「開かれた市政をつくる市民の会(鳥取市)」編集者ブログ

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コロナ敗戦の原因(1)

久しぶりにコロナ禍の問題を取りあげてみたいと思います。

(1)東京五輪との関係

先回の記事でも触れたように、筆者はこの世界的なパンデミックの渦中での東京五輪開催には反対だが、今の流れでは感染がよほどの事態とならない限り、このままズルズルと開催に至ることになるだろう。そして開催されれば国内メディアは五輪報道一色となることも確実だ。

何しろ主要メディアがそろってスポンサーとなっているのである。下の公式スポンサー一覧には、読売、朝日、日経、毎日、産経、北海道新聞の各紙、さらに、アリババ、インテル、グーグル、ヤフーなどのIT関連もそろって名を連ねている。投資した以上は売り上げを上げなければならない。テレビもネットも朝から晩まで五輪関係の報道ばかりとなる。その結果、忘却力にかけては世界最強の日本国民のこと、それなりに拍手を送ることになるだろう。総理の目論見どおりに内閣支持率も少しは上がるだろう。毎度おなじみのパターンである。

このスポンサー一覧を見ると、先日、五輪開催批判派を批判して逆に大炎上した竹中平蔵会長が率いるパソナもやっぱりスポンサーの一員であったことが判る。これ以外にも五輪競技を中継する各テレビ局も巨額の放映料をIOCに支払っているはずである。そもそも、日本の酷暑のピークである七月下旬に開催時期を決めたのも、IOCに8500億円もの巨額を支払って米国の五輪放映権を独占したNBCの意向によるものであったとのこと。巨大企業と政府とが「マネーマネーマネー」を追求し続けた結果、熱中症による死者が出る事態にもなりかねない。五輪が「世界最高の選手を決める場」だというのは、もはや過去の話だろう。
「東京五輪公式スポンサー 一覧」
「竹中平蔵氏、KY発言「世論が間違い」に医療関係者猛反発!」
「東京五輪、なぜ真夏に開催か 猛暑で懸念高まる」

日本人に特徴的な傾向なのだが、いったん方向が決まると、それがたとえ不合理な方向であっても、全員が雪崩を打つがごとく一斉にその方向に向かって走り出してしまい止まらなくなるという傾向がある。約90年前に関東軍が勝手に起こした満州事変は、陸軍中央の不拡大方針を無視してその範囲をズルズルと拡大した結果、満州国が成立。当初は事態の拡大に反対していた昭和天皇も、結局はその結果を追認した。この中国領土内での傀儡国家の建設によって国際的な批判を浴びた結果、国際連盟を脱退、宣戦布告なき日中戦争の勃発、そして太平洋戦争の開戦へと続き、日本は亡国の泥沼へと坂道を滑り落ちて行ったのである。
この日本民族に固有の「周りの流れには逆らわずに身をまかせる」「赤信号、みんなで渡れば、怖くない」という傾向は、現在も民族の精神的DNAとしてしっかりと継承され続けている。その端的な例が世界最悪の政府債務の対GDP比率だ。既に2012年の時点で先の戦争末期の1944年のそれを上回っており、今回のコロナ禍でさらに急増することは確実である。
この傾向は企業・団体のレベルでも日常的に観察される。近年では東芝の歴代トップによる長年の不正決算、日本を代表する大手メーカー各社による品質データの相次ぐ捏造などが挙げられる。組織を構成する個々の人間が「こんなことをやっていては、そのうちに破滅する」と思いながらも、全体の流れに異を唱えることもなくズルズルと引きずられ続け、ウソの上にウソを重ねていくのである。
コロナ禍での例としては、前政権による予告なしの突然の一斉休校や税金の無駄遣いに過ぎなかったアベノマスク配布などもその例だろう。いくら不合理かつ実効性のない政策であっても組織の末端にいる人間は従わざるを得ないが、トップのすぐそばにいる上層部の人間すらも、まともな議論をすることも無く、トップの非合理的判断に全く異を唱えようとしないのが日本的特徴である。「和をもって貴しとなす」という聖徳太子の有名な言葉も、こんな場面で使われるようでは実に困ったものだというほかはない。


今朝の報道によれば、昨日のG7で各国首脳は東京五輪の開催を支持したとのことだが、ワクチン接種率では日本を除くG7各国の大半が既に五割を超えていることを忘れてはならない。後でデータを示すが、少なくとも一回以上接種した住民の割合は、6/11時点では最低のフランスでも44%、最高のカナダは63%。日本は12%にすぎない。

各国は、数百人程度の選手・役員が日本から帰って来ても自国内の感染状況にはほとんど影響はないと踏んでいるのだろう。ここでは、とりあえずは初参加の日本の総理の顔を立てておこうというだけのことだ。一方で、日本は少なくとも数万人の選手・役員・報道陣を引き受けねばならず、彼らの滞在中の医療費や大会全体の防疫体制費用も負担しなければならないのである。

このまま五輪開催を強行(強行というよりも、「止める勇気が無いために流され続けて」と言う方が適切なのだろうが・・・)して、結果的にたいしたことが起こらなくても、世界は「日本は不合理な選択をあえてする理解不能な国」との印象を強めることになるだろう。まして五輪後に各国で再び感染拡大するような事態になれば、その非難が日本に集中することは避けられない。

各国政府からの非難はなくても、日本で感染した選手・役員が個人的に日本政府、東京都、JOCを相手として訴訟に訴えるケースも十分にあり得る。仮に誰一人感染しなかったとしても、選手・役員・報道陣からの、「コロナ禍の下、酷暑と会場とに順応する十分な準備期間も取れず、宿舎にずっとカンヅメのままで外食も観光もできず、観客・市民とも触れ合えなかった史上最低の五輪」、「酷暑と会場とに慣れた地元の日本選手だけが一方的に有利となった、アンフェア極まりない五輪」との評価を受けることは、開催前の現段階で既に確定的である。なんでこれが、「コロナに打ち勝ったことを示す平和と友好の祭典」なのだろうか?
さて、五輪に関係する話題だけで今回の記事を終えてもよいのかもしれないが、当ブログは筆者の主観だけではなく、現在起こっている事実を伝えることも主な目的としている。以下、世界のコロナ禍の現状についても触れておこう。

 

(2)世界のコロナ感染・ワクチン接種の現状

英国オックスフォード大学の研究者等によって運営されている「Our world in data」のコロナウィルスのサイトを久しぶりにのぞいてみた。このサイトのデータを引用している報道機関は多数あり、データの信頼性は世界的にもトップクラスと言ってよいようである。
最近の大きなトピックスが各国でのワクチン接種の進展であり、まずそのデータから紹介しよう。なお、以下のデータは全て6/11時点でのものである。

なお、このサイトのデータは毎日更新されているので、最新データを知りたい方は上のサイト中の該当する項目を探していただきたい。

下の図-1は国別の少なくとも一回以上接種を受けた住民の割合。

図-2は各国別の一回接種と二回接種の区分である。

(以下の図は、全て図をクリックすることで拡大される。)

この図にはイスラエル、チリ、バーレーン、モンゴルのような主要国とは言いがたい国も含まれているが、これはこのサイトが接種率の高い国から順に表示しているためであり、日本とその近隣の国をさらに加えて表示した。具体的な数字も必要と思われたので、6/11の直前の日のデータも図中に示した。

図-1 各国のワクチン接種率(累積)

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図-2 各国のワクチン接種率(接種完了+接種途中)

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図-1を見ると、フランス、シンガポールとブラジルの間に大きな差があることが判る。ワクチンの主要製造国が欧米に偏っていることを反映しているためか、一般的に欧州諸国の接種率が高い。

一方、昨年の段階では感染率が低かった東南アジアを含む東アジア諸国は、全体的に接種率が低迷している。ほぼ唯一の例外がモンゴルだが、これは同国が全方位外交を展開して、欧米、ロシア、中国から幅広くワクチンを積極的に集めた成果であるとされている。
「ワクチン供給の憂いなし...モンゴルの戦略的外交が導いた成功モデル」

日本は最近になってようやく接種数を増やしているが、韓国はそれ以上の勢いで接種数を増やしており、日本とは既に二倍近い差がついている。インドはワクチン生産国でもあるが、何しろ人口が14億人と巨大なためにまだ十分にワクチンが行きわたってはいないようだ。初期の感染防止対策が称賛されていたベトナム、タイ、台湾だが、感染対策に自信があり過ぎたためか現時点での接種率は低迷している。

次に、各国の死亡率を見ておこう。各国の検査体制が大きく異なるために感染者数では感染実態の比較が難しく、死亡者数の方が国別の感染まん延の差を把握しやすいものと予想される。

図-3は感染が発生して以来、現在までの百万人当たりの累積死亡数、

図-4は今年の3/1以降の各国の百万人当たりの一日当り死亡数、

図-5は図-4と同じ内容だが東アジアと南アジアだけに限定したもの。なお、図-4と図-5は七日間の平均値で表示している。

図-3 各国の死亡者数(百万人当たり、累積)

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図-4 各国の死亡者数(百万人当たり、一日当り)

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図-5 各国の死亡者数(百万人当たり、一日当り、東アジア+南アジアに限定)

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図-3を見ると、東南アジアを含む東アジアでは、最近は急増傾向にあるものの他の地域に比べればまだ累積の死亡者数は一桁程度少ないままにとどまっている。この東アジア特有の現象の原因は既にIPS細胞の山中教授によって「ファクターX」と呼ばれているが、その正体は現時点では不明のままである。

図-3と図-4ではハンガリーの死亡率が高いことが目を引くが、同国では二月からアルファ型(英国型)の変異株が急速に拡大したことが原因とのことである。図-1、図-2を見ると同国の現在の接種率は55%に達しており、感染拡大は沈静化しつつあるようだ。
「変異株拡大のハンガリー、新型コロナの死亡率が世界最高に」 

また図-1,2と図-3,4を見比べることで接種と死亡率低下の関係が見えてくる。接種の効果がはっきりとは見えない代表例がモンゴルとチリだ。チリでの理由は明らかではないが、同国で接種されているワクチンの大部分が中国製であり、このワクチンは二回接種後でないと十分に効力を発揮しないとの指摘もある。
「チリ首都ロックダウン ワクチン接種進んでも感染拡大」
「チリ、ワクチン接種率は高いのに感染急増 気の緩みなど原因か」

対照的に、ワクチン接種の進展と共に死亡率が大きく下がったのがイスラエル、英国、米国などである。

最後に、図-6として今年一月以降の各国の百万人当たりの一日の感染者数の推移を示しておこう。

図-6 各国の感染者数(百万人当たり、一日当り)

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この図で注目されるのは、いったんは落ち着いていた英国と南アフリカで約一か月前から感染者の増加が再び始まっていることである。南アフリカの状況は不明だが、ワクチン接種率でトップグループにいる英国の再増加の背景については、二日前に公開された次の記事で理解することが出来る。
「イギリスがデルタ株の感染再燃で正常化先送りなのに、G7参加の菅首相は「五輪開催」宣言」

この記事によると、英国での感染者再増加の理由は変異株であるデルタ株(インド株)の急増によるものであり、その感染力は従来株の2.8倍にもなるとのこと。さらに、ワクチンを二回接種完了した対象者でもデルタ株には約二割の人が感染するとのこと。従来株に対する二回接種完了者の感染確率は一割以下であったはずなので、ワクチン接書完了後の感染の危険性が変異株の出現で大幅に増していることになる。

今後、英国以外の他の国でも同じ傾向が確認されたならば、ワクチンの二回接種が完了しても完全に安全とは決して言えないことになる。また、「死亡率への影響が明らかになるまで 4 週間かかる」との記述があるので、図-4によれば現在の死亡率が日本よりも低い英国も、これから再び死亡率が増えることになるだろう。

図-6によるとインドの感染のピークは先月の五月半ば、マレーシアの感染ピークは今月の六月初め頃であったが、これらは共に変異株、特にデルタ株の急増によるものであったらしい。

日本国内でもデルタ株は週ごとに倍増しつつあり、来月には感染者の大半がデルタ株によるものになるとの予測が専門家の中では主流となっている。現在は第四波が収束しつつある段階だが、デルタ株による次の第五波に備えておかなければならない。

以上に述べたコロナに関する世界の現状をまとめると以下のようになるだろう。

① ワクチンはかなり有効だが、一回接種だけではまだ危険性は高い。二回接種を終えても絶対に感染しないとは言えず、特に変異株は従来株よりも接種完了者に対する感染力が高くなっている可能性が高い。接種を終えても、従来と同様に、マスク、消毒、手洗いの習慣は継続すべきだろう。
②未知の要因「ファクターX」があるから安全だろうと言われて来た東アジア各国でも感染増加が始まっている。主に変異株によるものとの見解が多い。日本でも同様に今後増加する可能性が高い。
③ 既に国民の半分近くが二回接種を終えた英国で感染の再拡大が始まり、同様の米国でも感染者数の減少が底打ちの状態に入った。まだ、大規模な人の移動を伴うイベントを解禁できるような状況ではない。

菅総理は既にG7の舞台で大見得を切ってしまったこともあり、よほどのことが起きない限りは、いまさら自分から五輪中止は言い出せないだろう。IOCやG7の開催支持を既に取り付けてしまったからには、小池知事にしても既に中止を言い出せる時期は過ぎてしまった。今後、我々は、自分が感染しないように今までと同様の自粛生活を送りながら、この二人の責任のなすり合い、泥仕合を見守るしかないのだろう。

この件を調べてみて良かったことと言えば、子供の頃に白黒テレビで見て興奮していた昔の五輪がいつの間にやら変質してしまい、今の五輪は「カネまみれの、フェイクな、インチキなお祭り」になってしまったとはっきり認識できたことだけだ。今年の梅雨から夏にかけては、ずいぶんと憂鬱な季節となりそうな予感がする。

/P太拝

・「追記」(6/15)  英国でのデルタ株による感染増加に関する記事が本日のNEWSWEEK日本版に載っていたので、追加で紹介しておきます。

上の「イギリスがデルタ株の感染再燃で・・」の記事とは別の研究機関によるものだが、全体としては大体同程度の評価結果となっています。ただし、この記事にはアストラゼネカワクチンの評価も載っており、ファイザー製等に比べれば有効性はかなり低いとのこと。

「コロナ変異株、デルタは入院リスクがアルファの2倍 ワクチンは依然有効」