「開かれた市政をつくる市民の会(鳥取市)」編集者ブログ

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日本政府はコロナウィルスの検査数をなぜ増やさないのか(8)

 本日未明のニュースによると鳥取県内で21人目の感染者が米子市内で確認されたとのこと。

「米子市で新たに1人感染 30代女性会社員 鳥取県21人目」

 この感染例では、発症してから六日後にようやくPCR検査を受けて感染が確認されている。この間に他の人に感染を拡大させてしまった可能性も大いにありうる。検査能力を飛躍的に増やして感染疑いのある人を迅速に検査するという検査体制の拡充こそが、感染拡大防止にとって必要不可欠であることがこの一例を見てもよく判る。

 一方、既に陽性となった人の濃厚接触者である県内20例目の場合には、三回目の検査でようやく陽性が確認されている。
「新型コロナ鳥取県20例目の感染者 3回目の検査で陽性判明」

 感染者がいったいどのような段階で感染拡大させているのかが気になるところだが、忽那賢志医師による次の記事で詳しく知ることが出来る。感染初期の場合には、ウィルスの数が少ないために誤診が生ずることもかなりあるようだ。

「新型コロナ マスク着用による感染予防の最新エビデンス」

 記事の一部を抜粋すると、「・・・・新型コロナの感染伝播の総量を100とすると、この発症前の無症状者からの伝播が45%、そして無症状のまま経過する無症候性感染者からの伝播が5%ということで、合計50%は無症状者からの伝播であることが分かっています。・・・」

 要するに、「自分は無症状だから人にうつす心配はない」と思い込んでマスクも付けずに人に接している人が一番危ないということ。最近の感染増加は主として無症状者によるものとの説が一般的となっている。

 この事実を見れば、現在の「症状を医師が確認してからPCR検査を実施」との政府方針では感染拡大を止められないことは既に明らかなのに、日本政府は未だに検査拡大には踏み切ろうとしないのである。それどころか、感染が収まっているわけでもないのに「GoToトラブ(?)ル」を前倒しして、わざわざ税金を使って無症状感染者を国内にばらまいて感染拡大を促進しているのである。「愚か」と言う以外には形容する言葉が見つからない。

 さて、先回の記事から約一週間、この間に日本の陽性率はどう変化したのだろうか。「Our world in data」から再び本日時点でのグラフを抜き出して下に示す。8/3までの七日間平均値は5.8%まで上昇している。


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 相変わらず陽性率は急上昇中であり、市中感染がさらに広がっていることを示している。なお、先回のグラフから最近の数値が下がっているのは、東京都等でPCR検査に加えて抗原検査の結果も含めるようになったためとのこと。四月前後の陽性率が特に大きく下がっている原因はよく判らない。いずれにしても厚労省の発表データを元にオックスフォード大学の研究者が作成したグラフなので、これが日本政府の公式のデータのはず。厚労省のデータ集計方法には一貫性が無いように見える。


「中国のPCR検査能力、1日484万件 5カ月で4倍に増強」

 七月末現在で中国の検査能力は一日当たり484万件とのこと。一か月前の六月末からは検査能力が114万件も増えている。一方、現在の日本の検査能力は最大で一日当たりわずかに3.5万件。さらに検査実績は、一日あたり一万件程度に過ぎない。

 さて、あまりにも増えない検査数の実態に業を煮やして、世田谷区では区自ら公費での検査補助の実施へと踏み切るとのこと。世田谷区の取り組みには大いに期待したい。他の自治体でも後に続いてもらいたいものである。

「保坂展人・世田谷区長に聞く PCR検査を独自拡大する狙い」

 日本医師会もようやく重い腰を上げたようで、中川新会長自ら緊急提言を発表した。当初は検査数拡大に否定的だった医師会も、やっと変わりつつあるようだ。「安倍の大親友」と言われた前会長が、先日の会長選で敗れた効果が早くも出てきたのかもしれない。
「医師判断でコロナ検査を 委託契約省き促進―日本医師会が提言」

 さて、日本国内のPCR検査が一向に増えない理由を最近読んだ記事を参考にざっと書き出してみると、以下のようになるだろう。

① 医師の判断が無い場合には公費による検査を認めない。
② 医師を経由しないで自発的に検査したいのであれば、その費用は自己負担(約2~3万円/件)。会社の費用負担で従業員に検査を受けさせているケースもあるが限定的。
③ あくまで「保健所→衛生研」の流れでの検査が主であり、民間機関による検査は徐々にしか増えていない。
④ 唾液によるPCR検査や、短時間化した改良PCR検査も既に開発済だが、信頼性に疑問があるとして多くの医師が使いたがらない傾向がある。
⑤ 誤判定を恐れる医師が多い。
⑥ 陽性と判定した場合の入院・収容先を心配して検査数を減らそうとする傾向がある。

⑦ 採取した検体を検査機器のある衛生研等に送る段階で、人手不足等によって輸送に時間がかかっている。

 ①~③については日本以外の少なくとも先進国では、医師の判断なしで希望者は誰でも検査を受けることが出来、かつ検査費用は全額公費負担が一般的らしい。検査費用については、検査総数を増やして民間企業に競争させればすぐに数分の一以下になるだろう。

 仮に一件につき一万円と仮定しても、日本の全国民を検査するための費用は1.25兆円。先に全世帯に10万円ずつ配った配布金の費用は、現在の世帯数から計算すれば約5.3兆円のはず。この先、国がさらに各世帯に何十万円もバラまいたとしても、今の不安感が解消されるはずもない。先回のカネがあれば全国民に対して四回は検査できたはずだ。「自分も含めて誰が感染しているか判らない」という不安感が外出を控えさせ、経済を落ち込ませているのである。

 感染防止と経済の両立は検査数を増やして各個人の不安感を取り除く以外には実現する手段がないことは明白なのに、日本政府は一体何をしているのか?この騒ぎに便乗して国民からの税金を吸い取ることでボロ儲けしようとしている電通などの大企業に、火事場泥棒の場を提供しているだけではないのか?

 口先で「注意しましょう」と言うばかりで具体的に実行可能な方法を一向に示そうとしないのは、「頑張れば、竹槍でB29を落とすこともできるはず」と言っているようなものだ。窮地に陥った際、具体策を何ら示さずに精神面ばかりを強調しようとするのは、日本人に伝統の宿痾(しゅくあ)なのかもしれない。

 ④~⑦については、医師の不安感を取り除くべく、国が資金面も含めて強力に支援するべきである。誤判定の確率が三割あるとしても、感染しているかどうかが全くわからない人間が街中を歩き回っている現状よりははるかにマシである。医療関係者のように絶対に陰性であることが要求される職種については、検査を数回繰り返し全て陽性になった人だけがあたればよい。

 また、検査希望者に対しては、誤判定が原因で生じた経済的被害については一切保証しないことを検査前にサインさせるべきである。訴訟狙いの悪質な希望者を排除するとと共に、余計な訴訟リスクも事前に取り除いておくべきだ。

 検査結果が絶対正しいとは言えないことを検査希望者に周知徹底しておけば、陰性となった者も検査後に度が外れた振る舞いはしないだろう。もちろん、陰性と判定した直後に感染症状が現れて陽性判定に転じた誤判定者の治療費用についても、一般感染者と同様に公費負担とすべきである。

 軽度・無症状の感染者が増えすぎて医療機関や借り上げ施設に収容しきれなくなった場合には、自宅隔離とするのが欧米では一般的なようなので、それにならえばよい。コロナ禍で解雇された非正規社員が現状増えつつあるのが、感染者のサポート役や検査補助のための臨時職員として国が率先して雇うべきだろう。

 最後に次の記事を紹介しておこう。ちょうど一月前の記事だが、今の状況は当時とあまり変わっていない。

「【図解・社会】新型コロナに関する各国の検査件数(2020年7月)」

この記事の最後にある次の部分、何度読んでも腹が立つ。
「・・・厚労省の担当者は今後の検査体制について、「能力は民間で伸びているが、現在の3万件からどの程度増えるかの見通しは立たず、目標は設定していない」としている。」

 厚労省は検査体制の拡充を民間に丸投げして、今後どうするのかについての計画すら立てていないのである。検査数が増えず、あちらこちらで目詰まりしていてもほったらかしたまま。厚労省は責任を持つべき当事者ではないのか、いつまで評論家でいるつもりなのか?

 普段は厚生・医療行政の細かい点についてやたらと口うるさく、自分たちの権限拡張に血眼になるくせに、今回のような大ごとになると一転して役所の中に閉じこもり、ただ自分たちの既得権益が侵害されないように既存の体制を死守しようとしているだけだ。自ら進んで国民の生命を守ろうとすることもなく、自分たちの縄張りと将来の天下り先を守ることにしか関心がない。小役人根性丸出しである。

 怠惰な厚労省のケツをひっぱたくこともなく放置し続ける安倍内閣の無能さ加減については、今さら言うまでもない。アベノマスクの実用に耐えない小さなサイズと調達納期に関する無知ぶりからも、このマスク配布事業が総理とその取り巻きの補佐官だけで決められたことがよく判る。関係官庁も巻き込んで進めていたのなら、もう少しはましな結果となり、こんな無様なマスクが多額の税金を無駄に使って全世帯に配られることも無かっただろう。総理の取り巻きの出世官僚の失敗を願う厚労省の幹部連中は、アベノマスクのみじめな評判を見て「それ見たことか」と陰でせせら笑っていたのかもしれない。

 現在急がれるのは、臨時国会を至急招集して、必要な法律を整備し予算をつけて検査体制を抜本的に強化することしかない。このままずるずると無為に時間の浪費を続けていては、国内でのさらなる感染の蔓延と日本経済の再度の落ち込みは必至である。仮に今後奇跡的に日本だけが感染拡大防止に成功したとしても、世界各国の現状を見れば、来夏の東京五輪開催などはもはやあり得ないだろう。安倍総理が予定していた晴れ舞台は、既に風前の灯と化している。

 もはや安倍総理臨時国会を召集する気がないのであれば、内閣総辞職して次のリーダーに政権をゆだねることこそが、彼に最後に残された国民に対する責任の取り方というものであろう。

/P太拝