今年の二月、このブログの先々回の記事の原稿を書くために、過去の殺人事件に関する大量の記事をずっと読んでいた。その内容のむごたらしさにうんざりしていた頃、頭の中に浮かんできたのが加川良さんの歌の歌詞だった。特に以下に紹介する中の最初の二曲が何度も頭の中を駆けめぐった。
二つともに葬式に関する歌なのだが、この歌詞を頭の中で唱えているうちに、なぜか自分の気持ちが落ち着いたのである。自分にとっての念仏のようなものなのかもしれない。
(1)「その朝」
「寒いある朝 窓辺で立っていたら
かあちゃん連れて行く
天国の車がやって来た
(A)やがて俺達
一人ぼっちになるのかな
でもよー 俺が死んだら
また母ちゃんに会えるよネ
車屋さん車引きさん 静かにたのみます
あんたが連れてゆく
それは寝ている母ちゃんだからネ
(A)繰り返し
涙こらえどこまでも 車の後を追いかける
でも母ちゃんが墓に入る時
目の前がかすんだヨ
(A)繰り返し 」
(2)「赤土の下で」
「奴を埋めるにゃ金はなし
お役人が死体を横目でにらみ
鼻をつまんで 出した金
1万 642円
3分待ったら 葬儀屋が
ジャンパー姿でやってきた
入ってくるなり 出た言葉
あと 2万円はいりますぜ
葬式にも いろんな型が あってね
この死体にゃ悪いけど 霊柩車はつきません
でも そう きっと 友達が
花束 送ってくれるでしょうよ
2日たって 坊主がやってきた
光った 自家用車でね
衣のシワを気づかい説教
請求が 2000円
赤土の中に 奴は埋められ
道端の小石が 目印さ
神よ 奴の魂たのみます
墓場の土に請求こねえようにネ
何がどうなり こんなにも
葬式ってやつは こんなに高い
俺たち 貧乏人
おちおち死ぬ事にもかかれない」
以下、筆者と同世代の方であれば大体はご存じとは思うが、彼の初期の歌を中心にいくつか紹介しておこう。
(3)「教訓Ⅰ」
加川良の代表曲。
(4)「戦争しましょう」
その前の曲とは正反対な内容。思うに、加川良ほどに、いわゆる「同調圧力」から遠い場所で生きてきた、あるいは生きようとしてきた人は他にはいなかったのではなかろうか。彼が言いたかったのは、「自分の生き方は、自分で責任を持って決めて、それを貫きなさい」ということなのだろう。
(5)「ラブ・ソング」
(6)「流行歌」
以前、ハンバートハンバートを取り上げた時にもこの唄を紹介したが、あらためて再掲しておきたい。
彼の作る唄は、我々の日々の生活の中で思わずついてしまう「ためいき」を、寄せ集めてできたもののように感じてしまうのである。
「マッチ 一本 火をつけて
明日を のぞいたら
夜空 いっぱい 想い出が
ふるえていました
だから僕は 火を消して
夜空を 見上げ
想い出 いっぱい かきあつめ
そして 唄います
君は君のことが 好きでありますように
僕は僕のことが 好きでありますように
マッチ 一本 火をつけて
夜空を 見上げたら
私だけの明日が
のぞいていました」
(7)「伝道」
「悲しい時にゃ 悲しみなさい
気にすることじゃ ありません
あなたの だいじな 命に
かかわることも あるまいし
そうです それが 運命でしょう
気にすることじゃ ありません
生まれて 死ぬまで つきまとうのは
悩みというものだけなのですよ」
(8)「夜明け」
「生まれるって つらいね
死ぬってことは さみしいね
だからその間に つかもう
少しばかりの 愛するってのを」
/P太拝