「開かれた市政をつくる市民の会(鳥取市)」編集者ブログ

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平井県政の二期八年を検証する (7)  -湖山池汽水化事業(2)  -

先回の4/11の記事の続きです。

②湖山池でのシジミ養殖は、地形条件的にまず無理!
 
 以下、湖山池でシジミ養殖が産業として成立するものかどうかを客観的に調べてみたいと思います。最初に、シジミとはどんな生物であるのかを確認してみましょう。
 
日本のシジミ類には数種類ありますが、我々が日常的に口にしているシジミは、汽水域に生息するヤマトシジミと呼ばれている種類です。次のサイトの資料でその概要を知ることが出来ます。
 
次のサイトも参考になります。
 
なお、「レッドデータブックとっとり」、及び環境省レッドデータブック絶滅危惧種、または純絶滅危惧種に指定していた湖山池に生息の淡水性貝類は八種類を数えていました。しかし、県と市、行政みずからが、この汽水化事業によって、そのレッドデータブック記載の貝類全てをみな殺しにしてしまいました。この件については、後の記事で詳しく取り上げる予定です。
 
 以上のシジミに関する資料内容を要約すると、次のようになります。
 
シジミの生育サイクル
 
 「6月から7月前半にかけて急激に成熟するが、塩分が海水の1/501/5の範囲内にないと、親貝の体内で卵の正常な発生ができない。従って雨量の多い梅雨の時期はほとんど産卵しない傾向がある。産卵期は7~9月で8月が中心。
 
また、卵が浮遊生活をする産卵後の10日間ほどの間も、同程度の塩分範囲が必要であり、それ以外では卵が斃死する。浮遊している卵に対する最適塩分濃度は海水の約1/7である。その他の期間ではシジミの成長に塩分が与える影響は少ない。
 
宍道湖では411月に成長し、123月は成長が止まる。殻長15mmで成熟する。」
 
シジミ生育のための条件
 各資料にあるシジミの生育条件をまとめると、次の表のようになります。
イメージ 1
 
要するに、湖底に砂が多く、産卵期の夏の間は塩分濃度が海水の1/7程度であることが望ましい。まさに、現在実施している湖山池汽水化計画の内容にピッタリと一致しています。
 
③湖山池と国内各地のシジミ生産湖沼との比較
 
 上で紹介した「ヤマトシジミ」資料の8ページ目に国内の生産地別のシジミの平成20年度の漁獲高が載っています。この中でシジミが多く採れる湖沼は、全国でわずか六ヶ所しか明記されていません。東郷池は「その他」の中です。琵琶湖のシジミは淡水性のセタシジミのようです。
 
東郷池も加えたこれら七カ所の池の地理的データに、湖山池、さらに以前はシジミが採れていたが現在では採れなくなってしまった二カ所の池のデータを合わせ、計十か所の湖沼の比較表を作ってみました。
イメージ 2
 ここでは、福井県久々子(くぐし)湖について説明しておきましょう。三方五湖のうちの一つで、海と直接につながっているために塩分が比較的濃いようです。ネット上で見ると、以前はある程度はシジミが採れたとの記事があちこちにありますが、最近の漁獲量はゼロらしい。原因は不明です。
また、静岡県佐鳴(さめい)湖は浜名湖に連なる小さな池で、昔はシジミが採れたそうです。しかし、池周辺が浜松市ベッドタウンとして急速に開発され流域人口が急増したため、水質が極端に悪化。’00年代には手賀沼を抜いて、他の水質が全国ワースト一位になったこともあるそうです。当然、シジミは姿を消しました。
久々子湖以外の各湖沼のデータや現状については、ウィキペディアで検索することが出来ます。
 
さて、シジミの生息条件としては、水中の溶存酸素濃度(DO)も重要です。一般にDOの値が3ppmを切るとほとんどの水中生物は死んでしまいます。まさに池全体が死の海と化します。
富栄養湖では、夏場の高温、強い日射、さらに豊富な栄養分が重なることによって、植物プランクトンが大発生します。発生した大量の植物プランクトンは、日中は光合成によって酸素を放出するが、夜になると今度は呼吸によって酸素を消費。明け方には水中の酸素が無くなって大量の魚や貝が窒息死するという現象が頻繁に発生します。
典型的な例は、一昨年の夏、2013.7.9未明に湖山川を中心に発生した魚の大量死です。回収した魚だけでも37tonと、まさに未曾有の規模の大量死でしたが、この魚の大量死は湖山川だけではなく、湖山池の中でも各地で確認されていました。この時の魚大量死については、また後の記事で触れる予定です。
 
酸素不足は、大量の植物プランクトンが死んで湖底に溜ってヘドロと化した有機物が、微生物によって分解される際にも起こります。いずれにしても、湖沼の富栄養化が夏季の酸素不足の根本原因です。
 
このような夏の溶存酸素不足を避けるためには、湖内に栄養分が溜まらないように、流入河川から酸素を含んだ新鮮な淡水が大量に絶えず供給される必要があります。一般に河川を流れる水は、川の水深が浅く流れも急で空気に触れることが多いために、湖沼中に停滞している水よりもはるかに多くの酸素を含んでいます。

従って、湖沼の貯水量に対する流入河川からの流入量、言い換えれば、貯水量と流域面積の比率が夏場の酸素不足の危険性を示す重要なパラメーターとなることが予想されます。そこで、この比率と、各湖沼でのシジミ生産量との関係をグラフ化してみました。結果を次の図に示します。

イメージ 3 
このグラフでは、(貯水量)÷(流域面積)を池の水の入れ替えに必要な雨量とみなして横軸に取りました。もちろん、これだけの雨量全てが池に流れ込んでも、実際に池に貯まっていた水が池外に押し出される量はその数分の一、もしくは、池の構造によっては数十分の一でしょう。現段階では、各湖沼の雨水による水の交換し易さを大まかに比較することが目的なので、とりあえずこの指標を使うことにします。さらに、シジミの漁獲高を湖沼面積で割った、湖沼の単位面積当たりの漁獲高を、縦軸の値としています。
 
夏に高温になる本州の関東以西と、夏に海からの冷たい風が吹く青森・北海道とでは、夏の間の池の水温がずいぶん違います。当然、植物プランクトンの生産量も異なるはずなので、これらを別の系列にして分けて表示しています。青色の◇は関東以西、中抜きの□は青森・北海道の湖沼を示しています。
 
 一見して明らかなのは、水の入れ替えに要する降雨量が少ない湖沼ほど、シジミの生産量が多いということです。神西(じんざい)湖、涸沼(ひぬま)、十三(じゅうさん)湖は、いずれも流域に数mm~数十mmの雨が降っただけで池の貯水量に相当する雨水が池に流れ込んできます。これに対して、赤い丸で囲って示した湖山池は、これらの池の約十倍以上の降雨量、約500mmの降雨量がなければ池の貯水量に達しません。湖山池が、極めて水の交換が進まない池であることは明らかです。

上のグラフでは、例外的に小川原湖だけが、湖山池よりもずっと右の方に位置しています。これは小川原湖だけが平均水深11m、最大水深25mと、他の池よりもずっと深い池であり貯水量が非常に大きいためです。汽水湖では、海水に近い塩分濃度の高い水は密度が高いために池の深い場所にあり、長期間にわたって動きません。川から雨水が大量に流れ込んでも、浅い所の水が排出されるだけで、深い所の高塩分の水はほとんど出て行かないことが確認されています。

降水による水の交換の際、例えば湖水の表面から水深2m未満の浅い領域の水だけが交換対象になると仮定すると、小川原湖の貯水量は五分の一以下となり、東郷池宍道湖とほぼ同じ位置に来ます。また、このように仮定して再計算すると、東郷池の位置は宍道湖よりも少し右に来ます。つまり、東郷池宍道湖よりも水の交換が悪くなります。
 
このような仮定をして各湖沼の貯水量を再計算してみても、湖山池だけは他の湖沼群よりもかけ離れた場所に位置することに変わりはありません。最低でも、上に示した他の湖沼よりも二倍以上の降雨量があって初めて、他の湖沼の中で一番水交換が悪い湖沼と同じ程度までに水の交換が進行します。
 
厳密には、縦軸の単位面積当たりの漁獲高は、池全体の面積ではなく、シジミが生息している可能性がある水深2m以内の湖底面積を使って算出すべきでしょう。また貯水量としては、湖沼表面から数m以内の流入水に押し出されて排出される領域の水量だけを採用すべきでしょう。水深何mまでが一番適切なのかは、現在の筆者の知識ではよくわかりません。
そのためには、各湖沼の湖底地形データと、湖内の水の動きについてのデータが必要になります。厳密なデータを使って上のグラフを書き直せば、もっと関係が明瞭になるでしょう。どの学部が相当するのかは知りませんが、学部生や院生の卒論、修論のテーマとしては、ちょうど適当な内容ではないかと思います。
 
ここで注目しいただきたいのは、湖山池の近くに位置している湖沼が一つもないことです。これは、湖山池のように水の交換が悪い湖沼では、過去にシジミ漁獲が産業化され、現在まで存続している例が全くないことを意味しています。湖山池よりも水の交換がはるかに早いはずの久々子湖佐鳴湖でさえ、現在はシジミの漁獲高はゼロです。まして湖山池については、「何をか言わんや・・・」、というところです。
 
上のグラフの中で、東郷池についてはH20年度とH25年度の漁獲高の両方を示しています。H20年度には1km2あたり約50tonあった漁獲高が、黒い破線の矢印で示したように、五年後のH25年度には五分の一の約10ton(赤色の◇)へと激減しています。
事のついでに、東郷池シジミ漁獲高の推移を下に示しておきます。

イメージ 4 
 なぜ、これほどまでに東郷池シジミ漁獲量が急減したのか、筆者はその理由をまったく知りません。漁獲量激減に関する行政側からの情報発信が皆無なためもあります。
実は、ここ数年の東郷池シジミ漁獲高の数字自体、県のどのサイトにも載っていない。シジミ増殖が担当業務であるはすの県栽培漁業センターのサイトでも、その数字は確認できませんでした。
二年ほど前に調べた時には、県のサイトや新聞社のサイトには、「東郷池シジミ漁獲高が、県の指導と努力によって200ton台にまで回復!」という内容の記事があちこちに掲載されていました。しかし、現在は全て抹消されています。「自分に都合のいい情報はマスコミを使って大宣伝するが、自分に都合の悪い情報は絶対に県民に知らせない。」という平井県政の特徴が、こんなところにもよく現われています。

上のグラフの最近の数年の数字は、下記の湯梨浜町の公式サイトで見つけたものです。筆者がこんな記事を書いたことで、今後、県から湯梨浜町に圧力がかかって、この貴重な情報が非公開になることを今から危惧しています。
 
東郷池シジミは大きくて成長が早いことで知られているが、県の幹部連中は、「湖山池のシジミは、東郷池以上に大きくて成長が早い」とずいぶん自慢していました。
成長が早いということは、同時にエサとなる植物プランクトンが極めて豊富、即ち、「富栄養湖であり、夏季に酸欠の被害を受ける危険性が極めて高い」ということをも意味しています。表面的な事象の背景にある根本原因を探ろうとする熱意も、想像力も、その能力をも、彼らには最初から欠落していることが、この種の発言からよく判ります。
 
このような県幹部の対応は、このブログの平井県政検証シリーズの(3)(4)回目で明らかにした、絵にかいたような悲惨な失敗に終わったナノ社誘致事業における県幹部の当初の対応とまったく同質です。結局は、県政トップがそういうたぐいの人物であるがために、その下も「右へならえ」で同レベルの発想・行動しかできなくなっているのだろうと想像します。あるいは、そのたぐいの県職員だけが生き残り、県幹部にまで出世できたのかもしれません。
 
次回は、この文字通り、ドロ沼化しつつある「湖山池汽水化事業」に、今までどれだけの国民・県民の税金がつぎ込まれたのかを明らかにしていく予定です。
 
(次回へ続く)