「開かれた市政をつくる市民の会(鳥取市)」編集者ブログ

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平井県政の二期八年を検証する(4) -企業誘致、ナノ社の場合(2)-

「平井県政の二期八年を検証する(3) -企業誘致、ナノ社の場合(1)-」
から続く。
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第三期 「衰退、そして消滅期?」
 
 後の展開は、この事業が坂をどんどん転がり落ちていくだけの話です。以下、新聞報道を要約。

2014.2.1 「ナノ社、EVから電動車椅子へ事業転換。竹内社長は事業縮小に伴い、いったん購入していたJT跡地の一部を賃貸か売却の意向。電動車椅子は、去年4月の発売開始から今までに、五台売れたとのこと。」

 この記事の中では、自動車業界の経験のある技術者は'10年3月の誘致発表時には全く在籍しておらず、その状態が'12年11月に元日産自動車の技術者であった竹内現社長が入社するまでずっと続いていたとも報道されました。(竹内氏が来るまでに社長が四人変わったそうです。)このようなゼロに等しい技術陣では、EV車の開発も、まして量産もまったく不可能です。「やっぱりそうだったか・・・」というのが正直な感想です。

 こんなナノ社の詳しい内情を調査することもなく、大きな雇用増の話にハシャギまくって大がかりな進出発表記者会見やシンポジウムを行い、'10年の段階から巨額の税金を関連予算として計上してきた知事と県幹部は、「きわめて愚か」と言う以外に形容する言葉が見当たりません。ナノ社の藤原社長(現在は会長)と平井知事には、ものづくりの大変さについての認識があまりにも欠落しています。ものづくりをずっとやってきた私のような元技術者から見ると、「本当に製造業をバカにしている!」と感じます。正直、この文章を書いているだけでも、ハラが立って来る!
 
2014.3.8 「福祉・健康関連のイーウェルがJT跡地に進出。1.52haをナノ社から購入の予定。」
 
2014.3.11 「ナノ社はJT跡地と施設を約9億円で購入、県は2012年にナノ社に約3億円を援助している。ナノ社がイーウェルに敷地の一部を売却することになったため、県はこのうちの約4千万円の返還を求める予定。」
 
2014.4.9 「ナノ社とイーウェルが敷地売買契約を締結。ナノ社はJT跡地7.4haのうち三分の一しか活用しておらず、1.5haを約3億円でイーウェルに売却。」
 
2014.6.13 「ナノ社人員整理、28人を5人に。県への4578万円の返還は5月上旬の期限を過ぎても未納。」
 
2015.2.3 「 鳥取県包括外部監査人の高田税理士は、県の企業誘致事業に関する監査結果を報告。昨年、従業員の大量離職があった米子市電動車いす製造「ナノ社」への対応には、特に厳しい注文をつけた。
高田税理士は、2013年度決算で企業立地事業補助金が約27億円に上るなど、県が多額の事業費を投入する企業誘致関連事業に焦点を当てた。誘致して倒産した企業の経営状況の分析不足、補助金の過大交付などを指摘したが、監査報告の大部分を占めたのが、ナノ社に対する県の対応への指摘だ。ナノ社が1210月、県に企業立地事業認定申請をした際、ナノ社の当期純利益が約11億円の大幅赤字で破綻企業並みの財務内容だったにもかかわらず、公金約3億円の投入を決めたと指摘。「極めて甘い判断」と批判。
 また、ナノ社は昨年、「イーウェル」に土地・建物の一部を売却。売却金で関連会社に借入金を返済する一方、県への補助金返還が滞っているが、県が制裁措置を取っていないことも疑問視。今年3月末までに、ナノ社が事業を開始しない場合は、補助金の全額返還を検討するよう県に提言している。」
 
(注:20153月末時点で、県がナノ社への補助金の全額返還を求めたとの報道は皆無。)
 
なお、この「外部監査人による企業誘致事業に関する監査結果報告」の記事の中の写真では、高田税理士が報告書を手渡している相手は、林副知事でした。
平井知事は、その場に出席することが自分にプラスになると予想される場合は、きわめて腰が軽くて、どこにでも顔を出す。しかし、相手との面会が自分にとってマイナスになると予想される場合、彼は絶対に姿を見せない。そのような場合には副知事や部長クラスに相手をさせるのが通例である。このことから、彼の得意とする、メディアを利用したイメージ作り手法の一端を垣間見ることができる。その意味では、あの「不格好な開発二号車」に乗ってしまったのは、平井氏にとって実に大失敗でした。
 
 さてナノ社の件ですが、既に、この悲惨な事業の後始末をする段階まで来ています。従業員五人の会社では、これから何かを製造できるはずもない。実質的には破綻企業であるが会社の名前だけは存続させて、県からの補助金約三億円の返還請求から可能なかぎり逃げ続けようというのがナノ社の現在の戦略でしょう。契約書の内容しだいですが、県は最後は司法の場に持ち込むしかないのではないか。
 
 このナノ社誘致を発表した2010年以降、県はナノ社に直接支給した約三億円の補助金以外にも、さまざまな名目でナノ社に直接関係するEV関連の予算を組んできました。例えば、「EV人材育成カリキュラム開発事業」に三年間で約4300万円、「エコカー関連産業育成・支援事業」に三年間で約5900万円等々。ナノ社の事業が実質的に破たんしたことで、これらの税金は、結局、何の成果も生みだすこともなく無駄に使われてしまいました。
 
ほかにもナノ社進出をきっかけに始まったと思われる事業としては、「EVタウン推進事業」、「EVカーシェア推進事業」などがあります。これらの事業の結果が、実際にどの程度有意義に使われているのかについては、よくわかりません。EVをキーワードとして検索しただけでもこれだけの事業が出て来るが、他にもナノ社関連の事業予算が県予算案の中にかなり埋もれているのではないかと思います。興味のある方は、例えば下のサイトから入って、県財政資料の中を検索してみてください。ただし、全体像を知るためには大変な労力が必要でしょう。
 
 
 この間の県の対応のまずさを指摘する声は、ネット上でも多数見ることが出来ます。
一例を挙げれば、次のサイト。県西部の方が書いているようですが、記事の最後の方ではけっこう笑えます。

 
 平井氏には誘致企業の事業内容を見極める力が全くないことは、このナノ社の一件だけを見ても明らかです。このような人物が、国や県民から集めた税金をウケ狙いで無駄にばらまき続けているのだから、県の経済が沈む一方であるのも当然なのでしょう。
 
これだけの失敗をしたら、民間企業の役員なら自発的に給与の一部返上を申し出るのが普通ですが、平井知事はそんなことには今まで一言も触れていません。ちなみに、平井知事の現在の給与月額120万円は、全国都道府県の知事の中では上から15番目と平均よりも高いのです。
 
 知事の暴走を止めることも無く、ただ傍観しつづけている県幹部の責任も問われなければなりません。「殿のご乱心」を厳しくいさめる大久保彦左衛門のような硬骨忠義の家臣は、今の鳥取県庁内には皆無のようです。
 
さらに、県の提案事業を詳しくチェックすることもなく、ただ賛成し続けている県議会与党議員の責任も重大です。鳥取県会議員には、政務活動費も含めれば、一人当たり年間千五百万円近くも支給されています。(当ブログ3/26の記事

県政を厳しくチェックするかしないかは、その議員の考え方しだいです。怠け者の議員は、質問もせずに一年に75日間だけ県議会の席に黙って座り、県が提案した議案には全て賛成しているだけで、このような高額報酬を四年間連続で得ることが出来るのです。四年に一度の選挙さえ切り抜ければ、さらに四年間もこのおいしい仕事を続けられるのです。
 
ちょうど今、県議選の真最中です。県の提案に賛成ばかりしていて、その内容を詳しく調べることもないような候補者、内容の無い形だけの質問を繰り返してきた候補者に投票するのは、絶対にやめましょう。税金でメシを食うことだけが目的の「怠け者議員」をさらに増やすことになります。
 
/以上