「開かれた市政をつくる市民の会(鳥取市)」編集者ブログ

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鳥取市の業務、民間への丸投げはどこまで進む?

 本日夕刻、台風12号は伊豆諸島にあり西進中とのこと。明日の午前中には鳥取県に最も接近するそうです。今月上旬の豪雨(智頭町で累計500mm超)ほどには降らないでしょうが、その半分近くまで降るとの予測もあります。崩れたところがさらに崩れる可能性もあります。十分にご注意ください。

 さて、一昨日、先日の豪雨への行政の対応に関する記事を当「市民の会」サイトにアップしました。調べれば調べるほどに、防災面での鳥取県政・鳥取市政の無責任さを感じました。行政トップは口を開くたびに、「県民・市民の安全安心のために全力を尽くします」と再三繰り返していますが、水害時に市民の命の綱となるはずの排水ポンプの点検すらもいい加減なままなのが実態なのです。具体的な内容については同記事をご覧ください。

 今回、この件を調べていてわかったことは、各所の排水ポンプ場などの管理責任者は名目上は国や県・市ではあるものの、実際の操作は民間業者に任されているということでした。鳥取市がポンプ操作を委託していた業者ですが、今年の7/7未明に故障して吉方南町で浸水騒ぎを引き起こした清水川と大路川合流点のポンプ場の操作については、鳥取市環境事業公社が請け負っていたそうです。(この公社のトップは鳥取市の元幹部。)
 昨年九月の台風18号の時に、河原町の中心部で胸まで水につかる住民も出た浸水被害の際に、千代川につながる河原水門の操作を国から操作を委託された鳥取市がさらに操作を委託していたのは、業者とすらもいえない民間の一個人であったそうです。

 鳥取市が従来の仕事を民間委託に置き換えようとしているのは、各地の防災用排水ポンプ場の操作だけにはとどまりません。最近目立つのは市内の公立保育園の民営化への動きであり、現在、急速に進行中です。ごく最近の例では、市が運営してきた城北保育園が、旧鳥取警察署跡地に移転するに伴い民間業者に運営を委託することが正式に決まりました

 さて最近、鳥取市が民間業者に業務を委託した中での最大の事業は、何と言っても河原町国英地区に建設されることが決定した可燃物処理場建設事業でしょう。この事業の担当は鳥取市と県東部四町で作る「東部広域行政組合」ですが、組合の可燃物処理費用に関する事業費の約85%は鳥取市が負担することになっており、実質的には、鳥取市が主体の事業とみなして差支えありません。同組合の組合長は深澤鳥取市長が兼務、組合の議員18名のうち12名は鳥取市議会議員が兼務しています。

 この可燃物処理場建設費事業の原案は、今月7/9に組合開かれた組合議会であっさりと可決されました。組合議員18名中、反対したのはわずかに1名だけでした。その内容ですが、建設費217億円、施設完成後20年間の運営費は130億円、総額347億円(以上、消費税込み)と極めて巨額な内容です。

 この施設建設と運営請負からなる巨大事業を受注したのは、日本で新日鉄に次いで二番目の規模の製鉄会社JFEの子会社であるJFEエンジニアリング。組合は今年四月に実施した一般競争入札の結果、同社に決定したと説明していますが、この入札に応札したのは同社一社だけであり、実質的には同社の受注を前提とした随意契約にほかなりません。入札での競争原理が全く働かなかったので、結果的には同社のボロ儲け事業となってしまった可能性は大いにあります。なお、同社は既に、現在東部一円の可燃物ゴミを一手に引き受けている神谷工場の業務を市から一括委託されている業者でもあります。

 この新可燃物処理施設については、地元の国英地区との契約もあり、施設を稼働して30年後には施設を解体して更地にして地元に返すことになっています。このこともあって年間当たりの地元負担は実に巨額なものとなっています。

 筆者の試算では、この可燃物処理施設の建設・運営に関する鳥取市の負担は、建設費だけで約100億円の、市内を二分して是非を争ったあの市庁舎新築移転事業の年間負担の二倍を超えて、少なくとも年間9.5億円以上となります。自主財源が年間400億円に届かず、かつ年々減少が続く鳥取市の財政にとって、今後さらに大きな負担がのしかかることは必定。この事業の実施決定が、我々市民に対する市民サービスの低下、ゴミ袋料金、水道・下水道料金、国民保険料、市民病院料金等の公共料金の値上げ、市施設の使用料の値上げ等に直結することは容易に想像できます。

 これほどの巨大事業にもかかわらず、鳥取市と東部広域組合は事業の内容をほとんど市民に知らせることもなく、組合の採決日時さえも公表することなく採決を行い、巨額の出費を決定してしまいました。(巨額事業だからこそ、極力、市民に情報を隠して採決したのでしょう・・・)。この可燃物処理場事業の内容については、別途、近日中に、「市民の会」のサイトで詳しく報告する予定です。

 さて、以上に見るように、最近は鳥取市が従来業務を民間に丸投げする事例が次々と出てきています。この先いったい鳥取市民の生活はどうなってしまうのでしょうか。以下、最近読んだ記事を紹介しますので、ご参考。


 この記事の筆者の木下氏は地方自治体向けのコンサルタントとして有名な人であり、コンサルタント業務に関する話題が主ですが、水道など公共施設の運営の問題にも通じる話です。自治体が自前の事業を全くやめてしまうと、業者の提示するコストの評価さえもできなくなってしまうと述べています。

 鳥取市での例を挙げれば、最近契約した可燃物処理場の契約内容がまさにそれに相当します。この契約によると、JFEエンジニアリングは運営上必要な薬品などの費用を市場価格の変動に応じて広域組合に請求できるとあります。薬品を実際に購入したこともない広域組合の職員が市場の実勢価格を把握できるはずもなく、現実にはJFEの言い値通りに支払うことになるでしょう。市にとってはきわめて不利な内容なのだが、組合も議員も、もちろん市長も、この点についてはまったく無関心なままでした。市が自前での仕事を一切やめてしまえば、市の予算が外注業者の食い物に、ひいては我々市民が納めた税金が食い物にされるだけの事。


 国内では浜松市などで水道事業の民間委託の検討が始まり、鳥取市では下水道事業の民営化の話が出始めているようです。しかし、公共サービスの民間委託の先進地は何と言っても米国でしょう。その米国の水道民営化の内容はというと、各家庭への引き込み管の補修は各家庭の出費で行うことになり、補修費用が一件あたり百万円を越える例もあるとのこと。ここまで民営化が進むと、何のために税金を納めているのか、自治体の存在意義が一体どこにあるのか、よくわからない話になってしまいます。

 鳥取市職員の能力と言えば、筆者は以前から県と市が合同で開く会議を何度も傍聴する機会があったが、このような会議で発言するのは、ほとんどが県職員のみでした。参加した市職員は黙って議論を聞いているだけであり、自分の意見を発言することはほぼ全くと言っていいほど見かけませんでした。「国や県が決めたことには黙って従いますが、その代わり、あなたたちの決めたことですから、我々としては責任は持ちませんよ」という態度がミエミエ。今回の豪雨災害等に対する市職員の一連の無責任な態度も、これらの会議の印象を思い起こせばさもありなんというところでした。

 これらの会議の最初か最後に、参加した市職員の中のトップ地位の者があいさつするのが恒例であったが、その挨拶も形式だけの中味のないものばかりであり、メモを取る気にもなりませんでした。一番中味がなかったのは当時の副市長(現鳥取市長)のあいさつ。聞いて一分もたたないうちに、何を聞いたのかを忘れてしまうのが常でした。

 現在の鳥取市役所では、アイデアにあふれて自分の考えを素直に表明しようとする職員は絶対に出世できない仕組みになっているように見えます。最近の正規採用の市職員の大半はずいぶんと高学歴だそうだが、せっかくの優秀な能力を発揮できないようでは、もったいないというほかはない。今の鳥取市役所は、優れた能力を無駄にすりつぶす「人材の墓場」と化しているのではなかろうか。

/P太拝