「開かれた市政をつくる市民の会(鳥取市)」編集者ブログ

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自民党のポスターにある「この道」とは?

昨日は参院選の告示日。一昨日あたりから、街のあちこちに下のポスターが貼られています。「この道」とはアベノミクスのことでしょうか?

イメージ 1今までの政策の延長上をこのまま前に進んだら、袋小路にはまり込んで、どこにも出られなくなるのではないかと心配になります。

「財政の2018年問題」が一年ほど前から話題になっています。


2018年には日銀の黒田総裁と、安倍晋三自民党総裁の任期が終了します。自民党総裁の任期は延長となる可能性があるが、日銀総裁が二期つとめた前例はないとのこと。

さて、黒田総裁の後任に指名されて、果たして、それを受ける人物がいるでしょうか?日銀の行く手には「出口戦略」というイバラの道が待ち構えているのです。

このまま毎年80兆円の国債を日銀が買い続ければ、2018年には国債残高の半分以上を日銀が保有することになります。どこかでブレーキをかけるしかないが、日銀が購入量を減らしたとたんに、ほかに買い手がいなくなっている国債の価格は下落し金利は高騰するでしょう。金利暴騰によって政府の国債返済費用(公債費)が増え、社会保障費などの出費を削るしかなくなる。

かといって、日銀が国債をこのまま大量に買い続けようとするならば、それこそ、「紙幣を印刷して大量にばらまいているだけの国」とみなされて日本円の価値は暴落、極端なインフレが発生するでしょう。もっとも政府にとってみれば、ハイパーインフレになれば政府の実質借金は急速に減るので、ひそかにそれを期待している向きもあることでしょう。

次の記事は、この将来見通しについてわかりやすく解説しています。この記事の著者の池田信夫という人は、基本的には保守系の人物らしく、「地球温暖化はない」とか、「原発稼働大賛成」とか、私からみれば、「いまさら何を言っているんだ」というような奇妙なことを時々主張しています。ただし、経済・財政問題に限れば、その主張はおおむねまともなようです。


この記事の中で、池田氏は、アベノミクスの先でわかれる二つの道を予言しています。
①「安楽死への道」  マイナス金利の拡大→ 政府債務の実質的削減と財政負担の先送り→ 若者の労働意欲減退と企業の海外流出

②「突然死への道」 日銀の国債購入停止による財政破たん、または日本国債の信用失墜によるハイパーインフレ

池田氏の予想では、生きたままアベノミクスを抜け出すという道は存在しないようです。

また、この記事の中に出て来る太平洋戦争前後の国債の推移を見ると、なかなか興味深いものがあります。すでに別の場所で紹介したことがある図ですが、改めて現在までの日本国債残高の推移を下に示します。


イメージ 2
この図の中で、1936年付近でいったん少し下降している部分に注目してください。これは当時の高橋是清蔵相が、昭和金融恐慌を抑えるために国債を増発し対策、順調にデフレを抑え込むことができたので出口戦略として国債の発行を減らし始めた時期を示しています。ところが、当時の軍部はこの時期以前の国債増発に乗じて軍事費を大幅に増やしており、国債を減らし始めた高橋蔵相を逆恨みしました。このことが、1936.2.26に発生した二・ニ六事件発生の一因になったと言われています。
 
二・ニ六事件によって、「ダルマ蔵相」のあだ名で国民から親しまれていた高橋是清は、陸軍の反乱部隊に射殺されてしました。これ以降、政府メンバーは軍部による暗殺を恐れるようになり、軍部の言いなりとなって軍備増強のための国債を濫発、ついには太平洋戦争へと突入することとなりました。そして、敗戦とともにハイパーインフレが発生、それまでに発行してきた国債は紙くずと化しました。国民の財産を吸い上げることによって生じた巨額の政府借金は、国土を焼け跡にし数百万人の国民の命を失った末に、非常事態を宣言して国民への借金を全部踏み倒して、めでたくゼロとすることができました。
 
現在の日本での国債濫発の責任は、80年前とは異なり、軍部ではなく政治家諸氏にあります。政治家が選挙で議員のイスを失うことを恐れて、国の歳入に見合った金額にまで歳出を削減することができないでいるのです。彼らには、国の将来の心配よりも、自分が大臣や議員のイスに座り続けることの方が大事なのでしょう。
 
今回の選挙の直前にも、与野党そろって、あんなに国民に対して固く約束したはずの消費税の引き上げを先送りしてしまいました。消費税アップを先送りしておきながら、安倍総理は、「年金や福祉などは今までの約束通り充実させます」と約束しています (この人の約束を、今でもまともに信じている国民がいたら、その人は究極のお人よしでしょう)。それを実現するためには国債発行を増やすしかありません。それは、このグラフの右端の傾きがさらに急になることを意味しています。一度上がりすぎた数字は、いつか必ず下がります。その先に待っているのは、70年前の財政破たん、経済的大混乱の再現であることは明白です。
 
このグラフを見ていると、明治維新や先の戦争の時と同様に、日本人は外圧と社会の大混乱の到来が来るまでは自ら国の有り方を変えられない、情けない民族なのではないかとさえ思ってしまいます。
 
筆者は最近、ニュースで安倍総理の顔が出て来ると、不快感がつのってチャンネルを切り替えてしまうようになりました。この不快感を自分なりに分析してみると、あの安倍氏の自信たっぷりのしゃべり方が大嫌いであることに気がつきました。日本のおかれた現状を理解していれば、この道の先の困難さを理解していれば、もう少し不安な表情を浮かべて当然でしょう。
 
自分の話の内容が互いに矛盾しあっていることにも気づかず、恥じることもなく、自信満々で早口でまくしたてる安倍氏を見ていると、「この人は、もともと、本当の事は何も理解できていないのではないか?ただ、母方のジイサンのマネをして総理大臣の役を演じて見せているだけではないか?」と思ってしまいます。参院選を前にして、街中に安倍氏の顔のポスターがベタベタと貼られてしまったので、今年の夏は、ただでさえ蒸し暑い夏が、いっそう暑苦しく不快に感じられることになりそうです。
 
/以上