「開かれた市政をつくる市民の会(鳥取市)」編集者ブログ

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鳥取市の大規模風力発電事業の問題点(7)   -青谷町風力発電事業の現地を確認、青谷町編-

鳥取市内の二つの地域で現在計画中の大規模風力発電事業については、今年の春に六回のシリーズ記事でその問題点を指摘しました。二つの計画の中で、特に約5kmの範囲に12基もの風車を密集して設置することを計画している青谷町での計画については、周辺住民に対する超低周波騒音被害が極めて深刻になるものと予想されます。

青谷町の現地を実際に訪れてその地形や集落の現状を確認したいと思っていましたが、ようやく先月11月に風車設置予定地を訪れることが出来ました。以下、その報告と予想される健康被害の広がりについて述べます。

 

(1)風車設置予定地の現状

 青谷町での風車設置計画とその問題点については今年4/23の当ブログの記事で既に述べているが、改めてこの事業を計画している自然電力(株)(本社:福岡市)による計画案を示しておこう。

下の図-1に2017年に作成されたこの事業内容の当初案による風車の配置予定図を示す。なお、この図中の青い円は、特に超低周波音による健康被害が著しいと予想される風車からの距離が1km以内の領域を示す。

この図では青谷町と気高町の境界をなす丘陵上に12基(以下、北から順に仮番号No.1~12)、青谷町早牛の西の山地上に2基(北から順に仮番号No.-13,14)の合計14基を設置することになっている。事業概要には「定格出力2000~3000kWの風力発電機を最大15基程度設置」とも書いてある。

図-1の風車予定配置図(図はクリックで拡大、以下同様)

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今年2/14の日本海新聞の記事によると「定格出力2000~4000kwを約12基設置」と当初の計画内容が変更されている。とりあえずは図-1の通りに設置されることを想定して現地に行ってみた。国土地理院のサイトからダウンロードした予定地全体の地形図を図-2に示す。当初案で予定されていた設置位置を赤丸で示し、その中に各風車の仮番号を記入した。

 

図-2 青谷町風力発電事業 予定地全体の地形図

(下の図のクリックで別ウィンドウが開きます)

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なお、自然電力(株)の当初案では設置予定の2000kW風車の例として日立製作所製の高さ121mの風車を挙げていたが、今年5/12付の当ブログ記事の中で述べたように、日立は2019年1月に風車生産から撤退することを公式発表しており、現在、日本企業で1000kw以上の大型陸上風力発電機を生産しているメーカーは皆無。従って、鳥取市内の二つの地域に今後建てられる風車と風力発電機が全て外国製になることはもはや確実である。

さて、先月11月中旬の晴れた日、鳥取市方面から国道9号線の青谷の長尾鼻の坂道を登り切ってから左折、青谷町営グラウンドの脇を抜けて予定地の丘陵上の農道(図-1の中でクネクネとうねる黒い線)に入った。青谷町内の大半の地域については車で走ったことはあるが、この道に入るのは初めてだ。グラウンド付属の建物を過ぎると、後は雑木林とナシ園が混在する丘の上を道なりに曲がりながら進む。しばらく行くと三叉路に出た。「気高広域農道」の道路標識が掲げられている。


ここはNo.4の予定地のすぐ脇であり、図-2では赤丸の4の右に数字で147(標高を示す)とあるあたりである。下の図-3の写真に示したすぐ近くの小さな丘の上に、この地の標高に匹敵する約120m(2000kw)~約150m(4000kw)もの高さの風車が建つことになる。

車道の脇には下の右側の写真に示す古い道標が立っていた。左側は「左 蔵内道」と読めそうだが、右側は漢字が難しすぎてなんだかよく判らない。地図を見ると、この辺りは気高町会下から青谷町養郷に抜ける古い峠道の最高点に相当するらしい。右側には「右 養郷道」と書いてあるのだろうか?

図-3 風車No.4の予定地の丘と古い道標

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三叉路を右折して車道をさらに南下する。南下するにつれて前方に高く細い鉄塔が近づいて来た。これは現地の風況を観測・記録するための風況塔で、風車建設予定地には設置前に事業者がこのような塔を立てて一、二年観測し、現地の風力が十分で採算が採れるかどうかを判定するのである。図-4は塔の直下から撮ったこの風況塔の写真である。

図-4 風車No.5予定地のそばの風況塔

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現在のgoogle mapにはこの塔を建設するための周辺工事の様子が写っており、現時点の鳥取市周辺のgoogle mapは昨年秋ごろに撮影されたと推測されるので、この塔は今から一年ほど前に建てられたようである。この塔から道をはさんで反対側には風車No.5が建つ予定となっている。

さらに南下すると右側に蔵内川の谷間に下る道が分かれていた。後でこの道を下ることにしてそのまま進む。周囲はやや開けてナシ園や小さな畑が点在している。右に大きくカーブを切るあたりで中国電力の高圧線鉄塔の新設工事を行っていた。他の場所でも鉄塔更新工事を計画中なので、特にこの風力発電計画との関係はないのだろう。

さらに道沿いに南下、地形は平坦だが道路のすぐ西側に蔵内川の上流部が鋭く切れ込んでいる。道路の東側から気高町側を見下ろして見たかったが、東側に入る小道は立入禁止の表示があり、入ることをあきらめた。地図上には細かくうねった道が複数記されているが、何があるのかはよく判らない。

やがて周囲が開けてソバの実がついた畑が現れたと思うと、また三叉路に出た。気高町飯里と青谷町河原を結ぶ林道である。そのそばに昭和53年に補助金で建てられた「花き集荷施設」の看板がかかった建物があったが、既に使われていないようであった。地図には示されていないが、この辺りの地名を五本松と言うらしい。この付近の東側の丘の上には風車群の一番南に位置するNo.12が建てられる予定である。

今まで走って来た道を引き返して蔵内川の谷間を下る。それまでの道と打って変わって急こう配の下り道であった。まるで深い山の中の林道を下っているような感じで、青谷駅のすぐ近くにこんな急な坂道があるとは今まで知らなかった。急カーブの所で蔵内川にかかる橋を渡り、そこからは勾配も緩やかになって神社(月守神社と言うらしい)のそばの橋のたもとへと出た。

この風車予定地をひと通り見たあとでの感想を以下にまとめておこう。なお、当初計画では二基の風車が設置されることになる早牛地区の予定地も見ておきたかったが、時間の関係もあり行くのを断念した。

 

「予定地現場を見ての感想」

・予想していたよりも丘陵上の起伏が大きく、平坦地は少ない。風力発電の代わりに太陽光発電所としての利用が可能ではないかと思っていたが、現状の地形のままである程度広い面積が確保できそうなのは南端の五本松地区ぐらいだろう。

・丘陵上は雑木林が大半であり、その中にナシ園が点在している。梨の木は老齢木が多いように見え、現在、栽培が盛んにおこなわれているとは言いがたい。ナシ園での作業に向かうであろう軽トラ数台とすれ違ったが、乗っていたのはいずれも高齢者と見られる方々であった。

・丘陵上の車道(後で調べたら市道であった)は崖崩れ等の特に危険な個所はなく、今後もインフラとして使用可能だろう。ただし、蔵内に下る急傾斜の斜面沿いの道は、斜面が急であるがゆえに豪雨の際には土砂崩れの危険があるのではないか。この点については、そのほかの丘陵上から平地に下る林道についても同様だろう。

・以前、筆者には鳥取市から県中部まで毎週のように通っていた時期があったが、長尾鼻のトンネルを抜けるたびに青谷側と気高側で天候が明らかに変わることを何度も経験した。梅雨末期や台風による豪雨の際にはネットで雨雲レーダーの推移を見ていると、西から移動してきた雨雲が県境の三国山から長尾鼻の岬に至るまでの南北に伸びる山波に沿って停滞し続けるという現象をよく見かける。実際、この山波の直下に位置する鹿野町河内のアメダスの平年降雨量は県内での最大値を示している。

・風車の建設の際には、必ず風車の周囲の樹木を伐採する。そうしなければ、樹木が邪魔する分だけ風が弱まって売電できる電力量が減るからである。この青谷町東部の丘陵地のような多量降水地帯で山の木を広範囲に伐採することは保水力を低下させることにつながる。麓の河川の氾濫の危険性が一段と増す結果を招くだろう。

実際、今年7月の梅雨末期の豪雨の際には、蔵内川が流れ込む日置川が増水したために下流の善田地区で浸水被害が発生している。現時点でも、鳥取市に豪雨が襲来するたびに必ずと言ってよいほど浸水被害を受ける場所の一つが、日置川と勝部川の合流地点に近い青谷駅周辺地区なのである。
「浸水被害が相次ぐ 鹿野で24時間雨量285ミリ 鳥取」 

・全体的な結論としては、現在、この丘陵上の土地に経済的利用価値が乏しいのは事実である。しかし、だからと言ってこの丘陵上に巨大風車を林立させてよいかと言えば、否定的にならざるを得ない。否定する理由を以下に挙げる。

 

「この風力発電計画を否定すべき理由」

①まず第一に、この丘陵地とよく似た地形に風車を設置した結果、地元住民が深刻な健康被害を受けている事例が全国各地で既に発生している。しかもこの地に予定している風車の出力規模は、既に健康被害を住民に強いている既存風車の出力の最大で二倍にもなるのである。このままこの計画を実施すれば、青谷町と気高町鹿野町の風車周辺の集落住民の多くが深刻な健康被害を受けることになるものと予想される。


②第二に、直接の健康被害を受けないほどに距離が離れている住民に対しても、従来親しんできた美しい景観が損なわれることで、観光面等での損失が発生しかねないこと。


③第三には、既に上で指摘したように、防災面での危険性がさらに増す可能性が高いこと。


④第四には、将来、仮に事業者が破産した場合、契約終了した発電開始20年後に約束どおりに風車を撤去して更地に戻せるのかということ。国も自治体も財政は今後苦しくなるばかりであり、撤去費用は簡単には捻出できない。「カネは無い」と居直った業者が撤去せずに放置してしまえば、止まったままの風車が長いあいだ野ざらし状態となることになる。

 既に今年の5/12の記事で述べたが、日本での風力発電のコストは、それが地上でも洋上であっても、既に太陽光発電よりも明らかにコスト高である。風力発電を増やせば、その結果として我々消費者は太陽光で発電した電力よりも高い電力を買わされることになる。さらに、将来的に風力発電のコストが他の再生可能エネルギーのそれを逆転するほどにまで大きく下がる可能性は低い。

太陽光や水素その他の再生可能エネルギーについては、今後も技術革新による大幅な効率向上やコスト改善があり得るが、風力発電の技術は既に飽和段階にあり、今後の画期的な技術革新は期待できない。風力発電に残された技術的課題は、海外の環境への影響が少ない砂漠地帯などで風力で発電したエネルギーを、どうやって日本などの消費地まで運ぶのかという点くらいだろう。おまけに風車も発電機も全て海外から輸入することになるのだから、日本経済に与える効果はむしろマイナスなのではないか。

また、当面は風力発電への政府の補助があるのかも知れないが、今後二十年以内に日本政府の財政の方が先に破綻してしまう可能性は高いだろう。これらの背景を考えれば、風力発電に主力を置いている事業者が将来的に経営が苦しくなるのは、もはや必然的と言ってもよいだろう。

 

(2)風車設置後の蔵内地区の景観予想

実際に当初の計画通りに予定地に風車が建った場合、この地域の景観はどのように変わるのだろうか。現地を訪れた際にこの風車群の中ほどに位置する蔵内集落で撮影した写真に、想定される風車の予想配置を書き加えてみた。結果を図-5に示す。

撮影した場所は蔵内地区の一番北の端の日置川にかかる橋の上(後述の図-8の中の青い小さな〇で囲んだ所)であり、そこから南側の集落とそれを取り巻く丘陵、さらに西側にそびえる標高185mの舟山を撮影した。この写真に出力4000kw、高さ150m、ローター直径130mの風車を当初案の配置通りに書き加えた。

各風車の位置と高さ、撮影場所からの風車最高点までの仰角の算出方法については、次回の記事で予定している気高町側での景観予想の後で詳しく説明したい。カメラまたはスマホ、及び国土地理院の地図サイトにアクセスできるパソコンとエクセルがあれば、比較的容易に予想図が作成できるはずである。

 

図-5 風車設置後の蔵内地区の景観予想図

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以下、図-5の説明。

この橋の上からは南側にNo.6からNo.11までの6基の風車が見える。No.12は舟山の東斜面に隠れているが、蔵内集落の中からは見えるはずだ。この橋から各風車までの水平距離は、No.6が1.5km、No.7が1.77km等であり、No.11までは3.24kmある。

一番近いNo.6よりもNo.7の方が大きく見えるのは、No.6が丘陵上の気高町寄りの地点に立っているためで、No.6の全高の二割強の支柱下部は丘陵の西の端に隠れて見えない。一方、No.7は丘陵の西の端近くに立っており、隠れている部分は全高の一割弱である。No.11も同様に隠れている部分が全高の一割弱であるため、3km以上離れていてもかなり大きく見える。

高さが150mもあれば、遠くから見てもあまり小さくは見えない。この丘陵の標高は150~250m程度であるから、離れた位置から見れば、風車自体の高さと丘陵そのものの高さにあまり差は無いだろう。


注目されるのは集落の背後にある蔵内川が流れる谷の深さ、急峻さである。以前の記事(今年4/4付)で述べたように音は窪地に集まりやすい。そのような場所を指す「音溜まり」という言葉もあるほどだ。

例えば、津波が外洋から沿岸に打ち寄せる場合、奥が狭まっている湾の奥に進むにつれて津波の高さが高くなるが、音波の場合も同様である。川沿いの両側の斜面で反射を繰り返しながら進むので深い谷ほど周りからの音波が集まりやすくなる。No.6からNo.12までの集落南側の風車から発生する超低周波音が蔵内川沿いに集まって、一気に蔵内集落に殺到することになるだろう。

また、集落の中からは北側のNo.4とNo.5の二つの風車が大きく見えるはずである。例えば、集落の西端の神社のそばにある蔵内川にかかる橋(図-8の中のオレンジ色の小さな〇で囲んだ地点)の上からNo.5までは0.84kmしかない。この北側の風車から発生する超低周波音も、南側からの音と同様にこの窪地の集落を襲うことになる。

北側のNo.1,2,3の三つの風車は蔵内集落からは手前の丘陵が邪魔をして直接には見えないはずだ。しかし、これらの見えない風車からの音波もかなりの強度で蔵内集落まで届くことになるだろう。

定格出力2000~4000kWの風車は一回転につきおよそ3~6秒程度を要する。風車は羽根が支柱の前を通過するたびにその間にある空気を圧縮する。このことが風車が発生する超低周波音波の主な原因であると言われているので、三枚羽根の風車の場合にはこの超低周波音の周波数は0.5~1Hz程度になるだろう。

空気中の音速が約340m/secであることをを考慮すると、この超低周波音の波長は300~700m程度。波は自分の波長よりも小さい障害物の後ろには容易に回り込むので、直接見えない風車から発生する超低周波音も標高約200mの丘などは簡単に迂回してしまうだろう。

景観面の話に戻るが、集落の中心部から各風車を見上げれば、図-5に示したよりもさらに大きく、高く見えることは間違いない。神社のそばの橋は図-5を撮影した橋よりも南南東に630m離れているため、各風車までの距離はそれだけ近くなる。

例えば、この橋からNo.6までの水平距離は0.93km、No.7までは1.16kmになる。図-5を撮影した橋からNo.6の最高点(羽根の端の最高到達点)を見上げた時の角度(仰角)は14度、No.7では11.5度と予想される。これが神社のそばの橋からでは、最高点までの仰角はNo.6が22度弱、No.7が17度と図-5の約五割増しになる。

見上げる尾根のさらに上を直径150mの巨大な羽根がクルクルと回り続けることになる。仮に健康被害がないとしても、この景観からだけでも非常な圧迫感を毎日感じることになるだろう。これらの風車群の下に新しく移住して来たいと思う人がはたしているだろうか。

この春に掲載した記事を書く時に調べた限りでは、今までに風車による健康被害を訴えた多くの地区の中でも、そのそばにこの蔵内川ほど急峻で深い谷を抱えている地区はなかった。仮に当初の計画通りにこの丘陵上に12基の風車が建設された場合には、風車から発生する超低周波音によって蔵内地区の住民が被る健康被害は、過去に前例がないほど深刻な規模になるものと予想される。住み慣れた家を捨てて出て行く人も増えるだろう。

わずかな借地料と引き換えに自分の家を捨てるようでは元も子もない。自ら進んで実験台に登る必要は全くない。事業者との契約は直ちに破棄すべきだろう。

 

(3)日置谷の各集落と風車との位置関係

前節では蔵内集落に限定して風車の影響を述べて来たが、以下ではこの日置川沿いの他の集落への影響についても触れておきたい。まずは、各集落とその近くの風車とを結ぶ断面図を図-6に示す。この断面図は国土地理院の地図サイトから入手したものである。この断面図を利用することで、どの集落からどの風車までが見えるかを推定することが可能となった。

「地形断面図の作り方」

この国土地理院のサイトの左上にある「ツール」をクリック →右側に現れるタブの中の「断面図」をクリック →画面上の地図で調べたい地形の中の一点をクリックするとこれが「始点」 →別のもう一点を二回クリックするとこれが「終点」となり、始点と終点間の断面図が画面左側に表示される。

図-6 風車と各集落との間の地形断面図

(下の図のクリックで別ウィンドウが開きます)

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この図の中で、各風車の最高点から下に伸びる直線は、集落から風車方面を見た場合にその間の丘陵にさえぎられて風車が見えなくなる範囲を示している。この線よりも風車側の地上からは風車が全く見えないが、この線から外側に離れるにつれて風車の見える部分が大きくなってくる。

なお、この断面図では、風車の高さとしては4000kW級の150mを立てた場合を想定している。2000kW級の場合には120m程度と30mほど低くなる。また、丘陵上に生えている樹木の影響は考慮していない。

この図では日置谷のいくつかの集落と近くの風車、過去に風車による健康被害が発生した三か所の地形のそれぞれの断面図を示している。後者は先の今年4/23付記事の一部の再掲である。

まず日置谷の出口にある奥崎・養郷地区の断面図について見てみよう。下の図-7には図-6に示した断面をどのように取ったかを示している。

図-7 奥崎・養郷地区の地形図

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図-6から奥崎からはNo.1の風車のハブ〈回転する羽根の中心部〉から上が、またNo.4の風車の支柱のかなりの部分までが見えることを示している。養郷からはNo.1が直接見え出すのは集落の西側約半分だが、先に述べたように超低周波音は直接見えなくても山を越えて襲ってくる。同地区はNo.1~4の四本の風車から1.1km程度しか離れていないのである。

被害地区の例に見るように、この計画で建てる予定の4000kW風車の半分の出力の2000kW風車で1.3km離れていても深刻な健康被害が起こっているのである。さらに奥崎の背後の山からの反射波もある。風車が直接見えないから影響は無いとは到底言えない。

大坪・蔵内地区の断面図の取り方を図-8に示す。健康被害は蔵内だけにはとどまらず大坪でも大きな影響が出るだろう。

図-8 大坪・蔵内地区の地形図

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大坪地区の一番高い所にある民家(神社まで上がらなくてもよい)からは、少なくともNo.1からNo.7までの風車の回転している羽根が見えるはずである。そのうちのNo.5とNo.6を図-6の四番目と五番目の断面図に示す。No8~12は間の舟山に邪魔されて見えないものと推測される。

また、早牛の背後の山に立つNo.13については、大坪のほぼ全戸から、その支柱の根元までが見えるはずだ。大坪地区にとっては、この風車の影響が最も大きいだろう。No.14も大坪のほぼ全戸から、その見える範囲に差はあるがよく見えるはずである。

 

早牛・山根地区の断面図の取り方を図-9に示す。

図-9 早牛・山根地区の地形図

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まず第一に指摘しなければならないのは、この早牛地区の西側の山に建てる予定のNo.13とNo.14の二つの風車は、早牛の住民の健康にとっては極めて危険であるということである。

図-6の一番下の過去の健康被害例の地形を見ていただきたい。東伊豆町では1500kWの風車から水平距離で約600m離れた地区で深刻な健康被害が発生している。早牛地区の計画では集落が2000~4000kWの風車から水平距離600mしか離れていない。おまけに東側には舟山の急斜面があり、ここからの反射音も相当な強度となるだろう。

早牛・山根の周辺の地形は蔵内地区と同様に典型的な「音溜まり」地形であり、ここも蔵内と同じく深刻な健康被害を受けることになると予想される。また西側の風車からの影響も無視できないはずだ。早牛地区からはNo.7からNo.11までの風車の少なくとも羽根の一部は見えることになるだろう。この間には舟山から南に伸びる標高170m程度の尾根があるが、その東側にある標高約250m前後の丘陵上に立つ高さ150mの風車はこの尾根を見下すように立つことになる。

 

最後に河原地区についても触れておこう。断面図の取り方を図-10に示す。

図-10 河原地区の地形図

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図-6ではスペースの関係で六番目にNo.11と集落の間の断面図を載せているだけだが、河原からはNo.10とNo.12も見える。No.8とN0.9は集落北北東の標高258mの山に隠れて見えないが、その山の左にはNo.6とNo.7が見えるはずである。

この集落も狭い谷の中に位置しており、「音溜まり」地形であることには変わりはない。集落からは直接見えない風車からの音も西側の山に反射して頭上から降って来ることになるだろう。

図-6の最下段には、過去の健康被害を受けた地区の地形断面図を示している。被害の詳細については4/23記事中の表を再度確認されたい。以下にその一部を抜粋し紹介しておこう。

① 東伊豆町熱川温泉地区
「運転開始直後から、周辺の別荘地の住民が不眠、血圧上昇、リンパ腺の腫れ、胸・腹・歯・鼻・耳の痛み、イライラ、頭痛・肩こり等の症状を訴えた。」
「68才の女性は、頭痛や嘔吐で2週間寝込んだことがあり、右手がふるえて茶碗が持てない。遠くへ引越しようとしても、別荘地の資産価値が1/2から1/3に下落して売れないという。」

② 和歌山県由良町畑地区
「風車稼働直後から、頭痛や耳鳴り、 めまい、 不眠を訴える住民が多数。海南市と合わせて23名が健康被害を訴える。」
「自宅が2000kWから1.3km 女性 70才 「つらい時は、夜中に車に乗って数km離れたコンビニの駐車場まで行って寝る。按摩さんは「ここに来ると、何か恐ろしいような異様な感覚がある」と言っていた。」
「風車から2kmの住民 「恐ろしい音が地面から柱を伝って入って来る。」」

③ 伊賀市上阿波汁付地区
「風車から最短で1kmに位置する同集落では、全8戸中5戸が風車による睡眠妨害を訴えている。夫婦で木造住宅に暮らす女性(70)は「グワン、グワンと風車の音がうるさくて、睡眠薬を飲まないと眠れないときもある」と訴える。」

 

何度も繰り返すが、既にこれらの被害を受けている地区の風車よりも、青谷町で計画されている風車の出力は最大で二倍程度は大きい。この計画が本当に実施されたら、日置谷全体の住民が受ける健康被害は上に挙げた地区での症状よりもさらに深刻なものとなるだろう。

夜中に自宅から逃げ出して何kmも離れたコンビニの駐車場で寝るような人を絶対に出してはならないし、ひょっとしたら、この計画に賛成している人自身がそのように逃げ出すことになるのかもしれないのである。

次回は気高町鹿野町側で予想される景観と健康被害について取り上げる予定です。

/P太拝