「開かれた市政をつくる市民の会(鳥取市)」編集者ブログ

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コロナ敗戦の原因(4)

8/15(日)にかけての大雨、一応は降りやんだものの、明日はまた雨になりそうです。気象通報には十分に注意しましょう。

さて、既に二か月近くにわたって増加し続ける新型コロナ感染者数、いったいこの感染のピークはいつごろになるのでしょうか。今回は、目下、国内では最大の関心事であるに違いないこの問題をとりあげてみました。

(1)日本の感染者数の推移

下に昨年三月以降、今月8/10までの日本全国での新規患者発生率(新規患者数/日・百万人当たり)の推移を示す (Our World in Dataより。図上でのクリックで図は拡大、以下同様)。

図-1f:id:tottoriponta:20210817213150j:plain

今回が五回目のピークとなるが、少なくとも他の主要国にはこのように周期的に感染ピークが五回も発生している国はない。どうやらこれは日本だけに特有の現象らしい。


上の図-1の赤い矢印は東京都の「緊急事態宣言」の期間を示し、今回が四回目。東京都の近隣県などの「緊急事態宣言」や「蔓延防止等重点措置」も大体は同じ期間に発令されている。
図中のオレンジ色の矢印は「GO TO トラベル」と「ワクチン接種」の期間を示す。

東京都の緊急事態宣言の詳しい内容は下の表-1に示す。

表-1f:id:tottoriponta:20210817213415j:plain

以上のデータから以下のことが言えるだろう。

① 東京都が緊急事態宣言してから全国感染者数がピークとなるまでの日数は、第二期までは数日であったが、第三期には三週間弱、現在の第四期では宣言してから一か月以上経っても未だにピークが見えない。国民の自粛に頼っているだけではもはや効果が乏しい上に、デルタ変異株による感染率の増加が強く影響しているのだろう。

② 緊急事態宣言という名の「〇〇の一つ覚え」でしかない政策を四回も繰り返す日本のような国は他にはない。どの国でも政策効果が乏しくなれば、段階的により強い処置へと切り替えているのである。要するに、日本政府は完全な「前例踏襲主義」であり、彼らは少しでも冒険的な政策は極力避けようとしているように見える。

(前安倍政権が2013年に内閣人事局を創設し、当時の官房長官であった菅氏が各省幹部600名の人事権を掌握して以来、霞が関の役人は左遷を恐れて「出る杭」になることを極力回避するようになってしまった。その結果、政策面での各省からの新規アイデアの提案は皆無となってしまった。これは現在のスガーリン体制の必然的な結果に他ならない。その一方で、政権を担当する政治家は、次の選挙で有利になるようにこの騒ぎに乗じて自分の支持業界に税金をつぎ込むか、或いは業界の既得利益を守ったことで選挙時にその業界に恩に着せ見返りを求めることしか考えていない。今の政治家と役人は、国民を守ることよりも、自分の現在の地位を死守することに汲々とするばかりなのである。


③ 昨年七月には感染者が増加しているにも関わらず、「GO TO トラベル」という政府が税金を使ってわざわざ感染者を全国に広めるとい最悪手の政策を開始。国民の自主規制によるものなのか、いったんは感染が下がったものの、年末にかけての再急増であわててこの事業をストップした。この事業終了時の感染者数は開始時のそれの約六倍にまで増えてしまった。
コロナ騒動に便乗した有力政治家が自分の地盤とする観光・交通業界にさんざんに税金をつぎ込んだものの、結局は数兆円の国費と時間とを浪費しただけの結果に終わってしまったのである。この費用を医療体制の抜本的再編に使っていたならば、今日のような自宅待機感染者の激増は回避できただろう。国内旅行を認めるにしても、国費による無料PCR検査の陰性者だけに限定して認めていれば、経済面の落ち込みと感染拡大の防止を両立しながら避けられた可能性は高かっただろう。

「GO TO トラベル」事業とは、我が国のトップの無能とモラル面の退廃とを明瞭に示したイベントでしかなかったのである。

 

(2)感染者急増と東京五輪との関係

最近の感染者急増の推移をもう少し詳しく見てみよう。下に今年五月以降の日々の国内感染者数の七日前の同一曜日に対する増加率を示す。バラツキを平滑化するために、感染者数としては、当日と過去六日間(計七日間)の平均値を採用した。また全国のそれを青色マーク、東京都内のみの感染者数を赤色マークで示した。

図-2

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当然の話だが、感染者がピークに達した時点でこの増加率は100%となり、それ以降は100%以下へと下降する。8/14までのデータは東洋経済オンラインが日々公表している値を使用、一昨日8/15については昨日時点でのネット上の最新データを使用した。

この図-2からわかることは以下。

① 東京五輪開催中の期間の感染者急増が顕著である。7/22~7/25の四連休の影響で7/24から若干増加率が減少したが、その約一週間後の8/1前後には200%を越えている。この四連休の影響を相殺してみても、開催して二週間後の8/5前後の増加率は180%程度になっていたものと推測される。5/1~5/5の五連休があった五月上旬と比較してみていただきたい。明らかに開催直前の増加率の150%台よりも一段と増加している。


菅総理を筆頭に加藤官房長官や丸山五輪相などの閣僚は、そろって「五輪と今回の感染拡大とは関係ない」と声高に主張し続けてきたが、彼らはその根拠となるデータを何一つ示せていない。彼らは「自分の立場上、こうあって欲しい」という単なる個人的な願望を公共の場で叫んでいるにすぎない。

直接に五輪関係者に接触して感染した例はほとんどないにしても、五輪開催に浮かれて街に繰り出した人々がある程度いたことは事実だろう。「ステイホーム」を連日叫び続ける一方で政府が五輪を開催したのは、やはり政策的には全く矛盾しているというしかないのである。

さて、五輪と感染増の両方に関係する記事を以下に二件ほど紹介しておきたい。
「「ラムダ株を隠蔽」米メディアが報道…入国から17日後の判明に疑問噴出」

7/20、またはその直後にラムダ株への感染者の入国が判明した件を8/8の五輪閉会式直前の8/6に、それも公式発表ではなくて記者の質問に答える形で明かしたのでは、厚労省が五輪に配慮して事実を隠ぺいしたと疑われるのももっともなことである。ラムダ株の感染力はデルタ株に匹敵するとの報道もある。
「変異株「ラムダ株」が南米で猛威 「最凶」といわれるその感染力とは?」

もう一つは、8/8の閉会式終了後にテレビ朝日の社員が泥酔して階段から落ちたあの事件に関するもの。あの夜は都内のあちこちで同じような光景が繰り広げられていたそうである。ちょうど今頃は、当日大騒ぎしていたマスコミ関係者や海外を含む大会関係者の発症が始まったころに当たるのだが、はたしてその影響は如何・・。
「テレビ朝日“飲酒転落事故”に呆れた同情論「あの日はみんな、どんちゃん騒ぎだった」」

② 七月中旬からは、全国の増加率が東京都内の増加率を上回り続けている。感染が東京周辺にはとどまらず全国に拡大して収拾がつかなくなってしまっているのが現在の状況である。鳥取県内でも七月中旬から連日のように感染者が発生するようになった。東洋経済オンラインのページにある鳥取県内の感染者推移グラフを以下に図-3として転載しておきます。

図-3

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(3)変異種であるデルタ株の感染拡大はいつ終わるのか?

デルタ株の感染拡大は現在進行中の世界同時的な現象であるものの、国によってその進行程度には違いがあり、各国の状況を個別に見ていくことで今後の感染の推移を予測できるかもしれない。

次の図-4に、デルタ株の蔓延拡大が始まった今年2月初めから現在までの各国の新規患者発生率(新規患者数/日・百万人当たり)の推移を示す。ワクチン接種が進んでいる国として英国、米国、イスラエル、ドイツを、さらに日本の周辺地域としてアジア諸国を選んで計11カ国の推移を表示した。

図-4

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この図から各国の感染の直近のピークとその直前のボトム(感染者数最低の時点)を読み取って表にしたものを次に表-2として示す。

表-2

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インド、インドネシア、英国はいったんピーク値に達したあと、現時点では若干、または大幅に感染者が減少している。残りの日本を含む8カ国は現在も感染拡大が続きピークに達しているようには見えない。

以上のデータから言えることは次の三点である。

① ワクチン接種が進んでいる国でもデルタ株の蔓延は抑えきれてはいない。デルタ株の感染力が従来株の五倍程度と非常に高いことや、どの国でも接種率が六割を超えると接種スピードが鈍化していることが影響しているようだ。

以下、各国の実情を参考記事からの抜粋と共に見て行こう。菅総理は「ワクチン接種率が増えれば感染拡大は抑制できる」と繰り返してばかりいるが、各国の現状を見ればそれが不可能なことは明らかだ。このことだけを見ても、我が国のトップは正確な情報の収集に無関心であり、根拠のない自分の思い込みだけで国を運営しようていることが判る。

イスラエル: 直前の最低時点からは現在の感染者数は実に600倍以上に拡大、さらに増加する様相を見せている。以下の記事によれば、ワクチン接種後でも、マスク無しではデルタ株の感染拡大は制御不能であると言ってよいだろう。
「ワクチン接種の進展で感染者が減り、4月には屋外でのマスク着用を解除、6月にはワクチン接種の有無にかかわらず、屋内外の公共施設や商業施設を制限なく利用できるよう防疫指針を緩和。しかし、デルタ変異が拡散し、屋内外でのマスク着用が義務付けられ、ワクチン未接種者の公共施設の出入り制限など一部の防疫場措置を強化した。最近では、高齢者などを対象に、ワクチンの追加接種(ブースターショット)を実施している。」
「「接種模範国」イスラエルもデルタ変異で感染者急増...」より

英国: 集会等の規制は7/19に解除され飲食店や劇場などにも人が戻った。その後、感染者数は若干は下がったものの、現在も高止まりを続けている。感染者が一定程度出ても、ワクチン接種効果によって死者・重症者が抑えられればそれでよしとするのが英国流の考え方のようだ。英国と違って医療体制が硬直的で柔軟性を欠く日本では、このような政策は実現不可能だろう。
「専門家はデルタ株がワクチンを打った人にも感染するのは明らかと説明。ウイルスの変異が続く可能性があることも考慮すると、集団免疫が機能するのは難しいとの認識を示した。」
「対コロナ「集団免疫」困難 ワクチン効果は確実―規制解除の英国」より

米国: 各州ごとに政策自由度が大きい米国ではコロナ対応を一律には論じられないが、対策に積極的な州ではワクチン接種の義務化、コンサート参加時の陰性証明書の提出などの動きが広がっている。「一部地域や企業で新型コロナのワクチン接種を義務化する動きが加速。ニューヨーク市は16日から飲食店での店内飲食や映画館、劇場、スポーツジムなど屋内の公共施設でワクチン接種証明の提示を義務化。」
「ワクチン接種しないと仕事ができない? 反対派にとって肩身の狭い世の中に」より

② 既に広範囲に感染が広がってしまったインドでは、むしろ、その結果、感染者の減少が始まっているようだ。

インド: 五月の感染者数のピーク時には、現地からの報道によればコロナによる実際の死者は公式発表の数倍にのぼるはずと言われていた。当ブログの7/6付の記事で既に紹介したが、ムンバイでは今年の春の時点で18才以下の半分以上がおそらく過去の感染によって既に抗体を持っているとのこと。

インド政府の公式発表によると、現時点でのインドでの累計感染者数は国民の2.3%とのことだが(米国11.1%、英国9.3%、日本0.92%「 Our World in Data」より)、ムンバイの抗体保持率を見てもこの数字は信じがたい。既に国民の数割が感染済と推測され、インド国民は集団免疫を獲得しつつあるのではないだろうか。だとすれば、インドのコロナ感染が今後収束に向かうことはほぼ確実だろう。

 

③ ワクチン接種がなかなか進まず、感染による集団免疫も獲得できていない、日本を含むその他の国

マレーシア、インドネシア、タイなどの東南アジア諸国では初期段階では中国製のワクチン接種が進んだが、接種した医療関係者が感染する例が続出しており、最近では欧米製のワクチンへの切り替えが進んでいる。各国の接種率における中国製ワクチンの割合は不明だが、上記の表-2の接種率はかなり割り引いて見た方がよいだろう。
「感染者爆増の東南アジア各国で「中国製ワクチンの中身」に疑問噴出中」

インドネシアでの感染爆発は先月から話題になっていたが、現在は若干感染者数が下がっているようだ。しかし死者数については現時点では国別ではトップとのことで、根本的な収束はまだ相当先のようである。また、同国から日本への帰国者が相次いでいるが、「日本のコロナ対策のゆるさにショックを受けた」という人が多いようだ。

日本のインドネシア大使館のサイトによると、現在、インドネシア国内の飛行機による移動にはPCR検査または抗原検査の陰性証明書が必要とされるとのこと。「対策がゆるい、不十分」と国民から批判されているジョコ政権ですら既にこの程度の規制は行っているのである。
一方、わが日本では、いまだに何の証明書もなしに国民が自由に国内を移動できる。日本政府は「移動を控えて、自粛して」と壊れたテープのごとく繰り返すだけであり、相変わらず自ら画期的かつ具体的な行動を起こそうとはしていないのである。
「インドネシア コロナの死者10万人超える 自宅療養中の死亡多く」
「「未来から」日本へ感染爆発を警告 インドネシアの経験」

その他の東南アジアの国もインドネシアと似たような状況であり、デルタ株による感染率拡大に加えて、初期段階で欧米に比べて感染者が少なかったことから来る慢心、ワクチン接種初期段階での有効性の低い中国ワクチン採用の失敗、政府政策への不信感、等々により、現在は日本と同様に感染拡大が止められない状況となっている。各国別の詳しい状況についてはまだ調べきれていないので、今回は掲載を見送りたい。

以上、各国のデルタ株への対応を見てきたが、これといった対策を打ち出せている国は未だ存在していないように見える。ワクチン接種の回数をさらに三回まで増やすか(世界のワクチン格差を助長するだけ。自国のみにかまけて途上国での対策を放置していると、数年後には必ず「感染のお返し」というボールが返って来るはず。)、インドのように感染の自然拡大に任せて国民全体が集団免疫を獲得するまで待つか(集団免疫を獲得する過程での多数の死者の発生を容認できる政府は独裁政権か、或いは国民の知識レベルが極めて低い国の政権だけだろう。スエーデンは例外?)のどちらかしかない。

さて、デルタ株の出現に対抗してワクチン接種率をどこまで高めれば集団免疫を獲得できるのだろうか。数日前までは、ワクチン接種率が80%程度まで上がれば大丈夫だろうとの記事が多かったが、昨日付の記事によると、95%まで上げるべきとのこと。現実にはほぼ達成不可能な数字である。
「コロナに対する集団免疫は幻想か-接種率95%でも実現不可能との指摘」

デルタ株が蔓延している現在の状況では、従来株のようにマスクをして国民が自粛してさえいれば感染者はそのうちにガクンと減るということは期待できない。欧米やイスラエルの現状に見るように、ワクチン接種率が上がることで死者は従来よりは減るだろうが感染者は増加する。感染者の急増は医療体制を圧迫するだけでは済まず、自宅療養者が増えることで経済も回らなくなるのは昨年来経験してきたことだ。

上の図-4に見るように、ワクチン接種が進んだ英国では、感染者のピークを越えて以降も感染者は横ばいで推移している。インドネシアでは感染者のピーク後には漸減しているが、はたしてこれが真の値なのかという疑問もある。


日本の今回の感染増のピークは今後一、二週間のうちには来るのかもしれないが、他国の状況を見れば、ピークが過ぎたからといっても従来のパターンのように感染者数が急速に減るとは思えない。デルタ株の出現が従来のゲームのルールを破壊してしまったのである。筆者自身、今月初旬に二回目のワクチン接種を完了したのだが、当面はマスクを常備し、極力、人と会わないようにするという今までの生活パターンを続けるしかないだろうと思っている。

さて、本日の8/17に緊急事態宣言に新たに七府県を追加して従来の六都府県も含めて期限を9/12まで延長すること、新たに十県に「まん延防止等重点措置」を同じく9/12まで適用すること、等が菅総理から公表された。

これは従来の失敗に終わった対策の繰り返しでしかない。感染拡大防止に対しては何の効力ももたらさないだろう。例によって、いつもの「何かやっているふり」をするためのパフォーマンスに過ぎないのだろうと思う。

/P太拝