「開かれた市政をつくる市民の会(鳥取市)」編集者ブログ

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コロナ、GoTo、菅総理(3)- 感染阻止の対策は? -

 前回の末尾に、「次は菅氏が総理の座に登りつめるまでを書きたい」と書きましたが、今回はやめにしました。既に多くの人が彼の無能力ぶりの深刻さに気づいてしまったので、今さらあえて菅氏について書くまでもないからです。

 ご本人は、何とか来年秋の衆院選までは這ってでも総理の椅子にしがみつこうとするでしょうが、どうせスカ内閣は長くはもたない。今回はもっと建設的な話題について取り上げたいと思います。


(4)コロナ感染拡大を止める方策

 先日読んだ記事で、東京都医師会会長の尾崎治夫氏が興味深い提言をされていた。

「「勝負の3週間」に敗北…日本のコロナ対策に決定的に足りないもの」

 その提言内容とは、この記事の3ページ目にある以下の部分。感染対策と経済対策を両立させるためには、長距離移動者に対して検査を義務化すべきとの意見である。

「・・「社会を動かすためのPCR検査」が必要です。「Go Toキャンペーン」が実施されましたが、東京から人が来ると受け入れる地方の人はやはりこわい。「けれど観光業、飲食業を守り、経済を回すためには……」という意見をよく聞きました。であれば、地方に行かれる方、特に新幹線、飛行機を利用される方は、旅行パックのなかにPCR検査、または抗原検査を組み入れ、陰性の方は出かけてもらうという仕組みを作ればいいのです。・・・」

 この提言には全面的に賛成したい。日本を含む世界各国が、国境で厳密なPCR・抗原検査と入境制限を実施して感染者の侵入を阻止しようとするのはなぜなのか。国境を越えての移動者が感染拡大の最大の、そしてほぼ唯一の原因であるからにほかならない。

 では、なぜ日本では、国境では厳密な入境規制をする一方で、国内では感染しているかどうかも判らない国民の自由な移動を放置し続け、さらに1.6兆円もの税金を投入して政府が移動の奨励さえもするのか? これでは国内全地域での感染爆発は当たり前だ。それなのに、我がスカ総理は、「GoToは感染拡大に影響していない」と、子供にもバカにされるような幼稚な主張を繰り返して来たのである。

 筆者も、以前から感染防止と経済の両立のためには移動者に対する検査を実施するしかないとの思考実験を既に行っていた。筆者のようなペイペイの一市民が言ってみたところでどうにもならないとは思っていたが、今回、東京都医師会の会長様に同じような主張をしていただいたので、この機会に以下に試案を述べておきたい。

① 国内で長距離移動をする人(全国民+全在住外国人)にはPCR検査(またはそれと同程度の信頼性のある検査)を義務付ける。検査終了後は、長距離移動中には「PCRパスポート」の所持を義務付ける。「長距離」の定義が難しいが、例えば隣県への移動はOKだが、自県と接していない県への移動は「長距離」とみなす、等々。

② PCR検査は無料とし、その費用は全額国が負担する。最近は二千円を切る価格でPCR検査を請け負う民間業者も増えている(以下の記事を参照)。仮に一件につき二千円と仮定すれば、全国民が検査を受けてもその費用は二千五百億円程度ですむ。GoToにかける1.6兆円をこの検査の財源に回せば、赤ん坊から高齢者までの全国民が検査を六回も受けることができる。また検査時間についても数十分で結果が出る方式なども増えているので、受診者にとってもそう負担にはならない。


「PCR検査「1980円」 理研発スタートアップが事業化」
「ソフトバンクG、低価格PCR検査を個人にも 21年3月に」


③ 最近は唾液によるPCR検査も可能となり、安全性も増している。素人でも、一定の研修を受けさえすれば検査要員として国が一時的に雇用することも可能だろう。コロナ禍によって失業した人々を、是非、検査要員として優先的に雇用すべきである。

④ 長距離移動者が交通機関の切符を購入する際には「PCRパスポート」の提出を義務付ける。長距離移動者がホテル・旅館にチェックインする際も同様とする。提出がない場合には、当該業者は切符の販売や宿泊を拒否しなければならない。

⑤ 業務で日常的に長距離移動を繰り返す労働者(長距離トラック運転手や営業マン等)に関しては、企業経営者が労働者にPCR検査を受けさせる義務を負うものとする。違反した企業には罰則(罰金、営業停止等)を課す。

⑥ PCRパスポートの有効期限は2~4週間といったところだろうか。専門家の意見を取り入れて決めればよい。

⑦ 自家用車で実家に帰る人などが検査の網から逃れることになるが、移動する大半の人が検査を受けた状況になれば、実家側でも検査を促すか帰宅を拒否することになるだろう。社会の同調圧力が強い日本では、検査の網から逃れようとする人は少数にとどまるだろう。

⑧ PCRパスポートを持っているからと言っても、完全に陰性であることが証明された訳ではない。このことは検査を受ける人を含めた全国民に周知させる必要がある。パスポートを持っていても、従来通り「三密を避けマスクをする」ことが要求される。

 以上のような提案をすれば、当然、「偽陰性や擬陽性の問題をどうするんだ」という指摘が当然出て来る。しかし、「百パーセント正確な結果が得られない検査は中止」などというのであれば、全国で実施中のPCR検査を全て中止しなければならなくなる。

 今は重箱の隅をつついて喜んでいるような局面では既にない。個々の誤判定はあっても、国全体として感染確率をいかに減らすのか、感染が減少していく地域の数をいかに増やすのかという議論を優先させるべきである。

 不思議なのは、検査数を増やすべきという意見に対して反論するのは、大体が医療関係者であるということだ。彼らの反論には数字が含まれておらず、客観性に乏しく感情的なものが大半である。「感染者数が増えたら設備が足りなくなって収容できない」というのであれば軽症者は自宅療養してもらうしかない。検査数を増やさないままでいれば、自分が感染していることも知らない数多くの人間が国内をウロウロと歩き回ることで、この先はもっと大変なことになる。現在はその五合目というところだろうか。

 また、「医療体制を万全にする、医療者の賃金も上げる」とずっと言い続けながら、その実、ちっとも実行しようとしない政府に対しては医療者側がもっと強く抗議すべきである。一体、何でそんなに政府に遠慮しているのか?

 一方、感染抑え込みにほぼ成功している台湾では、検査数は増やす必要はないという見解がほぼ定着している。下の記事に見るように、台湾の中央感染症指揮センターの指揮官である陳時中厚生大臣が8月の時点でPCR検査の扱い方について自ら発表しているのだが、これは感染者をほぼ完全に特定できている台湾だから言えることである。

「新型コロナを封じた台湾、日本との「決定的な違い」とは」


 東京や大阪で新規感染者の半分以上が「感染経路不明」となってしまった日本の現状では、到底、台湾と同じような方式はとれない。誤判定を承知の上で、少しでも全体の感染確率を減らすためには、やはり検査機会を増やす以外には道はない。特に全国への感染者の供給源と化してしまった大都市からの地方への移動、さらに地方から大都市への移動に対して検査というフィルターをかけることで、まず地方の感染機会を減らすこと。次の段階では大都市とその周辺部との間の移動にフィルターをかけること。このようにして感染地域を段階的に追い込んでいけば、感染の極小化も見えてくるのかもしれない。

 なお、上の記事の一ページ目にある擬陽性や偽陰性の割合が示されている図について。筆者はコロナに関する日本国内の記事をかなり詳しく読んで来たのだが、その中ではこのような明確なデータを見たことがない。結局、日本では「大変だ」と大騒ぎするだけで基礎的なデータさえも誰もまともに取っていないし、政府もそのようなデータを集めることには全く関心がないようだ。両国の政府トップの知的レベルの差がこんなところにも現れている。

 科学的な検討もろくにしないままに、わが政府は「三密回避とマスク装着」以外の対策では精神論を振り回すだけである。我が国の指導者層は、戦後75年経ってもいまだに「焼夷弾が落ちたらバケツリレーで対処」のレベルのままで思考停止している。彼らは、この騒ぎを利用して自分のタニマチ(後援者)に税金をみつぐことにしか関心がないようにみえる。

 さて、感染の現状を示す指標として重要なのは「実効再生産数」Pである。これは一人の感染者が何人に感染させるのかを示す指標で、Pが1以上なら感染は拡大、Pが1以下なら感染は収束方向にある。東洋経済オンラインのサイトでは、この指標が表示され毎日更新されている。

「新型コロナウイルス国内感染の状況」


 このサイトの最初のグラフ群の三段目の「実効再生産数」がそれである。(この指標の計算式は、グラフの下の「もっと読む」の所をクリックすると現れる。この計算式は等比数列(高校の数学で習うはず)を使って導くことが出来る。興味のある方は証明にトライしてみてください。)

 このグラフによれば、12/29時点での「実効再生産数」は1.17となっている。感染拡大期ではあるが、それほど急速に拡大しているわけではない。したがって、何らかの手段を用いて感染が次の人に移るのを少しでも防ぐことが出来れば、実効再生産数は容易に1以下となり感染収束期に移行するものと予想される。その有力な候補こそが、上に述べた遠距離移動者に対するPCR検査の義務化なのである。

 このグラフでは今年の3/1以降の値もたどることができる。実効再生産数のピークは、感染がもっとも急速に拡大している時点を示す。その時点とは、感染第一波では4/3に2.27、第二波では7/4に1.86、第三波では11/12に1.42となっている。現在は感染が急速に拡大しているように見えるが、感染が全国に広がって母数が大きくなっているためにそのような感じがするのであって、第一波、第二波の方がもっと急激な増加を示していたのである。
 なお、この第二波での実効再生産数のピークの日付、7/4に注目されたい。「GoToトラベル」の開始は7/22であった。仮に、この指標に注目するような賢明な政府を我々が持っていたならば、その賢明な政府は感染の急速な拡大を察知して即座に有効な対策を取っていただろう。現実の、我々の愚かな政府は、逆に「GoToトラベル」のような愚劣な政策を立案し、さらにその実施を前倒しして、約五か月間にわたって感染者を積極的に全国にばらまいて来たのである。

/P太拝