「開かれた市政をつくる市民の会(鳥取市)」編集者ブログ

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TPP採決騒動に思う、世界のグローバル化はどうなる?

まずは、鳥取ローカルな話題のご案内。

先週末の土曜日に、我が「開かれた市政をつくる市民の会」は、六月の第一回に引き続いて第二回目の学習会を開催しました。メインテーマは「鳥取市庁舎新築移転の問題点」であり、当会が深澤鳥取市長あてに提出した公開質問状の内容の説明です。

さらに、この質問書の主な内容が庁舎移転予定地の防災面であることから、鳥取大学の地形・防災を専門とする先生にお願いし、「鳥取県地震千代川水系の地理的特徴と水害対応等」についてお話していただきました。先日の10/21に県中部で大きな地震が発生したこともあり、実にタイムリーなテーマとなりました。

両テーマに関する当日の資料は、当会のHPに掲載しています。是非ご覧ください。


さて、昨日のニュースによると、山本農水相の再度の軽率発言のせいでTPP承認の採決が先送りになったとのこと。自業自得といえばそれまでですが、この山本氏は石破派の重鎮らしい。この件で、石破派にはろくな人材がいないことが図らずも露呈してしまいました。こんな、クチの軽い幹部がかついだミコシに乗っているようでは、石破氏が総裁のイスに座る日は永久に来ないのかもしれません。

一昨日はクリントン氏が圧勝予想との報道、昨日は一転してトランプ氏が有利との報道で、円ドルレートと株価が乱れまくりです。泡沫候補であったはずのトランプ氏が大統領選の最後の最後まで残っているのも、六月に英国が国民投票EU離脱を決めたのも、東西冷戦終結以来一貫して続いてきたグローバル化の流れに対する反発にほかならない。

先進国の政界と財界首脳は、関税撤廃や投資の自由化で成長機会が広がる絶好の機会として、グローバル化を強く支持。一方、先進国の国民は、その多くがグローバル化の利点を実感できず、むしろ、自分の仕事が海外や移民に奪われる結果になるとして、強硬に反対する者が増加しつつあると言う構図です。

発展途上国でも、国の上層部は海外からの投資の増大 (汚職機会の増大も含む) につながるものとして、グローバル化を強く支持する例が多い。一方、一般の国民は、雇用機会が増えるとしてグローバル化を積極的に支持する者と、その国の従来の文化や習慣を破壊する結果になると反対する者との両方に分裂しています。

イスラム圏で頻発するテロも、その根底にはこの国内の分裂があるのでしょう。今年の七月にバングラデシュの首都ダッカで起こった外国人も含めて28人が死亡したレストラン襲撃事件が発生した時、そのような想いにとらわれました。特に外国人が多数集まる店を狙ったところに、欧米と日本を含む先進国に対する現地の反感を感じます。

約150年前の幕末の日本でも、外国人に対するテロが頻発していました。明治政府成立前の約10年間は、攘夷思想に燃える下級武士たちが欧米人をターゲットとするテロ行為を日本の各地で繰り返していました。

1862年の「英国公使館焼き打ち事件」では、のちに日本の初代総理大臣となった伊藤博文が、なんと英国公使館に放火しています。後で勝ち組になったので、火付けの罪を免れたというワケです。

幕末日本のテロと現代バングラデシュのテロの間には、共通点があります。

・急速な欧米文明の浸透で、大量の商品とともに欧米の習慣と価値観も急速に流入。従来の価値観の存続が危ぶまれていた。

・テロの首謀者は、社会指導層の中の下層部分。幕末日本では藩所属の下級武士、バングラデシュでは比較的富裕な家庭出身の学生。

一般に、日々の暮らしに追われる庶民の中からはテロ首謀者は出ません。アルカイダの首謀者で、パキスタンに潜伏中に米軍特殊部隊によって殺されたウサマ・ビン・ラディンは、サウジアラビアの大財閥の御曹司でした。自国の伝統に対する危機意識を持つには、ある程度の生活のゆとりも必要なようです。

ここ数百年の歴史は、欧米文明が世界全体に浸透してきた歴史であり、これが今に言われるところのグローバリズムにほかならない。約150年前に日本に押し寄せたその波が、現在はバングラデシュミャンマーに向かっているのでしょう。この間に日本は、その良しあしは別として、ほぼ完全に欧米文明の一員となり、グローバリズムを推進する側に回ってしまいました。

バングラデシュでテロに遭った日本人の中には、「この国を少しでも豊かにすることを目的」として仕事に奮闘していた人も含まれていたとのこと。主観的には善意の行為であっても、相手側から見たらその行為がどのように見えるのか、もう一度よく考えてみる必要がありそうです。

欧米の文化と経済の仕組みを世界の隅々まで普及させることが、常に善とは限らない。そもそも、グローバリズムの本家本元の英国と米国すらも、行き過ぎたグローバリズムの反作用を受けて、自ら苦しみ始めている。

先日、ラジオの国会中継をなんとなしに聴いていたら、野党の質問で次のようなことが明らかになりました。北米自由貿易協定(NAFTA)を結んだ米国、カナダ、メキシコの間で、多国籍企業が相手国政府を訴える損害賠償請求が頻発しているが、訴訟の大部分と勝訴例は米国企業によるもの。カナダとメキシコの企業が米国政府を訴えて勝訴した例はゼロとのこと。著しい不均衡です。

TPPにもこの規定(ISDS条項)が含まれています。詳しくは下記の東京新聞の記事を見てください。「訴訟大国」の米国と協定を結ぶ際には十分な注意が必要です。

筆者は以前はTPPに賛成でしたが、半年前に批准反対に変わりました。その理由は、日本の畜産業が壊滅する危険性が高いことと、このISDS条項の存在です。

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