「開かれた市政をつくる市民の会(鳥取市)」編集者ブログ

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日本政府はコロナウィルスの検査数をなぜ増やさないのか?(6)

 昨日の5/6、韓国は早々と外出・集会制限を緩和したそうである。
「韓国、外出・集会制限を緩和 公共・スポーツ施設再開 新型コロナ」

 ドイツも今月中にサッカーリーグを再開するとのこと。先日、緊急事態の延長を決めた日本とは対照的だ。
「ドイツ、封鎖措置を大幅緩和 プロサッカーも月内再開」

 各国のPCR検査数の今までの累計を見ておこう。次の4/30付の東京新聞の記事が主要各国の同時比較としては現時点では一番新しいようである。

「PCR検査態勢 積極的 遅れ 明暗分けた各国」

 この累計検査件数を各国人口(2018年)で割ることで、人口千人あたりのPCR検査件数を計算し比較してみた。

 韓国 11.7 ドイツ 24.1 ロシア 20.6 UAE 102.3 米国 16.4 日本 1.0

 日本がダントツで他の国よりも一桁以上も検査数が少ない。人口千人あたりの検査件数が韓国並みになれば外出規制の緩和ができるものと仮定し、さらに日本の今後の検査数を一日当りの平均で一万件 (いまだに一度もこの件数を越えたことはないのだが・・・) と仮定すると、日本が韓国並みに外出規制を緩和するまでには、あと145日、約五か月近くもかかる計算になる。

 ちなみに、より新しい検査累計数としては、韓国が5/3時点で630,973名、日本が5/6時点で156,866名との数字が出ている。

「韓国の新型コロナ感染者13人増え計1万793人 新規の市中感染3人」

「東洋経済オンライン 新型コロナウイルス国内感染の状況」

 さて、今月に入って、日本国内の新規感染者数がやっと減少に転じたようだが、急いで経済活動を再開すれば再度増加に転じることは明白である。上の各国の比較でも見たように、経済の回復と感染の収束を両立させるためには単に「三密」を避けるだけでは十分ではなく、PCR検査や抗原・抗体検査の検査数の激増こそが不可欠であることは、いまさら言うまでもない。

 最近はようやくPCR検査の拡充が遅れている原因に関する記事が散見されるようになってきたので、今回はあらためてその話題を取り上げてみたい。5/4の政府専門家会議後の記者会見で、副座長の尾身茂氏(地域医療機能推進機構・理事長)がこの点について触れている。

「PCR検査拡充されず「フラストレーションあった」 専門家会議」

 尾身氏によれば、PCR検査数が増えない理由は、まず過去の経緯としては以下。

① 日本では感染症対策は地方の衛生研究所が主に担ってきた。ここは既知の感染症対策が主な業務であり、新しい感染症を大量に検査する仕組みが国内にはなかった。

② 2003年のSARS流行が国内で起きなかったために、大流行した韓国やシンガポールに比べて体制の確立が不十分なままであった。

 次に現時点での問題点として、以下を挙げている。

③ 保健所の業務過多
④ 入院先の確保が不十分
⑤ 地域外来・検査センターの不足
⑥ 感染防護具、検体採取キット、検査キットの不足
⑦ 検体採取者の養成
⑧ PCR検査体制の把握、検査数や陽性率のモニター公表が不十分

 これを見ると、三月以降の二か月間、厚労省は一体何をしていたのかと言いたくなる。本来は自省が率先して当然手配すべき数多くの業務を、各県の保健所と衛生研究所に丸投げして傍観していただけではないのか。

 この尾身氏の会見の前に安倍総理の会見があり、その中でもPCR検査が増えない理由として上とほぼ同じ点を挙げているが、総理自身が動いて各部門の尻を叩くことも無く、今までこの状態を放置し続けて来たという点に対する反省は一切見られない。「自分とは関係ない、どこか他人事」という態度に終始している。

「首相記者会見全文(8)伸びぬPCR検査数「大都市圏中心に対策徹底」」

 また、次の記事を読むと、「厚労省は検査増大すべしとの旗を降っているだけ」で、現場の保健所は疲弊する一方で、日本感染症学会、日本環境感染学会学会は検査数の増加に反対し続けていることがわかる。

「PCR検査「全然受けられない人」を続出させる闇 クラスター対策への拘泥が現場を疲弊させる」

 政府が主導して、なかなか言うことを聞かない各抵抗勢力間の調整を図るべき局面のはずなのに、安倍総理指導力を発揮するどころか、国会では内閣府厚労省が作った作文を棒読み、品質劣悪なアベノマスクだけは積極的に率先して立案、官邸でソファに座って愛犬の頭をなでている動画を配信しては受けを狙っているだけなのである。

 日本医師会がそんなに怖いのだろうか。先回の記事でも述べたように、同医師会の推薦で自民党に加わっている議員は、たかが参院議員二名ではないか。安倍総理は国民の命よりも自民党議員二名の方が大事なのか?

 毎日のニュースには「医療崩壊」の文字が踊っているのだが、崩壊は病院内だけで起こっているのではない。一般家庭も含めた日本の医療体制全体がまさに崩壊しつつあるようだ。

 次の記事は、おそらく風邪だったろうと思われるのだが、先月下旬に突然38℃台後半の高熱を発した女性ライターが、四日間も開業医と相談センター(保健所)に相手にされず、自宅で寝ているしかなかったという生々しい体験をつづったものである。都内での話と推測されるが、既に地方でもこのようなタライ回しが起こっているとの記事が散見される。全く他人ごとではない。

 我々自身、明日にもこのライターと同じ状況に陥るかもしれないのである。おちおち風邪にもかかれない。現在、一般国民をこのように苦しめている責任が、無為無策安倍内閣厚労省にあることは明らかだろう。

「発熱は診療拒否、100回かけてもつながらないコロナ相談センター」

 さて、このような現状を見ると、日本という国はあいかわらず補給を軽視する国であることがよくわかる。先の戦争では食料や医薬品の補給を考えずに無謀な作戦を強行したことで多数の兵士の人命が失われた。実際の戦闘での戦死者よりも、餓死者・病死者の方が何倍も多かったことは周知の事実である。

 上に挙げた尾身氏によるPCR検査が増えない理由の③~⑦は、まさに物的・人的面における補給体制の不足に他ならない。直接責任を持つべき厚労省は、補給の責任を地方自治体や保健所に押し付けて傍観しているだけなのである。総理と厚労相の国会答弁だが、その実質はあの「大本営発表」の再現にほかならない。

 次の記事は、旧日本軍の失敗例を取り上げた名著『失敗の本質――日本軍の組織論的研究』の内容と同様の失敗が、今回のコロナ感染に対する日本政府の対応にも認められるとの指摘である。筆者もこの本は何度か読み返しているが、確かに、今回の政府対応には、旧日本軍の行動特性と共通する点がたくさんあると感じていた。改めて読み直してみようと思っている。

「繰り返される日本の失敗パターン」

 なお、この記事の最後で触れている「・・・安倍首相と親しいある評論家が、厚生労働省の戦略に批判的なテレビ番組に対して電波使用を停止すべきだなどと言い出した。・・・」の評論家とは、有本香氏のことである。

 次の記事が問題の彼女の主張である。「国民一丸」を阻んでいるのは、既存権益を死守しようとする厚労省日本医師会の身勝手な振る舞いを放置し続けている安倍総理自身だと思うのだが・・・?

「【有本香の以読制毒】「国民一丸」阻む敵は誰か? 批判ばかりの左派野党にあぜん、不安あおるワイドショーには罰則を」

 この記事の中で有本氏が使っている言葉の品性の無さは、例えば北朝鮮メディアのあの口汚い記事にそっくりであり、読んでいるうちにだんだん不快になってくる。全文を通して読むのは不愉快でしかないので、問題の下記部分は三ページ目にあるとだけ指摘しておきたい。「・・・非常時の悪質なフェイク報道には「電波使用停止」などのペナルティーを検討すべきである。・・」

 有本氏はフジ産経グループに所属しているニッポン放送文化放送も同じくフジ産経グループ)の常連コメンテーターも務めており、どうやら有本氏はフジ産経グループ専属の「評論家」らしい。こんな愚劣かつ低レベルの記事を恥ずかしげもなく堂々と書いているようでは、他のメディアからは到底お呼びがかからないであろう。総理のお友達には、実に優秀な面子がそろっているようである。

 4/6に「一日二万件のPCR検査体制の実現」を約束しながら、未だに検査数が最大でもその半分にも達していない安倍総理の発言こそが「フェイク」ではないのか?

 森友問題等でも国会で公然とウソをつき続けている総理を一貫して擁護し続けているフジ産経グループこそ、「フェイク記事垂れ流しメディア」の代表であり、即刻電波停止すべきではないのか?

 有本氏には、「天に向かって唾を吐く自称評論家」との称号を謹んで差し上げたいものである。 

 /P太拝