「開かれた市政をつくる市民の会(鳥取市)」編集者ブログ

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社会格差が広がると寿命が縮む

 先日1/31付の「新・階級社会」記事に載せた「戦後日本のジニ係数の推移」のグラフをある人に見せたところ、「2010年以降のグラフはないの?」と聞かれました。調べてみたら、政府の発表は三年に一回だけ、最新のデータは2014年のものでした。それを見ると2011年の数字とたいして変わらない。もっとも、最近の国会を見ていると、政府発表の数字は全然信用できない。

 今までは、政府や自治体が出してくるデータは民間のそれよりも信用できるだろうと思って記事を書く際には引用していたが・・。「中国のGDPはでたらめ」と嘲笑してきた某新聞や某雑誌など、「目くそが鼻くそを笑う」典型なのだろう。中国GDPは確かにねつ造数字なのだろうが、日本のGDPだって、安倍政権になってからかなり上げ底しているらしい。
「統計操作で「GDPが上がった」と喜ぶ産経」
 
 さて、先日の記事の中では、「ジニ係数が大きく社会格差が大きい国ほど平均寿命は短い」と書きました。橋本教授の本の記載をそのまま引用しただけなので、実際に本当かどうか少し調べてみようと思いデータを探し出しました。そのデータ(OECDサイトから引用)を元に作ったグラフを下に示します。

イメージ 1
 

 横軸は、政府が累進課税で富裕層から税金を多く取って年金・健康保険・生活保護等の公的社会保障によって貧富の差を減らした後の、「再分配所得に関するジニ係数」です。


 OECD(経済協力機構)はヨーロッパ各国が作った組織。ヨーロッパ以外の加盟国としてはアジアでは日本と韓国だけですが、中国やロシア、インドなど非加盟国だが主要な国のデータも併せて公表しています。グラフの中で特に注目される国を〇印、一般の国は×印、旧ソ連圏に属していた東欧・中央の国は△で示しています。

 このグラフから判ること。

・欧州諸国の大半が日本より左に位置しており、ジニ係数が低い、即ち貧富格差が小さい。手厚い社会保障の結果だろう。

ジニ係数が大きくなるほど平均寿命が短くなるという傾向が鮮明である。平均寿命が60才に届かない南アフリカでは、殺人やレイプの人口10万人当たりの発生率は日本の百倍以上、保健・医療インフラも劣悪で国民の五人に一人がエイズ感染者というすさまじい状態。

・日本より右側にあって格差の大きく、かつ寿命が短い国は、ほとんどが現在の大国か将来の大国になるのが確実視されている国々。一方、日本より左側にある国々は、ドイツ、フランス、オーストラリア、カナダ(みな、スウェーデンや韓国のそばに位置している)、さらに人口数百万の北欧諸国など、そのすべてが人口や面積が中規模か小規模の諸国。典型的な例が、人口35万人、鳥取県の半分ほどの規模でしかないアイスランド
「小さい国ほど貧富の差が少なくて、健康で長生きできる傾向がある」というのは事実でした。

旧ソ連圏の諸国は社会格差は小さいものの、寿命は西欧諸国よりも短い。社会主義時代に医療インフラが十分に整備されていなかった影響ではないだろうか。また、特にロシアでは、男性が大量飲酒で寿命を縮めていると言われている。「ウォッカ効果」と呼んでいいのかもしれない。ロシア男性の平均寿命は66.5才、女性のそれは77.1才であり、その差は10.6才(2016年)。一方、日本では、男性が81.0才で女性は87.1才、その差は6.1才(2016年)となっている。

 先回の記事でみたように、ここ四十年間、日本のジニ係数は年々上昇を続けています。今は政府や自治体による所得再配分によって、何とか格差拡大を抑えている状況だが、低賃金の非正規労働者が今後も増え続けると事態はもっと悪くなるでしょう。国の借金もふくらむ一方であり、近いうちに社会保障費の削減が始まれば、一気に図の右下に向かって転落しかねない。

 その後に待っているのは、英米型の「格差容認、社会保障抑制、貧乏なのはあくまで自己責任の結果」という社会です。当然犯罪や社会不安は増大し、現在世界で一二を誇っている日本国民の長寿も、今後は下がり始める可能性があります。

 最近よく聞くのは、「就職氷河期に学校を卒業し非正規職の多い現在四十代前後の世代が、定年を迎える約20年後、早ければその前に日本の年金制度や健保が破綻するだろう」との予測です。今の日本は、上のグラフで右に行くのか左に行くのか、まさに分岐点にさしかかっているのです。

 あなたの老後も、あなたの子供たちの生活も、今後の政策の選択しだいで大きな影響を受けることになります。今の日本の政治家の大半は、次の選挙で自分が当選するためにはどうするかということしか考えていません。与党も野党も既にポピュリズムに毒されています。長期的な視野を持った数少ない政治家を見つけ育てて、彼らと一緒に考えていく以外には道はありません。

/P太拝