「開かれた市政をつくる市民の会(鳥取市)」編集者ブログ

当ブログの内容は編集者個人の見解であり、「市民の会」の公式見解ではありません。当ブログへのリンク、記事内容の引用等はご自由に!

住民の了解なしで工事を始める鳥取市

 湖山池の青島には年に数回程度は散歩に行くが、先日、数か月ぶりに歩いてみたら意外なものに出くわした。橋を渡って青島に着いた右側の芝生の上に何だか得体の知れない構造物が建てられつつあるのである。

 写真を下に示すが、四角形状の木の台が二個、同じ四角形だがまだ礎石を配置しただけのものが一個。一体、何に使うのか?しかも、設備なのか材木なのかはわからないが、一部がブルーシートで覆われている。工事は一時中断状態のようだ。

f:id:tottoriponta:20211208104854j:plain

      礎石だけのが一棟、部分的に床材を張ったのが二棟

 

f:id:tottoriponta:20211208105032j:plain

 「立入禁止」の表示があるだけで、工事業者を示す看板はどこにも見当たらない

 

 数日後、この地域の事情に詳しい知人にたまたま出会ったので、この件について尋ねてみた。彼の答えは意外なものだった。
 「あれは市が作ろうとしているキャンプ場の設備。あの木の台は、その上にテントを張って泊まったりバーベキューをしたりするためのもの。

 市が建設工事を始めたが、どうやら工事をすることを地元の住民に説明していなかったらしいな。青島は鳥取市がずっと借りているけれど、元々は高住地区のもので現在も同地区が所有しているはずだ。市が用途を地元に説明せずに工事を始めたことに対して、住民から強いクレームが来たと聞いている。」

とのこと。この地元からのクレームが原因で工事がストップしたらしい。

 ちなみに、このようにじかに土の上にテントを張らないで、木のテラスの上などでもっと快適にキャンプができるキャンプのやり方を「グランピング」というらしい。調べてみたら「日本グランピング協会」なる社団法人までできていた。

 そのサイトを見るととてもリッチなキャンプ生活だ。車で大量の高級食材や大きなテントを運べる場所でなければこんなことは不可能だ。このサイトをよく読んでみると、この種のキャンプスタイルはアメリカからの直輸入のようだが、はたしてこういうやり方が「地球にやさしい」キャンプ方式であるのかどうかについては、今一度再考する必要があるだろう。

 かって筆者が、北陸、長野、関東などで山歩きに励んでいた頃には、年に何回も小さなテントを山腹や山頂直下のテント場に張り、その中に潜り込んで即席麺だのアルファ米を湯で戻したものなんぞをわびしく食していたものである。いつの間にやら、キャンプ生活が豪華かつリッチな方向へと激変してしまっていたことについては全然知らなかった。


 話を元に戻すが、この青島キャンプ場設備工事の中断の件について、その問題点は以下の点にあると思う。

① 所有する地区の住民への説明もせずに、市の独断で工事を始めたこと。

 言うまでもなく、鳥取市の地元住民に対するこの姿勢は論外と言うほかはない。例えていえば、土地を借りて畑をつくっている者が、地主に何の連絡もせずに借りている土地の上に勝手に家を建て始めたようなものである。地主がカンカンになるのも当たり前だ。地主が工事を差し止めさせ、費用は貸借人持ちで現状回復を要求して当然だろう。

 市の事業の進め方に問題があったことは明らかだが、この事業の責任者はいったい誰なのか。その責任者の処分はどうするつもりなのか。市の職員から抜擢された深澤市長は昔の仲間に対して極めて甘いようだが、このようなバカげた失敗を隠蔽し放置しているようでは、鳥取市職員の仕事遂行能力とモラルが今後さらに低下することは確実だろう。

② 現在、青島のキャンプ場に常駐している管理人はいない。この地に施設を増やして利用者や宿泊者が数多く集まるようになったら、治安などの管理上の責任も増すが、市にその覚悟はあるのか。

 地元住民の市に対する不満・不安の中には、「宿泊者が増えて、万一宿泊者間や地元との間でトラブルが起こった時には、市はどう対処するつもりなのか」という点もあるのだろう。現在、青島にやって来る利用者の目的は、散歩やジョギングコースとしての利用、橋のたもと近くに設けられている子供・高齢者向け遊具の利用が大半だと思われる。利用者の大半が地元集落や近隣地域の住民だろう。

 現在、この公園の管理は市が民間業者に委託しているが、その業者は湖山町内にあり青島の近くに日夜常駐しているわけではない。青島大橋のたもとにある情報プラザの運営はこの業者とは別の団体によるものであり、青島公園の管理自体には関与していないはずだ。

 宿泊設備を増設して宿泊者が増えれば、当然、ゴミ処理の問題や宿泊者間のトラブルも増える。現在は電話一本で市窓口に予約するだけで宿泊できる。よからぬグループがここを自分たちのたまり場にしようと思えば簡単にできてしまうだろう。従来、散歩に利用してきた近くの住人も不安を感じるようになるかも知れない。利用者が増えれば管理人の常駐が必要になり、その分、今までは必要なかった維持費も増えることになるだろう。

③ 元々、青島でキャンプ泊する人はほとんどいなかった。現時点に限ればキャンプ需要は多いのかもしれないが、コロナ禍が去ればまた元に戻るだけの事。

 上の②では今後利用者が増えた場合について述べたが、実際にはその反対になる可能性が高い。
 筆者が鳥取にUターンして以来約40年。この間、毎年数回程度は青島を訪れているが、島の西側のキャンプ場にテントが張ってあるのを見かけた合計回数は、今回のコロナ騒動が起こるまでは、多分、片手の指の数で足りる位であった。たいていはバイクや自転車で旅をしている若者が一人用のテントを張っているだけだった。

 もちろん筆者が訪れるのは日中だけのことなので、夜にテントがいくつ張ってあるかまでは知らないが、昼間の様子から見ても極く少なかったことは確かだろう。要するにキャンプ場という名の場所は一応はあるが、実際にこの島に宿泊する人は今まではごくまれだったものと思われる。
 青島の芝生の上にテントやターフ(日よけの布)が張ってあるのをよく見かけるようになったのは昨年から、つまりこのコロナ騒ぎが始まってからのこと。今までは西岸のキャンプ場以外でのテント設置は禁止だったはずだが、今では遊具がある芝生の近くにも張ってもよいことになったらしい。最近は土日に青島を訪れると、バーベキュー用の荷物などをいっぱい持って橋を渡っている家族連れを見かけることも多くなった。

 しかしこのコロナ騒ぎが収まればあえて野外で食事をしようとする人も減るだろうし、テントサイトの隣に直接車を停められるほかのキャンプ場に人気が移ることも明らかだろう。たくさんの荷物を持って、わざわざ橋を渡って青島に渡ろうとする人が今よりも相当減ることは確実である。

④ 中途半端な投資をしても他との競争には勝てない。コマギレの投資をしても、結局は税金の無駄遣いに終わるだけだ。

 上に紹介したグランピングの事例を見ても、民間の投資によって広大かつ豪華な設備を備えているところが多い。財源が限られている自治体が貧弱な設備を揃えてみても外からの客は呼び込めない。地元の人間がたまに利用するだけのことに終わる。

 結局は市民から集めた税金が工事業者に流れただけで終わり、将来的・複合的な地域活性化には結びつかない。今の鳥取市には、将来を見据えた投資を立案する能力が全く欠けているのではないか。

 さて、そもそも、このグランピング施設設置計画はいったい誰が提案したのだろうか。市職員や市議会議員の提案によるものなのか、それとも一般市民からの要望があったのか。鳥取市議会の議事録を調べてみたが、今年度の本会議議事録には青島に関する議論自体がひとつもない。
 ところで、片山前知事は知事在職当時に「県議会は子供の学芸会と一緒」と発言されていたと聞く。当時の県会議員の多くがこの発言に反発していたそうだが、筆者も鳥取市議会を見ていて片山氏の見解に賛成である。質問する議員の大半も、それに答える市長以下の市職員のほぼ全ての発言も、みな事前に作られた原稿を棒読みしているだけなのである。小学校の卒業式に恒例の子供たちによる「先生への感謝の言葉」の合唱を聴いているようなものだ。

 大半の自治体の本会議は、あらかじめ台本が作られた単なる儀式の場でしかないらしい。この数年間、鳥取市議会を傍聴しての感想は、「実際の議論は各委員会レベルでなされている」ということだった。

 残念なことに委員会の議事録は一般公開されていない。今では本会議はネット中継されるようになったが、各委員会はその場に行かないと傍聴できない。これではどの委員がどんな発言をしたのかがよく判らない。また、市がどのような意図で、各施策、例えばこの青島の施設増築を持ち出したのかがよく判らない。委員会での議論の一般公開、少なくとも議事録の公開が必要だろう。

 冒頭の写真の説明文に既に示したが、この施設工事を受注した業者の名前もまだ判らない。今年度の市の入札結果も調べてみたが、市の公園整備事業は複数の公園の工事がまとめて発注されており、この青島の工事がどれに含まれているかはよく判らなかった。

 この記事を書いていて思ったのは、この青島公園の施設整備進め方は、当「市民の会」が反対する立場で取り組んできた「市庁舎新築移転」事業の構図とそっくりだということだ。建設だけで約百億円もかかった新市庁舎に比べれば、この青島の施設の費用は三、四桁も低いのだろうが、構図としては一緒だ。以下、共通点を挙げておこう。

・計画を検討していること自体を市民に公開しない。


・工事に深く関係する地元住民にも工事計画自体を公開しない。


・費用の全額を不透明なままにしておく(新市庁舎の想定建設費用が段階を追うごとに膨らんでいったのはご存じの通り)。


・とにかくハコモノを作りたがる。作ること自体が目的であって、完成後の運用はどうでもよいように見える。


・事業トータルとしては赤字で、出来上がった施設からは一円も税収が稼げない。市の財源もしくは国の税金の無駄遣いでしかない。

 

 さて、先月末に深澤現市長が三期目となる来年三月の市長選への出馬を表明した。こんなにも市の経済が低迷し、人口が同程度の近隣都市に比べてはるかに人口減少の速度が速い鳥取市当会の公式サイト参照のこと)で、三期目の出馬を市の経済界がよくも承認したものだと思う。

 今の市長も市職員も、目の前に積まれた書類を右から左に移しては「仕事をしました」と言っているに過ぎないのではないだろうか。将来に向けた構想が何一つ無いから、将来性の無い事業でもなんでも、持ち込まれた仕事には次々にハンコを押しているだけなのではないのか。

 鳥取市の現在の衰退は、来年以降もさらに続くことになるだろう。

/P太拝

追記: 上の文章を数日かけて書いた際には、鳥取市の公式サイトから「市議会+議事録、または会議録」で検索して本会議議事録の各議員の発言を読めたのだが、本日12/8に市の公式サイトから検索したら、議事録閲覧サイトにはたどり着けなくなっていた。市議会公式サイトでも、以前はあったはずの議事録への入り口が消されていた。

色々と探して、やっと以前の本会議議事録公式サイトを見つけた。下に示しておこう。よほど過去の各議員の発言を知られたくないのだろう。特定の議員からの隠蔽要請があったのかもしれない。入り口を隠すとは何とも姑息なやり方である。このことからも今の深澤市政の閉鎖的体質がよくわかる。

「鳥取市 市議会会議録公式サイト」

ちなみに、公務員が作成すべき公文書(無印)を自ら偽造した場合には、「無印公文書偽造罪」として3年以下の懲役または20万円以下の罰金となる。

特に、上に挙げた公式サイト上の会議議事録のような「電磁的記録」を公務員自らが偽造した場合には、「電磁的記録不正作出及び併用罪」として10年以下の懲役または100万円以下の罰金となる。関係各位は、上司の指示やもののはずみで、ついうかうかと「前科者」にされないようにくれぐれも注意されたい。