「開かれた市政をつくる市民の会(鳥取市)」編集者ブログ

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毎日魚を食べていたら、コロナで死なずにすむ?

(1)コロナにかかっても死なないためのビタミン

 一週間ほど前、非常に注目すべき記事を読みました。
「新型コロナが重症化してしまう人に不足していた「ビタミン」の正体」

 そのビタミンの正体とは「ビタミンD」。この記事によると、今回の新型コロナウィルス covic-19によって感染者が死に至る原因の大半は、自身が持っている免疫システムの過剰反応にあるとのこと。ビタミンDはこの免疫システムの暴走、いわゆる「サイトカインストーム」を抑制する働きがあるのだそうです。

 上に紹介した記事の中では、アイルランドとスペインでの二つの症例結果を示しています。アイルランドの例では、感染したが軽症で済んだ21名と感染して重症化した12名(うち4名が死亡)の血中のビタミンD濃度を調べたところ、前者の平均値は後者よりも約6割も高かったとのこと。

 スペインの症例では、コロナに感染した76名を二グループに分けて、一方にはビタミンDを投与、多方には投与しませんでした。前者では50名中で1名のみが重症化してICU(集中治療室)に入室したのに対し、後者では26名のうちの半数の13名がICUに入室、最終的にはこの13名中で2名が死亡しています。
(なお、成人のビタミンDの摂取上限量は一日あたり0.1mg=100μgとされているので、この例の前者に対する初日投与量は、この値を一時的とはいえかなり超えています。二回目以降は上限値以下に抑えられています。)

 以上の調査結果からみて、ビタミンDを日頃から摂取していれば、またはコロナに感染してからでもビタミンDを投与すれば、重症化、さらには死亡する可能性を大幅に低下させることができそうです。ただし、ビタミンDをたくさん摂るほどコロナには感染しにくくなるかどうかはまだ不明なようです。現時点では、「感染しても重症化しにくくなる」というところまでしか判っていません。

 ビタミンDの効果については、一昨日公開の以下の記事でも触れていました。冬でも、日光を積極的に浴びて体内のビタミンDを増やすことが必要との内容です。なお、この記事の中でのサプリメント(錠剤)での摂取推奨量の2000IUは50μgに相当します。かなり高めの量となっていますが、日本政府が定めている摂取上限量100μgの半分程度です。

「なぜ冬にコロナは広がりやすいのか? 理由は「密閉」の他にも」

(2)ビタミンDを多く含む食品は?

 ビタミンDは食品から取ることもできますが、日光を浴びることで我々の皮膚で合成することもできるそうです。陽が当たらない冬の間とか、高齢者の場合には体内での合成ができにくくなるので、食品として摂る必要があります。ネットでビタミンDの多い食品を検索するといくらでも出てきます。例えば次のサイトなど。
「ビタミンDの多い食品・食べ物と含有量一覧」

 次のサイトは絵入りで分かりやすい。ビタミンD骨粗しょう症にも有効とのことなので積極的に摂りましょう。なお、上限値の一日100μgを超えて毎日過剰に摂り続けていると障害が出て来るとのことです。
「骨を強くする栄養素 ビタミンDを多く含む食品」

 ビタミンDと言えばすぐ干しシイタケを連想しますが、これらのサイトを見ると、魚介類を一日一回でも食べていれば、とりあえずは十分なようです。

 

(3)魚をたくさん食べる国ほどコロナでの死者は少ない?

 これらのデータを見ていると、「魚をたくさん食べている国ほど、コロナによる死者が少ないのでは」という疑問が当然浮かんできます。さっそく調べてみました。
 対象国としては、人口が三千万人以上の国、或いは地理的・食生活的に魚介類をたくさん摂っていそうな国を選びました。世界には小さな島国もたくさんありますが、小国では医療面のインフラが整っていないことが多いと予想されるため、医療水準の極端な差はなるべく避けたいと思って対象からは外しました。

 各国の一人当たりの魚介類摂取量のデータについては「国連FAO」のサイトから最新値(2016年版)を、コロナによる死亡者数については「Our World in Data」から12/11時点のデータを集めました。

 結果を下のグラフに示します。グラフをクリックすると拡大版が表示されます。

 地理的・遺伝的に似通った国々をひとつのグループとして、グルーブ間でも比較する必要があると思われたので、「東アジア」「西欧」「北中米」等、10のグループに分けて、同じグループの国を同じマーカーで表しました。

 欧州はグループ分けが難しいが、政治的に旧東側であった国を「東欧」、残りの国の中でデンマーク以北を「北欧」、ギリシャ、イタリア、スペイン、ポルトガルを「南欧」、残りを「西欧」としました。オセアニアは二カ国だけなので「東アジア」と同じグループに入れました。

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このグラフの下の方の、より死亡率の低い国々を拡大して下に示します。

http://sustainabletori.com/fish-2.jpg

 このグラフを作っているうちに重大なことに気づきました。今年の春ごろには「全国民にBCG接種を義務付けている国のコロナ患者数は、そうでない国の患者数よりも明らかに少ない」ということが話題になっていました。当ブログでも4/12付の記事等でこの話題を取り上げました。

 旧東欧以外の多くの欧州諸国、北米、オセアニアでは、かってはBCG接種 (昔の呼び方では、ツベルクリン) を全国民に対して行っていたものの、1960年代以降は順次撤廃。現在は、結核に感染する危険性が高い子供や希望者のみに接種しているようです。その他のアジア、アフリカ、中南米の国では若干の例外を除いて全国民に対して幼児期に接種をすることになっているはずです。

 上の二つのグラフで「全国民に対してBCG接種を義務付けてはいない国」を赤い丸で囲むと、その大半が死亡率の高い領域にあります。この赤い丸をつけた国を除いてBCG接種を義務付けている国だけに限定してみると、ポルトガルとペルーを除けば、魚介類摂取量と死亡率の間には強い相関があることが読み取れます。

 ちょうど昨日公開された下の記事では、これらの二つのグループの間では死亡率は20倍もの差があると報じられていましたが、それを裏付ける結果です。上のグラフを見るともっと大きな差があるようにも見えます。

 下の記事の中の回復者の抗体保有率が高いという事実も、今後のワクチンの効力に直結する非常に重要なデータでしょう。

「BCG接種国は新型コロナの死亡者が20分の1 回復者の98%が抗体保有のデータも・・」
 さて、全体として見れば、やはり魚介類(魚+貝)をたくさん食べている国ほど死亡率が低い傾向が認められます。ただし、それ以上に目につくのは、地域間で極端な差があることです。上のBCG接種の有無以外の要因もかなりありそうです。

 特にアジア諸国の死亡率が低いことが目立ちます。イランとイラク以外のアジアの国は、その全てが死亡率が200以下。特に東アジア・オセアニアに限れば、欧米に比べればほとんどゼロに等しい。やはり遺伝的・体質的要素の影響は大きいように思います。BCG接種が義務付けられていず、かつ白人が多いオセアニアの二カ国については、島国で防疫措置が容易なこと、感染初期時の対応が優秀であったことが死亡率が低い理由でしょう。
 もう一つは気候の影響がありそうだということ。死亡率が高いのは、若干の例外はあるものの「寒くなる季節がある国」が大半です。室内感染機会の増加以外にも、冬季に浴びる日光量が少なくてビタミンD不足を招いていることが死亡率の増加につながっている可能性が考えられます。

以下、グループ別に少し詳しく見ていきます。

① 北欧五カ国

 このグループでは死亡率と魚介類摂取量との相関がかなり明瞭に読み取れます。例外はスウェーデンですが、ごく最近までマスクもしないで感染前と同じ生活をしていた特異な国なので、この結果は当然という気もします。いくら魚を食べていても、マスクすらしないのでは、結果的に死者が増えるのも仕方がないというところでしょうか。

② 南欧四カ国

 BCG接種を義務化しているポルトガルギリシャは死亡率が比較的低くなっています。魚やオリーブオイルをふんだんに使った「地中海料理」は一般的には健康によいはずですが、コロナに関しては他の欧米諸国との違いが明確ではなく、むしろ高め気味です。感染初期時に医療崩壊が真っ先に起こったのがイタリアとスペインなので、その影響なのかもしれません。一応は西欧に分類したフランスですが、ラテン系の国で南欧的な要素も多いせいなのか、イタリア・スペインと似た位置にあります。

③ 東アジア・オセアニア

 中国、台湾、ベトナムが死亡率がほぼゼロ(中国とベトナムでは政府発表以外の報道が許されないので、その数字の信頼性には疑問があるが、少なくとも公表値より何倍もの多くの死者が出ていることはないはず。出ていれば、今頃はもっと社会が混乱しているはず。)なのは、感染初期時の対応が迅速であったためと言ってよいでしょう。

 タイの死亡率がほぼゼロなのは、先の12/9付けの記事でも書いたようにその理由がよくわかりません。タイとベトナムに挟まれた国であるカンボジアラオスについては、死亡率が公表されてはいないものの、その100万人あたりの感染者数はカンボジアが21、ラオスが5と極めて少なく、この両国も死亡率はほぼゼロとみてよいでしょう。ちなみにベトナムの百万人当たりの感染者数は14、タイは60、日本は1386 (12/11時点)。

 ベトナムラオスカンボジアの国民は主としてオーストロアジア語族からなり、遺伝的・体質的にはかなり似通っているはずです。初期対応がかならずしも優秀とは言えなかった国が多いこの地域の感染率・死亡率が著しく低い理由の解明は今後の課題でしょう。

 以上の国を除いた残りのマレーシア、韓国、ミャンマー、日本、インドネシア、フィリピンの六カ国については、魚介類摂取量と死亡率の相関がかなり明瞭に見えています。いずれも政府のコロナ対応は程度の差はあれかなり泥縄的で、その政策レベルも大体似たような位置にあったようです。

④ アフリカ

 アフリカ諸国の大半で死亡率がほぼゼロであり、魚食との関係はよくわかりません。ただし、ヨーロッパに近い地中海沿いの三か国と南端の南アフリカでは、かなりの値の死亡率となっています。

 他の地域と共通する問題点として、「政府の公表値が死亡者の死因を正確に分析したうえで集計されているのか」という疑問点が挙げられます。第三者が現地に行って直接調査することができない現状では、現地政府の公表値をそのまま使うしかありません。今後、事態が落ち着いてきた段階で、医療インフラがぜい弱である国の数字が大きく書き換えられる可能性があります。アフリカの多くの国については、現時点では判断を保留しておいた方がよいでしょう。

⑤ その他地域

 上のアフリカの所で挙げた「政府公表値の正確性」については、他の地域でも同じことが言えます。死因を判定できる医療機関どころか、内戦や紛争で政府機関さえもまともに機能していない国では、公表される死亡率が総じて低い傾向があります。

 例えば、世界最貧国の一つとされるハイチの死亡率は20.4、ベネズエラ34.4、シリア33.8、ソマリアが7.8、等々。いずれも日本の19.3と同程度の値です。これらの国に対する判断も保留して置いた方が無難でしょう。

 以上に挙げたグラフのデータ一覧表は、ここをクリックすると画像として現れます。ご参考まで。

 さて、結論として言えることは、やはり「コロナ重症化を避けるためには、魚を積極的に食べた方がよい。また冬の間も、できるだけ日光を浴びた方がよい。」ということ。魚ばかりを過剰に食べる必要はないが、今まで日々ほとんど魚を食べていなかった人は、一日にしらす干し大さじ二杯程度もよいから毎日食べておいたほうがよいでしょう。

 ただし、「俺は魚をたっぷり食べているから、コロナにかかっても絶対に死なない」と自信満々になって、マスクを外してあちこち歩き回るのは、行く先々がスウェーデンみたいなことになるから絶対にやめるべきでしょう。感染している本人が死ぬどころか無症状のままでも、他の人に感染させて死なせるリスクは十分にあるのですから。

/P太拝

 追記:「世界で一番魚を多く食べるのは日本人」というのが未だに日本国内の常識ですが、実態は上に示した通りで、既にマレーシアや韓国の方が日本よりもニ、三割も多く消費しています。一般的には、国の経済発展に伴って健康に良いといわれている魚の消費量が急速に伸びる傾向があり、世界的にみれば水産業は成長産業、特に養殖業の伸びは著しいようです。

 このような中で、日本だけが魚の消費量が急減しており、ピークの1988年には一人当たり71.9kgであった年間消費量が、2016年には45.3kgとピーク時からは37%も低下してしまいました。国の勢いの低下を示しているようで、何だか寂しいものがあります。