「開かれた市政をつくる市民の会(鳥取市)」編集者ブログ

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国別最低賃金の比較

 先回の4/1の記事で「最低賃金を時給1500円に」との運動をしている団体を紹介しました。アメリカでも同じような運動があり( というか、こちらの方が日本より先だったらしい )、その成果が出てきたとの記事を見つけました。
 
 
 カリフォルニア州ニューヨーク市では、数年かけて最低時給を15ドルまで引き上げることを決めたとのこと。ちなみに日本の最低賃金都道府県ごとに決められており、最高は東京の時給907円、最低は我が鳥取県等の693円。時給1680円は鳥取県最低賃金の2.4倍です。
 
  
 この問題に興味を持ったので、世界の国別の最低賃金を調べてみました。

最低賃金の比較

 下のグラフはOECD主要国の最低賃金を米ドルに換算して比較したものです。ほとんどのデータは2015~2016年のものですが、アメリカは2009年、ベルギーとギリシャについては2013年の値となっています。ちなみに、アメリカは2009年以降、最低賃金を一度も上げていなかったとのこと。
 日本の最低賃金時給は6.54US$となっていますが、これは各都道府県の値を加重平均したものです。1US$=115円と仮定すると、時給752円となります。

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 国によって物価レベルが異なるので、この賃金差がそのまま日用品の購買力の差を表すわけではありません。この点を補正するため、物価レベルを表す「購買力平価」という概念で補正して比較することが一般的です。いわゆる実質賃金です。

 購買力平価で補正した最低賃金の比較を下の図に示します。最低賃金で一時間働いた人がその賃金で購入できる日用品の量を表していることになります。
 
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 この図を見ると、日本はすでに台湾と韓国にも抜かれています。トルコ、スペイン、ギリシャあたりと同レベルの最低賃金しか労働者に払っていません。到底、先進国と威張れるような国ではないことがよく判ります。

②各国の平均給与の比較
(出典:http://stats.oecd.org/

 上は最低賃金についての比較でしたが、勤労者が受け取っている平均的給与についてはどうなのでしょうか。その比較を次のグラフに示します。なお、このデータに関しては時給でのデータが無かったので、年収についての比較としています。

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 最低賃金では目立たなかったアメリカが、平均給与では一気にトップに立っています。その隣国のメキシコは、最低賃金も低かったが平均給与も飛びぬけて低い。これこそが、メキシコ人がアメリカに不法に移民する根本原因なのでしょう。

 日本はG7(先進七か国、アメリカ、カナダ、イギリス、ドイツ、フランス、イタリア、日本)の中で六番目、下にはイタリアがいるだけです。このデータは2014年のもので、当時は1US$=106円程度だったので、それよりも円安となった現在はイタリアにも抜かれている可能性があります。

③各国の(最低賃金)/(平均賃金)の比率の推移
(出典:http://stats.oecd.org/

 平均賃金に対する最低賃金の比率が小さいほど、その社会の中の格差が大きいことを示していると言ってよいでしょう。2000年以降の、各国のこの比率の推移を次の図に示します。イメージ 4







 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 弱肉強食が横行し格差大国のアメリカが最低、市民革命発祥の地で人権大国のフランスが最高という、実にわかりやすい結果となりました。フランスのように人権を尊重する国では、ある程度の賃金も最初から保障されていることがよく判ります。

 フランスの最低賃金は平均賃金の約1/2、それに対して、日本は約1/3、アメリカは約1/4です。このグラフで、日本が常に下から三番目に位置していることも問題です。日本は、欧州諸国に比べてはるかに格差の大きい国であると言わざるを得ません。賃金レベルが低くて、そのうえ社会内部の格差も大きい国。賃金面から見れば、今の日本は本当に何のとりえもない国です。

 安倍総理経団連等の経済団体に「賃金をあげろ」と繰り返し要請しているが、たとえば国会で「最低賃金は地域の平均給与の40%以上とする」というような法律を成立させたほうが、はるかに即効効果があると思います。

 大企業の組合員の給料を若干あげてみたところで、トリクルダウンはほとんど期待できないことは、いままでの結果から明白。底辺をボトムアップしなければ、格差は拡大し続け日本の社会は不安定になるばかりです。最低賃金を上げることで、今までは家庭に埋もれていた労働力を労働市場に呼び込むことも期待できます。少子高齢化対策の一環にもなるのです。

 与党が大企業の顔色をうかがってばかりいて二の足を踏むようであれば、野党がこの問題に取り組んで次の選挙の争点にすればよろしい。政治家諸氏の今後の取り組みに期待したいと思います。

/以上