「開かれた市政をつくる市民の会(鳥取市)」編集者ブログ

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平井県政の二期八年を検証する(1) -県民所得の低下が止まらない-

 現在、4/12投票日に向けた鳥取県知事選の真っただ中のはず。しかし、街の中はとっても静か。限りなく静かと言ってもよい選挙戦です。筆者は先週の月曜日、告示最初の日に一度だけ現職の選挙カーに遭遇。その後は一度も候補者の選挙カーを見ていません。
 
 自民、公明、民主三党が推す現職と、共産党の推す候補の二名だけの選挙では、勝敗は最初から判っています。これで三期連続で同じ構図。その前は片山前知事が無投票で再選されており、最近の鳥取県の知事選はまことにおとなしい。これなら、戦前に政府が任命していたような官制知事で十分ではないかとさえ思いたくなるほどです。本当に今の県政には争点が無いのか、それとも対立候補も出せないほどに各政党に人材がいないのか?
 
 今の鳥取県の県政にも問題はあるはず。いや、少し深く調べてみると、本当はじつに問題だらけなのです。これから数回にわたって、今の県政の問題点を検証してみようと思います。まず第一回目は、県政の基本である県内の経済状況について。
 
 経済活動の衰退が続けば、県民生活が苦しくなるだけにとどまらず、よりよい給与と仕事を求める人材の県外流出が加速され、それがまた経済の衰退に拍車をかけることになります。当然、県の税収も減り続ける。知事が口ではいくら立派な政策の実行を約束していても、税収が減り続ければ、政策をまともに実行することもできません。
 
 下のグラフに2001以降の(平成13)中国地方各県の一人あたりの県民所得の推移を示します。県民所得とは、ある県の県内で、(支払われた給与)+(増加した財産)+(企業所得)の合計を県内総人口で割った金額です。企業の所得も含まれているので、県民一人あたりが得る平均給与はこの金額よりもかなり少なくなります。赤い点線が鳥取県の推移を示しています。


 
イメージ 1
 
 
 この県民所得データの基礎となる各県と国全体が生み出した付加価値の金額を確定するためには、かなり長い検討時間が必要とされているようで、現時点では、2011年度までの値しか確定していません。グラフに示した11年間に限れば、東京都がつねにダントツで第一位。これに対する第四十七位、つまり最下位は、ずっと沖縄県です。東京には大企業の本社が集中しているので、企業所得も含めれば当然高くはなります。
 
 ちなみに、2011年度は東京都4373(千円)に対して、沖縄県2018(千円)。東京都は、沖縄県の実に約2.2倍もの県民所得を生み出していることになります。もちろん、個人の感じる幸福度は、県民所得だけに比例して決まるワケではありません。おカネはたくさん持っているもののマンションでテレビを相手に孤独に過ごす東京のお年寄りに比べると、たいしてカネは無くても近所の友人と菜園で採れた野菜の交換をしたり、地区の公民館で一緒に泡盛を飲んで指笛鳴らして踊ったりしている沖縄のお年寄りの方が幸福度は高いのかもしれません。県民所得とは経済面だけに限定した指標であり、それだけで幸福度の判定ができないことは確かなのですが、それでもこの指標のみに限定してみれば、やはり高い方がいいのでしょう。
 
 さて、このグラフには、中国五県以外に、秋田県高知県、宮崎県の三県の推移も含んでいます。実は、この三県に鳥取県を含めた四つの県は、2010年、2011年と二年続けて43位から46位を占めているのです。つまり、第46位、ゴルフで言うところのブービー賞をめぐって激しい争いを続けている鳥取県のお仲間の県というワケです。
 
 このグラフに示した2001年から2011年までの11年間の増減率を比較すると、最も減少した県は高知県-19.7%、次に福島県-15.7%、三番目がわが鳥取県-15.1%です。福島県の減少額の半分以上は2010年から2011年の間に発生しており、これは東日本大震災原発事故という大災害の影響が深刻であったことを示しています。この間に大きな災害に見舞われなかった鳥取県は、経済の悪化率が実質で全国第二位ということになります。
 
 2001年の全国35位から始まって、上のグラフの前半は鳥取県の低下傾向はゆるやかなのですか、2007年以降、つまり平井知事が就任した年あたりから低下の傾きが急になっています。注目されるのは、リーマンショックのあった2008年以降です。他の県は2008年または2009年を底として上昇に転じているのに、鳥取県だけは低落が続いています。2010年には全国44位に転落、「宿命のライバル」である島根県の後塵を拝すという屈辱がついに現実となってしまった。2011年には44鳥取県45位宮崎県、46高知県の三県の差はほとんどなくなり、横一線となってしまいました。この傾向が現在まで続いていれば、鳥取県は現時点では46位まで落ちている可能性が大です。
 
 ちなみに、鳥取県と同様に日本海側気候の影響下にある北陸三県について触れてみましょう。2011年の県民所得ランキングでは、富山県は全国5位、福井県14位、石川県が20位といずれも全国平均以上です。隣の島根県38位。鳥取県の経済が振るわないのは、冬の気候が厳しいからだという言い訳が到底通用しないことだけは確かです。なぜこんなに差がついてしまったのでしょうか?そしてなぜ、最近の高知県鳥取県ではこれほどまでに経済の悪化スピードが急速なのでしょうか。次のサイトが、各都道府県別に経済状況に関するデータを提供しています。

 
 このサイトの中を色々読んでみた結果、その理由は次のように要約できます。
 
高知県鳥取県も、そのGDPに占める政府支出(公共事業等)の割合は全国トップクラスと言えるほど高い。さらに移出入等はマイナスで、県内に流入するおカネよりも県外に流出するおカネの方がはるかに多い。高知県では、’00年代前半に政府支出が大きく落ち込んだためにGDPが落ち込んだ。鳥取県では、’00年代後半に民間投資と移出入等が大きくマイナスになったためにGDPが落ちた。」
 
鳥取県の場合、’00年代前半には、当時の県の主力産業であった電機産業で相次いで大型投資が行われていました。例えば、世界最先端工場として鳥取三洋の液晶第二工場が’01年に稼働を開始。当時は県内一の巨大先端工場として話題になったものです。上に紹介したサイトの資料の中で、2000年の県内の民間投資が大きくプラスになっているのは、この工場の建設の寄与が大きいためと推測されます。
当時、この工場の工事関係者が大量に鳥取市内に宿泊していて、筆者は自分の会社を訪れるお客さんのホテル予約を取るのに四苦八苦したことをよく記憶しています。その後、’00年代後半には状況が一転。鳥取三洋の縮小・切り売りに代表されるように県内電機産業の撤退縮小が続き、民間投資額は大きく減少しました。
 
なお、上に紹介したサイトでは、「移出入等」という言葉がさかんに使われています。これは県境を越えたおカネのやり取りを表すものですが、なかなか含蓄のある言葉でもあります。(興味のある方はネット上で検索してみてください。中には、非常に難解なサイトもありました)
 
県内のGDPを増やすこと、これは県民所得を増やすことに直結するのですが、そのためにはなるべく県外産のモノを買わず、県内産のモノを買うようにすれば移出入はプラスになります。最近はやりの「地産地消」の意識的実践です。しかし、いくら「地産地消」と言っても、作った商品のレベルが低ければ地元の人間でも買いません。地元向けだからと甘えていては、絶対にいけない。品質が劣っていれば自滅するだけです。
あるいは、県外からの観光客をたくさん誘致し、県内でなるべく多くのおカネを落としていただくことでも移出入はプラスになります。
 
グローバル化の進展した現在、昔のような巨大工場の再現はほとんど期待できません。しかし、小さな地元企業がたくさん集まって「地産地消」に励み、かつ外部からの来訪客に対するサービスに誠心誠意努めてリピート客を増やすことによって、県内のおカネの循環を活性化して県民所得を増やすことは可能であると思います。
 
 さて、上に示した県民所得のグラフは2011年までのものでした。信頼性があるとされている内閣府のデータは、同年までしか公表されていません。その後の三年間、直近の県内経済はどういう状況にあるのでしょうか?
 
別名、「経済の体温計」とも言われている地価の動きを見れば、県内経済の動向がある程度は理解できるでしょう。次回は県内地価と全国地価の動きの比較をしながら、最近の県内経済の状況を調べてみたいと思います。
 
/以上