「開かれた市政をつくる市民の会(鳥取市)」編集者ブログ

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日本は「財政ポピュリズム」の末期

 一昨日の日経新聞に「イタリアより深刻な日本」という記事が載っていたので紹介しておきましょう。次のサイトで読むこともできますが、有料会員限定のようです。

 記事の概要は以下のようになります。

・イタリアで極右ポピュリズム政権が誕生見込みであり、財政拡張の懸念から同国の国債利回りが急上昇。同国の債務危機が再燃しかねない。世界経済にとっては、数年前のギリシャ危機よりもはるかに深刻な事態となり得る。

・政府の長期債務残高については、財政悪化が懸念されているイタリアはGDP比で131%。一方、日本は236%であり、イタリアとは比較にもならない水準。

・財政に大甘の安倍政権は、先日、プライマリーバランスの黒字化目標を5年も先送りして2025年度からに変更した。

・日本の財政悪化は、選挙目当てで国民に甘いことばかり言っている与野党の政治家の危機感が乏しすぎるため。財政規律を指導するのが役目の中央銀行である日銀も、国債の大量買入れによって結果的に国の財政悪化を手助けしている。

・イタリアの中央銀行総裁は既に財政悪化に対する警告を再三発している。日本よりもイタリアの方がまだ健全に見える。

 財政再建は日本の最重要課題と考える筆者にとっては、我が意を得たりと感じた記事でした。日本の財政悪化を危惧するIMFも、日本の消費税は最大22%(だったかな ?)まで引き上げるべきと再三警告を発しています。

 こういうことを書くと、「技術力のある日本は絶対大丈夫」とか、「景気を刺激すれば何とかなる」とかの反論がすぐにやってきそうです。ネット上や書店にはそういうたぐいのヨタ説・ヨタ本があふれていますが、その根拠は実に薄弱。楽観的な話を聞けば安心できるからという心理的な理由だけで売れているように見えます。 歴史的に見ても、GDPの数倍もの債務を抱えた国家がハイパーインフレや債務の踏み倒しを経験しないで財政再建できた例は、英国の二例しかありません。(昨年10月の当ブログの記事も参照してください。)
 

 「日本の国債の大半は国内で抱えているから問題ない」という声もよく聞きますが、73年前の敗戦時にGDPの二倍を超えていた日本の国債は、そのほぼすべてを国内で保有していたはず。ご存知のように、戦後の日本政府は、新円切り替えという手荒な手段を使って、戦時中に発行した国債(イコール国民の資産)を紙くずに変えました。

 次の日本の敗戦は、海外勢を含めた皆が、「日本の国債を買っても、まともにカネが帰って来る見込みがない」と思い始めた時にやってきます。今の日本政府は、既発行済み国債の償還のために、より多くの新たな国債を発行し続けるしか対処方法がないのですが、こんな自転車操業がこの先いつまでも続くとは到底思えません。

 ひと月ほど前、朝六時台に山陰放送ラジオの番組「おはよう 寺ちゃん」を聞きながら車を運転していたら、経済問題の解説者が「日本政府は、もっとジャンジャン国債を発行しろ!」と大声でわめいていました。後で調べてみると、この解説者は安倍内閣の官房参与である藤井聡氏でした。

 このラジオ番組の解説者は以前は三橋(みつはし)貴明氏でしたが、今年一月に「十代の妻にかみつきケガをさせた」として逮捕されました。解説者が藤井氏に代わったのは、この事件の直後のようです。

 それにしても、藤井氏の口調が三橋氏のそれと全く同じなのにはびっくりしました。「あれ、いつ三橋が帰ってきたんだろ?」と思ったほどです。二人とも、居丈高かつ傲慢な口調で、機関銃のような早口で財政再建論者を罵倒しまくるのが特徴です。藤井氏の声は今まで聴いたことはなかったが、内閣官房参与という肩書の割には、ずいぶん下品な話し方をする人だと感じました。もっとも、この内閣のトップも副総理も、世間一般の感覚から見れば、ずいぶんと品性に欠けた言葉づかいですが・・。

 戦時中の大本営発表の音声を聞くと、居丈高、早口、聞き手に疑問をさしはさむ余地を与えない断定的かつ強制的なものの言い方など、三橋氏や藤井氏の口調との共通項がたくさんあります。自分が属している組織の弱点をかくしつつ、楽観的な自論のみ聞く人の脳裏に刷り込ませたい時、人はこういうものの言い方をするのでしょう。ドイツ語の内容はわかりませんが、演説中の身振りや態度から判断するに、ヒトラーゲッペルスの演説にも同様の傾向がありますね。

 さて、この朝のラジオ番組の制作局は文化放送。調べてみたら文化放送フジサンケイグループの一員でした。なぜこの番組に三橋や藤井のような解説者ばかりが出てくるのか、その背景が納得できました。

 ところで、我が鳥取市は三橋氏や藤井氏が大のお気に入りのようです。去年10月には鳥取青年会議所が三橋氏を招いて深沢市長と対談しています。鳥取青年会議所の幹部の皆さんも、三橋氏がカミツキ魔であること、彼の妻が十代であることまではご存知なかったでしょう。

 一方、藤井氏は山陰新幹線がらみで市の公式サイトに何度も登場しています。 「山陰新幹線」なんて、五十年前の田中角栄時代の構想の化石化としか思えない。JR西日本もいい迷惑でしょう。高速バスに二時間とちょっと乗れば神戸に着く時代に、高いカネを払ってより時間がかかる新幹線に乗ろうとするモノ好きが、鳥取市内に何人いるでしょうか?筆者には、こういう会合に出て拍手している人たちは、七十年以上前に大政翼賛会の大会に出て、鬼畜米英打倒戦争の勝利に向けて万歳三唱を叫んでいた人たちとダブって見えます。自ら思考停止し、周りの雰囲気に流されようとしているだけの人たちです。この人たちこそが、日本の財政ポピュリズムを推進してきた主力部隊です。

 今回しらべてみて強く感じたのは、他の面はともかくとして、日本の国家財政面については、マスコミも含めて七十年以上前とずいぶんよく似た状況になっているということ。我々は、ニュースに接するたびに「ポピュリズムが欧州を席捲」との印象を持ちますが、向こうから見れば、「日本は重篤な財政ポピュリズムの末期、いまや、ゆでガエル寸前」というところでしょうか。

/P太拝