「開かれた市政をつくる市民の会(鳥取市)」編集者ブログ

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鳥取市の大規模風力発電事業の問題点(2)  -予定地の現状-

前回からの続きです。

(3)風車建設予定地では林道沿いに無数の崩落

かなり暖かい日が続いた先週。そろそろ山の雪も溶けた頃と思い、初めて風車の建設予定地を訪れてみました。訪れた場所は明治地区の松上から東郷地区の高路にかけての林道。風車の誘致に一番積極的なのが高路集落との報道があり、まずその周辺を見たいと思ったからです。現地に行ってみたら、この林道の周辺も脆くて崩れやすい風化花崗岩からなる真砂土地帯であることが判りました。

下の地図(図-1)中の赤い丸で示した山中をクネクネとうねっている道路がその林道です。

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なお、地図の中央やや左の上下に走っている直線は中国電力の高圧線。風車の建設予定地は、この高圧線の右側に沿って両方の谷の中間を上下に走る稜線上となっています。業者が高圧線に接続しやすい場所を風車予定地として選定していることがよく判ります。

以下、現地を見ての感想です。

「松上の郵便局を過ぎてからすぐに左折してこの林道に入り、しばらくは杉林や雑木林の中を行く。雪は所々の道路脇に残ってはいるが、車の通行の障害となるほどではない。

少し登ったあたりから、道路上に落ちたり倒れかかったりした倒木が次々と現れた。数日前に誰かが切っておいてくれたので無事に通過できたが、そうでなかったら、ノコギリを持って来なかった自分は最初の一本目で引き返すしかなかった。

稜線の近くまで上がると道の山側沿いの崖がくずれているのが目につくようになってきた。撮影した写真のいくつかを下に示す。

 

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試しに、崖の下に落ちていた岩(下の写真左)を拾い、腰の高さからアスファルト舗装の上に自然落下させたら、下の写真右に見るように簡単に砕けてしまった。一応は岩の形をしてはいるものの、風化した花崗岩とはずいぶん脆いものであることを実感する。

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稜線に沿って北に林道を進む。稜線に近いせいなのか、ずいぶん乾燥した林だと感じた。土壌の保水力も乏しいのだろう。右手の山側からは無数の崩落と路上の落石。一方、左の谷側には大きなコンクリートブロックを何重にも積んで路肩が作られ、その上に設置されたガードレールもまだ壊れてはいないので安心感がある。路上の落石を慎重に避けながら運転しなければならないものの、車を走らせていてもそう危険は感じない。

しかし、それも税金が原資の公共事業で整備した公共道路だからこそであり、営利目的の民間企業が風車の建設と管理用に稜線に沿って作った道路には、十分な路肩整備どころか舗装すらも無い可能性が高い。その結果、大雨が降るたびに路肩から大量の土砂が谷や山腹に流出すると予想される。この地域の稜線上に道路を張り巡らすことは、鳥取市の防災上の致命傷となりかねない。

この林道沿いの森の現状について言えば、樹種の大半が生育が劣るか既に枯れてしまった松であり、松を置き換えつつある広葉常緑樹も生育が悪く高木はめったに見ない。おそらく保水力と栄養分が少ない真砂土が土壌の大半を占め、かつ、その土壌の厚みがかなり薄いためだろう。ここに杉やヒノキを植林しても、十分に育つとはとても思えない。

この地域の山々は当面の開発は避けて現状のまま防災保安林として保全し、土壌の蓄積を図って将来の林産資源の復活に期待するのが最善の策ではないかと思う。下手に開発に着手してしまえば、土砂の流出を加速させて下流の水害危険性を高める結果となるだろう。

さて、有富川沿いの東郷地区の谷を見下ろす地点まで来て、後は高路の集落まで一気に坂を下る。この坂の途中の道路沿いでも、少なくとも六カ所以上で崩落していた。一例を下の写真に示す。

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稜線付近の崩落地よりもこの付近の崩落の方が粒子が細かく、この写真に見るように道路沿いでは既に砂状になって堆積していた。全部で約7km長の林道を通ったが、確認した崩落地の数は実に数十カ所を数えた。要するに、この付近の山の土質は既にボロボロの状態にあると言ってよい。」

以上、実際に現場を見て真砂土地帯の崩落のすさまじさを実感した次第です。

なお、先回の記事の図-7と図-9では有富川沿いの真砂土地帯は「新田集落から北」としていましたが、今回の林道の実際の通行で「高路から北」であることを確認しました。元々の資料も、よく見ると「高路から北」でした。筆者の勘違いでありお詫びします。先回の記事中の図も訂正しておきました。

ちなみに、先回の記事で紹介した三重県青山高原の風車管理道路での崩落の実例ですが、この青山高原も真砂土地帯にあることが確認できました。詳しくは次のサイト中の地質図を見てください。青山高原は地質図中に黄色で示された「花崗岩質岩 領家変性帯」の中にあります。
「森林作業道と地域の地質 三重県」

鳥取市南西部のこの真砂土地帯に当初計画通りに数多くの風車を建設した場合、将来的には、現在の三重県青山高原と同様に多数の崩落が発生する可能性が高いものと予想します。

次回は、予定地周辺の住民にとっては特に関心が高い「風車の騒音問題」を取り上げる予定です。

/P太拝