「開かれた市政をつくる市民の会(鳥取市)」編集者ブログ

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新刊書の紹介、「水道が危ない」

 先月末の10/30付で朝日選書より「水道が危ない」という新書が刊行されました。この本では、鳥取市が住民の反対を押し切って建設した巨大浄水場についても触れています。以下に概要を紹介します。

 著者の菊池明敏氏は、岩手県北上市に勤務の頃に全国に先駆けて上水道事業の周辺自治体との統合を先導された方とのこと。もう一人の著者の菅沼栄一郎氏からの紹介によれば、同氏は、「近くの花巻市紫波町に統合を持ちかけ、「水道の将来は厳しい」と説き、2014年に岩手中部水道企業団に統合。五浄水場を廃止し、将来の76億円の投資を削減、画期的な改革と注目された。」とあります。

 各章の項目名を以下に挙げておきます。この項目からだけでも、ある程度はその内容を推察できるでしょう。

第一章 「現代の水道 三つの顔」

 ・少人数で奮戦 簡易水道
 ・「水道水を飲もう 東京で動く」
 ・「漏水は全国各地で 北上市の水道管大漏水事故」

第二章 「水道の厳しい現状と持続に向けた方策」
 
第三章 「民営化より統合」先進地から

 ・ダウンサイジングのトップランナー 岩手中部の広域統合は今も進行中
 ・奈良県の「トップダウン」型水道改革
   新井正吾 奈良県知事インタビュー

第四章 「水余り」負の遺産

 ・胆沢ダム「建設仮協定」廃止の決断
 ・「一滴も使われなかった」ダムが三つ
 ・「水余り」がダム建設を中止に 最前線にいた二人

第五章 「おいしい水」って?

 ・「おいしい水」をつくる緩速濾過法を提唱
   鳥取市の「まぼろし住民投票
   片山善博 元鳥取県知事インタビュー

 

 第五章では、緩速濾過法の紹介に関連して、鳥取市の「浄水場建設をめぐる住民投票請求」が市議会によって否決されたことについても触れられています。当時活躍された元市議のお二人の写真も載っています。また、元知事(前知事では?)の片山善博氏も、鳥取市民の一人としてこの住民投票請求に署名されていたとのこと。このインタビューの中の、知事と巨大浄水場建設の必要性をまともに説明できない当時の市水道局幹部とのやり取りについては、なんとも笑うほかはありません。

 今後の水道事業の維持に不安を感じている方、さらに、今後の国・地方のインフラ維持に関心のある方には必読の書だと思います。

 なお、アマゾンや楽天を通じて通販で書籍を購入するのは大変便利ですが、あまりそればかりに頼っていると近い将来、街の本屋さんが全て無くなってしまいかねません。書店店頭で直接手に取って面白そうな本を探すという日常のあの楽しみを、我々自身の手で消してしまうことになりかねません。たまには書店店頭で購入、または購入予約されてみてはいかがでしょうか。鳥取市のことが載っているこの本は、まさに地元書店での購入がふさわしい本だと思います。

 また、書籍に限らず、地元で買い物をするということは、自分の地域内で循環するおカネの量がその分だけ増えることを意味しています。地域内の雇用は地域内を循環するおカネの量に比例するので、地域外での買い物が増えることで地域内雇用の縮小に拍車をかけることになります。人口減少を憂慮していると言いながら、その一方では通販でせっせと市外からモノを買っている生活を続けていては、自分の子供や孫の世代が職を求めて鳥取市外にさらに流出する結果を招くこととなるでしょう。この問題については、今後改めて記事にしたいと思っています。

/P太拝