「開かれた市政をつくる市民の会(鳥取市)」編集者ブログ

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コロナ、GoTo、菅総理(2)- 支離滅裂な総理発言 -

(前回からの続き)

 一昨日、GoTo政策に関する野口 悠紀雄氏(早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター顧問、一橋大学名誉教授)の記事を読んだので紹介しておこう。野口先生の記事には、常に数字によるデータが明示されているので非常に説得力がある。世の中に数多く出回っている、自分の感情にまかせて書きなぐっただけの記事とは雲泥の差があると思う。

「「強きを助け、弱きを見捨てる」、これがGoTo政策の本質だ」

 記事の内容を要約すると、

・GoToが支えている宿泊・飲食・娯楽業は単価の高い大企業が主で、元々単価の低い零細企業は対象外。現在、本当に苦しんでいるのは零細企業などに属する低賃金の弱者。

・(大企業に勤める人の割合が多い)勤労者世帯の実収入はコロナ禍にもかかわらずむしろ増えている。

・GoToを利用して旅行に行って得をしているのは感染しても重症化する恐れが少なく、かつ収入面では旅行する金銭的余裕がある若者層。今の政府の政策が、彼らと貧困層・高齢者層との間の格差を拡大させている。

 「GoToトラベル」の現場の実態については、以下の記事でよくわかる。コロナ対策として始めた「GoToトラベル」とは、要するに、その対象を大手ホテルやJTBなどの大手旅行代理店に限定しての国民の税金による救済策に他ならない。その副産物としてのコロナ感染が全国拡大してしまったのが現在の惨状なのである。本末転倒というほかはない。

「テレビが報じない「GoToキャンペーン」の異常なウラ側」

「1泊6万円」旅館、高級ホテル-GoTo恩恵は高額旅行に集中

「内部資料入手「GoToトラベル事務局」大手出向社員に日当4万円」

「安倍政権のゴリ押し「GoToキャンペーン」で窮地に立たされる沖縄。感染拡大止まらず」

 先回の記事では「GoToの被害者の典型例が沖縄県」と言い切ってもよいほどの感染の実態について書いたが、上の8/13付けの記事はそれを裏付けるものだ。安倍前総理と菅総理は、二人して真っ先に沖縄に行き、沖縄県民に土下座して謝罪すべきだろう。

 この記事の筆者は「本土側も、今の沖縄の状況を対岸の火事とは言っておられなくなる」と既に八月の段階で指摘していたが、四か月たった現在、その予言通りとなってしまった。

 (3)支離滅裂な菅総理の発言

 さて今回の本題に入ろう。菅内閣が発足してからの三か月間で見えてきたものは、菅総理が発する言葉の異常なまでの支離滅裂ぶりである。これほどまでに公的な場で非論理的な発言を連発する人物を筆者知らない。実例を二件あげておこう。

 ①「GoToトラベル」による感染の拡大を否定する一連の発言。

 先月の中頃だったか、テレビのニュースを見ていたら、「GOTOトラベルでの利用者の感染は〇〇人」との報道をやっていた。確か、その時に報道された人数は数十人程度だったと思う。

 「利用者だけを対象に数えて済むはずがないじゃないか、出先で接触した人間は数えないのか、アホか!」とその時は思っただけだったが、その後も次々と同じようなニュースを流していた。こんな情報を流せばごまかせると思っているのだから、今の内閣は本当にレベルが低い。

 以下、時系列的に当時のニュースへのリンクとあわせて画像へのリンクも貼っておこう。

(注:サイトへのリンクと共に画像へのリンクも貼っておいたのには理由がある。先ほどの 12/14 18h過ぎに、「GoToトラベル、全国一律停止」のニュースが流れた。

 このような現政権の政策に不利なニュースが流れると、現政権の政策に関するそれまでの関連記事のサイトが一斉に消去される傾向がある。おそらく内閣府から各報道機関に対して消去の圧力がかかるのではないか。仮に直接の圧力は無いとしても、各社が政権に忖度して自主的に消去する可能性はある。
 あわてて「GoTo トラベル」に関して以前にチェックしてURLを記録しておいた記事を見直したが、既にいくつかの記事が消去されていた。ただし、yahooやmsnニュースのようなまとめサイトでは、公開後数日にして消されることもある。元々の発信元サイトでも一か月もしないで消されることもあるので、消去されたこと自体が発信元が政権に忖度した結果とは直ちには断定できない。

 ともあれ、近い将来に消されてしまう可能性は大いにあるので、念のために、この件に関連した現時点での公開記事を先ほど画像としてコピーしてストアしておいた。)

 「11/03 観光庁「GoToトラベル」の利用者76人の新型コロナ感染を報告 -ホテルバンク-」 「同 画像」

「11/13 GoToトラベル、138人が感染報告 -共同通信-」 「同 画像」


「11/27 GoTo トラベル利用、感染者は202人に -FNNプライムオンライン-」

  「同 画像」

 

 次の記事は、国会での菅総理の答弁に関するもの。
「11/26 GoTo 強気の菅首相 効果に自信、「元凶説」否定 -予算委- -時事通信-」  「同 画像」

  この記事によれば、首相は国会で珍妙な自説を堂々と展開したそうである。以下、記事の一部を引用する。「(首相は野党からの質問に対して)・・・『トラベル事業の利用者延べ4000万人に対して、関連する感染確認は180人程度にとどまる』と数字を挙げ、取り合わなかった。 首相の強気を支えているのは、地方の観光関連業者を中心に事業継続への期待は根強いとの判断だ。安倍内閣官房長官時代に前倒しでの実施を主導した経緯もある。25日の答弁では「地方は『トラベル』で雇用を維持できている」と断言した。」 

 ちなみに、「GoTo トラベル」を開始した7/22時点での全国の感染者数は27,265人であった (NHK特設サイト)。先回の記事でも示したように、GoTo開始後に感染者は急増、12/13時点での感染者数は180,630人、この間の感染者増加は実に153,365人である。沖縄県だけを取ってみても、この間に157人から4805人へと4648人もの激増である。

 その全てがGoToのせいとは言わないが、その何割かはGoToをやらなければ感染しないですんだ人々なのではないのか。菅総理は、どのような根拠をもって「影響は180人どまり」などと主張しているのか?

 ここで気になるのは、「首相は・・・地方は『トラベル』で雇用を維持できている」と断言した。」との部分だ。雇用を維持できているのは首相の支持基盤である「観光関連業者」だけではないのか?官房長官当時の菅氏が異常なまでにこのGoTo事業を熱心に推進した理由はここにあると思う。疲弊する医療従事者や、コロナ感染拡大で受注が停まった零細な製造業者に対する配慮はかけらも見られないようである。

  さて、多くの人がすでに気づいていると思うが、菅総理は、GoToの影響による感染者を「GoTo利用者自身に限定した感染者だけ」としかとらえていない。利用者が旅先で接触する人々へ感染を移す確率は、なぜかゼロとみなしている。我々国民にとってはすでに常識である「無症状者でも他人に感染させる危険性がある」ことすらも、総理は未だにご存じないようだ。

「新型コロナウイルスに関するQ&A(一般の方向け)-厚生労働省-」

 また、体調の悪い人は、このような状況下では当然のことだが、あえて旅行や出張にはでかけないはずだ。出かけるのは自分の健康に自信がある人が大半だろう。そのような人だけに限定して感染者を数えておいて、「GoTo利用者の感染は少ない」と主張するなどというのは、完全に子供だましというほかはない。
 最近の小学生はスマホを使うせいか、実によくものを知っている。この菅総理の説明が実にアホくさいことは小学生でもわかる。この説明にうなずくのは幼稚園児くらいなものだろう。そういう意味で、現職の総理大臣による実に幼稚な説明と断言して差し支えないだろう。

 さらに驚くのは、国のトップであるはずの総理大臣が、国権の最高機関であるはずの国会の場で、このように幼稚、かつ客観性がまるで欠如した議論を堂々と展開していることだ。最初にこの説明をし出してから一か月以上も、このアホな説明を官房長官も動員して展開している。さすがに東大経済学部卒の加藤勝信官房長官は、恥ずかしいのか目を伏せながら小声で説明してはいたが・・。自ら進んでバカな上司を選んだ結果なのだから、自業自得というほかはない。

 

②「日本学術会議のメンバーの45%が旧帝大の出身者」との発言

「菅首相 学術会議の会員 旧帝国大所属45%で“偏り”と説明」

10月にこの発言を聴いた時にも「アホか!」と思った。菅内閣になってからは、ニュースを聞いて「アホか」とつぶやくことが非常に多くなってしまった。

 前内閣が旧帝大に重点的に予算配分してきたことは、少なくとも大学関係者には常識である。一例として、旺文社がまとめた2017年度の各国立大学への国からの「運営交付金」の内容を下に示しておこう。各大学への分配額は8ページ目に載っている。

「国立大「運営費交付金“等”」の仕組と狙い! -H29 年度「運営費交付金等」は東京大 824.1 億円、京都大543.5 億円など-」

 86校もの国立大学がある中で、交付金金額が多い順では東大を筆頭にその八位までに旧帝大七校の全てが入っている。この七校への運営交付金の合計は運営交付金全体の33%を占めている。この割合は過去十数年間ほとんど変化していないようである。

 国からの運営交付金は全国立大学の収入の約四割を占めており、残りは各大学自身の努力による自己収入だが、自己収入の約7割が医学部付属病院の収入である。旧帝大の全てに医学部が設置されているので、自己収入分を含めれば、全国立大学の全収入の約半分程度が旧帝大七校の収入となっているものと推測される。

 資金をより多く獲得している大学に、優秀な学者・研究者がより多く集まるのは自然な流れである。菅総理が「日本学術会議構成員の45%を旧帝大出身者が占めているのは、けしからん!」というのであれば、この七大学への運営交付金を集中的に削っていればよかっただけのことである。

 国家予算の全てに関与でき責任も有する官房長官の椅子に過去七年間も座っていながら、この構造を何も変えようとしてこなかった人物が、今になってから急に取って付けたように「けしからん!」と言い出す訳が全くわからない。72歳にして、既に自分がやってきたことを全部忘れてしまったのだろうか?

 菅総理には「説明能力」が全く欠けていると以前から思っていたのだが、これらの発言をあらためて整理しなおしてみると、「知的理解力」と「論理展開能力」も非常に欠落しているように見える。

 普通の能力と感性を持つ大人であれば、少なくとも上に挙げたような非論理的な話を人前で公然とするのは恥ずかしくてとてもできないだろう。その意味では、菅総理は例外的に「厚顔無恥力(無知力?)」に関してだけは、ダントツでトップに位置しているのかもしれない。

 何はともあれ、ようやく昨日になっての「GoTo トラベル  Stop!」は素直に歓迎したい。コロナで死ぬ人がこれで少しは減るだろう。

/P太拝

 (1億2千6百万人が乗る日本丸の舵取りをする船長としては非常に能力的に問題があると思われる菅氏が、なぜ総理の座にまで登りつくことができたのかという話については、次回に回したいと思います。

 この人の行動や発言を調べていると、今の日本の政治が抱えている問題点がかなり明確になってくる感じがするので、ついつい話が長くなってしまうのです。)