「開かれた市政をつくる市民の会(鳥取市)」編集者ブログ

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平井県政の二期八年を検証する (8)  -湖山池汽水化事業(3)

(前回より続く。)
 前回は、湖山池のように流域面積が狭小で水の入れ替えが進まない湖沼では、シジミ養殖の成功例が皆無であることを示しました。さて、昨年度から、湖山池漁協による湖山池でのシジミ採取が始まりましたが、その漁獲高はどうなっているのでしょうか。
 2014.5.29日本海新聞に、湖山池漁協組合長へのインタビュー記事が載っています。それによると、「年間千トン、売上10億円をめざす。」とのこと。
いくらなんでも、これはムリでしょう。池の面積で換算すると1km2当たり約150tonの漁獲と言うことになり、国内最高値の神西湖や涸沼と同等レベルの値です。千代川の流路を変えて多量の水を湖山池に引っ張ってこない限り、実現は不可能だろうと思います。
 
昨年度の湖山池でのシジミの漁獲高は約20tonだったそうです。1km2あたり約3ton、この辺がまず妥当な数字でしょう。もっと条件の良い東郷池でも、最近は約10ton/km2です。
また、昨年夏は例年に比べて異常に雨が多く、八月の降水量は平年の約三倍に達しました。もしも昨年夏の降水量が平年並みであったなら、昨年の漁獲高は約20tonをはるかに下回ったと推測されます。
おそらく、湖山池のシジミ漁は、早晩、産業と言うレベルでは成立しなくなるでしょう。岸辺近くの水深の浅い所にわずかにシジミは生き残るでしょうが、何人もの漁業者の生活を支えられるレベルにはならないと思います。
 
湖山池の水質は、今後さらに富栄養化・悪化することが予想されます。去年夏は幸運にも、例外的な降雨によって救われたものの、これから毎年夏には一昨年のように酸欠による魚や貝の大量死が頻発するものと予想します。
 
以下、池の水質の推移について述べてみます。なお、今までにこの汽水化事業についやした費用の調査結果については、調査に時間がかかるため次回以降に回したいと思います。
 
③ 湖山池の水質は急速に悪化しつつある
 
 池の水質を示す指標としては、COD(化学的酸素要求量)、TN(全窒素)、TP(全リン)、透明度の四種類があります。このうち、COD、TN、TPの三種類については、その値が大きくなるほど富栄養化が進んで水質が悪化していることを意味しています。
 
県がまとめている、湖山池の年度毎の水質指標平均値の推移のグラフを下に示します。昭和47(1972)年度から平成26(2014)年度までの43年間の推移です。なお、平成26年度の値は、この年の夏までの暫定値。

イメージ 1

 
近年の湖山池の塩分管理目標値は、次のように三段階に分かれています。
 
① 第一段階 (H02H16年度)
塩分: 塩素イオン濃度150300ppm   最大で海水の63分の1
                     (注:海水の塩素イオン濃度は約19000ppm)
② 第二段階 (H17H23年度)
 
H17  塩素イオン濃度150400ppm    最大で海水の47分の1
H18H19         300500ppm    最大で海水の38分の1
H20H22        300800ppm    最大で海水の24分の1
 
③ 第三段階 (H24年度以降。この段階が、「湖山池汽水化事業」に相当)
     塩素イオン濃度5000ppm以下    最大で海水の4分の1
 
なお、上の塩分管理目標値は、表層の水の塩分です。表層が海水の数十分の一の塩分濃度であっても、池の深い所の水はほぼ海水に等しい塩分濃度であることが、すでに十数年前には鳥大の研究者によって実測されていました。表層の塩分濃度を上げるということは、この海水に近い層の厚みをより厚くすることにほかなりません。
 
 上のグラフを見れば一目瞭然ですが、塩分を増やし始めたH17年度に始まる第二段階以降、池の水質は赤の矢印で示すように、急速に悪化しています。全窒素と全リンについては、塩分を増やし始める直前には、下水道整備の進展などの効果で国の定める環境基準に近い所まで減少していました。何とももったいないことをしたものです。
 
ここで疑問なのは、第二段階からさらに塩分を増やす第三段階への移行が、H22(2010)年の秋に湖山池会議で決定されたことです。この年は第二段階に入ってから六年目であり、誰の目にも水質の悪化は明瞭になっていたはず。
それにもかかわらず、さらに塩分を増やすことが決定されたのは、会議のメンバーが水質指標悪化の現状について、さらに塩分導入による水質悪化のメカニズムについて無知だったのか、あるいは「天からの声」が降って来たのか、どちらかでしょう。
 
当時の湖山池会議の市側のトップである深澤副市長(現在は鳥取市長)については、多くの市民が既にご存知なように、彼は自分の意思で政策を決められるような人物では決してありません。昨年春の市長選に出たのも、不人気な竹内前市長の身代わりとして引っ張り出されただけなのですから・・・。現在の鳥取市政は、実質的には竹内市政の第四期に相当すると言ってよいのです。
当時の県側トップの河原統轄監(現在は鳥取環境大学副理事長)については、その人柄は詳しくは存じ上げません。ただひとつ言えるのは、湖山池の水質のさらなる悪化を招いた政策を決定した責任者が、「環境」と名のついた大学の役員ナンバー2に就任しているのは、なんとも皮肉な巡り合わせというほかありません。
  
ここで、なぜ池の塩分を上げると水質が悪化するのか、そのメカニズムについて述べておきましょう。汽水湖の貧酸素化、富栄養化のメカニズムについては、次の奈良教育大のサイトの解説が判りやすいと思います。
 
 特に、このサイトの中の次のページ以降を、一番下の「NEXT」をクリックしながら次々に読んでいくと、なぜ海水が入ることで湖底の無酸素化が進むのかが理解できます。
 
要するに、比重の重い海水が淡水の下に潜り込んで「塩分躍層」という層ができることで、湖水の上下運動が妨げられます。その結果、池の表面から供給される酸素が深い所まではとどかなくなり、湖底にたまった有機物の分解が妨げられて栄養分の湖底への蓄積が進む。この段階になると底層の水が酸性化し、それまでヘドロに吸着されていたリンや窒素などの栄養分が湖水中に溶け出します。次のサイトの1-7ページと1-12ページにこの現象に関する解説が載っています。
 
 現在の湖山池で、全窒素や全リンの値が年々増加しているのは、湖底の無酸素化・還元化が進んで、ヘドロからの窒素やリンの溶出量が増えているからです。
 
一方、各種栄養分、特にリンの濃度が増えると、植物プランクトンも大量に増殖します。発生した大量のプランクトンが死んで湖底にたまって大量のヘドロとなります。この水質悪化の負のサイクルが急速に進行中なのが、現在の湖山池です。
これを止めるためには、池への海水の流入を止めるしかありません。即ち、平成16年度以前の塩分濃度のレベルにまで戻すしかありません。
 
  上に見るように、汽水湖の水質管理の上では、海水を入れると湖沼の水質が悪化するのが常識とされています。なぜ、鳥取県はこの常識に反する事業を、数十億円もの巨額の予算を付けて公然と実施しているのでしょうか?
 その理由は再三指摘しているように、行政トップのシジミに対する欲望にほかならないと思います。その場の思いつきだけで、詳しい検討も省略して、トップダウンで巨大事業をスタートさせることを何度も繰り返すというのが、平井県政の最大の特徴であるようです。
 
 汽水化事業開始直前の2012年春に、その後で県の河原統轄監の後任の統轄監となる法橋農林水産部長(当時)は、「湖山池に海水を入れると塩分躍層が出来て水質が悪化する」との鳥大研究者の指摘に対して、「湖山池は浅いので塩分躍層は出来ない」と回答したそうです。
知事、副知事に次ぐ統轄監と言う、県政でナンバー3の地位にもうすぐ就く人物が本当にそう信じていたのなら、河原統轄監もこのメカニズムについて無知であった可能性があります。しかし、少なくとも塩分躍層という言葉は知っていたようなので、その危険性に対する認識はあったのでしょう。

鳥大のこの分野の研究者が以前に実測し報告しているように、実際には、表層がほぼ淡水であった頃から湖山池の湖底近くに塩分躍層が存在していたことは、当時少し調べさえすれば得られる情報であったと思われます。「湖山池には塩分躍層はできない」と言ったことは、池の事実を調べようとする努力を怠った、または、知ってはいたがウソをついたということを意味しています。
 
 さらに、県知事自身、この海水導入による水質悪化のメカニズムをいまだに理解されていないようです。2013.7.9の魚大量死の際には、知事は「水門を全開にしてどんどん海水を入れろ!」と命令したそうです。短期的には若干はプラスになるかもしれないが、長期的にはまったくの逆効果。塩分をさらに上げることによって、それ以降ますます水質悪化と無酸素化の危険性が増すだけです。担当課(水・大気環境課)は、いったんは頭を抱えたものの、後は結々諾々(ゆいゆいだくだく)と、この命令に従ったらしい。
 
 詳しい内容については何も知らないのに、「自分が一番良く知っている」と思い込み、次々に命令を下す知事。「これはおかしい」と内心は思いながら、その命令を黙々と遂行する「ドレイ」と化した無数の県職員。まさに、ナノ社誘致失敗事例の再現です。
 こういう状態を、「ハダカの王様」モードと呼びます。「まんが王国」の王様は、ついにハダカの状態にまで到達してしまっているらしい。でも、誰もそのことを指摘できない。
 
 平井知事は、2012年の汽水化事業開始以降、湖山池について言及する時には、必ずと言っていいほど、「汽水化でキレイになった湖山池で・・・」との前置きを入れています。知事にとっては、このフレーズが湖山池の枕詞言葉らしい。この記事の中で先に示した水質推移のグラフを見た後で、「以前よりもキレイになった湖山池・・・」などと言える人間が、知事以外のほかに、誰かいるでしょうか?
 
いや、同じ枕詞を使っているのが、もう一人(?)いました!日本海新聞です。
この新聞も汽水化事業が始まってからは、必ずと言っていいほど「汽水化できれいになった湖山池・・」という文章から湖山池関連の記事を書き始めています。なぜかこの新聞は、「まんが王国」への対応とは異なり、こと湖山池事業に関しては一貫して行政方針を支持しています。
 
/以上