先週末からラグビーWカップにドップリとはまっている。9/20開幕戦の日本対ロシア。もちろん試合内容もよかったが、その前の開会式も簡素かつ短時間で印象的だった。試合が始まると、体重100kg前後の大男たちが全力で疾走して正面からぶつかりあう、その迫力に圧倒された。小柄な日本人同士の試合とは迫力がまるで違う。それからというもの、毎晩のように外国勢同士の試合を見ている。
一番すごいと思ったのは、やはりニュージーランドと南アフリカの試合。試合前のオールブラックスのハカも実に勇壮でしたね。今夜は試合がなくて暇なので、久しぶりにブログを書こうと思ったしだいです。
なんでこんなにラグビーに引き付けられるのかと考えてみると、ラグビーには短距離走、格闘技、球技に不可欠な敏捷性等々、スポーツに要求される個々の要素が全部含まれている。さらにあえて言えば、ラグビーはもっとも戦争に近いスポーツ、いわば「戦争行動をもっとも模倣したスポーツ」なのだろう。我々の、特に男性の心理の中には、格闘し相手をやっつけて自分の支配下においてみたいという欲望が多少なりともあることは否定できない。
何しろ百年ほど前まで、我々人類の御先祖様は世界中の至るところで血みどろの戦いを繰り広げていたのである。より闘争的で戦い上手な連中ほどより多くの子孫を残せたのだろう。我々の大半こそ、彼らの子孫に他ならない。
最近の世界はかなり平和になってきたとはいうものの、殺人の技術はますますエスカレートするばかりで、アフガニスタン戦争などでは米軍のロボット兵器による人間の大量殺戮も現実となってしまった。米軍の将軍や技術スタッフは(米国大統領も?)、ロボットがテロリストを殺す映像を見るたびに拍手喝采しているのだろう。プロレスやボクシングなどの格闘技の観客、兵器オタクや戦争ゲーム愛好者等々に見られるように、我々の心の中には戦いに対する一種のあこがれ、強い者に対する憧憬がまぎれもなく潜んでいる。
この戦いへの憧憬が世界のいたるところで即実行に移されれば、この世は地獄と化してしまうのだが、良くしたもので戦いの模倣行為をするだけでも我々の心はかなりの満足を得られるらしい。いわば、疑似的戦争行為としてのスポーツに参加することによって、我々は自身の暴力への衝動をコントロールし抑制することができるらしいのである。
典型的な例が、ワルや不良の集まりと言われた京都の伏見工業が、ラグビーが強くなることによって自信を取り戻して全国優勝の常連校となった事実である。半グレの不良少年がスポーツに熱中することで自らの誇りを回復し、世の中に居場所を見出して社会的にも成功するというのは映画や漫画の定番ストーリーとなっている。
さて、ラグビーはいったん分断されてしまった社会間の再結合にも役立っているらしい。明日、日本は世界ランク一位のアイルランドと対戦するが、次の記事によれば、そのアイルランド代表チームの構成もラグビーならではなのである。このチームこそが、「試合が終わればノーサイド、敵も味方も無くなる」というラグビーの基本的精神そのものをチーム自から表現しているのではないだろうか。ちなみにサッカーに関しては、英領北アイルランドと、英国から独立した(南)アイルランドとは別々の代表チームとなっている。
「ラグビーは元々ブルジョアのスポーツであり、労働者階級の我々とは縁がない。統一チームなど偽善にすぎない。」と批判するアイルランド市民がいるのかもしれない。しかし、仮に偽善的であるとしても、かって対立し殺しあってきたカトリックとプロテスタントが一つのチームを実際に構成しているという現実だけでも大した成果なのだろう。それに、英国やアイルランドについてはよくは知らないが、日本を含むそのほかの国のラグビー選手の全てがブルジョアということはあり得ない。彼らの大半は、いわゆる庶民、一般市民のはずだ。
もう一つ付け加えておきたい。先週末にネットの記事を読んでいたら、「ラグビー日本代表は外国人だらけ」というコメントがいくつかあった。誰が書いたのかは知らないが、書いた人には次の二つの記事を読んで見てほしい。
たまたま日本人に生まれたというだけの理由で上から目線で外国人を見下す人間と、日本人になるべく、あるいは日本のために貢献するべく日夜努力している人間と、どちらに人間としての魅力があるかは言わずとも明らかだろう。前者は「日本国籍以外には誇れるものを何も持っていない人間」なのではないかと推測してしまうのである。
「開幕戦3トライ 松島幸太朗「悲しみを乗り越えて」日本の至宝に」
「「もちろん勝ちたい」。アイルランド戦に先発する38歳の生き様」
特に、松島選手とそのお母さんには頭が下がる。高校の三年間、校長先生に毎年年賀状を出す高校生が、今の日本に何人いるだろうか。
明日のアイルランド戦には松島、トンプソンの両選手は共に先発する予定とのこと。日本とアイルランドの両チームとも存分に戦い、かつ、大いに試合を楽しんでもらいたいものである。
/P太拝