「開かれた市政をつくる市民の会(鳥取市)」編集者ブログ

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台風19号による決壊の大部分は本・支流の合流付近

 またまた水害関連の話題になってしまいますが、昨日の朝日新聞の第一面に、10/12に上陸した台風19号がもたらした水害の分析結果に関する記事が載っていました。読んでいない方のために、以下、記事の一部を抜粋しておきましょう。なお、記事の前半部分は下記サイトで無料で読むことができます。

堤防決壊の8割、支流と本流の合流点に集中 台風19号

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  『台風19号の大雨で堤防が決壊した140カ所(71河川)のうち、8割にあたる112カ所(62河川)が、支流と本流の合流点から約1キロの範囲だったことが、朝日新聞のまとめでわかった。専門家は「合流点近くに住む人は、浸水が起きやすいことを自覚しておくべきだ」と指摘している。

 朝日新聞は、国土交通省と河川決壊があった宮城、福島、栃木、茨城、埼玉、長野、新潟の7県が発表した資料や担当者への取材で、台風19号で決壊した71河川の堤防140カ所の具体的な地点を特定。川幅などの小さな川(支流)が大きな川(本流)に合流する地点と、その決壊箇所の関係を調べた。それによると、合流点から約1キロの範囲で支流の堤防が決壊していたのは、35カ所(28河川)だった。・・・本流側でも合流点近くの77カ所(38河川)の堤防が決壊した。・・・ 

 河川氾濫(はんらん)のメカニズムに詳しい早稲田大の関根正人教授(河川工学)によると、河川のなだらかさや橋が近くにあるかなどによって変わるが、合流点から約1キロ以内の決壊であれば、多くで「バックウォーター現象」が起きた可能性があるという。・・・昨年の西日本豪雨でも(この現象が)起きており、岡山県倉敷市真備町では、本流との合流点付近で支流の堤防が次々と決壊し、50人以上が犠牲になった。

・・・・ 関根教授は、「自治体は長い目で見て、合流点付近の危険性を踏まえた街づくりを検討した方がいい」と話している。』

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 鳥取市の新市庁舎は新袋川が千代川に合流する地点のすぐそばにあり、下の図に示すように新庁舎は合流点から1km以内の距離(合流点を川の中心線の交わる点とするのか、堤防が合体する点とするのかのいずれにせよ、この場合は両方とも1km以内)。

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 堤防の高さを上げて対策すればいいとの意見があるかもしれないが、堤防の強度を上げるためには、堤防の高さだけでなく幅も広げなければならない。川に隣接する市街地の土地を買収して堤防の幅を広げるためには巨額の資金が必要となるだろう。さらに、堤防の高さを上げるならば、それと同時に近くの千代川にかかっている三つの橋や鉄橋の高さも上げなければ意味がない。その費用は莫大な額となるだろう。国交省やJRが巨額の資金提供に簡単に同意するとは到底思えない。

 当ブログの11/1付の記事の中で触れた最近水害に見舞われた河原町や青谷町の場合も、いずれも浸水地区は二つの川の合流点のすぐそばであった。

 さて、市庁舎が水没し防災対策の拠点としての機能が失われた実例が、四年前の鬼怒川の氾濫により発生した常総市役所の浸水騒ぎでした。

「常総市役所の衝撃! 自治体の新築庁舎は本当に頼れる防災拠点か?」

 この記事によると、浸水被害の前年の11月末に完成した常総市の新市庁舎については、市自ら安全性の高い建物であることをうたい、「防災拠点としての高い耐震性の確保」を実現したと自慢していますが、地震以外の災害については想定外だったようです。実際、当時の常総市長は被災から4日後の14日、「(堤防が壊れる)『決壊』は想定していなかった。(洪水が起きても水が溢れるだけの)『越水』の想定だった」と語っていたとのこと。

 常総市がまとめた「平成27年常総市鬼怒川水害対応に関する検証報告書 」(PDFで128ページもある!)の中に掲載されていた氾濫範囲を下に示します。鬼怒川と小貝川にはさまれた市域であり、地形的に水害についても配慮するのが当然であるはずなのに、なぜか関係者の頭の中には地震対策のことしかなかったようです。

 

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 鳥取市の新市庁舎でも、位置条例可決後の2015年5月に公表した「みんなでつくる鳥取市庁舎の考え方」の「基本的な五つの考え方」のまず第一番目に「① 防災機能の強化」を上げています。

 その中で市は、

『防災対策の拠点は、災害発生時こそ機能しなければなりません。そのためには、地震に強い建物であるだけではなく、常設の災害対策本部会議室、途絶えることないライフライン設備、市民にしっかり情報を伝える通信設備、さらには屋外に十分な災害対策のための平面スペースが必要です。これら防災機能の強化は、「市民の命とくらし」を守ることを最優先に新たな施設の整備で実現します。』

 と述べています。常総市と同じような内容で水害のことは全く触れられていず、地震対策が中心の記述です。


 当「市民の会」ではこの新市庁舎で水害に対する備え等の安全性が考慮されていないことを問題視し、2016年9月に深沢市長あてに公開質問状を提出しました。その経過を当会サイトの2016/10/15記事に、また、市長回答の概要を一覧表にまとめておきました。なお、この市長回答の第一番目の内容は、実に「役人回答の典型例」であると感じたので、今後の参考のために、具体的なやり取りの内容を以下に示しておきましょう。

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【 当会からの質問 1】 現在立案中の 新庁舎設計案では、水害対策として庁舎基礎を1.2mかさ上げするとの事ですが、主要道路への接続路を水没しない高さまでかさ上げしなければ、この新庁舎は防災拠点としての用をなしません。市庁舎の周辺が水没した場合、周辺道路との連絡をどのようにして確保する予定なのか、詳細をお示しください。


【 市長回答】 国土交通省発表の洪水浸水想定区域図によると、千代川が氾濫した場合、主要道路・現本庁舎敷地・新本庁舎敷地を含めた中心市街地の多くの範囲で浸水が想定されており、その間の車両通行に支障が出る可能性があります。したがって、出水や水位の上昇が懸念される場合、災害対策要員となる職員はあらかじめ災害対策本部に待機することとしておりますし、状況に応じて危険箇所や避難所についてもあらかじめ職員を 派遣することなどにより、迅速な災害配備体制をとることとしています。

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 皆さん、この回答をどう思いますか?

 市長は当会からの質問に全く答えていませんね。まさに、うわべだけは丁寧な言葉を使いながら、よく読めば、故意に質問内容を無視して人を小馬鹿にしているという態度が透けて見えます。以下、その理由。

① 当会が新市庁舎周辺に特定して水没する危険性を指摘しているのに対して、「国交省中心市街地全域が浸水すると想定」などと、勝手によその地区のことまで持ち出しておいて各地区における浸水程度の差を無視し、指摘内容を故意に無害化して回答。

② 当会が周辺道路が水没した場合にどう対処するのかについて質問しているのに、「職員をあらかじめ新市庁舎内に待機させることが対策」と回答。市庁舎内に職員が何百人いたところで、周辺道路の水没が止められるはずもない!(アホか!!) せめて、「水没したら防災倉庫からボートで救援物資を運び出す予定、そのためのボートを購入します」という程度の回答はしてほしかった。

 仮に、高校入試や大学入試にこのような質問が出題された場合、この市長回答のたぐいの回答を書いた受験生がいたら、採点者が「文章読解能力は全くゼロ」として不合格の烙印を下すことは必定。

 聞くところによると、最近の鳥取市の採用職員はみな高学歴者ぞろいとのこと。この回答も、市長が自分の周りにいる元々は優秀であったはずの職員に書かせたのでしょう。就職時には優秀と言われていた職員を、このように平気な顔で恥ずかしげもなくトンチンカンな回答を書かせるように育て上げるのが、現在の「鳥取市役所という名のシステム」であるらしい。市民からの質問に対して、うわべは誠実に見せかけながら実際の内容は皆無な回答が書ける能力、上部からの指示に沿うようにデータを操作してもっともらしく見せる能力、等々が高い職員ほど上に出世できるシステムが既に出来上がっているようです。

 さて、浸水の過去の事例に戻ります。堤防が破損しなくても川沿いの公共施設が水没した例もあります。当ブログの2015/09/17付の記事の中の豊岡市の公立豊岡病院水没の事例を以下に示します。この病院は浸水被害の翌年に西側の丘の上に移転しています。

豊岡・円山川破堤

 破堤という言葉が使われていますが、これも先回の11/1の記事に載せた市内面影地区の事例と同様に「内水氾濫」によるものです。川沿いの地下水位が高い場所では、堤防が壊れていなくても地域内に降った雨が集中し車が水没する危険性があります。このような過去の水害事例、川沿いに公共施設をつくることがいかに水害に対しては無防備であるかは、ネットを通じて容易に情報検索できるようになった今日、調べる気さえあればいくらでもデータを入手できたはず。

 鳥取市の新市庁舎の現在の位置の決定に当たっては過去約十年間にわたっていくつもの専門家を含んだ委員会が存在しましたが、それらの委員会を常に主導してきたのは土木工学が専門のかっては鳥大学長でもあった鳥大名誉教授の先生でした。この先生は、残念ながら、建物を建てることについては詳しくても、その建てる場所の安全性については無知だったようです。

 約100億円をかけて新築した鳥取市新庁舎が、今後、もし万一、常総市新庁舎と同様に水没することになったら、当初は全国から同情と支援を受けることでしょう。

 しかし、

「①この新庁舎が日本史上で初めて、市民による住民投票結果を市長がひっくり返して建設が強行されたこと」、

「②当初の予定建設費が市長によってどんどんと吊り上げられて、結果的に約100億円の国民・市民の税金を投入することとなったこと」。そして、

「③水害に対しては比較的安全であった旧庁舎から、わざわざより危険性の高い千代川沿いを選んで移転したこと」

を全国が知ったならば、同情は一転して、侮蔑・軽蔑へと変わることでしょう。「自業自得」との言葉も聞こえてきそうです。

 その時に赤っ恥をかくのは、前市長、現市長、移転に賛成した議員だけにはとどまらず、この地を選定した「専門家」の先生方も同様の評価を受けることとなるでしょう。

/P太拝

週刊文春のスクープ記事に改めて思うのは、既存マスメディアの忖度のひどさ

 今日の夕方、家に帰ってネットを見たら、実に興味深い「週刊文春」の記事が載っていた。

「河井前法相の大幅スピード違反を、広島県警が見逃していた!」

 なんで安倍晋三の周りには(おっと、官房長官菅義偉というべきか・・)倫理的に低レベルなこの程度の人間しか集まっていないのだろうか? 大臣任命前の「身体検査」で少し情報収集してみれば、すぐに適不適がわかりそうなものだが・・。大臣を任命する側も、特に公選法違反については「この程度のことならワシもやっていることだから問題ない」と思っているのかもしれない。

 それにしても、現職の法務大臣のスピード違反を警察が見逃したのだから、この事件の影響は行政府である安倍内閣の範囲にはとどまらない。司法面の執行機関であるはずの広島県警が、行政の最高機関であるはずの内閣の重要人物の法律違反を、しかも、よりによって司法面を統括する立場にある現職の法務大臣の違反を、彼が大臣であると知っていたことが理由で見逃したのである。この報道が事実ならば(文春の報道によれば既に確定的といってよいだろう)、今の日本では「三権分立」が既に機能していないことを明白に示している。三権分立すらない中国の独裁政権を笑っている資格など無くなってしまうのである。このような事実が判明したからには、公選法違反で既にやめたアホ大臣の責任追及だけではすまされない。広島県警の責任者も厳罰に処するのが、司法面のチェック機関としての検察の当然の責務であるはずだ。

 皆さん、もしも今後、スピード違反で警察に捕まることがあったら、「なんで大臣を見逃しておいて、俺だけを捕まえるのか!その根拠をここで説明してみろ!!」とその場で言ってやりましょう。この事件の影響で、全国の県警も当面はスビード違反の摘発を少しは控えるのかもしれません。

 さて、この報道に接して改めて思ったのは、週刊誌の情報収集能力の高さである。それに比べて、既存の新聞やテレビの情報収集力の低下、特に時の権力者に対してのチェック能力がほとんど無能化しているという現状を感じてしまうのである。大マスコミの記者連中は、記者クラブ等を通じていち早く情報を得るという特権を得るのと引き換えに、時の権力者に対する批判を自主的に控えるという忖度に日々いそしんでいるらしい。これでは、首相官邸に対する忖度で最近批判を浴びている霞が関の官僚連中と、何ら変わるところがない。

 この種の事情については、ひと月ほど前に読んでずいぶん共感した記事があったので以下紹介しておきたい。この記事を書いたのも、週刊誌「週刊現代」の記者である。新聞社の記者がこの種の記事を書いていたら、即クビか、よくても左遷されていただろう。

全国紙でも進む「リストラ・支局統廃合」新聞記者の苦悩と見えぬ未来

 特に四ページ目の「当局発表を書き写すだけの若手たち」を読んでいただきたい。そのページ内容の一部を抜き書きして下に示しておこう。

『「記者クラブに属する記者は、当局が出すペーパーを横から縦にするだけで、ほとんど一日中取材らしい取材をしないのが今や普通になっています。通信社を使えばよさそうな誰が取材しても変わらない短いネタまで、テレビを含めて10社以上で同時に取材し、場合によっては中身をお互いに確認し合って同じ内容の記事ができあがるのだから、壮大なムダですが、この『護送船団方式』を崩す気は全く見られません。

マスコミが新卒採用の人気業種から姿を消して久しいですが、業界のレベルの低さがネットやOB・OG訪問を通じて学生にもバレているのだから当然です。若手記者も、先輩たちが当たり障りのない会見の書き起こしのような仕事をしている様子しか見ていないため、決まった仕事しかできない『いい子ちゃん』ばかりになって、現場に緊張感が全くない。『たとえ記事にならなくても、権力者を追及するために取材するんだ』という凄みがないんです。

私が知っている記者でも、骨のある人間ほど居づらくなって辞めていく。残るのは、新卒でハイヤーを乗り回す『新聞記者様』のステータスと高給にしがみつく人ばかりです。・・・・

・・・『週刊誌で記事が出ると、追いかけるのが面倒くさいからやめてほしい』と平気で言う新聞記者もあまりに多く、新聞の斜陽ぶりが肌感覚でわかりますね。このままでは『新聞も出している不動産屋』と揶揄されても仕方ない・・』

 

 上の文の内容は東京における現状なのだろうが、今や地方でもこれと同じ状況なのである。筆者は、何年も前から、大新聞の鳥取版、地元新聞、国営放送を筆頭とするテレビのローカルニュース、いずれも市や県の広報内容を垂れ流しするばかりで、県政や市政に対する深堀りが全然できていないと感じていた。県政・市政の問題点を正面から検証して、市民のために問題点を追求する記事は年々希少化するばかりなのである。

 このことを最初に実感したのは、そもそもは、当「市民の会」が主体となって取り組んで来た「鳥取市の市庁舎新築移転問題」に筆者が初めて係わるきっかけとなった時のことである。それまでは、各新聞の報道だけで見る限りは、「この問題は、市執行部と市議会議員とがよく話し合いながら、常識の範囲内で最適な結論を出そうと努力しているのだろう」と単純に思っていた。

 しかし、2013年2月3日にさざんか会館で開催された「市庁舎整備に関する市民説明会」に友人に勧められて参加したことで、それまでの思いは決定的に裏切られた。その時までの筆者は、国政はともかくとして鳥取市政についてはほとんど関心がなく、もちろん市議会傍聴などしたこともなく、市民説明会への参加もこの時が初めてであった。

 2012年5月の住民投票の際には仕事で不在、友人に勧められて事前に不在者投票だけはしておいたものの、仕事で鳥取に居ない期間も一年の半分程度はあり、住民投票の背景や経過については地元紙の新聞報道で時々知るのみであり、その内容をよく理解してはいなかった。

 その会場で見たものは、以下のことである。当日の会場で撮影したピンボケ気味の写真も一枚載せておこう。 

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①薄弱な根拠のもとに「市庁舎の新築移転は絶対に必要」と主張する、明らかに関係業界からのサクラと見られる多くの人々。

②上記の「新築移転派」を探し出しては恣意的かつ優先的に発言権を与えようとする、当日の司会役を務めていた市議会与党のK議員。

③未成年の女性発言者を事前に準備しておき、その発言者を指差して示すことで司会者に指名を促した某新聞社の記者。

 このまことに低レベルに終始した市議会主催の市民説明会を実際に自分の目で見て、あまりにもいい加減な鳥取市政の実状にあきれるほかはなかった。その日の筆者の日記を見返すと、「説明会、業者のサクラが花盛り」との駄句が書きつけてある。

 この日を境に、筆者は市執行部とそれに同調する議員、さらに某新聞社に対して徹底的な不信感を抱くこととなった。筆者が「市民の会」の活動を少しでも手助けしようと思いその活動に参加することを決めたのは、この説明会への参加がきっかけである。

 上記の③の意図及びその結果については、この説明会直後の約一週間にわたる某新聞の記事を、例えば県立図書館で探されるとよいだろう。某新聞記者が「イタイケな未成年者が発言しようとするのを、乱暴なヤジで妨害していじめていた新築移転反対派の横暴」に対する非難を何度も繰り返しているキャンペーン記事をしっかりと読むことができるだろう。この場合には、「行政の提供するニュースの単なる垂れ流し」どころではなく、「マスメディアによる意図的なフェイクニュースの捏造」と言う方がふさわしい。

 これほどひどいのは例外的だが、マスメディアによる現在の鳥取県政・鳥取市政に関する報道は、単に「行政が提供する広報の棒読み」に過ぎない。そこには積極的な評価もなければ、積極的な批判もない。ただ淡々と行政提供の広報を読むだけだ。これでは、県や市のサイトをタダで訪問して広報を確認すれば済むだけの話。新聞による独自の付加価値が見いだせない以上、わざわざカネを払ってまで新聞を買おうとする人が減るのは、全く当然のことなのである。

 思うに、今は違うが、十年くらい前までは、競争の激しいマスコミ関係に就職できた学生は「就活の勝ち組」と呼ばれていた。就職後も勝ち組であり続けるためには、自分が勝者と認められている既存の体制を維持し続けなければならない。今の体制が崩れれば一転して自分も敗者に転落しかねない。当然、彼らは改革を嫌がり保守的となり、職場でも「波風を立てず、問題を起こさず、何か騒動を起こしたら出世の妨げ」というのが彼らの処世上の金科玉条となる。「お香もたかず、屁もひらず」というのが、今の鳥取市で記者と呼ばれる人々の大半の姿勢なのである。こういう人たちに対して、今さら「権力者の不正を暴け!」と言っても、馬耳東風と聞き流されてしまうのが当然の反応なのかもしれない。

 そもそも、新聞の記事などは、その新聞の利害関係の元に取捨選択されて当然なのである。社会にとって極めて重要な事柄であっても、新聞社の利益に合わなければ無視され掲載されることはない。新聞やテレビの記事に対して馬鹿正直に公平性を期待していると、あとで自分が馬鹿を見ることになるだろう。

 本当の現実は、現場に行って自分の目で見るしかない。自分自身が行くことが不可能な場合でも、自分が信頼できると思った人が実際に見聞きした記事を信じたほうが、利益優先体質に既にどっぷりとはまってしまった既存のマスメディアが書く「毒にも薬にもならない、ただ紙面を埋めることだけを目的としたヘタレ記事」よりも、まだましなのだろうと思う。

 幸いにして、今では個人でもブログやSNSを通じて簡単に意見を発信することができるようになった。情報を発信する多くの個人や団体による発信元の中から、本当に自分が信頼できそうな発信元を見つけていただきたいものである。

 筆者自身の経験から、もう一度繰り返して言いたい。既存マスメディアによる中立を装った記事の内容を過信してはならない。自分自身で、できるだけ現場に参加して、直接にものごとの実際の姿を確認するようにしていただきたいと思うのである。

/P太拝

170億円を投じて建設したが、肝心の時に役立たずに終わった「巨大防災施設」

 九月から十月にかけて、関東地方は台風15号、19号、さらに21号に伴う大雨と大変な被害に見舞われました。先月末、これらの被害に関連する注目すべき記事を読んだので、以下紹介します。

「茨城・台風直撃なのに170億円投入の防災アリーナが役立たず 市民から怒りの声「まずは開けてくれないと…」」

  内容を要約すると、

・九月の台風15号の際、災害時に一万人収容できるとうたって神栖(かみす)市が約170億円の税金を投入して建設した「かみす防災アリーナ」が閉鎖されたままで、住民が中に入ることができなかった。また、「防災拠点」であるにもかかわらず、施設のガラスは強風で破損、軒下の防水シートもめくれあがってしまった。

・この施設はPFI方式によって民間業者(東京アスレチッククラブ)が運営しており、毎年3.3億円以上の税金が市から業者に支払われている。

・批判を受けて10月12日の台風19号の際には短時間(40時間)だけ開放して避難者を受け入れたが、洪水警報が出ていた13日の朝には避難者を追い出して再び施設を閉鎖してしまった。

・この施設の建設に170億円もの巨額費用をかけることについては、以前から市民からの批判があり、建設計画の見直しを求めて2017/10に住民投票を実施。「計画見直し賛成」が多数を占めた。

住民投票直後の2017/11に市長選を実施。ここでも「施設計画の見直し」を唱えた石田氏が当選したが、既に建設に着手していたこともあり、当初の計画のままでの施設の建設がすすめられた。 

 

「防災対策をうたう巨大ハコモノ建設計画」→「市民の批判が殺到」→「住民投票実施」→「市長選」という一連の流れを見ると、到底、他人事とは思えない。実に我が鳥取市の「市庁舎新築移転問題」とそっくりの経過ではありませんか!

 住民投票の後、市長選の前の時点で週刊東洋経済が出した記事も以下に紹介しておきます。住民投票の後で、当時の市長が住民投票結果を無視して「計画は予定通り進める」と表明したところなんぞも、我が市とそっくりです。(鳥取市の場合には、住民投票後に一年以上をかけて地元マスコミも利用して、真綿で首を絞めるが如く「ああだこうだ・・」とイチャモンをつけ、「住民投票結果で支持された現庁舎耐震改修案は実際には費用が高くなるので実行不能」との市民に対する世論操作を仕掛け続けていった果てに、ようやく当時の竹内市長が新築計画の再開を公表したのですけれど・・。)

J1鹿島の地元「神栖」がハコモノ行政に大揺れ

 

  ここで、神栖市がどのような市であるか確認しておきましょう。茨城県南部に位置し鹿島臨海工業地帯の一角を占め、人口は約9.5万人で鳥取市の約半分。市内には、日本製鉄、ダイキン花王クラレ等々、日本を代表する大企業の工場が多数集中、これらの事業所からの法人税で市財政は十分に潤っています。

 自治体の財政の健全性を示す財政力ランキング(2014年版)を見ると、神栖市の財政力指数は1.32。基準となる収入額を支出額で割った数字が財政力指数なので神栖市は収入が支出の1.32倍あることになり、全国1763自治体中で財政力指数は14位とトップクラスに位置しています。国からの支援である地方交付税は財政力指数が1.0以上の自治体には基本的には支給されないため、神栖市は自前の財源だけでも運営ができるリッチな自治体であるといえます。この防災アリーナの建設費の多くが神栖市自身の財源から出ているのでしょう。

 ちなみに我が鳥取市は財政力指数が0.51、税収等の自主財源は基本的に必要な額の約半分しかなく(実際には、今年度予算での自主財源比率は40%)、残りは国からの地方交付税や国庫支出金が頼り。全国の県と市町村全てからなる1763自治体中の順位は737位。人口20万人程度の自治体の中ではかなり貧しい部類に入るといってよいでしょう。このように貧しい自治体が、約100億円もかけて市庁舎を新築すること自体、そもそも無謀なのです。

 

 次に、神栖市住民投票とそれに続く市長選の結果を見ておきましょう。

(1)2017/10/1 住民投票 投票率33.4% 

   防災アリーナ計画の見直しに賛成 13,812票

   同上に反対           11,482票

 2012/5/20に投票の鳥取市住民投票投票率50.8%に比べると、大幅に低い投票率となっている。多くの大企業の城下町であり住民の出入りが激しいために地元意識が低い、市財政は十分に豊かであるため巨額建設費への抵抗感が薄い等々の理由が考えられる。 なお、当時の保立市長は、住民投票直後の10/6には、早くも投票結果を無視して「従来計画通りの建設続行」を表明した。

(2)2017/11/19 市長選結果 投票率54.9%(前回は44.9%)

   石田 進 22,933  伊藤 大 12,870  境川 幸雄 5,719

 当選した石田氏は建設計画の見直しを主張、他の二人は従来計画の推進派とのこと。前回よりも投票率が10%上がったことは、この問題が市民の関心をある程度集めたことを示している。しかし、結局は、石田新市長も当初計画通りの建設を承認した。既に工事が始まっており、中止すると資材費や解約料として約38億円の出費が発生するというのがその理由であった。

 

 さて、この一連の騒動が示すものは何でしょうか。筆者なりにまとめてみると以下のようになります。

① 各自治体の巨大ハコモノ建設への志向体質は、リッチな自治体であれ、わが市のような貧乏自治体であれ、今日の日本でも基本的にはあまり変わりがない。神栖市のような収入の多い自治体ならば余ったカネをどうしようと基本的には好きにすればよいのだろうが、市民からは「救急車が来るのに一時間もかかる」という声も上がっているとのこと。自分の選挙のために土建業界へ投げ与えるエサを確保することよりも、まずは住民サービスの確保を優先するのが当然だろう。鳥取市のような貧乏自治体が自分の経済力も考えずに裕福な自治体のマネをして巨大ハコモノを次々に建設、その必然的な結果として年々市民サービスの水準を切り下げ続けているのは実に愚かというほかはない。

② 防災のためには堤防等のハード面の整備も必要であるが、温暖化に伴う近年の災害規模の急速な増大に対応した巨額費用の捻出は困難であり、ハード面だけで災害対策することは現実には到底無理だろう。一方、ソフト面での対策にはそれほど巨額な費用は必要としない。住民の生命を守るために急がれるのは、

「行政側の各部門間の連絡網の整備」、

「刻々と変わる状況に対応する方針決定の責任者の明確化と、彼による迅速な判断」、

「安全な避難所の再選定」、

「住民に対して避難情報を迅速かつ確実に伝える連絡網の整備」

等々だろう。

③ この神栖市の施設を運営している民間業者の東京アスレチッククラブは、基本的には自治体所有の運動施設の受託運営が主な業務。この防災アリーナには市民向けの運動施設が併設されており、防災業務の管理も併せて受託したものと思われる。しかし、同社にとっても、防災施設の管理は全く初めての経験であったらしい。

 そもそも、住民の生命を守るべき施設の管理を、営利追求を目的とする企業に丸投げすることなど、絶対にあってはならないはずだ。上の事例にみるように、会社としては、余計な時間外労働や夜勤などはコストの増加につながるので極力さけたかったのだろう。企業活動としては当然の選択なのだが、その結果として、本来は救われるべき人命が失われる事態にもなりかねなかったのである。自治体職員であれば納税者である住民に対して責任を持つのが当然だろうが(そうあってほしいものだが・・)、公営施設に派遣されて来た社員の目線が、住民の方ではなくて自分の働きを査定する会社の上司の方を向いてしまうのは避けられないことだろう。

 鳥取市では、新庁舎の窓口に座っている受付職員は、既にその大半が人材派遣大手のニチイ学館から派遣された社員に置き換えられてしまっているそうだ。同社の狙いは、より職員数の多い市営保育園や市立病院に自社の社員を大量に送り込むことではないだろうか。その動きは既に始まっているのかもしれない。保育園や病院では市民の命に直接かかわる業務が大半であることはいうまでもない。

 鳥取市では、市の公的業務の外部委託は現在急速に進行中であり、最大のものが河原町に建設中の可燃物処理場である。市と周辺四町からなる県東部広域行政組合は、昨年二月に処理場建設費用193億円と完成後20年間の運営費用(約6.6億円/年)の合計総額325億円の計画案を可決した。国内第二位の製鉄会社であるJFEの子会社のJFEエンジニアリングが、この施設建設と運営に当たることが既に決まっている。

 また、上水道と下水道についても、国の後押しもあって民営化の動きが今後加速しかねない。両者ともに人間生活には必要不可欠なインフラであり、人命にかかわる事業といってもよいだろう。このような重要な事業を民営化しようとするようなグータラで役立たずの市職員や議員がもしもこれから出てきたら、さっさとお払い箱にしてやろうぜ!市民の皆さん!

 市の主要業務の外部業者への委託は、市民や国から得た税金の多くが、大企業経由で東京や大阪に流出してしまって地元には還元されないことを意味している。このことは我々市民の間で循環するおカネの総量の減少を意味しており、地元経済の振興の面で極めて重大な問題となる。この点については、稿を改めて別の記事で詳しく述べたい。

 

 最後に、本日、本格的に業務を開始したという鳥取市の新庁舎の防災上の役割について述べておこう。先回の記事で紹介したハザードマップに見るように、新庁舎は「指定緊急避難場所・指定避難場所」のいずれにも指定されてはいない。つまり、災害発生時には、この約100億円を使って建てた新庁舎では、今のところ、ただ一人の避難民すらも受け入れる予定はないのである。先回の記事で述べたように、この新庁舎周辺の数カ所の指定緊急避難先は、水害時には水没して使用不能となる可能性が高い。新庁舎周辺の住民は一体どこに避難すればよいのだろうか?

 新庁舎の避難民受け入れに関しては、市が庁舎新築移転が確定した位置条例採決から半年たった時点のH27年5月に公表した「みんなでつくる鳥取市庁舎の考え方」のP6に、たまたま災害発生時に庁舎内にいた市民を対象として、「来庁者など市民が一時的に避難することできる(記載ママを転記)一時避難スペースを設ける」と書いてあるだけなのだ。この文書によると、新庁舎内に設ける仮眠室やシャワー室は、あくまで職員専用らしい。

 巨額費用をかけて新築した新庁舎からは締め出され、近くには一時的に寝泊りする「指定避難場所」すら全くない状況下で、被災した旧市内の市民は一体どこで寝泊りすればよいのだろうか?これでは、「鳥取市の現在の防災対策は、あの神栖市以下」と言わざるを得ないだろう。

/P太拝 

鳥取市の現在の水害ハザードマップ

 先日の10/27の日曜日、鳥取市内の天気予報は「曇りのち晴れ」のはずだったのに、10h頃には猛烈なにわか雨が降った。おかげで午前中の予定が狂ってしまった。いよいよ時雨のシーズンに入ったようだ。ふと思い立ってその日の日本海の海水温を調べてみた。

「日本海の海面水温・海流(気象庁サイト)」

 太平洋側の沿岸の水温は平年よりも高いが、日本海南部の水温は今のところは平年並みとのこと。日本海の水温が高いところに大陸からの寒気が吹き付けると、山陰以北では豪雪となる。このままであれば、今年の冬の雪は平年並みなのかもしれない。

 先々週末にも関東・東北の太平洋側で猛烈な雨が降った。九月以来、何度目かの度重なる豪雨被害である。被災して亡くなられた方には謹んでお悔み申し上げたい。10/12に関東を通過した台風19号の時、筆者の親戚の家の近くの川も広範囲に氾濫した。そのニュースを見てあわてて電話したが、「氾濫したのは数km下流、家の周りはぎりぎりセーフ」とのことだった。

 この一連の台風と豪雨も、元をただせば地球温暖化による海水温の上昇が原因である。工業化の進展で排出される二酸化炭素の急増に伴って温暖化が進むとの警告は、筆者が小学生であった1960年代には既に指摘されていたのだが、米国大統領をはじめとして未だにその説を否定し続ける輩がいることは、実に愚かと評するほかはない。石油・石炭業界の代弁者に過ぎない彼らには目先の利益しか目に見えず、より大きな危機に対しては「自分が見たくないものは、見ないことにした」と言っているだけなのである。彼らには到底、指導者としての資格はない。

 さて、関東・東北・長野の水害報道を見ていて、鳥取市の想定浸水域(いわゆるハザードマップ)が現在どうなっているかが気になった。今回の千曲川の氾濫区域は、ハザードマップで事前に予想されていた想定浸水域とぴったり一致していたそうである。久しぶりに鳥取市の防災サイト(下記)を開いてみた。

「総合防災マップ(2017年版)」

 基本的な情報は二年前から変わっていないようだ。以下、このページの中の情報についてその内容の一部を見ていこう。

(1)中心市街地に指定避難場所がないのは、なんでか?

「指定緊急避難場所」とは、とりあえず危険から逃れるための避難場所、「指定避難場所」とは自宅に帰れない避難者が一定期間生活するための避難所とのこと。以下、東部とは千代川よりも東側、西部とは千代川よりも西側を意味しているようだ。

 「指定緊急避難場所・指定避難場所」の「東部その1」、「東部その2」のPDFファイルを見ると、市の中心部にあたるいわゆる旧市街地には「指定避難場所」が一カ所もないことが気になる。一方で、津ノ井や湖山などのいわゆる郊外では「指定避難場所」がちゃんと指定されている。これでは、自宅が被災して寝泊りする場所もなくなってしまった旧市街地の住民は一体どうすればよいのだろうか?今日のうちにも大地震が発生するかもしれないのである。自宅が倒壊してしまった人は、一体どこで夜を過ごせばいいのか?深沢市長は、まさか、「旧市街地の住民が寝泊りする場所がなくなるという事態は、完全に想定外でした」などとは言わないでしょうね?

 下の記事に見るように、東日本大震災では、震災関連死者の約五割の死因が、避難所での疲労と困難を伴う不十分な生活に起因していたとのこと。中心市街地に明確な避難所すらも設けていない鳥取市では、いざ大災害が起こった場合には、さらに悲惨な結果を招きかねない。この避難所確保の遅れ問題ひとつを取り上げて見ても、「市民の命を守ることよりも、巨大ハコモノ建設にカネをかけることを優先」する現在の鳥取市政の方向性が透けて見えるのである。

「東日本大震災の震災関連死、5割は避難生活に原因が。それでも雑魚寝はなぜ続く?」

 

(2)鳥取市東部全図 P19~P20について

 地図の含む情報量は膨大なので、すべてのハザードマップをここに載せることは到底できない。市の「総合防災マップ」の中の、おすまいの地域が含まれている地図を選んで見ていただきたい。筆者は旧市街地が含まれる東部のP19~P20をダウンロードしてみた。この地域の地図だけでも、PDFファイルにして11.8MBの容量があった。

 この中心市街地の傾向だが、当然のことながら千代川に近い西側に行くほど想定浸水深さが深くなる。県庁から鳥取駅に向かう若桜街道(国道53号)より東側では大半が想定浸水深さが50cm以下であるのに比べて、西側では浸水深さ1m以上の青色で塗られている地域が多い。

 浸水深さの一例として、この国道53号線沿いにある新旧市庁舎の周辺の比較を下の図に示した。左側が新市庁舎周辺、右側が旧市庁舎周辺であり、赤線で囲った領域がそれぞれの庁舎の敷地を示している。(図をクリックすると拡大。以下の図も同様。)

 

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 新市庁舎は建設の際に水害対策と称し庁舎部分の敷地を1.2mかさ上げしているが、かさ上げしても図に示すように敷地全体での浸水は免れない。仮に庁舎の建っている部分の浸水は免れるとしても、周辺道路はかさ上げしていないので浸水時には新市庁舎が「陸の孤島」になる可能性が高い。特に、新市庁舎の北側と西側は深さ1m以上の浸水が予想されているので、この方面への交通は極めて困難になるだろう。

 一方、旧庁舎の周辺では、浸水深さが50cm以下または浸水なしとする白色の領域が多くなっている。旧庁舎に比べて新庁舎周辺が水害に弱いことは、誰が見ても明らかである。今後、新庁舎周辺で水害が発生した場合には、「新庁舎は防災の拠点にする」と主張して新庁舎建設を強行した竹内前市長と深沢現市長、さらにその巨額の費用を要した新築案に賛成した与党議員(会派新生、公明党、その他)の責任が厳しく問われることとなるだろう。

 なお、左側の図中の113、115、18は、それぞれが「指定緊急避難場所」とされている幸町棒鼻公園、明徳小グラウンド、明徳小学校を示している。いずれも予想浸水深さが50cm以上となっており、大水害発生時に避難場所としての利用は危険であり、使用不能となる可能性が高いことは明らかである。市はこのことをこの地域の住民にちゃんと伝えているのだろうか?

 さて、約四年前の2015年9月、当会は「市民の会」公式サイトに当時のハザードマップから抜粋した新旧両庁舎の浸水予想の比較図を載せている。改めてその図を下に示しておこう。

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 これを見ると、新庁舎の方が旧庁舎よりもより水害の危険性が高いことについては変わりはないが、現在のハザードマップの方が、四年前のものよりも全体的に浸水予想深さが50cm程度浅くなっていることがわかる。ポンプの増設等によって排水能力が向上したのだろうか?市による丁寧な説明を求めたいものである。

 

(3)水害は同じ場所で繰り返し起こる

 鳥取市では、昨年、一昨年と続けて千代川が氾濫しかねないような豪雨に見舞われ、市内各所で浸水被害が発生した。今年は幸いにもこれといった被害は起こらなかったようだが、これは、たまたまそうであったというだけのこと。今年の台風が関東地方ではなくてもっと西寄りのコースに進んでいれば、山陰地方も相当の水害に見舞われたはずである。

 台風のコースと県東部の水害の関係については、詳しくは当会の過去の記事を見ていただきたい。台風が九州南部や四国南岸をかすめて近畿地方に上陸した場合、当地も相当量の豪雨に見舞われる可能性が高い。以下に例として挙げている一昨年九月に市内各地に浸水被害をもたらした台風18号も、まさにこのコースをたどって明石市に再上陸している。

 さて、地震と違って、水害は同じ場所で繰り返し起こる傾向がある。以下、昨年または一昨年に浸水被害に見舞われた地区を例に、ハザードマップとの関係を見ておこう。


(a)吉成南町
 昨年の西日本七月豪雨の際、2018/7/7に県から委託されて市が管理していた排水ポンプの故障が発生、町内は広範囲な浸水被害を受けた。一昨年の秋にもこの排水ポンプが詰まって同様の浸水被害を受けている。現在のハザードマップを以下に示す。町名が見ずらいが、千代川沿いの右側の千代川と大路川に囲まれた地区が吉成南町であり、地区の大半が浸水想定深さ2~5mとなっている。

 当時の状況の詳細については、当会公式サイトの2018/7/26付の記事を見ていただきたい。

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(b)河原町渡一木
一昨年2017/9/17の台風18号通過の際、内水氾濫、および大井出川の三か所にある水門操作の不備により、河原町総合庁舎周辺で床上浸水が発生。一時的には人の胸まで水位が上がったとのこと。この地区では昨年の七月西日本豪雨の際にも排水ポンプの故障による浸水が発生している。現在のハザードマップによれば、同地区の大半が浸水想定深さ2~5mとなっている。この浸水被害の詳細についても、当会公式サイトの記事を参照していただきたい。

 

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(c)面影地区
 上と同じく2017/9/17の夜、面影地区も豪雨に見舞われ、道路や農地が30cm程度冠水したとのこと。詳しくは「H29 面影地区地域づくり懇談会議事録」を参照されたい。これは地区内に降った雨が川の水位上昇によって水門から排出できず、地区内に滞留することによって発生した典型的な「内水氾濫」である。下のハザードマップに示すように、同地区の大半は浸水深さが50cm以下であり千代川水系の氾濫に対しては安全とされているが、そのような地区でも浸水被害が発生する典型例である。

 なお、この2017/9/17の降水量であるが、「気象庁 過去の気象データ検索サイト」によると、当日の総雨量は鳥取で149.5mm、智頭では191.5mmであった。一時間ごとの降水量の最大値は、鳥取で20~21hに49mm、智頭では19~20hに40.5mmを記録している。 この短時間に降った大量の雨が面影地区と河原町での内水氾濫の原因となり、さらに県・市・その他の管理委託団体による水門操作の混乱が浸水に拍車をかけたのであろう。

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 一時間に50mmを越すような豪雨に遭遇すれば、どのような地区でも「内水氾濫」は発生しうる。「ハザードマップに載っていないからうちの地区は安心」と思ってはいけない。

 このほかにも、市内の水害常襲地区としては青谷町駅前地区や、福部町総合支所周辺などがあげられる。自宅周辺の水害が心配な方には、今一度、ハザードマップを確認されることをお勧めしたい。

 今年、鳥取市は運よく水害には会わなかったまま年を越すことになりそうだが、既に日本中のいたるところで豪雨に見舞われてもおかしくない時代となってしまった。来年水害に遭うか遭わないかは、もはや、その時の運しだいなのである。

/P太拝

ラグビー、再発見!(3)

 快進撃を続けてきたラグビー日本代表でしたが、昨夜、ついに南アフリカの強力フォワードによってその突進を止められてしまいました。

 典型的な「にわかラグビーファン」である筆者、日本代表の試合の時にはラグビー強国の習慣にならってビールを飲みながら観戦していた。おかげでこのところ毎週末になると飲み過ぎ警報が脳内に点燈しっぱなしだったが、今週からはもう日本代表の試合を見られないのかと思うと寂しい限り。でも約一か月にもわたって楽しませてもらったのだから、代表チームには「ありがとう」を何べん言ってもたりないと感じている。

 今日のネット上はラグビー関係の記事であふれていたので、今さらあらためて紹介するまでもないが、ラグビーファンの行動についての記事を二つだけ挙げておきたい。こういう記事を読むと、なおさらラグビーが好きになってしまうのだ。

「日本ファン、敗戦後の“客席のユニ交換”に絶賛の嵐「これ素敵!」「最高のシーン」」

「「今すぐ東京スタジアムに走れ!」南ア戦直前、アイルランドサポーターからもらった一生もののプレゼント」

 

 「紳士が野獣のようにやるのがラグビーで、野獣が紳士のようにやるのがサッカー」という言葉が米国にはあるそうだ。外国のサッカー選手や、よく暴動をおこす外国のサッカーファンについてはともかくとして、日本のサッカー選手とファンは野獣には程遠いとは思うのだが・・。たぶん、サッカーや野球などの他のスポーツ一般に比べて、ラグビーだけがスポーツ界では一種独特の存在なのだろう。

 ラグビーでは体力消耗が極めて激しいので、W杯などの大会以外の通常の場合にはゲーム間隔を一週間は空けるとのこと。「四週連続して試合をしたら一週間は試合を入れない」というのが日本チームのいままでのスタイルであったそうだ。連続で五週目の昨日の試合前には既に相当体力を消耗していたとの指摘もある。上の言葉は、「週に一度ラグビーをやって80分間を野獣のように暴れまくったら、後の六日間は(体力回復のために)おとなしく紳士然としていなければ体がもたない」と言い換えてもよいのかもしれない。

 80分間、全体力を使いはたして争った相手とは、試合が終わってからはケンカなんかもうしたくない。体力の極限まで出し尽くした自分自身と、同様に戦った相手も共に誉めてやりたい。ラグビー独特の「ノーサイドの精神」の背景にはこういう事情もあるような気がする。ともあれ、平和であるべきはずのスポーツの場で、ナショナリズムの発揮による暴力沙汰などを見るのはもうウンザリだ。ラグビーという競技は、国同士のケンカがいかにくだらないかを実感させる貴重な場を提供する可能性を持っているような気がする。 

 さて、もう一つ感じたことだが、今回のラグビーW杯をきっかけとして、我々自身による「日本人の定義」がかなり変化していくような予感がする。十年ほど前には、「日本人の両親から生まれた人が日本人」というのがごく当たり前の一般常識だったように思うが、最近は「自分で日本人になりたいと思った人も日本人として認める」という傾向が社会的に許容されつつあるように思う。今回のW杯ではリーチ主将などがその典型例だろう。

 もちろん、日本が世界に向かってより開かれること、日本社会に外国をルーツとする人々が加わることによってより多様性が増すことについては、筆者は大いに歓迎したい。日本政府はいまだに移民を許容していないが、移民国家である米国の産業を支えているのはほかならぬ移民であり、アップルとグーグルの創業者がともに移民の息子であることは良く知られた話である。アメリカのIT産業を支えて米国に海外からの利益をもたらしている人たちも、その多くが中国やインドからの移民なのである。日本では、自ら望んでやってきた移民ではないにせよ、ソフトバンク孫正義氏も移民の息子だ。

 多様性の上に立って、異なった意見の持ち主同士で議論を戦わせることこそがイノベーションの根源なのである。米国の対極にあるのが今の中国だが、国内の多様性を否定して政府自ら情報統制するような国にできることは、せいぜいが他国の技術のコピーでしかない。中国が現在のままであれば、同国には明るい未来などは到底ありえないとだろう。

 話がさらに飛躍してしまうが、人類学的に見れば、かっての日本列島は世界に類がないほどまでに移住者に対して寛容な地域であったらしい。大陸から日本列島へは、旧石器時代、縄文、弥生、さらに飛鳥時代帰化人等々、異なる遺伝子と文化を持った人々が次々に流入してきたが、彼らの様々な遺伝子タイプは我々現代日本人の中に未だにしっかりと保存されているのである。

 特に男性の父系を示すY染色体で見ると、現代の中国や韓国で8割前後を占めているOタイプが、現代日本人男性では約5割前後と少なめとなっている一方で、残りの約五割の中では既に大陸で絶滅してしまったD2タイプやC3タイプなどの4~5万年以前に発生した古いタイプがいまだにかなりの割合を占めている。いわば、日本は、東アジアにおけるY染色体の貯蔵庫と言ってもよいのである。

「Y染色体ハプログループの分布 (東アジア)」

 このことは、この列島に流れ着いた各グループの間では、相手を絶滅に追いやるほどの虐殺や圧迫がほとんどなかったことを示している。青谷上寺地遺跡にみられるような集落間の抗争はあくまでコメや通商を巡る弥生人同士の争いであり、縄文人集落と弥生人集落の間には大きな争いは認められず、むしろ相手の文化を互いにゆっくりと取り込みながら共存し融合していったというのが最近の考古学上の定説なのである。

 日本の対極にあるのが中南米地域だ。中南米地域に現在住んでいる住民に対するY染色体の調査結果はほとんど公表されていない(おそらく社会的な影響の大きさを考慮して公表はタブー視されているのだろう)。この地域に関して公表されているのは、一万数千年前にシベリア方面から移住してきた先住民の現存する末裔に関するデータだけである。概論的な解説によると、この地域の住民の大半の遺伝子は、父系は入植者であるスペイン・ポルトガル人男性に由来、母系は先住民女性に由来しており、先住民男性が保有していたY染色体は現代ではごくわずかしか見られないらしい。スペイン人等による暴力的かつ酷薄な植民地支配の数世紀が、このような結果をもたらしたことについては今さら言うまでもない。

 いまや世界的な大移動の時代である。よりよい仕事と給料と生活環境とを求めて、毎年億単位の普通の人々が国境を越えて行き来している。「日本が好き、日本に住みたい」と言われているうちが花なのである。この先、少子高齢化で日本経済が右肩下がりになれば、そういうことを言ってくれる外国人も少なくなるだろう。「外国人を入れるな」と現在言っている人たちが二十年、三十年後に高齢者となった時、移民に対して門戸を閉ざしている今のままでは、医療・介護職など自分の世話をしてくれる人々、日本かつ国内で働くことで介護費や医療費を負担してくれる人々が、さらに大幅に減ることは確実なのである。確実にやってくる将来を見すえて今一度考えなおしてみるべきだろう。

 そもそも我々の御先祖様は、元々は出自と言語や文化が互いに異なるグループに分かれていたものが、この狭い列島の中で何とか折り合いをつけながら共存し融合して今の日本を作ってきたのである。ご先祖様にできたことが子孫である現代の我々にできないはずはない。今回のラグビーW杯は、外国をルーツとする人との協力関係を作っていく上での大変によい先例となるのではないかと思う。

 

 さて、今後のW杯の楽しみは、優勝の絶対候補のニュージーランドイングランドとの、そして決勝はたぶん南ア(そう願いたいが・・)との対戦でどう相手を料理するかということだろう。ニュージーランドはとにかくミスをしないのがすごい。南アが日本戦で見せたようなミスを連発していては到底勝ち目はないだろう。

 注目の選手としては、南アの「ポケットロケット」の異称を持つ小柄なコルビ選手を推したい。ニュージーランド戦では結構活躍していたのに、昨日の日本戦では負傷の後遺症のためか精彩がなかった。次戦では再び活躍して欲しい。

「小さな爆速男は日本の脅威! 南アフリカ戦は170センチのトライゲッター「チェスリン・コルビ」を警戒せよ」

  2021年には日本でもラグビーのプロリーグが始まるそうだ。だいぶ先のことになるが、2023年のフランスでのラグビーW杯での日本代表の活躍には大いに期待したい。

/P太拝

とっとり地域自治研究所 第二回フォーラムの報告

 10/12(土)、台風12号が関東地方に接近、鳥取市でも雨と強風が吹き荒れる中、とっとり自治研主催の「フォーラム 人口減少に負けない地域づくり」が開催されました。鳥取西道路は閉鎖、JR山陰線や因美線も運休となる悪天候にもかかわらず80名強の参加者を得て盛況でした。以下、概要を報告します。

 

(1)基調講演「鳥取県内での「平成の大合併」後の現状」 藤田安一氏 鳥取大学名誉教授

①「平成の大合併」の背景 

 国は1999年に「改正 合併特例法」を成立させて合併を奨励した結果、全国の市町村数は3232(1999年)から1543(2018年)へと減少。その主な目的は「国から地方へ給付している地方交付税の削減」にある。合併しない自治体の地方交付税を削減。その一方で、合併する自治体には合併に伴う地方交付税の削減を10年間猶予、さらに合併特例債という名の借金発行を認め、その元金+利子の七割は国が地方交付税に組み入れて支給すると約束した。

② 合併のメリット・デメリット

 合併により行政サービスの低下と住民負担の増大、住民の声が行政に届きにくくなるなどの弊害が生じた。特に周辺地域での弊害が大きくなった。

鳥取県における合併の現状

 39の市町村が19へと約半減。特に県東部では、9市町村が大型吸収合併により鳥取市の1市となった。

鳥取市に見る合併の現状

合併特例債を限度額いっぱいまで使って新本庁舎などのハコモノを建設したことにより市財政を圧迫、その結果として住民サービスが低下。
・旧町村部では合併によって、住民税、固定資産税、介護保険料、ゴミ袋代、ガンや骨粗しょう症の検診料などがアップした。逆に通学費補助は減らされた。
・合併後の旧町村部の職員数は大幅に削減され、現状は合併前の五分の一以下。結果、周辺部住民の要望が無視されることが多くなり、過疎化が急激に進んだ。

・2018年に鳥取市中核市へと移行したが、県から2000を超える業務を引き継ぐことになり、その実行力と財源が危惧される。

⑤まとめ

・合併時のスローガン、「人が輝き、まちがきらめく、快適環境都市 鳥取」は幻想におわった。
・合併によって地域づくりは弱体化した。さらに市の窓口業務を今年春から企業(ニチイ学館)に任せたことで、官製ワーキングプアの増加、行政サービスの低下、個人情報の流出が危惧される。
道州制推進下でのさらなる市町村合併の可能性

 

(2)シンポジウム「平成の大合併」後の地域づくり

 

① 智頭町のまちづくり実践と「SDGs未来都市」 寺谷誠一郎氏(智頭町町長)

(参考:「SDGsとは何か」 今年7月、内閣府は智頭町と日南町を「SDGs未来都市」に選定した。)

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 「平成の大合併」の時には「鳥取市と合併すると町の借金が無くなる」との誘い文句があった。町民の中には「合併すると自分の家の借金もなくなる」と誤解した人も結構いたようだ。一時、国は「地方創生」を盛んに唱えたが、今はどこへいったのか。自分は今の地方創生大臣の名前も知らない。

 国は机上の計算だけで規制をかけて地方を意のままに操ろうとしている。先日突然発表された「公立病院の赤字」問題にしてもそうだ。国は卓上の論理だけで病院の統廃合を唱えているが、我々は赤字になっても住民の命を助けなければならない。自分は今年75才になったので、もう怖いものは何もない。

 ・「日本1/0(ゼロ分のイチ)村おこし運動(地縁型住民自治)」をやっている。町内には88の集落があるが、集落ごとに「10年後にどういう集落になりたいか」を徹底的に議論してもらう。出てきたアイデアには町がお金をつけるが、口は出さない。

 ・「百人委員会(テーマ型住民自治)」は、教育、林業などテーマ別に分かれて関心のある町民が自主的に参加して議論する仕組み。毎年12月に町の幹部がヒヤリングをして、予算をつけるかつけないかをその場で決める。町職員は委員会で出てきた意見を否定せず実現方法を検討し、基本的には提案者と賛同した委員が責任をもって実行することになっている。
 当初は町民だけの参加だったが、鳥大学生、智頭農林高校や智頭中の生徒と参加者の範囲をどんどんと広げてきた。今話題の「森のようちえん」はこの委員会に参加した移住者のひと言から始めたものである。当初、我々地元の人間は「見慣れた智頭の森の一体何がいいのか」とか、幼児を森の中で遊ばせて危険はないかとか心配していたが、やってみたら特に問題はなく、他の市町村にもどんどんと広まっていった。
 この委員会の問題点は、町議員から「我々の存在意義がなくなる」との苦情がくること。また、長くやっているとメンバーが固定化されて、なかなか新しいアイデアが出てこなくなることも問題点。


② 琴浦町における民間主導のまちづくり 四門隆氏(琴浦まちづくりネットワーク会長)

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 琴浦町には24ものまちづくり関連の団体があり、その支援を行いながら地域の活性化に取り組むのが「琴浦まちづくりネットワーク」。設立して五年目を迎えた。行政だけでは行き届かない点を各団体に担ってもらうことを目的としている。「中間支援」として、町からの補助金も活用して各団体の活動を支援している。

 具体例としては、自宅の古民家を民泊施設に改造したいとの町民からの要望があり、このための団体を設立して開業するためのアドバイスを実施したことなどが挙げられる。
 

③ 廃校の隼小学校を活かした隼Lab.(はやぶさラボ)によるまちづくり 田中周氏(シーセブンハヤブサ 事業マネージャー)f:id:tottoriponta:20191017101125j:plain

 八頭町の隼地区はスズキのオートバイの「ハヤブサ」ライダーの聖地として既に有名だが、隼駅前のJAの空き施設を利用したレストランや古民家を改修したゲストハウスなど地元の若者による起業が始まっている。隼小が廃校になるのを機会に、八頭町と鳥銀をはじめとする民間企業7社と地域住民とが集まって同小の活用策を検討、2017年12月に隼Lab.をオープンさせた。

 旧隼小を改修して「公民連携コミュニティ複合施設」とし、カフェ、ショップ、貸スペース、体育館、プールなどを整備。貸スペース12室は満室、オープン後に約10件の起業を果たすなど活発に活動している。

 隼Lab.の運営会社であるシーセブンハヤブサの目標は、「地域の価値を最大化し、新たな産業や人材を生み出し、日本の未来のモデルになる田舎をつくる」ことである。

  以上の三件の取り組み発表のあとで、藤田教授も含めた四者に対する質疑応答が行われた(下の写真)。時間が短時間にとどまり、会場参加者に質問の機会が与えられなかったのは残念であった。

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(3)傍聴しての感想

① 藤田教授

 藤田先生が強調されていたのは、大合併した鳥取市では、各総合支所の職員数の大幅削減に見られるように周辺部の衰退が著しいということ。先生が青谷町の現状を調査に行った際、青谷和紙工房のある山根地区への行き方を青谷総合支所の窓口職員に問うたところ、その職員は和紙工房の位置すらも知らなかったそうである。青谷町観光の目玉であり市の所有施設でもある同工房への行き方を支所の職員が知らないようでは、合併後に青谷町が急速にさびれつつあるのも当然というほかはない。市職員のやる気のなさが目に見えるようだ。

 市の窓口職員の外注化も大きな問題。受注したニチイ学館の本社は東京にある。我々の税金から同社に支払ったかなりの部分が、同社の利益として東京に流出し地元には還元されない。従来も窓口業務には非正規職員が多かったのだろうが、今までは彼ら彼女らを市が直接雇っていたので、少なくとも給与の大部分は市内で消費されることで地元に還元されていたはずだ。

 鳥取市の非正規職員は増加の一途をたどり、既に全職員数の半分以上が非正規である。こんな市は全国でも珍しい。例えば、市保育所の保育士の大部分が正規職員ではない。

 そもそも、市民との最大の接点であるはずの窓口業務を民間企業にまかせておいて、市の正規職員はいったいどんな仕事をするつもりなのか? 自分たちが楽をすることしか考えていないのではないだろうか? 市職員が市民との直接の接触を面倒くさがり怖がっているようでは、満足な市民サービスなどできるはずもない。筆者が思いつくのは以下のような「仕事」だ。

・非正規職員や企業からの派遣社員の働きぶりや、窓口で暴れる市民がいないかどうかを、庁内各所に設置のカメラで監視。何かあったらすぐ警察に通報。
・自分の席に一日中座って、誰もろくに読まないような書類を量産。
・一日中会議室にこもって、さも重要な要件を検討しているようなふりをする。
・NHK鳥取を始めとするテレビや新聞を毎日呼んで来ては、熱心に仕事をしているように見せかけるパフォーマンスをカメラの前で連発。

 ろくに仕事もしない市職員や議員の生活費となる税金を払うような余裕は、我々貧しい鳥取市民には到底ないのである。

 鳥取市の合併に伴う問題点の詳細については、当ブログの「鳥取市政」カテゴリーや「市民の会」サイトにも若干記事を載せているので、そちらも参照していただきたい。

 

② 智頭町

 以前から智頭町の百人委員会の内容については詳しく知りたいと思っていたのだが、今回、寺谷町長自らの説明を聞くことによってその概要を把握することができた。この委員会の存在は「住民による直接民主制」の試みというべきであり、「議員を媒介とする間接民主制」と対立することは原理的に当然だが、試み自体は非常に賞賛に値するものであると思う。住民が自主的に声を発することによって、町内の不平等や格差の縮小が期待される。マンネリ化の弊害を克服しながら今後も頑張っていただきたい。

 以前にも寺谷町長の講演を聞いたことがあるが、ずいぶんエネルギーに富んだ人だと思った。今回もその印象は変わらない。以前、当ブログの記事で全国的に注目されるほど頑張っている自治体の首長の紹介を三回連続でしたことがあるが、全員がエネルギーにあふれる人との印象があった。やはりリーダーはこういうタイプでないとだめだ。

 現鳥取市長のように、声が小さくて何を言っているんだか聞き取れない、かりに聞き取れてもいったい御自身で何をしたいんだかサッパリ判らないようでは、「誰かに利用されるための操り人形」の存在にしかならない。

 

③ 琴浦町

 まちづくりの団体が町内に24もあるのは素晴らしいことだと思う。ただし、それらの団体の活動を後押しする、この「まちづくりネットワーク」の活動の内容が今一つ理解できなかった。もっと具体的な例を数多く挙げていただければよかった。

 一つ気になったのは、町当局と各団体に参加している住民の間の橋渡しの役割を引き受けて推進するのは良しとして、団体に参加していない住民に対するサービスはどうなるのだろうか。行政の公平性は、どのような場合でも保証されなければならないと思うのだが。

 

④ 八頭町

 シーセブンハヤブサの取り組みが順調に発展しているのは実に歓迎すべき話であり、県東部の中心と空威張りしているだけの鳥取市の外でこのような活発な活動が自発的に始まっているのも喜ばしいことだ。筆者自身、旧隼小のカフェに行ってみたくなった。

 ただし、発表者自身が述べられていたように、この地区に結果的にせよ町からの投資が集中してしまっている現状は、あまり好ましいことではないだろう。自発的なまちづくりの意欲を示す町内の全ての地区に対しても、(あまりコストをかけない形で)隼地区と同様に町が援助していく姿勢をはっきりと示す必要があると思う。智頭町の「地縁型住民自治」の取り組みが参考になるのではないだろうか。

 

⑤ 感想のまとめ

 シンポジウムの最後に、シンポジウムの進行役を務めた多田憲一朗氏(鳥大教授)が「地域のつながりを作ることが大切。協働がこれからの地域づくりのキーワードになる」と述べられていたが、まさにその通りだと思う。

 今の鳥取市は、住民投票結果に反して新庁舎建設を強行、その新庁舎窓口には派遣社員を配置して正職員は奥に引っ込み安逸を貪る等々、行政当局自らが「行政と市民との間、行政と地域との間のつながりを断ち切る」行動に余念がない。行政自ら率先してワーキングプアを増やしては市民間の格差拡大に拍車をかけ、国からの税金を市内に落とさずにその大半を東京や大阪の大企業に吸い上げさせて喜んでいる。「愚かさももここに極まれり」と評するほかはない。

 こんな鳥取市には、絶対に明るい未来はありえない。その一方で、智頭町や日南町の現在の取り組みの先には大いに明るい希望がありそうに思える。これから日本の将来を担うのは、案外、「平成の大合併」から取り残された小さな自治体なのではないだろうか。「地域のつながりを大事にして安心して暮らせる、過疎化に負けない自治体」を是非とも応援していきたいものである

 筆者の知人は、既に「こんな鳥取市には絶対に税金を納めたくないので、去年は別の町にふるさと納税をした」そうである。筆者も見習いたい。

 今年の12月末までにどこか自分の好きな自治体に寄付をすれば、その金額の大半は来年二月の確定申告で控除され、現在住んでいる自治体への住民税と所得税を大幅に減額ことができる。国が保証している制度なのだから、日本の将来をよくするために堂々と有効に使いましょう。詳しくは、以下を参照してください。皆で「自分が好きな自治体」を探しましょう。

「ふるさと納税とは?」

/P太拝

「市民の会」公式サイトに「鳥取市の明?と暗!」の記事を掲載しました

 当「開かれた市政をつくる市民の会」の公式サイトに、久しぶりに記事をアップしました。題して、『「鳥取市の明?と暗!」-写真で見る鳥取市政の現状-』

 新本庁舎の完成を機に、山積する鳥取市政の問題点の一部を写真と共にまとめたものです。一読いただければ幸いです。

 今回まとめてみて改めて思うのは、「なんで鳥取市はこんなにハコモノ建設が好きなのか」ということです。もちろん、旧建設省出身の前市長の影響が極めて大きいことがその主たる理由でしょうが、いくらハコモノ好きと言ってもふつうは限度があるものです。

 今年の五月末時点での鳥取市の合併特例債の活用状況は、既に限度額544.93億円の90.2%に達しています。こんなに借金好きな自治体は全国的にも珍しいでしょう。その活用先の大半は公共事業という名のハコモノづくりです。国から支給される税金に頼りきって自助努力を忘れた結果、鳥取市特有の「煮えたら食わあ」精神は、より一層肥大化してしまいました。

 さて、合併特例債の使用枠の残りは約53億円でしかありません。もう無駄なハコモノをこれ以上市内で見なくて済むのはうれしい限りですが、合併特例債という名の「打ち出の小槌」を失ないつつある深沢市長と与党議員は、これからいったい何にすがって自分たちの支持業界を食わせていくつもりなのでしょうか?大いに見ものです。

/P太拝 

 

 

一般市民を排除した上での「鳥取市政施行130周年 & 新本庁舎完成記念式典」が本日開催されました

 今日の10/1は、鳥取市が市になってから130周年とのこと。まったくもって、オメデタイ話!なのに、その祝賀式典では一般市民は入場禁止。

 
 上に挙げた本日付の市の公式サイト、たいていは市が記事をすぐに消してしまうので、念のために記事の内容を下に貼り付けておきます。
 
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 130周年を祝う式典は、ほぼ完成した駅南の新本庁舎で開催するとのこと。筆者はまだ完成した新本庁舎を見ていなかったので、今日の午前中に見に行きました。式典は13:30からとのことですが、都合があり午前中のみ周辺を観察。
 
(1)イオン鳥取店正面真向かいから見た巨大な新本庁舎。さすがに約100億円もの税金をつぎ込んだだけのことはあり、ずいぶん立派に見える。
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(2)式場の案内看板、周りには誰一人いない。
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(3)祝典から一般市民を排除して自画自賛の「祝賀垂れ幕」。背景の青空が哀しい。
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 さて、市公式サイトに発表された本日の記念式典の日程を下に示しておきます。
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鳥取市制施行130周年・新本庁舎完成記念式典」の開催について

(日程・内容)

① 開式のことば

② 国歌斉唱、市民歌斉唱

③ 市長式辞

④ 議長あいさつ

⑤ 来賓祝辞

◆市制施行130周年

⑥ 記念品贈呈(叙勲受章者36人 代表1人へ贈呈)

⑦ 表彰状授与(市政功労表彰者33人 代表1人へ贈呈)

⑧ 表彰状授与(特別功労表彰者20人 代表1人へ贈呈)

⑨ 謝辞(代表 1人)

◆新本庁舎完成

⑩ 新本庁舎新築工事経過報告

⑪ 工事施工業者へ感謝状贈呈(各工事代表11人へ)

⑫ 謝辞(代表2人)

⑬ 鏡開き

⑭ 閉式のことば

◆記念撮影(叙勲受章者、市政功労表彰者、特別功労表彰者)

◆新本庁舎内覧会


一般参加の可否  関係者のみ

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 この新庁舎を建てる費用の約100億円を拠出した鳥取市民と日本国民の代表を一人も招かずにおいて、この工事で利益を得た「工事施工関係者」のみに感謝状を贈呈するとは何たることでしょうか?「関係者」という名の仲間内だけで、勝手に巨額の税金を分け合い喜び合うというのが本日の祝賀行事の主眼であったようです。

 当然、2012年の住民投票で賛成多数で支持された「現庁舎耐震改修案」に「本体建設費の約33億円は高すぎる」とイチャモン付けておきながら、この新本庁舎の建設費約100億円にはアッサリと賛成した市議会与党の「新生・公明党・その他」の議員の面々も、本日の祝賀行事にはニコニコ顔で参列したことでしょう。

 さて、筆者は1996年に亡くなられた故司馬遼太郎氏の愛読者であり、氏の著作のほとんどを読了しています。司馬さんは1985年頃に鳥取県を訪れていますが、鳥取市滞在時に鳥取城址の見学を進められて婉曲に断っています。以下、朝日文庫 第27巻 「因幡伯耆の道」からの引用。

「・・。私は城跡を見ることを好んでいる。しかしわざわざ鳥取城址にゆく気がしないのは、どうも、江戸二百数十年、ぼう大な数の家臣団が、百姓の米を食ってきただけの痕跡を見て、あすから元気に生きましょうという気がおこりそうにないからである。」

  もしも現在、司馬さんがご健在で再び鳥取市を訪れ、この新市庁舎を見たらなんと言われるでしょうか。「日本全国の中で、鳥取市だけは江戸時代のままだね」とおっしゃるのではないでしょうか。

/P太拝

ラグビー、再発見!(2)

 一昨日の土曜日の日本対アイルランド戦。優勝候補を倒す大金星を挙げました。試合内容については既に山ほど報道されており、いまさら紹介するまでもないが、記事を一つだけ付け加えておきましょう。まさにラグビー精神の「ノーサイド」を象徴する光景。実際に会場で見ていたら、自分も感動で涙が出たかもしれない。

「アイルランド、日本に作った“友好の花道”に感動」

「ツイッター上の実際の動画」

 昨日のウェールズ対オーストラリア戦も、最後までどうなるかわからない、いい試合でした。ドロップゴールの多用が意外だった。オーストラリアが優位だろうと思っていたが、先入観は裏切られるもの。ラグビーの勢力図は日本も含めて変わりつつあるのかもしれない。

 さて、テレビでは全然報道されていないが、同じ時期に来年の東京五輪予選を兼ねた7人制ラグビーアジア大会も開催されていました。日本は男女ともに総合優勝。

「アジアセブンズシリーズ2019は男女とも日本が総合優勝 スリランカ大会もWで金」

  日本は開催地枠で既に東京五輪への出場が決まっていました。スクラム主体の15人制ラグビーに比べると、15人制と同じフィールドをわずか7人でカバーする7人制は走力と持久力が要求されるため、バックス系の選手が主体。数十mを独走してのトライが頻繁に見られ、形勢が一気に変わるところがスリル満点。先回のリオ五輪で正式種目となり、当時、面白くてよく見ていました。放映の機会があればぜひ見てください。

 試合だけでなくラグビー関連の放送もこのところ多いが、一つ驚いたのは先週のNHKの番組で日本ラグビー協会副会長の清宮克之氏が、「自分たちは、先発メンバーを選手だけで相談して決めていた」との発言でした。同氏は早大出身であり早大在籍当時のことのようだが、ラグビーの特徴である選手の自主性尊重を物語る話だ。監督からの上意下達に偏りがちな野球とは対照的。最近の高校野球チーム数の減少は、旧来然とした硬直的、画一的な指導体制がその一因のように思われる。

 筆者は、1970~80年代の大学ラグビー全盛のころは毎年正月に大学選手権の放映を見るのが楽しみでした。特に早明戦の盛り上がりはすごかった。当時はトライを挙げる花形であるバックスばかりに目が行っていて、フォワードの働きについてはよく理解していなかった。今回のWカップを見ることでフォワードの役割が非常に大切であることがようやく理解できた。フォワードの突進力があってこそ相手の陣形が乱れてスペースが空き、そこをバックスが突くことができるのですね。フォワードのボール保持能力が高いほど、味方の攻撃の機会も増えるわけだし。

 中学生の頃、兄が買っていた石原慎太郎の「青年の樹」という小説を読んだが、その中に、主人公がラグビーの試合で数十mを独走してトライを決めるシーンがあった。そのかっこよさに魅了されて、高校に入ったらラグビーをやりたいと思った。しかし、いざ高校に入ってみると、自分が激しいぶつかり合いに耐えられるかが心配になり(当時の筆者はヒョロヒョロだった)、中学からやっていた種目をまた選んでしまった。

 なお、我が母校には当時は弱小ながらラグビー部が存在したが、今はない。鳥取県は昔も今もラグビー不毛の地であり、ラグビー部のある高校は、現在、県中部に二校、西部に二校しかないようだ。

 人生の節目節目において自分が選んだ道をほとんど後悔したことがない筆者ではあるが、「あの時、ラグビー部を選んでいたら、自分は今頃どんな人間になっていただろうか?」と今でも時々思うことがある。

/P太拝

ラグビー、再発見!(1)

 先週末からラグビーカップにドップリとはまっている。9/20開幕戦の日本対ロシア。もちろん試合内容もよかったが、その前の開会式も簡素かつ短時間で印象的だった。試合が始まると、体重100kg前後の大男たちが全力で疾走して正面からぶつかりあう、その迫力に圧倒された。小柄な日本人同士の試合とは迫力がまるで違う。それからというもの、毎晩のように外国勢同士の試合を見ている。

 一番すごいと思ったのは、やはりニュージーランド南アフリカの試合。試合前のオールブラックスのハカも実に勇壮でしたね。今夜は試合がなくて暇なので、久しぶりにブログを書こうと思ったしだいです。

 なんでこんなにラグビーに引き付けられるのかと考えてみると、ラグビーには短距離走、格闘技、球技に不可欠な敏捷性等々、スポーツに要求される個々の要素が全部含まれている。さらにあえて言えば、ラグビーはもっとも戦争に近いスポーツ、いわば「戦争行動をもっとも模倣したスポーツ」なのだろう。我々の、特に男性の心理の中には、格闘し相手をやっつけて自分の支配下においてみたいという欲望が多少なりともあることは否定できない。

 何しろ百年ほど前まで、我々人類の御先祖様は世界中の至るところで血みどろの戦いを繰り広げていたのである。より闘争的で戦い上手な連中ほどより多くの子孫を残せたのだろう。我々の大半こそ、彼らの子孫に他ならない。

 最近の世界はかなり平和になってきたとはいうものの、殺人の技術はますますエスカレートするばかりで、アフガニスタン戦争などでは米軍のロボット兵器による人間の大量殺戮も現実となってしまった。米軍の将軍や技術スタッフは(米国大統領も?)、ロボットがテロリストを殺す映像を見るたびに拍手喝采しているのだろう。プロレスやボクシングなどの格闘技の観客、兵器オタクや戦争ゲーム愛好者等々に見られるように、我々の心の中には戦いに対する一種のあこがれ、強い者に対する憧憬がまぎれもなく潜んでいる。

 この戦いへの憧憬が世界のいたるところで即実行に移されれば、この世は地獄と化してしまうのだが、良くしたもので戦いの模倣行為をするだけでも我々の心はかなりの満足を得られるらしい。いわば、疑似的戦争行為としてのスポーツに参加することによって、我々は自身の暴力への衝動をコントロールし抑制することができるらしいのである。

 典型的な例が、ワルや不良の集まりと言われた京都の伏見工業が、ラグビーが強くなることによって自信を取り戻して全国優勝の常連校となった事実である。半グレの不良少年がスポーツに熱中することで自らの誇りを回復し、世の中に居場所を見出して社会的にも成功するというのは映画や漫画の定番ストーリーとなっている。

 さて、ラグビーはいったん分断されてしまった社会間の再結合にも役立っているらしい。明日、日本は世界ランク一位のアイルランドと対戦するが、次の記事によれば、そのアイルランド代表チームの構成もラグビーならではなのである。このチームこそが、「試合が終わればノーサイド、敵も味方も無くなる」というラグビーの基本的精神そのものをチーム自から表現しているのではないだろうか。ちなみにサッカーに関しては、英領北アイルランドと、英国から独立した(南)アイルランドとは別々の代表チームとなっている。

「ラグビーが統合する南北アイルランド」

 
 「ラグビーは元々ブルジョアのスポーツであり、労働者階級の我々とは縁がない。統一チームなど偽善にすぎない。」と批判するアイルランド市民がいるのかもしれない。しかし、仮に偽善的であるとしても、かって対立し殺しあってきたカトリックプロテスタントが一つのチームを実際に構成しているという現実だけでも大した成果なのだろう。それに、英国やアイルランドについてはよくは知らないが、日本を含むそのほかの国のラグビー選手の全てがブルジョアということはあり得ない。彼らの大半は、いわゆる庶民、一般市民のはずだ。

 もう一つ付け加えておきたい。先週末にネットの記事を読んでいたら、「ラグビー日本代表は外国人だらけ」というコメントがいくつかあった。誰が書いたのかは知らないが、書いた人には次の二つの記事を読んで見てほしい。

 たまたま日本人に生まれたというだけの理由で上から目線で外国人を見下す人間と、日本人になるべく、あるいは日本のために貢献するべく日夜努力している人間と、どちらに人間としての魅力があるかは言わずとも明らかだろう。前者は「日本国籍以外には誇れるものを何も持っていない人間」なのではないかと推測してしまうのである。

「開幕戦3トライ 松島幸太朗「悲しみを乗り越えて」日本の至宝に」

「「もちろん勝ちたい」。アイルランド戦に先発する38歳の生き様」

 

 特に、松島選手とそのお母さんには頭が下がる。高校の三年間、校長先生に毎年年賀状を出す高校生が、今の日本に何人いるだろうか。

 明日のアイルランド戦には松島、トンプソンの両選手は共に先発する予定とのこと。日本とアイルランドの両チームとも存分に戦い、かつ、大いに試合を楽しんでもらいたいものである。

/P太拝