「開かれた市政をつくる市民の会(鳥取市)」編集者ブログ

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リニア新幹線は「第二の国鉄」。いわんや山陰新幹線は・・

先日の新聞によると、安倍内閣は経済対策総額28兆円の内容を決定したとのこと。うち、国と地方の直接支出は7.5兆円。その中の4兆円は今年度の第二次補正予算、3.5兆円は来年度の当初予算に含める。さらに財政投融資として6兆円を投入、そのうちの3兆円は、今回の経済対策の目玉であるリニア新幹線の早期完成に当てる予定とのことです。

財政投融資とは、国が財政投融資債(財投債)を発行し金融機関がそれを買うことで国が資金を得て(要するに国民が銀行に預けた預金を銀行が流用して財投債を購入)、その資金を国が必要と認めた企業・団体に貸し付けるというものです。リニア新幹線の場合では、国がJR東海に3兆円を貸すことになります。

JR東海が完成後のリニア新幹線の営業で順調に利益を上げて、借りたカネを国に返済できるのであれば、何も問題はありません。しかし、JR東海は、新設するリニア新幹線iにおいて本当に利益を上げられるのでしょうか?この点については、先々回の記事の末尾で、過剰投資となる可能性が高いことをすでに指摘しました。

次の記事も、リニア新幹線が過剰設備にほかならないことを指摘しています。なお、JB Pressの記事は、掲載後一か月程度たつと有料になりますのでご注意ください。


政府は3兆円を0.3%の固定金利JR東海に融資しようとしているが、今後30年間にわたって金利がゼロのままということは考えられない。いったん金利が上がればそ、の損失は政府が引き受けることになり、結局、国民の税金がJR東海に投入されることになる。

なぜ、安倍総理はこんなにもJR東海を優遇しているのか。次の記事でその背景が判ります。なお、Yahooの記事も一定期間後には消されます。


この記事で注目されるのは、事業主体であるJR東海の山田佳臣社長(現・会長)自身が、13年9月の記者会見で「リニアは絶対にペイしない」という趣旨の発言をしたという点。それにもかかわらず、今回、巨額な国費投入が決定されてしまった。この背景には、JR東海の葛西名誉会長が長年にわたって安倍総理の強力な講演者であったことが強く影響しています。個別企業への利益誘導であることは明白ですが、首相が提唱して国の方針にまでになった政策には、あえて誰もその不公正性を指摘しようとはしないのでょうか?

日航が破たんして再建途上にあった当時、旧民主党政権は日航に有利な再建策を示しましたと言われています。この背景には、日航の債権を無報酬で引き受けた京セラ創業者の稲森氏が民主党前原誠司氏の有力な後援者であることの影響があると指摘されています。当時、野党であった自民党は、国会でこの点を執拗に攻撃していました。今度は、野党の立場の民進党が反転攻勢に出る番ではないか?今の民進党には、政府からJR東海への明白な利益誘導を攻撃するエネルギーさえも残っていないのでしょうか?

上の記事の末尾には、「万里の長城、ピラミッド、戦艦大和は世界の三大無用の長物とされている。リニア中央新幹線が、この仲間入りをすることがないよう祈ってやまない。」とあります。戦艦大和が出たついでに少々脱線しますが、次の記事も紹介しておきましょう。


結局、七十年以上たっても、日本人には何の進歩もなく、同じ行動を繰り返しているわけです。

隣の大国、中国は、国民の人権の保護も民主主義もないひどい国ですが、グランドデザインだけはしっかりしています。中国では、百年単位での将来計画をもっていない政治家は絶対に国のリーダーにはなれないのでしょう。中国のグランドデザインとは実は簡単明瞭で、自国を強く大きくすること、または、自国を強く大きい国に見せかけることです。日本のグランドデザインは中国と同類であってはならないが、ともかく日本のリーダーたるものは、今後百年くらいのスパンの国家デザインを提唱してしかるべき。

グランドデザインを何も持ち合わせていない、実現不可能な調子のいいことを、その場に合わせて言っているだけの政治家でも、国のリーダーになれるのが今の日本国です。現在の日本のリーダーは、自分の祖父の元首相の行動をお手本として忠実にまねているだけです。グランドデザインは何一つ持ち合わせていないが、「グランドパパのデザイン」については子供の頃から見聞きしているのでしょう。

さて、安倍総理の次の日本のリーダーを目指すことを公言した石破氏。先週は、石破氏をトップとする「山陰新幹線を実現する決起集会」が鳥取市で開催されました。筆者としても、どんなメンツがこのアホらしい計画を支持しているのかを確認に行きたいとは一度は思いました。しかし当日、約二時間も中身のない空疎な話を聞くのは苦痛でしかないと思い直して参加をとりやめました。この集会の詳しい内容は、次の記事に載っています。


この決起集会の性格ですが、当日の講師二名がいずれも京大土木工学科の出身であることからも明白です。要するに、公共工事に群がって甘い汁を吸いたい人たちの集会です。そもそも、四十年前に田中角栄が唱えた「列島改造論」に含まれていた化石のような山陰新幹線の構想を、いまだに後生大事に繰り返している人間(一例としては、深澤鳥取市長)には、「40年間の時代変化を認識する能力」が決定的に欠けていると評するほかはない。このような人に、現在の時代状況に即応した政策が立案できるとは到底思えない。

昭和の時代の化石的コンセプトをいまだに地域振興の切り札とみなしてこの集会に参加した人数は、一部の報道によれば千人を超えたとのこと。こんな連中がたくさんいるから、鳥取はどんどんダメになったのです。国のカネを当てにするばかりで、自分のアタマで考えようとしない、自助努力を放棄した人々がこの集会に集まって来ているのだと思います。

リニア新幹線戦艦大和に例えれば、山陰新幹線は、せいぜい駆逐艦か掃海艇レベルでしょうか。それにしても、舞鶴経由で京都・大阪に行きたい人が、山陰から北陸方面に直行したい人間がどれほどいるのか、大いに疑問。現在の鳥取-岡山間の特急「スーパーいなば」と同様に、二両編成の新幹線を走らせたら全国の笑いものになるだけではないでしょうか?

現時点では、鳥取-大阪梅田間は高速バスを使えば173分で\3700、智頭急行の「スーパーはくと」を使って144分で\7300位です。この両方とも、2045年時点では今よりもさらに速くなっていることは確実。山陰新幹線計画では85分とのことだが、運賃は何万円(?)になるのでしょうか? 一時間早く大阪に着くことで、ビジネスでどれだけのメリットが生まれるのでしょうか?

この決起集会は、JR西日本に建設費用を出させようと促すための集会。民営化されたJR西日本が、採算が到底見込めない山陰新幹線を自分の費用で建設するわけがない。沿線自治体の財政はどこも火の車で財源を負担できるはずもない。こんな状態での山陰新幹線の実現は、常識的に見れば到底不可能。

この状況で石破さんが、国の費用を際限なくつぎ込んで山陰新幹線を実現すると決意表明すれば、山陰地方で百万票が味方するかもしれない。反面、意義なき事業への巨額国費の投入・増税政策であるとみなされて、都市部の数千万票が離反する可能性も高い。

石破さんが経済効果ゼロの山陰新幹線計画に今後も入れあげているようでは、グランドデザインに欠けた政治家とみなされ、次代の国のリーダーには到底なれないでしょうね。石破さんには、実現不可能なこの計画から距離を置くことを、強くお勧めしたいと思います。

/以上