「開かれた市政をつくる市民の会(鳥取市)」編集者ブログ

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河原インター山手工業団地の入居企業はなぜ増えないのか?

 先週末の6/23土曜日、当「市民の会」主催により鳥取市福祉文化会館で「鳥取市の財政」に関する学習会を開催しました。参加された市民の皆様、熱心に聴講いただきありがとうございました。詳しい内容については当会のサイトに掲載しています。ご確認いただければ幸いです。

 さて、この学習会の最後に「鳥取市の公共料金値上げ」の現状について簡単な報告を行いました(この内容も当会サイトに掲載)。主には建設が予定されている河原町の可燃物処理場の計画内容とその市民への影響について話しましたが、そのための現状確認として、当日の午前中(ドロナワですが・・・)現地へ行ってきました。

 可燃物処理施設の敷地が広大であることにまず驚いたのですが、さらにびっくりしたのは、それに隣接し既に造成済の「河原インター山手工業団地」がほぼガラ空きであることでした(下の写真)。現在の入居は一社のみ。広大な敷地の上には、大きなイノシシの足跡が点々と続いているだけでした。
 
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学習会が終わってからこの工業団地について調べてみました。結果を以下に示します。

・入居済の企業
 イナテック鳥取 敷地1.94ha  鳥取では68名雇用、二年前から操業中。2020年までに累計で約30億円を投資して100名を雇用する計画。 本社は愛知県西尾市で約500名規模。 トヨタ系列向けのトランスミッション製造が主要事業、社内で鋳造・加工。

・進出予定企業
 城洋 本社は姫路市で社員65名  機械加工業、神戸製鋼と密接な関係。来年四月に操業開始予定。約50億円を投資する予定とのことだが、現在の資本金3600万円の会社が果たして調達できるのだろうか?

・河原インター山手工業団地の概要(2012年時点での計画)
 事業区域面積は20.4ha。 総事業費44.3億円、うち国・県が6.4億円、市一般財源8.0億円、市債15.5億円、市土地開発公社借入金14.4億円となっている。

 土地開発公社の借入金は分譲収入で返済予定としているが、完成後二年たってもまだ一社しか操業していない状態で、果たして本当に返済できるのか。なお、河原工業団地関連の名目ですでに13.1億円が市の合併特例債として発行されているが、これが上の市債に相当するものと思われる。

 税金を40億円以上も投入して作った広大な工業団地が、何年間もイノシシの遊び場になっているようでは情けないというほかはない。江山浄水場と同様に、ここもまた将来の市民負担のタネとなりそうな気配が非常に強い。

 さて、この工業団地の現場に立ってみて筆者が感じたのは、「こんな巨大な工業団地を造るのは、もはや時代錯誤」ではないかということである。今回のイナテックは南海トラフ地震対策として鳥取市を選んだとのことである。しかし、震災対策を検討するにしても、すでに製造業の拠点がアジア全域に広がりつつある現在、国内に比べて、需要も、安い労働力も豊富にある海外に生産拠点を移す企業の方が圧倒的に多いだろう。

 国内の雇用の主流がITをはじめとするサービス業になりつつあることは明瞭なのに、鳥取市ではいまだに製造業を誘致して「高度成長期の夢よ、もう一度」を狙っているようだが、もはやその時機を逸してしまったと言うほかはない。

 市が誘致してくる製造業にしても、製菓、飲料、後発薬、機械加工等々、業種が全くバラバラである。行き当たりばったり、総花的で、市の基幹産業をこれから何にするのかという意思がまるで見えない。これでは人材は育たず、産業も集積されず、進出企業が撤退した跡には何も残らないだろう。かっては市の主要産業であった電機関連でさえ、主要企業が撤退したあとで技術者が起業したケースはいくつかあったが、ベンチャーとして成功しつつある例は皆無と言ってよい現状である。

 市の企業誘致のやり方には、さらに大きな問題がある。6/23の学習会の中で藤田先生から聞いた話なのだが、ある地元企業の経営者の話によると、進出してきた誘致企業の方が給与が高いので、自社でせっかく育ててきた優秀な人材がそちらに転職してしまい非常に困っているとのこと。市内の企業が納めた税金を使って市が県外から企業を誘致、あげくは自社の人材まで誘致企業に吸い取られてしまうのだから、地元企業にとってはまさに「踏まれたり、蹴られたり」というものである。深沢市長は、いったい誰の味方なのだろうか?

 支持率アップのためにアピールできそうな目先のニュースばかりを追いかけている今の市執行部のことは無視して、我々市民の間で、将来に向けた鳥取市のグランドデザインを今一度じっくりと考えなおし、話し合ったほうがよほど得策と思うのである。

/P太拝