記事を書き洩らしてしまったので、改めて紹介しておきます。既に読まれた方も多いでしょう。

「GoTo利用者は「発症」2倍 -トラベルで東大チームが初調査-」

 GoTo利用者には若い人が多いだろうから、利用者自身は臭覚・味覚異常程度で済んだのではないだろうか。都会から地方にGoToで行った利用者が地方の若者に感染させ、その若者がさらに高齢者に感染させるというパターンなのだろう。GoToの危険性が科学的にも裏付けられたことになりますね。

 もっとも、相手は科学的な真実などはどうでもよく、ただ自分が敵とみなす者を人事やカネの力で叩きつぶすことだけで出世してきた、陰湿極まりない人物だ。早速、報復として東大への来年度予算の削減を文科省に指示しているのかもしれない。今後の内閣のリアクションに注目したい。