「開かれた市政をつくる市民の会(鳥取市)」編集者ブログ

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鳥取市の防災行政無線は、いったい何の役に立っているのか?

 今日は朝から一日中サウナに入っているような暑さでした。夕方のTVニュースによると、鳥取空港での気温は午後には39℃を越えたそうです。
 このフェーン現象をもたらした二つの台風ですが、19号は黄海方面にそれたものの、続いて20号が日本本土に来襲。現時点での予報では、先ほど四国に上陸、日付けが変わった明日8/24の午前1h頃には鳥取市上空に達する見込みとか。

 今日の14h頃に「市の防災行政無線」が何やら放送していた。切れ切れにしか聞こえなかったが、どうやら今夜の台風に関するものらしかった。音が周囲の建物に反響してくるので、言葉がほとんど聞き取れない。たまたま窓を開けていたので、どうやら台風についてのことらしいと推測できたが、細かい具体的な内容については何も聞き取れなかった。

 18h頃に市内の別の場所に居たら、また防災行政無線の放送があった。先回と同じように台風に関する注意情報らしいが、周囲の建物からの反響が重なるので、言葉のひとつひとつがやはりよく聞き取れない。おまけに、隣接するスピーカーからの音も若干遅れてから重なり合うので、益々聞き取りにくい。この時も、具体的に市当局が何をすべきと言っているのかよくわからなかった。

 この時はたまたま外を歩いていたので放送していることだけは判ったが、この暑さの中、自宅の部屋で窓を閉め切ってエアコンをかけていたら、放送があったことに気付かなかった可能性が高いだろう。車を運転している場合には、さらに気付きにくい。今日のような気温38℃に達する暑さの中で、この防災行政無線の内容を聞き取れた市民が何人いるのだろうか。おそらく、スピーカーのすぐ近くに住んでいて、たまたま窓を開けていたか外を歩いていた人に限られるのではないか。詳しい放送内容まで逐一聞き取れた鳥取市民は、多くても数%レベルなのではなかろうか。

 過去にも防災行政無線の放送は北朝鮮のミサイルや豪雨等、何十回も聞いたように記憶するが、筆者の場合、その詳しい内容が聞き取れたことは一度もない。せいぜい何について話しているかがわかる程度であった。

 この「役立たずの防災行政無線」に、鳥取市は今までいったいどれだけの税金をつぎ込んできたのだろうか。ちょっと調べてみた。正確には年度ごとの決算内容を調べる必要があるが、あまりにも大変な作業となるので、手始めに「今年度の合併特例債の活用状況」を調べてみた。これを見ると、今年度時点で「防災行政無線整備費用」として11.13億円もの合併特例債を発行している。合併特例債は最大で総事業費の95%まで発行できることになっている。従って、この事業の総額は少なくとも11.8億円以上であることがわかる。

 合併特例債という名金融機関から借りた借金の元利合計の返却分の七割は、国が鳥取市に支給する地方交付税に含めて手当される約束となっている。(国の鳥取市への地方交付税は毎年減少しており、はたして約束通りに支給されているのかはなはだ疑わしいものがある。(詳しくは、「開かれた市政をつくる市民の会」のサイトの、今年6/23開催学習会のPDF資料のP21、「鳥取市への地方交付税構成内容の推移」をご覧ください。)

 この「防災行政無線整備事業費」の総額が仮に12億円と仮定すると、その約三分の一の約4億円が鳥取市の負担、約12億円が国の負担と言うことになる。しかし、国の負担と言っても、我々の納めた消費税、我々が勤めている会社が払った税金、他自治体に住んでいる我々の親戚や友人を含む日本国民が苦労して払った税金等から構成されているのである。決して無駄に使っていいカネでは毛頭ないのである。ほとんどの鳥取市民が聞き取ることができないような「防災行政無線」に、鳥取市民・日本国民が苦労して納めた税金約12億円をあたら無益に使い果たしてしまったとしたら、これを「ムダ遣い」と言わずして何と表現するのであろうか?

 さらに悪いことは、現在の防災担当の鳥取市職員が、「このすでに確立した「防災行政無線」で放送さえすれば自分の担当業務は十分に果たした」と錯覚しているように見えることだ。その効果を検証するのは後回しであり、市民から「聞こえない」という苦情が来ても、適当にあしらって時間稼ぎしておけばよいと思っているようだ。

 市民が防災無線の放送を聞いていようといまいと、「自分の仕事は上から決められたことや、前任者から引き継いだことを、その通りに落ち度のないようにやればよい」。 「どうせ三年たったら他部署に移動するのだから、三年間は以前から決められたことだけをやっていればよい。下手に新しい取り組みを始めて失敗したら、将来の自分の退職金に差し支える。」とでも思っているのではないか。実際には落ち度だらけであることは、当会サイトの「7月豪雨に対する鳥取市の対応を検証する」の記事で述べたとおりなのである。「市民の安全に対する責任感よりも、自分の立場を守ることに汲々としているように見える」と言ったら言い過ぎか?

 筆者は数年前までは日本と中国を行ったり来たりしながら仕事をしていた。2012年6月の事だが、携帯電話に突然メールが入り、「今日から明日にかけて集中豪雨が起きる可能性があるので、十分注意するように」との内容だった。発信元は当時滞在していた中国中部某市の担当部門であった。携帯はこの街の店で購入したものであった。このころから中国の各都市では、台風や集中豪雨の前には、該当自治体の住民のすべての携帯やスマホ自治体からメールが入るようになったらしい。

 鳥取市のサイトを見ると、避難指示等の際には携帯・スマホ向けに「緊急速報メール」を発信するとある。先月7/7早朝6:43には鳥取市内全域にむけて避難指示が発令されたが、筆者が日本で使っているガラケーにはそのようなメールは入ってこなかった。先ほど調べてみたら、筆者のガラ携帯の機種では、緊急地震速報は入るが災害・避難情報は入らないとのことであった。中国の携帯では六年前にはすでに豪雨注意情報が入るようになったのに、日本の携帯にはいまだに入らない。この点に関しては、中国とはすでに六年分の差がついているのではないか。

 避難すべき地区の住民が持っている携帯やスマホに避難情報を送るようにすれば、おそらく七、八割の住民が直接かつ確実に危険を認識することができるだろう。いつまでも、大半の住民が聞き取れないような防災行政無線を使って「仕事をしました」と言っているようでは、外国人の笑いものになりかねない。

 明日の朝の台風による雨は短時間でもあり、先月ほどのことにはならないだろう。しかし九月になると、今は北海道付近にある秋雨前線が南下して本州付近に停滞する。これに台風が近づいて集中豪雨が発生するというのが山陰地方東部の典型的な豪雨パターンなのである。これからは年に何回も千代川が氾濫しかねないような集中豪雨がやってくることになるだろう。これも、今まで我々が好き勝手に温暖化ガスを出し続けたツケが回ってきただけの話なのではあるが。

 最近、調べてみてあきれたことがあった。千代川には百を超すほどの数の水門があるのだが、その管理責任者が国・県・市と完全にバラバラなのである。最近の浸水騒ぎを見るとこれらの行政機関の責任分担もまことに不明確なままのようである。しかも、彼らは「自分だけは責任を取りたくない」とばかりに、互いに責任をなすり合っているように見える。

 情けないというほかはないが、とりあえずは、我々は自分の身は自分で守るしかない。テレビやネットをみれば情報はふんだんに発信されているので、無責任な自治体を当てにするよりも、まずは自分で情報を収集し、自己判断で避難開始することに努めるべきだろう。

 誰も聞いていない防災行政無線システムは、即刻廃止にするがよかろう。少なくとも約12億円が無駄になるが、こんなものがあるから鳥取市の防災担当者が何も考えないのである。実際には役立たずの防災行政無線であっても、それで放送すれば自分の仕事は済んだと錯覚し、その範囲を超えて市民を守ることは自分の守備範囲外と思っているのではないか。

 実際に千代川が氾濫すれば、その被害額は12億円では済まないし、何人も人が死ぬだろう。役立たずの市の防災担当(危機管理課等)は不要である。緊急時の指令組織は極力簡単にして、誰が見てもわかりやすくすべきだ。少なくとも鳥取県内の範囲については、緊急時の指令組織は県に一元化すべきだろう。

/P太拝