「開かれた市政をつくる市民の会(鳥取市)」編集者ブログ

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鳥取市の大規模風力発電事業の問題点(3)  -風車騒音による健康被害の実態-

前回からの続きです。以下に示す図や表は、クリックすることで拡大できます。

(注:当初、3/19にこの三回目の記事をアップしましたが、本日4/4に筆者の操作ミスでうっかりと記事を消してしまいました。元の原稿を頼りに再度アップしましたが、細かな点では当初のバージョンと違っているかもしれません。申し訳ありません。)

 

(1)鳥取県内の風車が発生する騒音のレベル

全国各地の風力発電所から発生する騒音に対する住民からの苦情は年々増加しているようだが、まずは鳥取県内の状況について確認しておきたい。県内各地の風車から出る騒音と近隣住民からの苦情をまとめた文献としては、鳥取環境大学のグループが2012年に公表した下記の文献がある。現在から十年近くも前の論文だが、風車騒音と周辺住民からの苦情とをまとめて論じた文献は現在に至るまで希少であり、その点ではもっと高く評価されてよい内容であると思う。

「鳥取県における発電用風車の騒音に係る調査報告」
内容の詳細は本文を読んでいただきたいが、以下はその概要について。

① 鳥取県内の発電用風車は調査した2011年時点で41基。(下記の表-1)うち40基について、風車からの距離を変えながら発生する騒音の音圧を測定した。

(なお、その後に県内で新設された発電用風車は無く、現時点での県内風車数は40基である。2018年に湯梨浜町の一基が解体・撤去された。撤去費用は予算額で約3500万円、決算額は不明。また、大山、名和、中山、東伯の四発電所については、現在は日本風力開発(株)が運営会社となっている。)

表-1

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② 各風車から半径500m以内にある民家・事業所645戸にアンケート用紙を配布又は送付し、風車に対する意見の記入を依頼した。回収できたのは445戸分、回収率は68%。アンケートの集計結果を表-2に示す。苦情率は0%から44%までと発電所によって大差がある。またあらかじめ設定した各苦情項目に対する苦情肯定件数を図-1に示す。

表-2

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図-1

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図-1の内容がやや見づらいので、多い順に以下にあらためて記しておこう。振動に関する苦情が、35/127=27.6%もあることに注目されたい。

・振動感がある。                  25
・よく眠れない。                  19
・イライラする。                  14
・頭の上に違和感。                 11
・集中力の低下。音、振動が続いている感じがする。 各10
・ストレスや不安。                  8
・頭痛。耳の痛み、不快感。             各7
・肩の凝りが激しい。血圧上昇。耳鳴りがやまない。  各5
・胃のむかつき、吐き気。               1     計127件

③ 風車に対する自由な意見も求めている。否定的な意見の中で多かったのは、「風車への落雷が不安」が26、「回転時の影、光が気になる」が24。

④ 風車から発生する音の圧力(音圧)の周波数測定を実施。下の図-2がその測定結果であり、P特性は補正しない本来の測定値のデータ、A特性は人間の可聴感度に合わせて測定値を補正したデータ、図の一番右の青い丸はP特性を全周波数についてエネルギー的に積算したパワーレベル値、赤い丸は同じくA特性について積算したパワーレベル値である。

図-2

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(以下は筆者による補足:
 音圧の単位dB(デシベル)は、音圧が10倍になるごとに20ずつ増加する。音の持つエネルギーについては、エネルギーが10倍になるごとにdBは10ずつ上がる。図-2の青丸と赤丸の差は26dBあり、エネルギーの倍率に換算すると、P特性による音のエネルギーはA特性のそれの178倍にもなる。

しかし、環境省が現在示している風力発電に関する指針によると、「風車騒音による健康被害は、主として人間の可聴周波数領域(20Hz以上)での騒音により発生する」とされており、A特性が基準値以下でさえあれば、風車による騒音は健康被害の原因にはならないとしている。P特性の値の大小についてはほとんど考慮されていない。全国各地での風車騒音による健康被害訴訟では今までは被害者側が全て敗訴しているようだが、この環境省の指針が裁判所の判断に大きく影響しているものと推測される。
現実には、上の図-1に挙げたような健康被害の症状の大半が低周波振動によって発生していることはもはや公知であり、図-2の左側の低周波領域のP特性とA特性の差の部分が健康被害の主因であると考えられる。この環境大の文献の冒頭でも、「A特性のみを考慮し、超低周波音、低周波音を無視している」ことへの疑念が読み取れるように思う。この点については次回で詳しく述べる予定。
なお、図-2のP特性では3Hz付近にピークがあるが、これは三枚ある羽根が支持塔の前を通過するたびに発生する超低周波音を示していると推測される。その周波数は一秒間に羽根が塔の前を通過する回数に等しい。)

 

(2)鳥取市南部で計画中の国内最大級の4500kWの風車の騒音は?

上の表-1に示したように、現在、鳥取県内で稼働している風車の発電容量は最大でも1500kW、鳥取市南部で現在計画中の風車の発電容量はその三倍の4500kWにもなる。この風車から発生する騒音はいったいどの程度になるのだろうか。

現在世界中で稼働している大規模な風車の大半が回転軸が水平で三枚羽のプロペラ風車であり、規模が多少変わっても発電効率は大きくは変化しないものと予想される。騒音発生によるエネルギー損失は風車全体のエネルギー損失の一部であり、騒音の持つエネルギーも風車の発電容量におおむね比例して増加するだろう。

下の図-3は環境省による文献(公害等調整機関紙「ちょうせい」2019年 第99号中の記事)に載っていたグラフを加工したものである。

図-3

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風車の製造業者17社が提供した風車定格容量と一定条件下(おそらく風車にかなり近い距離)で測定したA特性騒音との関係をプロットしている。元のグラフから個別データを拾い、エクセルに移植して線形近似の青い点線を引いた。縦軸は音波のパワーレベルをdBの対数表示から線形表示に換算した。騒音値100dBを相対値で100とみなした。

元のグラフには3000kWまでのデータしかなかったので、それから上は点線を外挿した。定格容量にほぼ比例して騒音のパワーも増えている。結果として、4500kWでのA特性騒音パワーレベルは1500kWのそれの約三倍になるとの結論を得た。

(注:3/19にアップしたバージョンでは縦軸はdB表示としていたが、横軸が線形、縦軸が対数表示では問題があると思いグラフを作りなおした。出力にほぼ比例して騒音パワーレベルが増加するという結果には変わりがなかった。)

では、4500kWの風車の場合、騒音の到達距離はどこまで伸びるのだろうか。風車の近くで風車からの音波の大半が空中を経由してやってくる場合には、音波は球面波となるので、音波が運ぶエネルギーは途中の損失を無視すれば距離の二乗に反比例して減衰する。その様子は図-3と同じ環境省の文献に載っている図で見ることが出来る(図-4)。

図-4

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縦軸は音波が運ぶエネルギーである音のパワーレベルを示す。図中の赤い線は距離の二乗に反比例して減衰するカーブであり、風車からの距離が倍になるごとに6dB下がるが、各距離における平均値を示す赤い点もほぼこの赤い線の上にある。従って、音のパワーレベルは予想通りに距離の二乗に反比例して減衰するとみてよい。

下の図-5には別のデータを示す。これは淡路島の風車について大学関係者グループが測定したもので、定格2500kWの風車から距離を変えて測定した結果である。

図-5

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このグラフでは横軸の距離の目盛りが対数表示になっているために測定値が直線状になっているが、この測定結果でも距離が二倍になるごとに6dB下がっており、パワーレベルは距離の二乗に反比例して減衰するとみなしてよい。なお、これら二つの図ののデータはいずれもA特性で測定されており、P特性で測定されたデータではない。

以上のデータから、以下のような推論が可能だろう。

① 風車から500m離れた地点での4500kW風車の音波のエネルギーは1500kW風車の三倍。
② 音波のエネルギーはほぼ距離の二乗に反比例して減衰するとみなしてよい。その場合、1500kWの風車の500m離れた地点で得られる音圧と同じ値は、4500kWの風車では500mの√3=1.732倍の866m離れた地点でようやく得られることになる。
③ 4500kWの風車から約900m以内の集落では、上の環境大の調査結果と同様に、集落の半分近くの住民からクレームが来る可能性が考えられる。

 

(3)風車騒音に対する地形の影響

現在までに鳥取県内に設置されている風車は、そのほぼ全てが海岸近くの平坦地、またはなだらかな丘陵地帯に位置している。今回の計画のように風車基部と周辺集落との標高差が数百mに及ぶようなケースは、定格容量が一基あたり1000kWと小規模で周囲に民家がない鳥取市空山の県営放牧場発電所を除けば、県内では前例が無い。

参考のために、今回計画での高路周辺の地形と(毎回、高路を引き合いに出して申し訳ないが・・)、環境大の調査対象の一つである東伯発電所の地形を比較してみよう。この東伯発電所は、鳥取市空山の発電所を除いた発電所の中では最も内陸部に位置している。また苦情率44%と最も苦情が多い発電所でもある。

下の図-6に国土地理院のサイトから入手した高路周辺の地図を示す。風車の位置としては、とりあえずは、集落の西側の谷を登りつめた明治谷との間の稜線上に設置するものと仮定した。風車と集落との間の距離は約1200m、風車と集落とを直線で結びその間の地形の断面図を図中の右側に示した。国土地理院の地図サイトでは、右上にある「ツール」の中の「断面図」の機能を使うと、任意の二点間を結ぶ直線に沿った地形断面図を簡単に得ることができる。

図-6

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同様にして、下の図-7には環境大の文献の末尾の東伯発電所でNo.21と表示されている風車(赤丸で表示)周辺の地図と、風車とその近くの西高尾集落の間の断面図を示す。この集落では、風車から450~500mの距離にある10戸のうちの4戸が風車による健康被害を訴えている。参考のために環境大文献から当該箇所を切り抜いた図を図-8として示す。

図-7

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図-8

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地形の比較のために、水平・垂直の縮尺を揃えて両方の断面図を切り出して並べた比較図を図-9に示す。

図-9

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地形差を強調するために、高さ方向の縮尺を水平方向の六倍にしているが、それでも東伯町の方はほぼ平坦な地形といってよい。対して高路の場合には、まさに山間の集落そのものである。この断面図以外でも、高路では周囲のほぼ全方位に対して高さ300m程度の山々が連なっていて、開いているのは川の上流と下流方向だけであり、どこで叫んでもコダマが帰ってくるような地形である。この近くに風車を設置した場合には、周囲の山々からの反射波がかなり発生することは確実だろう。
なお、図-9中に示した風車の大きさは、その実際の大きさを反映したものである。東伯の風車は表-1に示すように最上部の高さが100m、ローター直径は70m。対して計画中の風車は高さ150m、ローター直径は130mとなる予定。

 以上に示したように、今回の風車計画は県内初となる山間部への設置であり、従来の経験はあまり参考にはならない。加えて従来の三倍もの発電容量を持つ巨大風車であり、慎重に対応しなければ設置後には大変なことになりかねない。

 

(4)低周波の音波は障害物の後ろに回り込みやすい

上の高路に関する図-6を見て「風車と集落との間に山が来るように風車位置を決めて集落に直接音波が来ないようにすれば、騒音は大きく減るのではないか」という人がいるかもしれない。確かに、我々が通常話している程度の周波数(数百Hz~数kHz)であれば、間に障害物を置けば音波はかなり減衰する。しかし、数Hz程度の低い周波数の音波(空気振動と言うほうが適切だろう)の場合には途中の障害物を回り込んでその背後に届いてしまう傾向が強い。
一般的に言って波動とは、それが音波であっても電波でも、その波長に近い大きさの物体を回り込んでさらに先に進むという性質がある。ビルの谷間でもAMラジオはよく聞こえるが、FMは聞こえにくいのはこのためだ。
気温20℃時の音速は約340mだから、周波数が1Hzの場合の音波の波長は340m、2Hzでは170m、10Hzでは34m。音波はこの波長に近い物体の後ろに簡単に回り込んでしまう。従って、仮に集落からは風車が山で隠れて見えない位置に風車を設置しても、騒音中の低い周波数分の空気振動はかなりの割合で集落に届くものと予想される。風車騒音では、上に示した図-2のP特性とA特性の差で示したように低周波音の持つエネルギーが大半なのである。

次の記事は防音材を扱う業者によるものであるが、参考とされたい。
「音の回析、音の入射角と反射角と、音溜まり」

この中に音が集まりやすい場所を指す「音溜まり」という業界用語があるが、周囲を山に囲まれた山間の集落は、まさにこの「音溜まり」に相当する。さらに、音、特に低周波音は地形に沿って曲がりながら進むので、谷沿いに音波が集まりやすい。集落は複数の谷の出合いに位置することが多いので、集落の中でも特に風車が位置する谷に近い家ほど低周波音を受けやすいだろう。
さらに問題なのは、色々な方向からの反射波が集まる場所では、音波が互いに干渉して音を強め合ったり弱め合ったりすることである。自分の家では騒音がうるさかったり家が揺れたりするが、隣りの家は何ともないというようなことが起こりかねない。一つの集落の中でも、騒音被害を受ける家と受けない家に分かれるだろうが、どの家がそうなるのかは実際に風車を建ててみなければ判らない。事前のシミュレーションをするには地形や前提条件が複雑すぎるし、事前診断を業者に要求しても業者は絶対に引き受けないだろう(後で補償問題につながりかねないから)。

(5)全国各地の風車騒音被害の実態

以下に全国各地で起こっている風車による健康被害の実態をいくつか紹介しておこう。まだ収集例は少ないが、今後さらに事例を集めて健康被害が起こりやすい条件を明らかにしていきたい。

(5-1)昨年11月の明治小講演会で紹介された事例

以下に、被害者の住所、風車定格容量、被害者宅と風車の間の距離、被害者年齢等とあわせて示す。

和歌山県由良町 1990kw 1.3km 女性 70才
「つらい時は、夜中に車に乗って数km離れたコンビニの駐車場まで行って寝る。」
「按摩さんは「ここに来ると、何か恐ろしいような異様な感覚がある」と言っていた。」(視覚障碍者は視覚以外に敏感)

三重県伊賀市上阿波汁付 2000kw 1.2km
「生まれた時から渓流のそばに住んでいて渓流や滝の音は気にならないが、風車の音はたまらん。」
「年取って耳は聞こえなくなってきたが、風車の音だけはこたえる。」(老人は低周波音により敏感)

三重県伊賀市上阿波汁付 2000kw
風車から最短で1kmに位置する同集落では、全8戸中5戸が風車による睡眠妨害を訴えている。夫婦で木造住宅に暮らす女性(70)は「グワン、グワンと風車の音がうるさくて睡眠薬を飲まないと眠れないときもある」と訴える。

和歌山県由良町 1.5km
「国道と線路の横に家があって、その音は気にならんし一時的やが、風車の音はずっとでつらい。」

和歌山県由良町 2km
「恐ろしい音が地面から柱を伝って入って来る。」

⑥オーストラリア ウォータールー 3000kw×37基
約3km離れている集落では、皆が自宅を出てゴーストタウンに。

(5-2)高知県在住の方のネット記事より収集 

高知県大月町 大洞山ウインドファーム(3,000kw×11基)の直近風車から1km弱

「2018年の3月に風車が運転を始めてからズンズンという地響きがし始め、頭が痛い、夜眠れないという症状が続いた。雨戸を閉めても室内で振動が反響する。はじめは隣の家のエアコンか船の音かと思っていた。ところが、隣の人が体調を崩して亡くなって、その後に風車の音だと気づいた。風車が建つ前は凪のときなど夜はとても静かだったのに、今は音がひどくて眠れない。住民が知らない間に風車が建ち、稼働が始まると超低周波音に苦しめられる。」

和歌山県由良町 2011年11月に、新たに直近風車700mで2,000kwが5基(由良風力発電所)建ち稼働開始 故谷口愛子さん

「天井からヒュー、ヒュー、壁はドン、ドン、ドン、ドン、畳の下からドッドッドッドの音がする。『これなんやろう?』と思うて、3日間怖くて、怖くて、眠れずに廊下を行ったり来たり、行ったり来たりしていました。そして、『あっ、もしかして、あの風車かわからん』と思って役場の参事に電話したのですが、『風車のことをいうのはあんただけ』と無視されました。
私は由良町に畑地区に50年住んで、みんな友達なので、34人に聞いたら、すごい被害を訴えてくれました。ひとりは『医者にレントゲンやMRIを撮ってもらい、何回も医者を替えたが、原因は分からない』と言われた。もうひとりは『体がこわばって靴下がはけない。耳が痛い、飛行機に乗った時みたい』と言います。私も耳がすごく痛かったのでお医者さんへ行ったら、『鼓膜が破れている』と言われました。」

③北海道 3,300kwが19基と1,500kwが2基の計21基の風車から5kmほど離れて住む N氏

「回転翼直径が148mもあるので屋根と屋根の間から羽が回転するのが見える。普通の日もあるが、朝、頭痛で目が覚めたり、2~3日具合が悪かったりする。体調が悪いと回転数を記録する。以前は近くに行っていたが、頭痛がひどく体調が悪くなることがはっきり分かってから、全く近づかない。1km以内はすぐ離れる。」

上の(5-1),(5-2)で紹介した和歌山県由良町三重県伊賀市高知県大月町の事例では、いずれも風車の設置場所が被害者宅よりも標高差にして200m~300m程度高く、自宅から風車を見上げる配置になっている。これは、風車が計画されている鳥取市南部の地形とよく似た配置である。

 

(5-3)風車と被害者宅間の距離に関する環境省の公表データ

 いったい、自分の家が風車から何km離れていれば健康被害を受けなくて済むのだろうか。鳥取県内の平坦地においては、風車容量が1500kWの場合に0.5kmでは距離が不足していることは環境大の調査で既に明らかになっている。環境省が風車と被害者間の距離に関するデータを上の(2)の図-3を引用したのと同じ文献に載せているので、下に図-10として示す。この図のデータは環境省が全国の自治体に問い合わせて、その回答を集計したもの。あくまで住民から自治体に苦情があった件数だけであり、住民から業者への苦情は含まれていない。

図-10

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この図の元々の表題「定格出力と最も近い苦情者宅までの距離」というのを読んで何か気になりませんか?『「最も近い苦情者」までの距離は判った。では、「最も遠い苦情者」までの距離はいくらなんだ』と聞きたくなりませんか?

環境省のこのグループが書いたほかの文献を読んでも同じ表現がしてあり、どうやら彼らには、被害者全体についての風車からの距離分布を知られたくない気配が濃厚である。
筆者は最初にこの図を見た時、「1500m離れていれば、ほぼ大丈夫なんだ」と思ってしまった。二回目に見直した時にその内容がおかしいことにやっと気づいたが、実際にはこの図の全ての点より上方にさらに多数の点が分布しているものと思われる。環境省は、風車から遠く離れたところにも被害者がいるという事実を極力隠したいのだろう。
彼らが意図的に元データの一部だけを公開するようにして、国民への印象操作を狙った可能性は高い。最近、永田町と霞が関で大流行している、官僚による「ご飯論法」の一変種なのかもしれない。

鳥取市青谷町でも別の業者による風力発電所建設計画が進行中であり、先月の2/14の日本海新聞の記事によると、2000~4000kWの風車を約12本建てる計画とのこと。同じ記事によると、青谷町養郷地区の区長氏は「地区からは風車は見えない位置だし、距離も500mは離れている」と心配ないような口ぶりらしい。この区長氏には、当ブログの内容をよく読んでいただきたいものである。

環境省は全然頼りになりそうもないが、風車建設を止めるのは簡単である。要するに、「風車建設のための土地を業者に貸さなければよい」だけのことだ。元々、電力を売って利益を得ることしか考えていない業者が、高圧線への距離と地形だけを見てこの地域を選定したに過ぎないのである。国や自治体による公共事業でもないし、民間企業からの一方的な土地借用の申し出に応じる義理も理由も無い。私利私欲だけで勝手に押しかけて来た連中のために、今までの平和で平穏な生活が乱されようとしているのだ。


彼らにとっては、この地域に住んでいる住民は邪魔な存在でしかない。土地の契約が完了するまでは殊勝な態度を取り続けるだろうが、風車が建って稼働し始めたら、騒音被害が起こっても後は知らぬ存ぜぬとなるに決まっている。風車による健康被害が全国各地で起こっているが、今までに被害者が補償された例はほぼ皆無だろう。風車の稼働停止を求める裁判も各地で起こったが、勝訴した例は一件もない。この点については、風車による健康被害を一貫して認めていない環境省の責任は極めて重大である。

「風車が建てられてしまったら、もうおしまい」というのが、全国各地の健康被害者が共通して語っていることだ。現在、業者に土地を貸したいと考えている人たちは、風車が建った後の全ての結果についても自身に責任があることを自覚した上で、今後行動するべきである。

次回では、低周波音による健康被害についてより詳しく取り上げる予定です。

/P太拝