「開かれた市政をつくる市民の会(鳥取市)」編集者ブログ

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鳥取県沖の海底断層について

 今年の元旦に発生した能登半島地震マグニチュード7.6)をきっかけにあらためて地震に関する情報を調べてみたところ、自分にとって初めて知った情報がありました。

 鳥取県の海岸線のほぼ全長にわたって、岸から10~25kmの沖合に長大な断層が連なっているという事実です。さらに、その断層が今後動く確率はかなり高いそうです。

以下、この断層に関する資料を紹介しておきます。

 

(1)鳥取県公表記事、及びその他の記事

日本海南西部の海域活断層の長期評価公表に係る比較検証会議について(鳥取県)

このサイトの内容を以下に簡単にまとめた。

・国の地震本部が2022(令和4)年3月に公表した「伯耆断層帯」は、県が2018(平成30)年に公表した「F55断層帯」と基本的に同一とみなされる。

・この「F55断層帯」は、元々は国が2014(平成26)年に想定したもの。これを元に県がその被害想定を検討し2018年に公表した。

・「F55断層帯」は最大でマグニチュード8.1、県西部の海岸付近で震度6強津波高さは最大で5.5m(鳥取市)。人的被害は最大の場合、死者約100(うち半分は津波による)、負傷者約970。建物被害は全壊約5,760、半壊約22,680。

・国が2022年に公表した「伯耆断層帯」による地震の想定は、最大でマグニチュード8.1であり県の想定と同じ。

・国が2022年に想定した日本海南西部の東部地区(兵庫・鳥取県境から島根県出雲地域に至る沖合)全体の活断層伯耆断層帯もこの中に含まれる)での発生確率は、「今後30年以内にM(マグニチュード)7.0以上の地震が発生する確率が3~7%。

 次の記事では、今回の能登半島地震の断層が地震本部の長期予想の対象外だった理由について述べられています(7~8ページ)。海底の断層の評価は山陰沖から始まっており、まだ北陸沖までは評価が進んでいなかったとのこと。

「【全国の活断層】Sランク最新の地震発生確率が公表 そこに『今回の能登半島の活断層』がないのはナゼ?南海トラフ巨大地震は70~80%の発生確率【海溝型地震】」
また、この記事によると、「兵庫県南部地震は、直前の確率値が【0.02%~8%】。2016年の熊本地震も【ほぼ0%~0.9%】と、決して高くはありませんでした(6ページ)。」との記載もある。「伯耆断層帯が動く確率は今後30年間に3~7%」というのは決して低い確率ではない。

 次の記事によると、水深200mでの津波の速度は160km/時とのこと。10km沖合が震源の場合、地震発生の数分後には津波が海岸に押し寄せることになるだろう。

「津波の基礎知識」

 

(2)地震本部の公表記事

 次に、この「伯耆断層帯」そのものについてもう少し詳しく見ていきましょう。

「日本海南西部の海域活断層の長期評価」
 このサイトの下部から下記のサイトに入って伯耆断層帯の記載を確認できる。
「日本海南西部の海域活断層の長期評価(第一版)―九州地域・中国地域北方沖―」(このファイルは70MBと非常に重い。)

 詳細についてはそちらを参照されたいが、まず注目されるのが、図-1に示すこの海底の断層帯と「宍道鹿島断層」の位置関係である。

図-1 伯耆断層帯宍道鹿島断層の位置関係(図はクリックで拡大、以下同じ)

 境水道は宍道鹿島断層の延長部分と見なされているようだが、その境水道のさらに延長線上に「伯耆断層帯」が連なっている。

 島根原発近くの宍道鹿島断層の西端付近から伯耆断層帯の東端(兵庫県新温泉町の沖合)までは約130kmある。今回の能登半島沖地震では能登半島から佐渡島西方までの約150kmが一気に動いた。山陰沖でも、それに匹敵するような長さで断層全体が一気に動く可能性がある。

 その場合には、「伯耆沖断層」全体が動いた時に想定されているマグニチュード8.1よりもさらに大きな規模の地震となり得る。宍道鹿島断層から2kmしか離れていない島根原発も、かって日本の原発が経験したことがないほどの激しい揺れを経験することになるだろう。

 また、島根原発よりさらに西側の島根半島西半分の地形も注目される。能登半島北側の海岸線は、能登名物の千枚田に見るように急傾斜で山が海に切れ落ちているが、この島根半島の海岸線に沿う内陸側は能登半島北部よりもさらに急傾斜である。

 あまりにも傾斜が急なためなのか、航空写真で見ても一面の森林で、田んぼも畑も見当たらない。現地に行ったことはないが、地形図を見ただけでも、この部分の地形はほぼ絶壁に近いと想像できる。

 このほぼ絶壁状の地形だが、これは海岸近くの海底で断層が東西に伸びており、その南側が長期にわたって地震のたびごとに隆起し続けた結果を示している可能性が高いと思われる。

 なお、「日本海南西部の海域活断層の長期評価(第一版)の概要」のP12には、「海岸から5-10km程度の浅海域等では、反射法地震探査等のデータが限定され、認定できていない活断層が存在する可能性がある」との記載がある。現時点では海岸近くの海底断層を正確に確認する技術は確立されていない。

 仮に島根半島西端の日御碕付近まで宍道鹿島断層が伸びていると仮定すると、全長160km超の巨大断層となる。断層の動いた長さが長いほど地震マグニチュードも大きくなるとされているので、長い断層ほど、それが一体となって連動した場合の危険度は高い。

 マグニチュード8.4(モーメントマグニチュードMjは9.0)であった2011/3/11発生の東北地方太平洋地震東日本大震災)では、南北500kmの範囲で断層が動いたとされている。

 次に図-2が注目される。これは、「日本海南西部の海域活断層の長期評価(第一版)―九州地域・中国地域北方沖―」のP62にある「伯耆断層帯」の断面図である。

図-2 伯耆断層帯の断面図

 この断層は右横ずれ断層(断層の区分については下記を参照のこと)だが、縦にずれる成分も含まれており、東部では断層の北側が上にずれる動きをしている。断層が上下方向にずれた場合には、当然、津波が発生することになる。

「正断層・逆断層・横ずれ断層」
 中部の断層は南と北のどちらが上にずれるのかがよく判らない。西部に至っては、断層そのものの存在が不明瞭なように見える。ただし、この西部での断面図からは、以下に述べるような貴重な情報を得ることもできる。

 出雲地方でたたら製鉄が始まったのは約1400年前、七世紀のことと言われている。この製鉄法では砂鉄を原料とするため、各地の川沿いで山を切り崩して土砂を水路に流しながら砂鉄を採取する「鉄穴(かんな)流し」が行われて来た。その結果、下流域には膨大な量の土砂が堆積し、浅い海を陸地に変えた。

「出雲國たたら風土記」

 図-3に出雲地域の海岸線の変遷を示す。出雲平野は斐伊川から流れて来た土砂によって、弓浜半島日野川から流れて来た土砂によって形成されたのである。これらの膨大な量の土砂の大部分が、かってのたたら製鉄の副産物であったことはほぼ確実だろう。

図-3 出雲地域の海岸線の変遷

 図-2に戻ると、西部の断面図は主に日野川から流れて来た大量の土砂の連続的な堆積を示していると推定されるが、この堆積層には断層の存在が明確には認められない。このことは、たたら製鉄が始まった七世紀以降の約1400年間では、すくなくとも西部については大きな断層活動が起こっていないことを示していると考えられる。

 実際、鳥取県東端から出雲地方にかけての沖合では、歴史的にも過去の地震活動の記録は皆無とされている。これらの事実から、現在、この地域では大きな地震が発生する確率がかなり高まってきているものと思われる。

 以上、新たな防災上の知識として山陰沖の海底断層について述べてきました。この断層について調べてみると、今回の能登半島地震を超えるような巨大地震を引き起こす可能性も見えてきました。その結果として、島根原発の耐震性に対する不安がさらに増すことになりました。

 また、日本海側では大丈夫だろうと思っていた津波被害も、今後は想定のうちに入れておかなければならないことも判りました。海岸近くにいる時に大きな地震が起こったら、とにかく陸地の方へ、高い方へと一目散に逃げなければ危ない。地震後の数分間の行動で自分の生死が決まることもあり得ると考えるべきです。

 今後30年間に南海トラフ巨大地震が発生する確率は70~80%と言われており、ほぼ確実に発生するであろうことは間違いない。その前後には西日本の内陸部や日本海地震が頻発することも確実だと言われています。今日や明日に起こっても全く不思議ではなく、既に想定内の事実として捉えるべきでしょう。

 日頃からの防災意識と、非常時への準備・備蓄を常に心がけておきたいものです。

/P太拝