「開かれた市政をつくる市民の会(鳥取市)」編集者ブログ

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日本政府はコロナウィルスの検査数をなぜ増やさないのか?(1)

  日本でもコロナウィルスの感染爆発が目の前に迫っている感じだ。先週末からそう思っている。そう思ったきっかけは、大半の大学で新学期の開始時期が四月末以降に延期されたことを知ったからだ。東京や大阪が感染数の増加でそろそろ危なくなってきたところに約一か月以上も授業が無いのでは、とりあえずは生活費もかからず、より安全な地方の実家に帰ろうと思う学生が増えるのは当然だろう。若者は感染しても無症状か軽症の場合が多いので、帰った学生が家族や友人に移すことで地方でも感染が広まる。症状が出るまでの平均の潜伏期間は一週間程度とのことなので、今週末辺りからさらに各地で感染者が増えることになるだろう。

 残っている無感染県は岩手、鳥取、島根の三県だけになってしまったが、わが鳥取県でも近いうちに初感染者が出るのは確実だろう。筆者としても、とりあえずマスクや消毒液くらいは買っておきたいのだが、この二か月ほどの間、両方とも市内の店頭で売られているのを見たことがない。どうしようもない。徒手空拳のままに感染の拡大を迎えるしかなさそうである。

 上に挙げた帰郷学生による感染拡散のパターンだが、既にその実例が富山県で出ている。京産大の卒業生が富山に帰って3/24に数人の友人と食事し、3/31にその友人のうち二名の感染が確認された。ウィルスを運んできた京産大の卒業生だが、3/21にゼミの卒業祝賀会でその後に感染が確認された患者と接触、富山に帰って軽い咳がある状態で3/24に前記の友人たちと食事、3/30になって症状が悪化、入院して初めて感染が確認されたとのこと。

 感染の有無を調べるPCR検査の実施は、現在は、まず一般病院に相談・受診して医師の勧告があってからということになっている。しかし、まだ病院に行こうとは思わない軽い咳程度の症状の段階でも既に数名に対して感染させる能力があることは、この事例からも明らかだろう。

 感染を防ぐには検査数を増やして感染者を早期に特定する以外には方法が無いことは明白なのだが、未だに日本政府は従来の方針のままで動こうとしていない。重症の患者だけを検査するという従来方針では全く感染防止にならないのは明らかなのにである。

 安倍総理は、「政府の全力で取り組む」、「休業による損害は保証する」、「国民は命を守る行動を」と掛け声だけは勇ましいが、肝心の具体的な対策が一向に出て来ない。これでは「総理は空念仏を唱えているだけ」と批判されてもしようがない。かといって、先日の突然の全国一斉休校指示のように、専門家への相談もなしに思い付きでリーダーシップを発揮されるのも迷惑な話ではあるが・・・。

 検査数を増やすことの是非については、二週間ほど前までは活発な議論があったが、最近は沈静化してきているようだ。筆者はこのところ片付ける用事をいくつも抱えていて調べる時間がなかったのだが、今週になってようやく片付いたので、昨日からこの検査の問題について調べてみることにした。まず、このコロナウィルス感染の状況について既に分かっている事実を確認しておこう。

 感染程度を三段階に分けて下に図で示した。

 ①非感染、②感染して無症状または軽症、③感染して重症の三分類がある。最初の図は単なる数学的な集合図だが、実際の国内の位置分布は二枚目の図のようになる。重症者は各地の病院内に隔離されているが、無症状・軽症の無自覚な感染者が国内を自由に動き回って感染を広げている。また、各分類に対する現在の国内での検査・処置の状況を表にして三番目に示した。

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 この図と表を見れば、最大の問題点が、自分が感染したことを自覚していない②の「感染して無症状・軽症」に対する処置にあることは明らかだろう。感染を抑え込むには、検査数を一気に拡大して、誰が感染者であるかを明確にして自宅などで自主隔離に入ってもらうしかない。

 「検査数を増やすと病院の収容能力を超えて医療崩壊が起こる」というのが、検査能力拡大論に対する過去の主要な反論であったようだが、感染即入院との発想からいつまでも抜けきれないでいるからそのような結論となるのだ。既にドイツでは、無症状の患者は入院せずに自宅で療養させている。多くの国では、既に、国内の病院の病床数を越える数の国民が感染してしまった可能性が高い。無症状者までも入院させている現在の日本の対処法では、医療の崩壊は確実であろう。

 このように書くと、「感染が判明した人間がやけになって感染を拡げる行為に走ったら危険」という意見が出て来るかもしれない。確かに愛知県ではそのような事件があったが、あれはあくまで例外的な事例である。大半の日本人は自身の感染が判明すれば、家族や近隣の人の迷惑にならないように、重症にならない限りは自ら自宅隔離を選ぶはずである。規律を守るドイツ人の感染者の大半は、既にちゃんと自宅で静養しているのである。社会への同調圧力が強い日本社会では、いったん政府方針が出ればドイツ以上にそれを遵守する人々が多いはずだ。一部の例外を挙げつらうことで、より多くの人が救われる機会を失ってはならない。

 最近読んだ記事にも、現場の医療者からの「これ以上の検査拡大は無理」との声が載っていた。検査数非拡大論の典型であり、問題がどこにあるかを示すにはちょうどよい例なので紹介しておこう。

「PCR検査、なぜ受けられない? 対象の拡大には三つのデメリット」

 取材された専門家は、まずは検査結果の信頼性不足をあげている。しかし、仮に誤診が数割出たとしても、少なくとも感染と正しく診断された患者については、ほぼ確実に自由行動を控えるだろうから、その分だけ感染拡大を抑制できる。感染していないのに感染したと誤診された受診者も、(少々お気の毒ではあるが・・)同様に行動を控えるだろうから、これも感染抑制には効果がある。

 問題は感染しているのに感染していないと誤診断された感染者だが、事前に一定程度の割合で誤診が出ることをあらかじめ承諾してもらった上で検査することにすれば、この種の感染者が判定後に羽目を外して遊んで回る可能性は少ないだろう。そもそも、自ら進んで検査を受けようとする人は、ある程度は不安を抱えて受診するのはずだから、非感染の誤診後も基本的には行動を控える傾向が強いだろう。このように考えると、誤診断の可能性があっても検査数を大幅に増やした方が、現在は自由に歩き回って感染を拡げている人の数を減らせる分だけ、現状よりもはるかに感染抑制に効果があることは明白である。

 次にこの専門家は「検査の手間と人員不足」、「病院に感染者がやってくることで感染拡大の機会が増える」ことを指摘している。しかし、これらの点については、政府の方針次第でどうにでもなることである。大規模な予算を投入して設備と人員を増やせばよいだけの話だ。非正規職の大量解雇が既に始まっているが、政府が予算を投入して彼らの中の希望者を検査要員として即刻養成すべきである。ニューヨークではセントラルパークにテントを張って臨時病院を既に稼働させたと聞く。日本でも日比谷公園にテントを設営すればよいのである。

 この記事を書いた西日本新聞には悪いが、そもそも、取材した記者は取材相手を間違えている。この専門家は、戦争でいえば前線で敵に対して日夜銃弾を撃っているいる兵士に相当する。彼に「今以上に数多く弾を撃てるか」と尋ねても、既に疲労困憊した兵士は「到底無理、今が限界」と答えるに決まっている。取材するならば、後方で指揮権と予算と人員を握っている指揮官クラスに、具体的には安倍内閣の閣僚クラスに取材するべきであろう。

 医療現場をこのように疲弊させている責任が、ぐずぐずと判断を先送りして口先できれいごとを言っているだけの行政機関トップにあることは明らかである。取材した記者には、そこまで深堀りして書いてほしかった。


 今朝の日経新聞に各国の検査実施数の比較図が載っていたので、参考までに載せておこう。日本の100万人当たりの検査累計はベトナムよりも少ないのである。

 

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「コロナ検査、世界に後れ 1日2000件弱で独の17分の1」

 この図の元の記事を読むためには少なくとも無料登録が必要なので、面倒と思う人のために以下抜粋を載せておく。日本政府の対応が実に緩慢であることは明らかだろう。

・日本の百万人当たりの検査数117人(3/19時点)は、ドイツ2023人(3/15時点)の17分の1


・先に安倍総理は三月中に一日当たりの検査数を8千件に高めると述べていたが、実際の検査数(PCR検査)は1日2千件を超えることはなく、3/29時点で合計5万4千件。一方、ドイツは3/15時点で16万7千件に達していた。


・日独両国とも検査を受けるかどうかは医師が判断しているが、ドイツは感染しても無症状なら自宅待機とする対応をすでに取っている。日本では検査で感染が確認されれば無症状や軽症でも原則入院させている。感染症法の規定によるもので、患者を事実上隔離し感染拡大を防ぐ意味がある。


・3/1、厚労省は感染拡大で入院患者が増え重症者の受け入れが難しくなる場合、軽症なら自宅療養を原則とする方針を示した。しかし一か月後の現在でも、厚労省はそうした状況に達したとの判断や具体的な基準は示しておらず、入院を原則としてきた現場の対応は進んでいない。


・海外では時間のかかるPCR検査とは異なる簡易な検査法が広がり、韓国や米国はドライブスルー方式により病院外で大量の検査を効率的にできるようにしている。愛知県は軽症者向けの施設を病院以外で100室確保する方針。

さて、いつまでも対処法を決められないでいる日本を置き去りにして、ドイツは韓国方式を見習ってさらに検査能力を増強して一日20万件まで拡大する予定とのこと。下の記事中にある携帯電話による個人の追跡についてはさておき、検査能力の拡大については日本も早急に韓国とドイツに追随すべきであろう。

「独、ウイルス対策で韓国手本に 検査数1日20万件目指す」

(次回に続く)/P太拝