「開かれた市政をつくる市民の会(鳥取市)」編集者ブログ

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前鳥取市長の竹内功氏は、来夏の参院選で勝てるのか?(2)

 先回の続き。
 先回述べたように、筆者は竹内氏の政治家としての実績をまったく評価していませんが、ここはではいったん客観的な視点に立って来夏の参院選での同氏の当選可能性について調べてみましょう。

 過去の四回の参院選比例区における自民党の候補者数、当選者数、最低得票数を下に示します。
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 なお、このデータを調べるにあたっては、読売新聞のサイトが非常に役に立ちました。詳しい得票数まで載っています。一例としては次のサイト。

 上の表を見ると、第二次安倍政権下で自民党が圧勝した2013年でも、自民党比例区では定員48名中の18名、37.5%しか取れていません。安倍政権の支持率は当時よりも低下しているので、来夏の参院選では18名以上の議席を確保するのは難しいものと予想します。

 次に、現時点での自民党の公認候補予定者の顔ぶれを見てみましょう。自民党の公式サイトには現時点での公認候補予定者一覧が載っています。比例区では、現職8名、元職1名、新人13名の計22名がすでに公認されています。

 このリストは第三次発表のはず。先月末に確認した時は第二次公認までで、確か19名が公認されていました。約一か月で三名しか増えていません。過去の立候補者数から見て、今後、あと数名の公認候補が追加される可能性はあるが、今回は自民党はあまり多くの候補を立てない方針のように見える。そして竹内功氏は、この第三次の公認候補としてようやく認められたわけです。
 なお、この一覧での掲載順序は、当選の順序とは全く関係がありません。衆院選比例区と異なり、参院選比例区ではより多く名前を書かれた候補から順に優先して当選する仕組みになっています。

 次に、どのような候補が当選しやすいのかを調べてみましょう。上で紹介した2013年参院選の結果では、落選したのは元職一名を除いて全て新人でした。現職は皆当選し、新人で当選したのは得票順に次の九名。これを見れば、石破自民党鳥取県連会長が、鳥取市内在住の全特元会長の出馬を再三にわたって要請した理由がよく判ります。

・全特(全国郵便局長会)の元会長(自民党候補の中ではトップ当選)
・元衆院議員
・酒造会社社長(兼 全国商工連合会青年部会長)
・元産経新聞記者(新興宗教教祖の孫、安倍総理と同郷で親交が深い)
・飲食全国チェーンのワタミの元会長
・元衆院議員(厚労省副大臣

 ほとんどが全国組織の支援を受けている人物か元国会議員。太田房江大阪府知事でさえ約7万票を集めるのがやっとでした。

 ここでようやくですが、竹内氏の当選可能性について考えてみましょう。

 氏は国交省の出身ですが、国交省では今年の夏の第一次公認候補発表の段階で、すでに支援候補を決めています。元国交省技監の足立氏。同氏への支援を監督官庁から要請されている土木・建設業界が、今から約14年も前に国交省を退官した竹内氏にあえて投票するとは思えない。

 他の立候補予定者を見ても、全特、日本医師会、土地改良区、JA、全国商工連合会等々、全国組織の支援を受けている候補がズラリと並んでいます。今回の主題からは外れるが、参院比例区が各種圧力団体の代表者を国会に送り込む格好の舞台となっていることがよくわかります。

 要するに、竹内氏には集票を期待できる全国組織は存在しません。

 公明党はすでに独自候補を立てて、街中に候補者の顔写真を貼りまくっています。各地区ごとの集票ノルマもすでに決まっていることでしょう。ここからの票もまず期待できない。

 結局は、鳥取・島根の自民党支持層に働きかけて票を集めるしかないのでしょう。その際には、「地元の代表者を国会に送ろう!」と地元意識に訴えるフレーズを使うことは間違いない。自分の出身高校でなくても、その高校の名前もほとんど知らなくても、「同じ県内の高校が甲子園に出るのだから、いちおうは応援するぞ。」というようなよく見かける地元意識の延長を期待する戦略です。しかし、竹内氏のような人物は、高校球児とは根本的に違う、まったく別世界の存在なのです。
 
 過去の実績を見れば、彼は地元の代表者でも何でもない。「彼が代表しているのは自分だけ」なのです。彼が「国からのカネが出るから」と、自分の権力を広げるための手段としてハコモノを作ればつくるほど、地元の人間は迷惑することになる。

 と言うのは、国が約束通りに地方交付税に含めてカネを支払ってくれないことは明らかだからです。竹内前市長は「国の合併特例債制度を使って市が金融機関から借金すれば、国はその返済分を地方交付税に含めて支払ってくれる」と主張し続けてきました。

 しかし、鳥取市は昨年度末時点で合併特例債をすでに252億円も発行しており、その償還額(借金返済額)は年々増え、昨年度は20億円を超えています。一方でこの償還額がその中に含まれているはずの国から市への地方交付税は、平成25年度をピークとして減少に転じています。

 国の財政状況をみれば、国からの地方交付税が今後さらに減ることは明らか。一方、竹内氏が全国で初めて住民投票結果を無理やりひっくり返して成立させた鳥取市の市庁舎新築移転計画をこのまま進めれば、少なくともさらに合併特例債が百億円近くは積み上がることになります。ハコモノ建設費を増加させた結果、今後は市民サービス等に回す財源が大幅に削られることは明らかです。

 このような竹内氏の手法は、地方の自立を目的とし地方の自発性に期待する現在の「地方創生」戦略に対し、完全に逆行するものです。石破地方創生相が竹内氏の擁立に最後まで難色を示したのも当然と言えば当然でしょう。

 地方創生相の地元からこのような人物が国会議員となるようでは、担当大臣のメンツはつぶれ、その将来にかかわる結果になりかねないと思います。

/以上