「開かれた市政をつくる市民の会(鳥取市)」編集者ブログ

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米子が生んだ心の経済学者 宇沢弘文が遺したもの

 上のタイトルは、米子出身の経済学者である故宇沢弘文氏の足跡を紹介する番組名。
 一昨日の12/26夜、NHKBS1で同番組を見ました。二年前にケーブルテレビ局である中海テレビで製作された番組とのこと。次のサイトから無料で見ることができるようです。
 

 日本で一番ノーベル経済学賞に近い経済学者との記事を以前に読んだ記憶はありますが、実際にどういう業績を上げた方かはよく知りませんでした。この番組を見てある程度の知識を得ることができました。ただし、この番組の内容はゆかりのある方からの聞き取りが主。地方の小さなテレビ局としてはずいぶん頑張った内容だとは思いますが、同氏の業績の内容については、もう少し深く紹介してほしかったという感想も持ちました。

 以下、番組の内容について簡単にまとめておきます。

・父は小学校教員、母は米屋の跡取り娘。三才まで米子で育つ。その後一家を挙げて東京に移住したが、その後も両親の実家のある米子には頻繁に帰っていた。

・当初は数学に興味を持っていたが、学生時代に河上肇「貧乏物語」を読んで衝撃を受け、経済学を学ぶことを決意。

・一高、東大を出て民間会社に勤務したが、論文が認められて米国に留学、経済学者となる。シカゴ大では、のちにノーベル経済学賞を受賞することになるスティーグリッツを指導した。

ベトナム戦争を続ける米国に疑問を持ったことが契機となり、日本に帰国、東大で経済学を教える。

・高度成長を続ける日本で自動車の激増を見て「自動車の社会的費用」を執筆。車一台当たり200万円(当時)のコストを社会全体で負担をしているとの試算を発表し、社会に衝撃を与える。自動車を利用せず、自宅から大学まで走って通勤という実践例を自ら示す。

・成田空港問題では、反対同盟のメンバー宅に酒を持参して酌み交わしながら対話。現場に直接出向いて社会病理を診断することを実践。「誰もが幸せになれる社会」をつくることを提唱した。

・「社会的共通資本」の概念を提唱。森林などの自然、水道・電気等の社会的インフラ、医療・教育等の制度資本の三つの分野それぞれについて、多くの著作を発表。「弱者に寄りそう社会の医者」になることを目指した。

・生涯にわたって米子市鳥取県への思い入れが深く、西尾邑二元知事が1998年に提唱した「鳥取園都市構想」には全面的に賛同した。(元とっとり総研の三田清人氏の談)

米子市今井書店二階では、月に一度、「よなご宇沢会」(代表 安田寿朗氏)が例会を開いている。宇沢氏の本を読んで感想を話し合っている。
 参加者の感想は、
「お金を持った人が勝ち組、という社会を考え直すきっかけになった」、
「環境を考える人たちに先生の考え方を広げていきたい」等々。
 会の中心メンバーである藤原聡司さんは、「受験教育に疑問を持つことで北欧の教育に関心を持つようになった。塾に行けるかどうかで大学への入学が決まるようになってはいけない」と話す。

・宇沢氏の思想の原点は、日南町下石見の曹洞宗永福寺にあった。宇沢氏は、米国に行く1956年まで、この寺に通い続けたとのこと。宇沢氏はここで修行し、先々代の住職であった米積氏の教えを受けた。
その内容とは、
「一人一人が豊かに成長できる条件を作れ」、
「人間はいつ死ぬかわからない、というのが人間の本質」、
「自分を整えられない人間によって科学が使われた場合、科学は人を不幸にする」
というもの。

 筆者もこの正月中に宇沢氏の著作を何冊か読んでみたいと思って探し始めている所ですが、発行年が古いこともあってすでに書店では売っていないようです。ネットで買うか図書館で借りるかしないとダメみたいです。

/P太拝