「開かれた市政をつくる市民の会(鳥取市)」編集者ブログ

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「地方創生政策」は、本当に地方を豊かにするのか?

 日曜日の朝、何とも残念なニュースが飛び込んできました。イスラム国の人質となっていた後藤健二さんが殺害されてしまいました。
 
 大変優秀なジャーナリストであったようです。各方面から、彼の死を悼む声が上がっています。以下、私が読んだ記事の中で共感したものを紹介します。

①法政大学 水島教授のコメント:
 
  ・われわれ一人ひとりにできることというのはものすごい限界があるんですけど、この機会にそういうことを真剣に考えてみてもいいのでは・・・。

②ジャーナリスト 江川紹子さんのコメント:
 ・ インターネットの世界では、事件を政治的なアピールに利用しようとする残念な発言も、実に多く見られた。・・・・・いずれも、敵を見間違えている、と言わざるを得ない。今回の事態について非難されるべきは、被害者でも、日本政府でもなく、非道なテロ行為を行っているテロ組織にほかならない。
 ・ 「テロに屈しない」とは、衝撃や悲しみや憤りの中でも、理性を失わず、テロリストが望む行動はとらない、というのが基本だろう。・・・ そのためにも、事件をしっかりと検証し、できるだけ影響を受けないための対策をとることは必要だ。
 
 
 
 

 私は江川さんのコメントの内容を全面的に支持します。また、自由な発言がしにくいであろう現在のNHKという体制の中で、自分の思うことを率直に述べられた柳澤キャスターに敬意を表します。是非ご一読ください。

 亡くなられた後藤さんの遺志を継ぐことは、いま戦禍に会って苦しんでいる現地の子供たちを、当面の恐怖から解放しその生活を安定させることにほかなりません。そのことが、将来のテロリストの再生産を未然に防ぐことにもなると思います。私たちの生活の中でどのように行動すればその目的に達することができるのかを、よく考えていきたいと思います。


 さて、今回の本題は、安倍内閣がさかんに旗をふっていて現在進行中の「地方創生政策」についてです。
 元経産省キャリアであった宇佐美氏が、その政策が決定された経緯について、次に紹介するの記事の中で元官僚の立場から論評されています。地方自治体の「負け組」の代表として、我が鳥取県のことにも詳しく触れています。


 ・現在、「地方創生」が叫ばれ関連予算が付けられているのは、この春にある統一地方選挙で与党が確実に勝利を収めることが主目的である。
 ・地方分権を進めた小泉政権時代には、鳥取県などの「負け組」自治体は、今後消滅してもしょうがない、というのが霞ヶ関の認識だった。
 ・平井鳥取県知事のような「負け組」首長が執ように中央に助けを求めるので、名前を「地方創生」と言う名に変えて、過去に一度は否定しようとしていた公共事業という名のバラマキを復活させた面もある。
 ・「地方創生」の希望の星は徳島県

(注1: 現在、平井鳥取県知事は、この地方創生の予算を使って全県民に商品券をバラマクと公言している。これこそ税金の無駄遣いでしかない。
 こんな一時しのぎでしかなく恒久的な経済発展につながらない低レベルな政策を恥ずかしげもなく提案するような自治体に、わざわざ国債発行までして確保した貴重な国の予算を分配する必要があるのか、はなはだ疑問である。しかも平井氏は今春の統一地方選鳥取県知事選に三選を目指して立候補する予定であり、この商品券は選挙目当てのバラマキの疑いが濃厚である。
 「地方創生政策」の本来の目的を、最も露骨な形で表現しているのが平井知事であると言ってもよいだろう。

注2: 徳島県が例外的に経済発展しているのは、昨年ノーベル物理学賞を受賞した青色LED開発者の中村修二氏が徳島県阿南市日亜化学に在籍していたからである。彼は当時の会社のオーナーただ一人を味方に、億円単位の費用を確保してもらい、社内で孤立し周囲とケンカながらほぼ独力で開発を行って青色LEDの量産化を完成した。

 商品券のバラマキは論外ですが、他のもっとまともな政策を実施した場合には、地方創生はうまく行くのでしょうか?
 名城大学教授の雑賀氏は、かって地方活性化にかかわった経験から、受け手の側に構造的な問題があると指摘しています。氏は2007年までは鳥取大学に勤務されていたとのことで、この受け手とは具体的には当時の鳥取県の幹部職員を指しています。自治体職員の評価基準の見直しまで踏み込まなければ、いくらカネをばらまいても無駄に終わるだろうというのが、雑賀氏の結論です。

 
・ ・・・。それは、(職員の)評価体制が「予算獲得重視、予算配分後の効果軽視」になっているからである。この評価システムが改善されない限り、予算獲得ばかりに奔走し、無駄なバラマキをする職員は減らないのではないだろうか。・・・

 さらに、地方活性化のテーマとして取り上げられることの多い農業振興についても、その問題点を指摘している記事を見つけました。執筆者の川島氏は東大准教授で農業経済学専攻であり、「世界的に見れば食料供給は十分に足りている」というのが以前からの氏の持論です。農業振興に期待している方にとっては辛口の内容ですが、現実を直視する必要があると思います。


・  ・・・地方が話題になると農業の話が出てきて、そして必ずと言ってよいほど補助金のばら撒きが始まるからだ。補助金の出所は言うまでもなく税金である。そして、補助金によって農業が再生したためしはない。・・

以上、ご参考まで。

なお平井鳥取県知事の二期八年間の業績については、改めて別の記事の中で評価してみたいと思っています。
(/以上)