「開かれた市政をつくる市民の会(鳥取市)」編集者ブログ

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安倍家の妻のパート収入は月25万円?安倍内閣になってから実質賃金は急速に減少中。

 1/8の国会で、民主党山井和則議員から「民主党政権に比べて、第2次安倍政権の方が実質賃金の減少率が高い」と指摘されたのに対して、安倍首相は妻がパートで働きだした家庭を例に挙げて反論しました。この反論の中で、安倍首相は、「妻のパート収入が月25万円」と説明。この25万円が、「パートにしては高すぎる!世間の実情を知らない!」といろいろと物議を呼んでおります。詳しくは下記サイトをご覧ください。

 
 確かに、平均月収約8万円に過ぎない日本国内のパートの実態とはかけ離れています。25万円は鳥取では正社員の月収。安倍首相は日本国内の労働実態を知らなさ過ぎるというほかはありません。

 さて、安倍内閣になってから本当に実質賃金は減少したのでしょうか?下のグラフを見れば一目瞭然です。

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 青い線の実質賃金は、2012年の年末に安倍内閣が成立して以来、急速に減少しています。なお、この実質賃金とは勤労者一人あたりの賃金を示しています。
 このグラフの出所は経済学者の池田信夫氏による次のサイト。 


 池田氏は、人手不足による高齢者のパート雇用の増加が賃金低下の一因であるとしています。要するに、安倍首相が今国会で再三自慢しているようにアベノミクスの効果で景気が良くなったから失業率が下がったのではなく、生産年齢人口(15~65才)の減少が失業率の低下をもたらしたのです。

 そもそも、この失業率の長期にわたる低下は民主党政権の発足した時点から始まっており、民主党政権や安倍政権の手柄であるとは言えません。リーマンショック時の失業率の急増に続けての経済の緩やかな回復と、移民を受け入れない日本という閉鎖社会の中での人口構造の変化とが重なって生じた現象と言ってよいと思います。

 それにしても、民主党政権の時には横ばいであった実質賃金が、安倍政権になってから急速に低下しているのはなぜでしょうか?安倍首相は妻のパートの話などを持ちだしてごまかすのではなく、この原因を特定して自分の過去の政策の誤りを真摯に反省すべきでしょう。

 同じ池田信夫氏の記事の中にある就業者数と非正社員数の推移を示すグラフを下に示します。

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 これを見ると、安倍政権になってからの2013年以降に非正社員数が急速に増加していることがわかります。安倍政権下では、就業者数の増加数が非正社員数の増加数にほぼ等しくなっています。実質賃金が減少したのはこのことが原因である可能性が強い。

 現在、全就業者に占める非正規労働者の割合は約四割に達しています。安倍内閣のもとで格差が拡大したことは明らかでしょう。(ちなみに、鳥取市の職員全体に占める非正規職員の割合は現在約五割。鳥取市は、日本の悪い方の将来を先取りしている先進的な自治体のようです。)

 アベノミクスの成果とは、いったい何だったのでしょうか?次のグラフは日本の一人当たりの実質GDP(物価上昇を差し引いた値)の推移です。
 出所:「世界経済のネタ帳
 
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 GDPとは国内で生み出された付加価値の総額のこと。2009年のリーマンショック以降、一人あたりのGDPは増加し続けているのに、なぜ安倍政権では実質賃金が下がり続けるのでしょうか?
 生み出した価値の勤労者への分配割合が減って、その分、企業側への分配が増えていることは明らかでしょう。結局、アベノミクスとは、株を持っている人と大企業の経営者のためだけの政策だったわけです。それ以外の国民にとっては、アベノミクスなど最初から無い方が良かった。
 
 今年夏の参院選に向けて野党の選挙協力の動きが伝えられていますが、まず政策をどうするかのほうが先だと思います。格差を減らすためにはどうするのか、世界一多い国の借金をどうやって返していくのか、安全保障体制はどうするのか等々、具体的な政策を議論することが最優先です。ろくに議論をしないままに選挙の間だけ協力しても、党内意見が対立し機能不全に陥って大失敗に終わった民主党政権の三年間を、ふたたび再現するだけの事になります。
 
 次の記事を見てください。国民の多くは安倍政権を積極的に支持しているワケではありません。政権を預けられると思う政治家集団がほかにないので、不満はたくさんあるが仕方なしに現状を追認しているだけなのです。
 
 
 筆者は、野党は経済面では同一労働、同一賃金」の大原則を掲げるべきだと思います。正社員と非正規社員の間に大きな時給の差、昇進できないという身分の差を設けている江戸時代並みの今の職場環境では、労働人口の四割を占める非正規社員が仕事に意欲を持てないのは当然のこと。同じような仕事をしているのに時給が正社員の半分では、「こんな会社のために働くのは、アホらしくてやってられない!さっさとツブレてしまえ!」と思うのが普通の人間の感情です。
 
 さらに、若者層に特に多い非正規社員の待遇を改善しなければ、彼らは結婚も出産もできません。非正規社員の待遇改善なしに出生率アップ政策だけを強調するのは、政治家の選挙目当てのパフォーマンス、絵に描いたモチでしかありません。政治家諸氏の再考を強く求めたいと思います。
 
/以上