「開かれた市政をつくる市民の会(鳥取市)」編集者ブログ

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資本主義の終焉について(1)

参院選が終わったとたん、安倍総理は脱デフレへ向けて約10兆円もの経済対策を打つことを発表しました。例によってインフラ整備が主な内容で、リニア新幹線の早期着工等々。もはや財源を税収増に期待できなくなったので、今回は巨額の新規国債を発行するらしい。国の借金がさらに増えることになります。

筆者が思うに、これは自公による、今回の参院選勝利に貢献した勢力への恩賞のバラマキにほかならない。過去の鳥取市政でも、選挙後にはこの種の政策のミニ版をよく目にしてきました。「今回の選挙での御協力、まことにありがとう!そのお礼として、こんなに沢山おカネをバラマクからね!」というワケです。このカネの流れを追いかけてみれば、どういう業界が選挙で彼らに貢献しているのかがよくわかることでしょう。

そもそも、何でリニア新幹線を作ればデフレから脱却できるのか、何の説明もありません。その仕組みについては、まず総理自身さえもが全く理解できていないのでしょう。何しろ、自分自身を、「行政府の長」にとどまらず、憲法上は決して許されるはずもない「立法府の長」も兼務していると錯覚しているような知的レベルなのですから・・・。その辺を歩いている高校生にとって一般常識であることさえも知らない人間に説明を求めても、到底満足な説明が帰ってくることは期待できない。

話しは変わって、先週は参院選の真っ最中だったためか、興味深い記事を何件か見つけました。今回はその中の一つを紹介します。かなり遠大なテーマ、「資本主義の成長の限界」に関するものです。論者の一人、内田樹(うちだ たつる)氏の著書は筆者も何冊か読んでいますが、同氏の物事のとらえ方の切り口には鋭いものがあり、大いに参考としています。
 
 
このブログを読んで、初めて理解できたことがあります。6ページ目に出て来る以下の文章。「・・・世界の中で成長率がトップクラスの国は、どこも政情不安定な国なんです。世界の成長率第1位は、2012年がリビア、2013年が南スーダン、2014年がエチオピア。その他でも、トップ10に入っているのは、だいたい内戦をやっているかクーデターがあったか軍事独裁か、そういう国です。政情不安定な国で経済成長率が高いというのは、経済成長を駆動しているのが生身の人間から搾り取ったものだということを意味していると思います。・・・」
 
以前、世界各国のGDP成長率を調べたことがありました。その際に、リビア南スーダンなど内戦で国内が無政府状態化している国がトップになっているのを見て、「なんでこんな国が?」と思ったものです。戦争で社会インフラがほぼ壊滅し、底辺からの回復過程で国民への負担を強要した結果、投資が一時的に異常に膨らんだだけの事だったんだとこの一文を読んでようやく理解できました。
 
要するに、国の成長率を上げるためには、戦争でも大災害でもその手段はなんでも良いのですが、いったん現在あるインフラを壊滅させ、同時に非常時を宣言して国民の財産を収奪し、それを原資として兵器・弾薬やインフラへの大規模な再投資を実施すればよいのだということが判ります。政府は急速な経済成長率を大戦果だと誇るかも知れませんが、その一方で国民は不幸のどん底に突き落とされ、それまでに蓄積してきた国富と国民の財産の残高も、ほとんど灰燼に帰することとなることでしょう。
 
現代の資本主義が成長限界を迎えつつあるとの見方は、もともとは内田氏の発想ではなく経済学者の水野和夫氏の考察にその発端があるものと推察します。次の記事は、内田氏と水野氏による昨年夏時点での対談内容。水野氏の分析に内田氏が大いに共感していることが読み取れます。
 
 
この記事の中に、こういう一節があります。
 
水野 むしろ貧乏な人をさらに貧乏にさせることで、お金持ちは自分たちの地位を維持することを考えているわけですから。
 
 内田 一部の欲深い経営者たちが自分たちの利益を増大するために、アベノミクスや労働法改正を支持するのはわかります。でも、生活が苦しくなっている国民の中にも、そんな安倍政権の政策を支持する人が一定数いて、高支持率を生み出していた。これは理解しがたかったですね。・・・」
 
余談ですが、この一節の直後には、(去年の夏時点では、)「安倍政権の支持率は低下傾向」とあります。しかし、それから一年近くたった今回の参院選では、従来と同様に安倍政権が支持されてしまいました。
 
筆者が思うには、これは今回、国民が安倍政権を積極的に支持したためではなく、旧民主党政権時代の党内内紛と政策混乱の惨状の記憶がいまだに有権者の脳裏に強烈に残っているために、野党への全面的な委任を躊躇した結果だと思います。アべノミクスの欠陥と限界は既に露呈しつつあり、既に多くの国民が不満を抱き始めてはいるものの、政権を渡すべき野党の存在がはっきりとは見えないからこのような選挙結果になったものと推測します。
 
現在の自民党も、旧民主党政権のあの大混乱と失敗を他山の石として、党内が一応は一致団結しているように見せかけようと、何とか表面上は取り繕っているように見えます。
 
さて、水野氏が予言している「資本主義の終焉」とはいったいどんな内容なのか?その見方は実際に妥当なのか?」という点については、大変長くなりますので次回の記事に回したいと思います。
 
/(続く)