「開かれた市政をつくる市民の会(鳥取市)」編集者ブログ

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特別定額給付金10万円、オンライン申請は大混乱

 先日、鳥取県を含む39県に関する緊急事態宣言の解除が発表された。しかし、感染者数が減ったのは、過去約一か月にわたる外出の自主規制によって感染者との接触が減ったことによるものであり、ウィルスの感染能力とその危険性が多少なりとも減ったというデータは今のところ何一つない。

 宣言解除に浮かれて出歩いていては、再び感染者数が増加に転じることは確実だろう。真の「緊急事態宣言の解除」とは、国民全員の個人レベルまでの感染有無確認が可能になった時点、もしくは、画期的な治療薬又はワクチンが承認されて誰もがその適用を受けられるようになった時点であることは、いまさら言うまでもない。

 さて各自治体では、いわゆる「特別定額給付金」、各世帯当たり10万円の政府支援金の支給が始まっている。しかし、この支給開始の時期については、各自治体の間に極めて大きな差がある。わが鳥取市では、大半の世帯が支給を受けられるのは、早くて来月六月の初め。対して、米子市では今月初めから支給のための審査を既に開始しているとのこと。この「県内格差」に関する記事は、当「開かれた市政をつくる市民の会」のサイトに先日掲載したので、詳しくはそちらをみていただきたい。我が鳥取市は、おそらく鳥取県内では最も支給開始が遅いグループに入るようだ。

 この「鳥取市の何事につけても遅い対応」については、今後あらためて触れてみたいが、今回問題にしたいのは、「この給付金制度の仕組みが欠陥だらけ」ということについてである。10万円の申請については、「オンライン申請」と「郵送による申請」の二通りがあるが、この「オンライン申請」の仕組みが穴だらけであることが早くも露呈してしまった。

「給付金で大混乱「市役所窓口」のヤバすぎる内情 現場で起こる"3つの問題"に職員は怒り心頭」 

 問題点を整理すると、

① マイナンバーカードを持っている人の割合が低い(今年一月現在で約15%)のに、他国のまねで格好だけつけて同カード経由の申請ルートを作ってしまった。
② 根本的な欠陥は、この申請システムが各自治体の住民基本台帳システムとの間に全く関連性が無いこと。そのために、各自治体の職員が手作業で時間をかけて紐づけしなければならない。仮に一人が何度も申請した場合、職員の見落としがあれば同一人物に10万円が何度も支給されることになってしまう。
③ その他、政府サイトの回線の容量不足、政府広報の不徹底による住民の誤解等々、欠陥だらけ。

 他市に遅れてオンライン申請受付を始める鳥取市だが、はたして申請をうまくこなせるのだろうか。一人で何度も10万円をゲットする例が出てこなければ幸いである。

 なお、筆者はマイナンバーカードを持っていない。政府がカードを何に利用するか判らないので作る気にはなれない。

 「政府はカードの用途をあらかじめ明示しておくこと。この指定用途以外の目的にカード情報を利用した者、または利用を指示・教唆した者は、罰金一億円、もしくは十年以上の懲役に処す。」というような法律が成立すれば作る気になると思う。

 しかし、何事につけても指示内容を曖昧にして、後で「人治が介入する余地」を極力残しておこうとする我が国の官僚の体質をみれば、このような法律が実現するとは到底思えない。
 また、各自治体の住民管理システムが全くバラバラであることはこの記事を読むまで知らなかった。役所の業務効率がこのような有様では、国全体の生産性がOECD諸国中で最低ランクにあるのも当然の結果だろう。こういう問題の解決こそが政治家の出番のはずなのだが、政治家も官僚も関連業界も、お互いに摩擦を避けて既得権益の中に安住するばかりである。

 それにしても、この内閣の無能さ、実行力の無さにはあきれるほかはない。元々は「下駄についた雪」、もしくは「濡れ落ち葉」であったはずの公明党にダダをこねられて導入した一世帯当たり10万円だが、安倍総理と今井補佐官を始めとする一部の取り巻きが主導、官房長官以下の内閣の主要閣僚は総理の独走をただ傍観していただけのようである。通常の意思決定ルートであればもう少し各層官僚機構によるチェック機能も働いたのだろうが、功をあせった拙速の結果、このオンライン申請システムも、未だに届かないアベノマスクと同じく大失敗に終わりそうである。

 この我が国政府の対応とは対照的な事例も紹介しておこう。一つは既にその迅速な対応がよく知られている台湾、もう一つはコスタリカである。

「「自粛最小限でも感染ゼロ」台湾の絶妙なやり方 「休校」も「営業自粛」もこんなに違っていた」
 この記事シリーズは漫画入りで判りやすい。他の記事も参照されたい。

「台湾のコロナ対策を賞賛する、日本の人たちに知ってほしいこと」
 今の台湾の民主主義は市民が血を流して獲得したものであることがよくわかる。これを読むと、選挙のたびに投票率三割が当たり前になりつつある今の日本は、本当に民主主義国家なのかと疑問に感じてしまうのである。

「台湾のコロナ対策が爆速である根本理由 「閣僚に素人がいない」  ポストを実力本位で振り分けている」 
 非常に優秀な人を選んで大臣にしていることが、台湾の迅速な意思決定の背景にある。閣僚21名中で国会議員は3名しかいず、他は各分野の専門家とのこと。政権与党が交代しても引き続き閣僚に留まる専門家も多いとのことである。

 大臣ポストの選定が総裁選での論功行賞の場と化し、「パソコンに触ったことがないIT担当大臣」、「三権分立の意義が理解できない法務大臣」等々の存在に、日頃からため息をついている日本人から見れば、なんともうらやましい話である。日本の政治が台湾並みになるのは何時の日だろうか?

 ご存じのように、台湾は大陸中国との間で常に臨戦態勢にある国(あえて国と言いたい)なのだが、それとは対照的にコスタリカは軍備を放棄した国として有名であり、ある種の理想国家でもある。強権的国家でなくても、ちゃんとコロナ対策ができるという素晴らしい実例である。

「コスタリカは、なぜたったの1か月でコロナ患者を半減させられたのか?」
 担当大臣が医療専門家であること、患者の窓口負担が無料(保険料は必要)、治療方針の早期明確化、軍事費が無いことで保健体制が充実できた等がその理由だが、何と言っても同国が人口約五百万人の小国であり、政府が国の隅々まで実情を把握していることが有効な対策を打ち出す上では大きいのだろう。

 これを読むと、日本政府も自己満足と支持率狙いのパフォーマンスばかりやっていないで、早急に各県に権限と財源を渡し、各県ごとに地域の実情に応じた対策を取った方がコロナ感染対策には有効だろうと思うのである。

 /P太拝