「開かれた市政をつくる市民の会(鳥取市)」編集者ブログ

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人材不足で地方創生が進まない?

 2/6金曜日の夜7時半から、NHK鳥取で興味深い番組が流されていました。せっかく企業を誘致したのに、人材が集まらず業容拡大ができないとのこと。鳥取県と北海道の事例が紹介されていた。鳥取県での紹介事例は次の二社。

 フィギュア(人形)を作る会社。番組では人形に色づけする工程を紹介。仕事に適した技能を持つ人が少なくて困っているとのこと。作業自体はそれほどノウハウを要するようには見えなかった。

鳥取市若葉台のLASSIC
 ソフトウェア開発会社。南吉方の鳥取三洋跡地にも進出予定と報道された会社である。計画している技術者採用予定数の半分程度しか確保できていないとのこと。

 県では、主として中堅技術者の人材確保のために、東京などで何度も Iターン・Uターン希望者の相談会を開いているが、あまり成果は得られていないようだった。現在、希望者のリストを作成中で、「技術人材バンク」を完成させる予定とのこと。でも、こんなことはずっと昔からやっていることなのではないか?

 番組司会者がゲストの同志社大の浜矩子教授(いつもふくれっ面をしている、あの怖そうな女性経済学者)に「有効な対策は?」と聞いていたが、浜教授の答えは「今さら遅い!あとの祭り!」と簡単明瞭。「ピンポーン、ご名答!」と言ったところである。鳥取県では、過去五年間に社会移動で県外に流出した人口は約七千人に達するそうだ。この中には貴重な人材が数多く含まれていたはずである。

 「この番組を見ていて感じたこと」

・今の鳥取県には、県内の産業振興に関する青写真がまったく無いのではないか。手当たり次第に都会の各企業を回って「鳥取県地震が少ないですよ、補助金もたくさん出しますよ」とPRしても、それだけでは企業は来ない。

・富山の医薬、福井のメガネ、燕三条の金属製品、東大阪や東京大田区の機械部品、中国広東省の電子部品、米国カリフォルニアのシリコンバレーなど、特定の地域に特定産業が集中する傾向が顕著である。そこに行けば、いろいろな部品や資材が入手できる、自分たちと同じ業界の人間がたくさんいて競争しながらも豊富な情報を得られる、ということが理由で特定産業が集積するのだろう。

・今の鳥取市内には、金型、機械、ソフトウェア、電気・電子部品、食品加工等の企業が数社ずつはあるが、いずれも小規模で、技術レベルも高いとは言えないだろう。同一業界内で、お互いに競争しながら刺激しあうという関係がない。様々な産業分野の企業が市内にポツポツとあるだけでは、市の発展は期待できない。ただでさえ少ない人材を色々な業界で取り合っていたら、お互いに共倒れするだけである。
 筆者は数年前まで技術者だったが、技術者をやっていて一番楽しかったのは、自分と同じ業界で仕事をしている他社も含めた技術者と「ああでもない、こうでもない」と議論している時であった。自分と同じようなレベルの相手と議論しているうちに新しい発想が生まれるものである。

・県内各地域ごとに重点産業分野を決めて、産業集積を図るべきだ。今までの実績から見たら、境港なら水産加工、米子は鳥大病院を中核とした医療、倉吉などの中部は農産物加工、等々になるのではないか。
 一番困るのは鳥取市だ。鳥取三洋が無くなった現在、この街には電機産業に代わる主要産業と言えるものがない。
 早く鳥取市の将来の主要産業を決定すべきだが、今の鳥取県庁は将来の青写真を描くことよりも、企業誘致で訪問した企業の数を増やすことばかりに熱心なようだ。 
 極論すれば、今の鳥取県政は、「私たちはこんなに努力しています」とマスコミを使って言い訳することを目的としているように見える。仕事をしているフリをすることが主目的になってしまっている。当然、実際の成果は乏しい。筆者はこれを「パフォーマンスオンリー県政」と呼んでいる。

 この番組の後半では、北海道では女性の力を活用して人材不足を克服しようとしていることを紹介していた。
 注射針メーカーのユニシスと車載回路基板を作っているデンソーの事例である。今の製造現場はIT化が進んでおり、きれいで整頓された職場の中で体力のない女性でも男性と同等に働くことができる。番組では、ユニシスの女性従業員自らが高校に行って、女子高校生を前に職場環境のプレゼンを実施して自社への就職を勧めている映像が紹介されていた。
 

鳥取県職員の皆さん!少しは北海道を見習ってみてはどうか。テレビカメラの前で嘆いて見せる前に、まだやれることがいくらでもあるはず。

/以上