「開かれた市政をつくる市民の会(鳥取市)」編集者ブログ

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台風24号は去って行ったが・・。

 昨夜の台風24号は、県東部ではそれほどの被害も残さず北へと去っていきました。ただし、県西部と中部ではかなりの雨量があったとのことで、琴浦町では、道路の崩壊に巻き込まれた軽トラに乗っていた方が不幸にも亡くなられたそうです。お悔やみもうしあげます。

 台風の進路自体は、過去に鳥取県内に水害をもたらした典型的なパターンでしたが、今回は(先日の9/4の台風21号の時もそうだったのですが)、上陸時の大陸の高気圧の勢力があまり強くなかったせいか、それほどの雨量にはなりませんでした。 

 ただし、今回は東部よりも中西部の降雨量が多くて、天神川と日野川では「氾濫危険水位」を越えたそうです。鳥取市内で「氾濫危険水位」を超えたのは、中部に近い日置川水系の青谷町駅前周辺と、千代川の支流である野坂川の二か所だったようです。野坂川のデータについて少し調べてみたので、以下に紹介しておきます。


 昨日、千代川の水位がそれほど上がらなかったのに(それでも行徳付近のスポーツ広場は今年七月に続いてまたしても水没)、野坂川が氾濫寸前までいった理由は上流の降雨量の違いによります。


 気象庁の「過去の気象データ検索」のサイトによると、9/29~9/30二日間の総降雨量は、智頭159.5mm、鳥取162㎜、鹿野384.5mmでした。七月豪雨の時は、7/5~7/7の三日間の総降雨量が、智頭476.5mm、鳥取308mm、鹿野369.5mm。今回は、鹿野周辺の雨量が千代川本流域よりも突出して多かったことがわかります。野坂川の上流部は安蔵地区で、鹿野町の背後にある鷲峯山の東側山麓に位置しています。昨日は、野坂川上流部にも鹿野町と同様に大量の雨が降ったのでしょう。

 下に示すのは国交省が野坂川の徳尾集落近くに設置した水位計のデータです。

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 避難判断水位を越えたのが昨日の18h過ぎ、氾濫危険水位を越えたのが19h30m頃。野坂川沿いの「徳尾、徳吉、古海、緑が丘1,2丁目、南安長1,2丁目 計2822世帯の6247人」に対して避難勧告が発令されたのが20h12mでした。


 避難勧告発令の主たる根拠は、この国交省が設置した徳尾の水位計のデータに拠っているはずですが、避難判断水位を越えてから約二時間もたってからようやく避難勧告を発令した理由は何なのでしょうか?また、既に氾濫危険水位を越えているのに、最後まで避難指示を出さなかった理由は何でしょうか?

 県や市が国交省に相談なしに独自の判断で発令するとも思えないので、特に国交省にはこの間の経過を詳しく説明する責任があるはず。最近、筆者が行政の水害対応を調べていて一番のブラックボックスと感じているのが、この国交省、県、各自治体間の連携の中味です。避難命令の発令までの情報伝達と検討判断はどのようになされているのか、一体どの部署が責任者として最終的な判断を下しているのかを、早急に市民の前に明らかにしていただきたいと思います。

 今朝、少し回り道をして野坂川の徳尾の水位計の周辺の様子を見に行ってきました。この水位計の設置場所は、鳥取駅から布勢への国体道路を西にまっすぐ進んでカインズホームの角の交差点を直進した少し先、約300m長の徳尾大橋の真下です。下に野坂川右岸から左岸の徳尾集落側を写した写真を示します。
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 図中で赤い線で示しているのが、昨夜の増水で草がなぎ倒された斜面上の最高水位。あと1.5mほど増水していたら、濁流が堤防を越えて徳尾集落へ、さらに海側の緑が丘や南安長の新興住宅地へと押し寄せていたことでしょう。写真に見るように堤防の高さは民家の二階の床の高さにほぼ等しいので、氾濫が発生していたら広い範囲で床上浸水が発生していたはずです。

 さて、他にも色々と問題点はあるのですが、今回の野坂川の増水の特徴は、あまりにもその増水速度が急激であったことです。昨日の17hから22h、わずか五時間ほどの間に水位が約2mも上がっているのです。

 国交省の近年の治水思想は、「雨が降ったらなるべく速やかにその水を下流に流すこと。そのためには、堤防を完全に整備すると共に、流れを妨げる堤防で囲まれた範囲内の立木等の余計なものは極力排除すること。」ではないかと推測します。この考えは都市部に近い下流域では正しいのかもしれませんが、果たして未利用地や耕作放棄地、荒廃地が多い上流域まで適用する必要があるのでしょうか。

 支流のすべてについて、何ら遊水域を設けることなく一斉に堤防を整備すれば、地域に降った雨が各支流を介してほぼ同時に本流に流れ込むことになります。下流域はおおむね舗装されて都市化が進んでいるので、排水溝から集まってきた雨水も同時に本流に流れ込んできます。結果として、本流の水位が急激に上がって堤防を越える事態を招きかねない。各支流や排水路からの流入に対して意図的に時間差を設けることも、洪水防止には有効なのではないかと思います。

 2016年10月、我々「市民の会」では、鳥取大学地域学部の小玉先生をお招きして「地震・洪水災害に対する学習会」を開催しました。その中で小玉先生は、「単に堤防整備にとどまらず流域内に意図的に遊水地を設けることも必要」と指摘されていました。実例としては千代川支流の大路川に最近設けられた遊水地を挙げられていました。

 この遊水地の完成後については、下流側の千代川の高水位による逆流によって大路川の水位が上がる現象が頻発しているため、期待したほどの効果は得られていないようですが、それでも遊水地がなかったころに比べれば流域の危険性が減少していることは確かなようです。従来の治水思想の再考が必要な時期に来ているのではないかと思います。

 今週末には再び台風25号がやって来る可能性が高まってきているそうです。市の防災無線は昨夜も何か放送していましたが、例によってほとんど聞き取れませんでした。これだけテレビ、パソコン、スマホ、ラジオで避難情報を流すようになったのですから、もう防災無線はほとんど不要ではないかという気もしてきます。

 さて、過去にも何度か紹介していますが、水害関連の情報をより詳しく知りたいという方のために、国交省の河川情報のサイトをあらためて紹介しておきましょう。これからは、一年に何回もこのサイトを開かなければならない時代となりそうです。

① 「国土交通省 川の防災情報」を開く。
② トップページの「川の水位情報」をクリックして日本地図を出し、地図を拡大して見たい川を探す。水位情報が得られる川は青い線で表示されている。青い線の無い川の水位は、このサイトでは提供していない。

③ 青い線で表示されている川の所々にあるマーク(水位計、カメラ等)をクリックするとその地点の情報が表示される。

 
/P太拝
(「国交省 川の防災情報」のサイト移転に伴い、文末の水位情報の検索方法を変更しました。2021/02/05 追記)