「開かれた市政をつくる市民の会(鳥取市)」編集者ブログ

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「産地偽装」の樗谷公園のホタルの放流は、ただちに中止すべき!

 今回は鳥取市政というよりも、どちらかと言うと鳥取県政がらみの話です。

(1)樗谷(オウチダニ)公園の御宮池の現状

 数日前に地元紙でも報道されたそうですが、しばらく行っていないうちに、樗渓神社の御宮池(大宮池)がたいへんなことになっていました。まずは、現状をご覧ください。
 
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 ごくわずかに水が残っているのは湖底の一割程度。湖底の約2/3には草が生えているので、この夏の間は、ずっとこの状態だったようです。筆者が今年の春に来た時も既にこの状態でしたが、二月の大雪後は全くといっていいほど雨が降らなかったため、当時は自然現象による異常渇水のせいかと思っていました。

 参考までに、この池の通常の状態を下に示します。去年撮影した写真です。
 
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 去年までは、この池の堤の広場で体操をしている人や、ベンチに腰かけて池を見ながら楽しく話をしているカップルを見かけたものでした。今の悲惨な池の姿は、誰にとっても見たくないものであることは間違いなく、ベンチにもアズマヤにも人っ子一人見かけませんでした。涸れた池の底を見ながら愛を語れる人は、めったにいないのでしょう。

 先週、あわてて池の様子を見に行ったのは、池が干上がっているのは自然現象のためではなくて、人為的な原因によると知人から教えてもらったです。「樗谿ホタルの会」が、ホタルのために水質改善すると称して、一番下の排水口を開放し続けているそうです。池の岸辺には、下に示す立札が立っていました。
 
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 「樗谿ホタルの会」は、この御宮池の下流の樗谿川に、過去約四十年にわたってゲンジホタルとヘイケホタルの幼虫、およびそのエサとなるカワニナの放流を続けてきたそうです。毎年放流しなければならないということは、ここの環境自体が、本来、それら三種類の生物が繁殖するには全く不適な環境であることを示しています。

 この公園の近くに生まれ、以来約八十年にわたって住み続けてきた方の話では、「昔から樗谿に居たのは、山に住むヒメボタルだけ。ホタルの会が放流を始めるまでは、ゲンジボタルは全く見たことが無かった。ヘイケボタルは昔から少しはいたが、公園の近くではなく公園からかなり離れた街の中の排水路沿いで見かけた。」とのことでした。

 ゲンジボタルの幼虫のエサとなるカワニナは、次のwikipediaサイトの説明に見るように、ゆっくりとした流れで川底に落ち葉が積もる、ある程度は栄養分がある川を住処としており、流れが速い貧栄養の渓流では生きることができません。要するに、樗谿のように短くて急な川の人家も無い上流部では、栄養分がなさ過ぎてカワニナゲンジボタルも生きられないのです。

 樗谿は、地図で見ると明らかなのですが、極めて流域面積が狭い谷です。また、御宮池から上流は急峻な山肌に杉やヒノキが植林されていますが、針葉樹の人工林の保水力は広葉樹林に比べて著しく劣っています。

 近年の豪雨災害の発生地を見ると、数年前の兵庫県佐用町、今年の福岡県朝倉市大分県日田市などの山では、いずれも杉が密植されていました。このような山に豪雨が降ると突発的に奔流があふれて川の有機物を押し流してしまいます。反対に雨が降らないと、すぐに川が干上がってしまいます。要するに、樗谿のような川は、水位の変動が激しすぎて水棲生物にとっては大変住みづらい川なのです。

 鳥取市の「やまびこ館」が平成19年に発行した「樗谿を歩く」によると、德川家康のひ孫にあたる池田光仲が1648年に鳥取にお国入りして今の樗谿神社(因州東照宮)を建立する以前、この地には「王寺」(おうじ)という小さな村があったそうです。当時の村人が、樗谿川の水位を安定させて田畑の灌漑に使うために作ったタメ池が、今の御宮池の前身であるとのことです。

 さて、安定した水流を得るために先人たちが苦労して作った、鳥取県の隠れた文化財とも言うべき御宮池の水を全て流しきってしまった「樗谿ホタルの会」。彼らはいったい何を考えているのでしょうか?

 知人や県関係者の話によると、同会の会員で表に出てきて応対しているのは、事務局長のY氏ただ一人だけとのこと。他の会員については、全く知らないとのこと。実質的な責任者はこの人だけのようです。

 元々、この御宮池の管理は鳥取県東部生活環境事務所が担当しているのですが、数年前に県の担当者がこのY氏に排水路の調節装置のカギを預けたところ(何でそんなことをしたのか理解できませんが・・)、今年になってから勝手に池の水位の調節を始めたとのこと。「カギを返せ」といっても、一向に返さないそうです。

 直接の担当者は、「もうあの人には手が付けられない」と言っているそうですが、そんな弱気なことでは、管理者としての当事者能力が問われます。担当する池の管理を県が半年間も放棄し続けていることは、納税者である県民・市民にとって到底納得できる話ではありません。

 下にその調節装置の写真を示しておきます。一個数百円(?)のカギを交換すれば済むことなのに、県はいったい何を怖がっているのでしょうか?

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 ところで、「樗谿ホタルの会」が御宮池の水を抜いていることは、ゲンジボタルの生育にとってはマイナスの効果しかないと思います。
 
 ① 池の貯水機能が失われたために、降雨の際の下流の水位と水量の変動が大きくなってしまっている。カワニナやホタルの幼虫の生存には、ますます不適な環境となったはず。

 ② 池の底を空気にさらしたことで、湖底の有機物が分解し、たまっていた栄養分が失われた。これから再び水を入れても、今後はさらに貧栄養となって、今まで以上にカワニナは生育不全になるだろう。
 富栄養化した池では、池の底を定期的に干すことは水質改善のためにしばしば実施される手法であるが、この御宮池の場合は、もともと、池が貧栄養だから下流カワニナが育たないのである。やっていることが全くアベコベなのである。

 ③立て看板から判断する限り、同会は(Y氏は?)、オオカナダモの繁茂が水質悪化の原因と思い込んでいるように見える。この外来植物は、もともとメダカ等の水槽飼育のための水草として輸入されたものだが、今では全国に広がり、鳥取県内でもあちこちの川や池に生えている。

 下のオオカナダモの説明サイトでは、「水質汚濁に強い」とあるが、同会はこの説明を「この藻が生えると水質が汚濁する」ものと誤解してとらえている可能性が高い。この藻が水質悪化の原因ならば、今ごろは県内各地でオオカナダモの撲滅運動を展開しなければならないのだが、この藻を問題にして騒いでいるのは樗谿だけである。

 昨年までは、池に棲みついていたカルガモ夫婦がさかんにこの藻を食べていた。藻を食べたカルガモがフンをすることで池の栄養分が多少は増えていたはずだが、池を涸らしてしまってからは、そのカルガモペアもどこかに引っ越してしまった。
 
 

 これらの点を見たたけでも、同会がホタルの生態について全く無知であることがよくわかります。生態学の基本的な知識すら御存知ないようです。一般人には何だかよく分からない、自分一人だけの妄想に駆られて、御宮池を干すことに固執し続けているように見えます。


(2)早急に池の水位を元に戻すべき、かつ、来年からはホタル放流もを中止すべき八つの理由

 

 樗谿でのホタル放流そのものの中止も含めて、早急な池の水位回復を県や市に求めたいと思います。その理由を以下に挙げます。

① 県民・市民の憩いの場所が不当に奪われている。

 御宮池周辺の環境は実に荘厳であり、かつ美しく、鳥取市が全国に誇れる優れた景観であると思います。その景観の中心をなす池が、半年以上も醜くかつ荒れ果てた湖底をさらし続けていることは、鳥取市民としては実に耐え難い状態と感じます。今では、堤のあずまやに座って憩う人の姿を見ることはまれとなり、池のそばの道を散歩で行きかう多くの市民も、池から顔をそむけ足早に通り過ぎています。
 
 池に住みついて市民に親しまれていたコイやカルガモカワセミたちはとっくに姿を消してしまいました。筆者が訪れた時には、外来種ミシシッピアカミミガメ一匹が泥の中で辛抱強くしゃがんでいるだけでした。鳥取市民自慢の景観が、市内で最も醜い風景へと激変してしまいました。

② 県の公共施設管理者としての意欲と能力が疑問視されている。

 妄想にとらわれた一個人のわがままによって、管理者として当然なすべき管理業務が全くできないようでは、情けないと言うほかはありません。この事実が先例となり世間に広まれば、県の管理の甘さに付け込もうとする第二、第三のヤカラが続々と現れて来かねません。
 「樗谿ホタルの会」には御宮池を管理する法的な根拠は何一つないはずなのに、なぜ県は、同会の勝手なふるまいをいつまでも放置し続けるのでしょうか?
 
③ 他地域で生まれたカワニナやホタル幼虫の持ち込みは、生物多様性の尊重に反する。

 国の法律である「生物多様性基本法」に基づいて、現在、鳥取県では生物多様性地域戦略を策定中です。地域の外からいままでいなかった生物を持ち込むことは、その地域の遺伝子多様性や生態系を乱すことになるので避けるべきであるというのが基本的な考え方です。

 実際に、近年では道路ののり面や公園の植栽には、その地域に自生している植物を極力使おうとする動きが盛んになってきました。他地域で育ったカワニナやホタルを樗谿に放しても大半が子孫を残さず死滅してしまうのですが、卵などの一部が排水路を経由して旧袋川水系に流れ込む可能性があります。

 この点については、既に十年近く前に、県立博物館の昆虫の専門家が指摘されています。 樗谿のホタル

④ 子供に対して間違った環境教育をすることになる。

 ゲンジボタルヘイケボタルも元々住めない樗谿の川に、幼虫を放流してショー的にホタルの飛ぶ姿を見せることは、子供たちに間違った知識を植え付けることになります。虫たちも魚も植物も、それぞれの生育に適した環境の中で、それぞれの生活サイクルの各段階を通過しながら成長します。

 ホタルの生活史の中で、自分たちの見たい段階だけを切り取って来て放流し、交尾前に放つ光のみを愛でて大騒ぎした後、生まれた卵の大部分は死ぬにまかせると言うのは、人間の単なるエゴにしか過ぎません。ホタルの生活史の全てを理解しなければ、ホタルの放つ光の価値は分からないでしょう。

 子供たちに、「インチキで薄っぺらな、見せかけだけの自然」を見せることは、もういい加減に止めるべきです。命の価値を安直に考える大人を生み出しかねないと思います。
 
⑤ よそから持ち込んだ生物を、あたかも昔から住みついていたように装うのは、「食品の産地偽装」と同様の行為。

 国内では食品の産地偽装が相次いでおり、中には偽装の発覚によって販売不振におちいり倒産する会社もでています。よそから持ち込んできたホタルを、あたかも樗谿に昔から住みついていて自力で繁殖しているというように観光客に説明するのは、明らかな虚偽説明です。食品偽装と同様に、説明する側のモラルの欠落を示しています。

⑥ カワニナやホタルを繁殖に適さない環境に大量に放流し続け、その結果として生まれた子孫を毎年ほぼ全滅させ続ける行為は、無益な殺生であり残酷そのもの。

 「樗谿ホタルの会」が約四十年間も放流を続けてきたホタルですが、樗谿川では未だに自力で繁殖できません。これは、毎年放流した幼虫が成虫になって交尾しても、卵からかえった幼虫のほとんとが死滅してしまうことを示しています。繁殖できる環境ではない場所に毎年大量にホタル幼虫を放流しつづけることは、ホタルの側から見れば仲間の大量虐殺が四十年間も続いていることにほかなりません。

 ホタルの持ち込みは全国各地で未だに行われているようですが、そのほとんどはホタルの生育適地を選んで放流しているものと思います。欲にまみれた人間が、放流しても大半が死んでしまうことを承知のうえで、長年にわたって大量放流を続けてきたのは、我が鳥取市くらいではないでしょうか。 「無益な殺生を続けてきた人間には、あの世で行くところは決まっている」と言いたくもなります。

 ホタルを見に樗谿を訪れた観光客が、「ここのホタルはよそから無理やり連れてこられたこと。美しい光を放って交尾をしても、生まれた子供たちはこの地では生きられずに死んでしまうこと。「樗谿ホタルの会」は、それを知っていながら、四十年間もホタルの大量放流を続けていること。」という事実を知ったならば、どう思うでしょうか?
 「ホタルが哀れ、かわいそう!」と感じると同時に、長い間、無益な殺生を続けてきて一向に反省することの無い、欲まみれの人間たちを嫌悪し軽蔑するのではないでしょうか?

⑦ 現代では、悪評はネットを通じて一気に広まる。

 以前は、ある分野の専門家になるためには、高価な専門書をたくさん買い込んで長い時間をかけて勉強しなければなりませんでした。しかし、インターネットの発達によって、今では何日間か熱心にネットで調べれば、中学生でも専門家並みの知識を得ることができます。

 少々昆虫に関心がある人が樗谿を訪れた場合、この地の環境がヒメボタル以外のホタルの生育には適していないことに気づく可能性は、昔に比べれば飛躍的に高まっているはずです。素人であっても、簡単に虚偽説明やごまかしを見抜けるようになったのです。

 生き物の取り扱い方をめぐって、鳥取県がネット上で炎上した例はすでにあります。四年前の例の「白いタヌキ騒動」です。

 知事が県内で捕獲された白いタヌキに名前を付けてイベントの見世物にしたところ、全国から苦情が殺到しました。筆者はこの時ちょうどネットを見ていましたが、Yahooのニュース見出しにこの件が伝えられて一、二時間のうちに、コメントが千件近く寄せられました。「見世物にするなんて、ひどい!」、「鳥取県は動物の命を大事にしていないのか!」等々、コメントの大半は鳥取県の処置を非難するものでした。
 安直な観光目玉をでっち上げると、かえって悪評を招くという教訓になりました。

⑧ 樗谿のホタルを 「観光の目玉」にするのは止めた方が良い。

 上に述べたように、ゴマカシや虚偽説明に対する炎上事件は毎日のように起こっています。いったん炎上すると、その地域や会社とは直接の関係のない部門でも、同じように悪いイメージでとらえられてしまいます。

 「樗谿ホタルの会」がやっていることは、生物多様性の無視、間違った自然知識を与えかねないこと、産地の偽装説明をしかねないこと、生き物の大量殺戮等々、今日の社会常識から見ればリスクだらけです。

 他方で、ホタルが自然に繁殖している場所を「観光の目玉」にするのであれば、何の問題もありません。樗谿にこだわるからこそ、いろいろな問題が生じているのです。
 
 鳥取市街地からそう遠くない所にも、吉岡温泉周辺などホタルの自生地が数多くあります。(筆者は十年以上前でしたが、鳥取駅からそれほど遠くない国府町内の袋川上流に、ホタルを見に行ったことがあります。何ホタルかは忘れましたが・・・。)自生地の近くでは農薬を使わない等のホタルの保護につとめれば、数年のうちに立派なホタルの名所が実現するのではないでょうか。

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 現在、樗谿公園近くの方や公園を毎日散歩されている方たちが、御宮池の水位の早期回復を求める署名を集め始めています。県に提出する予定とのこと。求めているのは池の水位回復のみです。上に書いた「ホタル放流中止」はあくまで筆者の考えであって、この署名内容とは関係がありません。この署名活動と政党との関係は特にはないと聞いています。
 今後、署名する機会があれば、ご協力をお願いいたします。

/P太拝