「開かれた市政をつくる市民の会(鳥取市)」編集者ブログ

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鳥取市長選を振り返って

 既に一週間近くが経過してしまったが、先週の3/25(日)に行われた鳥取市長選を振り返ってみたい。既にご存知のように、開票結果は以下のようになる。

投票率: 31.51%(過去最低)
投票総数:49,329人
有効得票数
 深沢よしひこ:37,187
 塚田なるゆき:11,148

 現職二期目の深沢候補が塚田候補の約3.3倍の得票を得ており、数字の上では圧勝である。しかし、その背景を調べてみると、なかなか興味深いものがある。

 深沢候補は自民・公明が推薦、塚田候補は共産が推薦している。二年前の参院選での比例区での鳥取市内の各党得票数を調べれば、各党が鳥取市内で持っている基礎票のおおよそがわかるだろう。県公式サイトの「H28参院選比例代表得票数」に示されている当時の主要政党の得票数を以下に示す。ちなみにこの参院選比例区鳥取市での投票率は52.3%であった。

自民 33,410
民進 16,416
公明 12,995
共産   6,584
 おおさか維新 5,282
 社民  1,719

 塚田候補については、公式ではないが社民党新社会党も支持団体に加わっているので、「共産+社民」の基礎票は8,303.。対する深沢候補は、「自民+公明」の基礎票が46,405ということになる。
 これに投票率の減少度(31.5%/52.3%)=0.60を掛けると、期待される得票数は次のようになる。
深沢候補 46,405×0.6=27,843
塚田候補  8,303×0.6=  4,982

  この各党基礎票×投票率補正値で予測される数字よりも、今回の市長選では深沢候補は1.34倍、塚田候補は2.24倍もの得票を得ている。どちらに勢いがあったかは明らかであろう。実際、敗れはしたものの、「塚田氏が選挙前一カ月を切ってから立候補した割には、短期間でよく一万票以上もの票を集めたものだ」という声は、この一週間、市関係者を含む多数の方から聞くことができた。

 なお、今回の選挙では、支持率が第二位に位置するはずの民進党は、何らの意志表明も示せていない。独自候補を立てず、かつ他党の候補の支持の有無さえも示せないようでは、民進党は公党としての責任が問われるというものである。

 余談になるが、筆者は、「鳥取市民進党は既に死んだ」と考えている。そう思い始めたのは、民進党に所属している秋山市議が、2014年12月に前月の市議選での公約の「市庁舎新築移転反対」を裏切って新築移転に賛成したことがきっかけである。その結果、市議会の2/3以上が市庁舎の位置を変える「位置条例」に賛成となり、同条例が可決されてしまった。

 この結果、市庁舎の整備費用は、住民投票で市民が支持した「耐震改修案」の当初の費用は約21億円であったのに対して、現時点での新築移転費用の予定額は約100億円にまで膨らんでしまった。一人の議員が自らの公約を裏切ったために、市庁舎の整備費用が約80億円も増えてしまったのである。

 秋山議員は、現在、同じく民進党系の長坂議員と共に「市民フォーラム」なる会派を結成し所属している。ほかに市民負担を軽減する方法はいくらでもあったのに、竹内・深沢両市長に追従して市民に過重な負担を押し付けてしまった秋山市議の責任は極めて重いものがある。あくまで筆者個人としての意見ではあるが、もう鳥取市の(鳥取県の、ではないよ・・)民進党には何も期待しないし、期待したくもない。

 さて、話を元に戻すが、塚田候補が当初の予想以上に善戦したのは、やはり、市庁舎問題をきっかけとして、「竹内・深沢両市長に裏切られた」という怒りを持つ市民が多いためであろう。この竹内・深沢両氏に対する不信感と怒りは、支持政党を問わないものがある。

 実際、我々「市民の会」は市庁舎問題にみられたような市の「無駄遣い体質」に対する不信感をきっかけとして誕生した市民団体なのだが、会員の支持政党は自民党から共産党まで非常にバラエティに富んでいる(なぜか、公明党を支持しているという会員には、いまだに出会ったことがないのだが・・・)。

 今の鳥取市政における対立点は、国政政党間の政策の相違によるものでは決してない。従来の市政の流れのままに、市民に必要な情報を提供せずに市役所内部だけで市政を決定しようとし続ける現在の竹内・深沢市政。それとは真逆に、市政に関する情報をすべて市民に公開し、広範な市民の声を聞きながら市政の内容を決めていくのが市政の本来のあり方だとする我々を含む市民各層の主張。これら二つの流れが、今まさにぶつかり合っているのである。

 塚田氏善戦のもう一つの要因としては、2004年に鳥取市と合併した旧町村部で、現在の市政に対する批判が極めて強いことが挙げられるだろう。聞くところによると、「旧町村部で、今の鳥取市政に満足している住民はほとんどいない」そうだ。当会のサイトでも何度か紹介しているが、支所職員の人数は現在は合併前の五分の一に激減、市民サービスも劣化してしまった。「鳥取市と合併しないほうがよかった」との声が大半なのも当然だろう。

 さて、今回、現職の深沢氏が優位であることを承知の上で市長選に立候補した塚田氏の決断には敬意を表したい。聞くところによると、ある与党系県会議員の後援者が、「対抗馬が出たせいで、無投票よりも数千万円の税金の無駄」と発言したそうである。しかし、この後援者はむしろ塚田氏に感謝すべきであろう。なぜならば、今の鳥取市の体質では、批判者がいなければ、市長が市民に断りもなく好き勝手に何十億円も余計に無駄金を使ってしまうからである。某地元紙の報道によれば、今回の選挙で深沢市長を応援した市議は32名中26名もいたそうだ。今の鳥取市議会は、日本国憲法第93条で定められた二元代表制に相当する市長のチェック機関としての市議会の役割を、とっくの昔に放棄しているのである。

 今回惜しむらくは、市長候補として、政党に所属していない真正の無所属の人物を擁立できなかったかということである。正直に言えば、塚田氏が共産党の現職の委員長であることで、今回、投票に二の足を踏む市民も少なからずいたのではないかと推察される。今回の投票率が低かったのも、「結果は既に見えている」として、現市政に批判的でありながらも投票に行かなかった市民が多かったためではないだろうか。過去の選挙にみるように、候補者次第で投票率は劇的に変わるものなのである。

 この点は、当会も含めて、鳥取市内の各市民団体や政党の四年後に向けての課題であろう。真に市政改革の推進力となりうる候補者を実現するためには、それなりの準備期間が必要となるだろう。ただし、今回の選挙で、塚田氏が不利な条件下にもかかわらずあえて果敢に立候補され、政策内容として今の市政の問題点を適切に掲げて奮闘され、かなりの量の批判票の受け皿となったことについては、同氏に対して深く謝意を表したいと思うしだいである。

/P太拝